中村茂の発言 (懲罰委員会)

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○中村(茂)委員 私は日本社会党を代表して、田邊誠委員提出の小林政子君の懲罰事犯は、懲罰のどの条項にも該当しない旨の動議について全面的に賛成し、懲罰に反対するものであります。
 四月二十六日の物価問題等に関する特別委員会は、そのときに議題となっていた国民の非常に関心の深い生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律案について、田中内閣総理大臣に直接出席を求めて徹底した審議を行ない、討論を終了する委員会でありました。小林政子委員も、列島改造論と地価急騰、新幹線や高速道路また地域開発というような問題がその周辺の地価を急騰させているが、これらを規制する方法がないのかどうか、物価問題を中心とする質疑を行なったのであります。そのあと最後に、懲罰事犯になっている内容の質問を行ないました。それを要約すると次のようになっております。
 上越新幹線の上毛高原駅決定のその時期に、株式会社上牧荘が相当土地を買っている。この上牧荘の代表取締役である入内島氏と田中総理は親しい間柄だといわれている。田中総理は事前にここに新幹線をというような情報を知る立場にいた。その地位を利用されて、このようなことがやられたんじゃないか、こういう問題等について私は非常に大きな疑問を持たざるを得ないのでございます。一国の総理大臣が、この点についてほんとうに政治姿勢を改めると同時に、そのようなことをやっていたのでは、ほんとうに商社の買占めを本気になって取り締まり、やめさせることができるかどうか、明確な答弁を要求いたしますと質問したのであります。この質問のどこに懲罰動議の事犯に該当する問題があるのか、実にふしぎに思うのであります。
 大村襄治委員の懲罰動議の趣旨弁明によれば、小林政子君の田中総理大臣に対する質問のうち、「推測に基づき事実に反する発言によって、個人の名誉をはなはだしく傷つけ、院の品位を失墜させる部分があった」としています。そこで問題は、推測に基づいて質問したのか、疑義を正そうとしたのかということであります。
 国会議員が国会の論議の場を通じて政治的な疑惑があるとすれば、その疑惑をただし、政治姿勢をただしていくことは当然すぎるほど当然なことであります。疑惑というものはその条件が整っているかどうかということが問題であります。私は今回の事犯について疑惑の条件が整っていたと思うのであります。
 まずその第一は、株式会社上牧荘が、現地調査でも明らかなように、登記簿上岩竹日影地区の山林と原野が合計四千六百九十四平米、石倉地区に上牧荘の敷地を含めて所有地が一万七千三百十九平米あることが明らかになりました。
 次に、この土地と上越新幹線及び上毛高原駅の決定と時期的に関連があるのかどうかということであります。四十四年五月三十日に新全国総合開発計画が決定され、四十六年十月十四日に工事実施計画が認可になって、上毛高原駅がきまりました。この時期に上牧荘が取得した土地は、石倉地区と岩竹日影地区で相当な面積となっています。そして購入土地が「相当土地を買われている」という表現に当たるのかどうかということでありますが、不動産会社でもない旅館経営者が、業務内容を広げていこうとする立場から相当土地を買った、これは常識の表現ではないかと思うのであります。
 二番目に問題になりますのは、上毛高原駅の予定地と土地購入地域が距離的に駅の利用圏であるかという点であります。温泉や観光、保養の地域では、六キロや七キロは当然利用圏であります。
 三番目には、上牧荘の代表取締役の入内島氏と田中総理は新しい間柄であったことは、総理自身「刎頸の友」であると言明しているのですから、深い間柄であったことは事実であります。その田中総理が新幹線や駅の決定について、知ろうと思えば知り得る立場にあったことは明白であります。
 以上の諸点について総合的に判断した場合、上牧荘の土地購入が、上毛高原駅の決定と田中総理と入内島氏との関係からして、疑惑を抱いてもふしぎではないと思うのであります。推測ではありません。
 次に、どうしても解明しておかなければならないことは、小林議員の発言の幾つかが田中総理に対する無礼な言に当たり、個人の名誉をはなはだしく傷つけ、院の品位を失墜させたといっている点であります。国会は言うまでもなく言論の府であります。議論を通じて意見の相違をただすことは当然であります。その意味で、論議の中から出てきた一つ一つの発言を懲罰の条項に適用する場合は、的確でなければならないと思うのであります。
 言論は保障されなければなりません。国会法第百十九条、「各議院において、無礼の言を用い、又は他人の私生活にわたる言論をしてはならない。」第百二十条の「侮辱を被った議員は、これを議院に訴えて処分を求めることができる。」この条項は「第十四章 紀律及び警察」の中の条項であり、衆議院規則第二百十一条「議員は、議院の品位を重んじなければならない。」これは「第二節 秩序」の条項であり、紀律、秩序の法意からして、言論を大幅に保障した条項であります。
 裁判の鉄則は、疑わしきは罰せずだといわれています。法の適用は公正でなければなりません。
 私は最後にどうしても言及しておかなければならないことは、当時の田中総理の答弁に対する態度の問題であります。答弁の冒頭から、不愉快であるとして感情が高ぶっており、心を乱した態度は、一国の総理のとるべき態度ではないと思うのであります。実に遺憾なことであります。
 私は、今回の事犯について、あらゆる角度から慎重に検討した結果、懲罰に値しないことを明らかにして、終わりといたします。(拍手)

発言情報

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発言者: 中村茂

speaker_id: 18125

日付: 1973-06-23

院: 衆議院

会議名: 懲罰委員会