粕谷茂の発言 (本会議)

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○粕谷茂君 私は、自由民主党を代表いたしまして、委員長の報告に賛成をいたすものであります。(拍手)
 去る四月二十六日、議員小林政子君の物価問題等に関する特別委員会における田中総理に対する質問のうち、国会における発言としてはきわめて不穏当な発言があり、これは、国会法及び衆議院規則に抵触し、懲罰の対象となることは明らかであります。
 以下、その理由を申し上げます。
 その第一の理由として、事実関係についてであります。
 小林政子君の発言が事実と全く異なり、不正確きわまりないものであり、議員各位はもとより、マスコミを通じ、国民の大多数に大きな誤解を招いた点であります。
 すなわち、小林君の質疑に対して、総理が、事実に反していると再三にわたり否定していたにもかかわらず、自己の調査の結果を主張して譲らず、その上、総理大臣にあたかも疑惑があるがごとく歪曲し、発言したのであります。
 小林君は、物価問題等に関する特別委員会において、新幹線や高速道路または地域開発計画などが、周辺地域の地価急騰の起因であるとして、この問題を取り上げ、「計画が発表される以前に情報をいち早くキャッチして、その地域を資金を持っている者が買い占めていく」云々と発言しております。続けて、「上越新幹線の上毛高原駅が発表になった昭和四十六年の十月以前に土地が相当あの近辺で買われているという事実が、私の調査によっても明らかになっております。その土地は上毛高原駅からわずか一・五キロメートル以内の山林、原野、ここが具体的に昭和四十三年から四十四年にかけて、群馬県利根郡のいわゆる月夜野町の字石倉地区という地域が相当土地を買われているわけでございます。」云々と前置きをして、総理が当時の政治的地位を利用し、あたかも友人をして、上越新幹線計画の発表前に、上毛高原駅予定地の付近に土地を買収させているかのように発言し、さらに、そのようなことをやらせていてはと、小林君は断定したのであります。このことは、小林君が再三事実であると主張したにもかかわらず、懲罰委員会の実態調査の結果に見ても明らかなごとく、小林君の主張する一・五キロ以内に、土地の買い占めが行なわれた形跡は全く見当たらないのであります。
 また、石倉地区に相当土地を買ったとの発言も、約一千六百二十九平方メートル、坪数にして四百九十三坪の地続きのがけ地にすぎなかったのであります。
 かくのごとく、小林君の発言内容は事実と全く相反しているのであります。(拍手)この種の事実関係に基づく質疑にあたっては、事前に十分なる調査を行ない、実態を十二分に把握し、問題の理解を深めてから、ただすべきはただすということでなくてはなりません。このことは、議員の質疑にあたっての初歩的心得であるともいえるのであります。(拍手)今日に至るも小林君は依然として反省をすることなく、ただ、ためにせんがための意図的議論を繰り返し、自己の弁護に終始し続けているのであります。国会議員を侮辱し、国会の権威を傷つけ、品位を失墜させた責任はまことに重大であるといわなければなりません。(拍手)
 第二の理由には、小林君は、わが国を代表する内閣総理大臣に対する質問と称し、事実に基づかず、作為的な発言により、その名誉をはなはだしく傷つけ、その上、広く国民から政府及び政治に対する不信を招いた点であります。
 すなわち、小林君は国会の場を通じ、事実を十分確かめもせず、あたかも田中総理が、当時の地位を利用し、友人に土地の買い占めをさせ、それに加担しているがごとく事実を歪曲し、発言したことは重大なことであります。このことは決して見のがすことはできないのであります。
 そもそも、一国を代表する総理の政治姿勢を問うということであるならば、なおさらのこと事実関係を正確に把握し、論拠を明らかにしてただすべきであったと思います。
 小林君の記者会見の発言に基づき、新聞は次のように報道をいたしております。二万四千ヘクタールの土地が買い占められていると。二万四千ヘクタールの面積とは、どのくらいの広さであるかといえば、まさに東京都二十三区の面積の約二分の一に相当する膨大な広さであります。そんな土地を買い占めた事実は、現地の調査の結果どこにも見当たらないのであります。この一事をもってしても、田中総理を誹謗、中傷する意図的発言であったことがうかがい知ることができるのであります。総理が置かれている政治的立場から判断しても、国の内外に与える悪影響は甚大であり、国家、民族に及ぼす損失もまたはかり知れないものがあるといわなければなりません。
 第三の理由には、個人の私生活にわたる発言を行ない、その人の名誉を傷つけ、社会的信用をも失墜させた責任をわれわれは重視するものであります。
 すなわち、物価問題等に関する特別委員会において、小林君は、事実に反した質問によって、上牧荘の経営者入内島氏を名ざして、同氏が田中総理の友人であるがゆえに、その立場を利用し、あたかも土地の買い占めを行なっているがごとき発言をし、これがそのまま国民に広く知らしむるところとなったのであります。これに対し、入内島氏が、五月十日に東京地方検察庁に、小林君の発言した趣旨と同様な、あたかも土地買い占めの張本人であるがごとき記事を掲載した赤旗編集局長及び記者を、名誉棄損で告訴したことによっても、いかに大きな迷惑をこうむっておられるかは火を見るよりも明らかであります。
 国民は、議員の院内における発言に対して、反論の機会はほとんど閉ざされているにひとしいのであります。それゆえに、この種の発言をいたす場合には、慎重な上にも慎重なる配慮をいたさなければならないと思います。今回のごとき小林君の発言を黙視するならば、個人の名誉、人権を守るべき憲法の精神、国会の権威、議院の品位並びに政治に対する信頼を失わしめることは明らかであります。
 この際、国会の自律権に従って、小林君に責任をとらせることは、当然の理であります。われわれ国会議員の責務でもあると考えます。
 以上申し述べましたごとく、議院の品位を重んじ、人権を他のどの機関よりも重く見なければならない国会議員が、みずからの義務と責任を放棄した、このような行為を断じて容認することはできません。(拍手)これらのことは、法に照らして、懲罰の対象に該当することは当然過ぎるほど当然であります。
 さらに、私は、これまで小林君の言動をうかがってまいりましたが、みずからの非をいささかも認めず、言論の自由と免責特権の名をかりて、事実にもないことをあたかも事実であるがごとく断定し、一国の代表である総理大臣の名誉をはなはだしく傷つけ、個人の私生活にわたる言辞を弄し、国会の品位をはなはだしく失墜させたことは明白であります。同時に、その責任はきわめて大なるものがあります。
 もし、その責任を、われわれ国会議員が追及せずして、これを何ぴとが追及するといえるでありましょうか。いまこそ国会の自律権は、かくのごとく峻厳であることを認識しなければならないときであります。今日に至るもいささかの改俊の情を示さない小林君に対し、もしこのことを見のがすことがあるとするならば、国民の国会議員に対する信頼はもとより、国会の品位と権威を失い、ひいては政治全体に対する不信感をももたらし、やがて議会制民主主義の危機につながるものといわなければなりません。
 以上の理由をもちまして、委員長の報告に賛成する次第であります。
 議員各位の御賛同を願うものであります。(拍手)

発言情報

speech_id: 107105254X04619730626_008

発言者: 粕谷茂

speaker_id: 992

日付: 1973-06-26

院: 衆議院

会議名: 本会議