大出俊の発言 (本会議)

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○大出俊君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました山中防衛庁長官不信任決議案について、提案の趣旨説明を行ないます。(拍手)
 以下、具体的に若干の理由を申し上げます。
 まず、山中防衛庁長官の長沼違憲判決に対する政治姿勢についてであります。
 九月七日、札幌地裁で行なわれた長沼ナイキ基地訴訟の判決は、徹底した平和主義を宣言した憲法前文を受けて「憲法第九条は、第一項で侵略戦争を放棄し、さらに第二項で戦争の危険を全く根絶するために自衛戦力をも含めた一切の軍備、戦力を放棄し、かつ交戦権も否認したものである。一陸、海、空の各自衛隊は、現在の規模、装備、能力から見て、いずれも憲法第九条二項に言う陸、海、空軍に当たり、違憲である。単に自国の防衛のために必要であるという理由では、それが軍隊ないし戦力であることを否定する根拠にはならない。」というものであります。現行憲法のもとで自衛のための実力を持つことは、徹底した平和主義を宣言した前文と、それを受けて戦争の放棄、戦力の不保持を明記した第九条に照らして、はたして許されるものであるかどうか、これは警察予備隊創設以来二十余年にわたって、政界をはじめ広く国民各層の間で論ぜられてきた問題であり、学説も分かれ、九条は、自衛のための戦力の保持をも禁じたものであるという自衛隊違憲論と、侵略戦争のための戦力は持てないが自衛のための実力なら持てるという合憲論か、これまた、激しく対立してきたところであります。
 つまり、この問題はすでにあらゆる角度から論議が行なわれ、あとは法令審査権を持つ裁判所がどう出るかが、国民的な立場から注目されていたわけであります。東京大学の憲法学者小林直樹教授は、長沼判決について次のように述べております。総体的にいえば、この判決は、憲法前文の永久平和主義と平和的生存権を確認した上で九条の正確な解釈をしています、九条の個々の条項とは別に、全体としていえば、自衛隊は違憲というのが圧倒的といっていいほどの学説になっています。今回の判決が政治的な偏向だとか、福島裁判長が青法協の一員であるとかいう個人的批判や中傷は全く当たらない。九条の解釈は、学説を踏まえた客観的立場を貫いている。そしてまた、統治行為論なる政府の主張は、明らかに問題のすりかえであるとも言っております。
 つまり、政府・自民党の皆さんが、いかに感情的な反発を示してみても、学者の多くが、ほとんどの新聞の論調が、そしてまた、きわめて幅広い層の国民が、歴史的な意義の上に、平和憲法の原点に立つ福島判決の明快な判断に大きな共感を持っているというこの現実を否定することは、断じてできません。(拍手)山中防衛庁長官、あなたの就任は五月二十九日でありましたが、防衛二法案をめぐる私の質問に対する初答弁の中で、「私は防衛にはしろうとでありますが、大いに勉強をしたい。国論が大きく分かれていることはまことに不幸なことであり、野党の諸君の意見も十分聞かせていただいて、国民的コンセンサスを求める努力をしたい。」と述べられたわけであります。
 沖繩復帰に伴う数々の難問の解決にともに当たり、給与、恩給に至るまで、ともに解決の糸口をさがし合った私は、あなたをよく知る者の一人として、この答弁を心中ひそかに歓迎をし、将来あなたのこの信条がやがて形になってあらわれることを期待しておりました。
 この答弁が、単なる儀礼でないものとすれば、司法の分野における初めての判断と共感を寄せる多くの国民の声にこたえる道は一体何か。この国の防衛の責任ある立場にある人として、この判決を踏まえて、国民的コンセンサスを求める道は何か。冷静にしてかつ大胆に、みずから信ずる方策を打ち出されるのではないかと期待をしておった一人でありました。
 具体的には、自衛官の定数を約七千人ふやして、沖繩に南西航空混成団を新設することなどを内容とする防衛二法案の強行成立をはかるなどの戦術を避けられてこれを撤回し、四次防のたな上げと、一兆一千五百七十億円にのぼるばく大な四十九年度概算要求を取りくずして、この国の防衛問題に対する与野党の論議の場を広げ、国民的コンセンサスを求める糸口を見出す努力こそ、あなたに課せられた最大の任務であると考えていたからであります。
 すなわち、長沼判決は、いたずらに政府が強気の姿勢を示すとか、いたけだかに控訴の手続を強調するなどという次元の問題では、断じてないはずであります。政府みずからが自衛隊の増強は取りやめるという政治道義の問題であり、政府みずからが権力の自制の道を進んでとることこそ、国民の声にこたえる道であると信ずるからであります。
 しかるに、山中長官の、今回の長沼違憲判決に対する政治姿勢こそ、まことに奇怪千万であるといわなければなりません。
 長沼違憲判決を先取りして、事前に一万六千部のパンフレットを作成してこれを隊員に配り、「一審判決は何の効果も生じない」、「判決に一喜一憂するのは笑止のさた」と言うのであります。
 国務大臣である行政府の長官が、しかも国の防衛の責任者が、まだ出されてもいない司法の分野の判決を予想して、笑止千万と言うとすれば、まことにもってこれは言語道断、まさに不信任の最たるものであるといわなければならぬと存じます。(拍手)
 さらに、七日の午前中のテレビ発言で山中長官は、「全く残念であり、冥府魔道の心境である、」どこかで聞いたことのある発言が飛び出しました。さらに午後の記者会見で、「一、予想された判決の一語に尽きる。判断にはもちろん承服しかねるし、上訴する。憲法は無抵抗、無防備を定めたものではないという確定判決があるので、この判決をもとに上訴する。一、一審といえども違憲とされたことは初めてでもあるので、隊員が動揺しないよう、今後の自衛隊のあり方について全員に訓辞する。一、今後さらに上訴して争うので、当面の四次防計画など、防衛政策に何らの変更はない、」というのでありました。
 ここには、政治家山中貞則君は存在をしない、権力の自制どころではなく、権力まる出し三あり、官僚的発想と官僚的言辞の羅列であり、国民に共感を求める、国民的コンセンサスを求める意欲などは、一かけらも見出すことはできません。期待を裏切られたという以上に、日本の将来の安全と平和のために、断じて山中貞則君を信任できないのであります。(拍手)
 第二に、防衛二法案に基づく自衛隊の沖繩派遣についてであります。
 山中長官、あなたは人も知る沖繩問題解決の立て役者でありました。私も前後十数回にわたり沖繩県に行っておりますが、その意味では、保守、革新を問わず、あなたの評価はいまなお高いのであります。
 わが党の上原康助君が、防衛二法案の審議にあたりまして、「沖繩百万県民が旧日本軍に対して、したがって、また今日の自衛隊について反対する感情は、ほかならぬ山中長官、あなたが一番よく知っているはずである。にもかかわらず、あなたが防衛庁長官として沖繩に自衛隊を配置しようとする。あなたはせめて経済閣僚であってほしかった」と述べておりましたが、人一倍人情家であるあなたの胸にこたえたはずであります。
 しかも、昨年の国会で防衛二法案は廃案となり、国会が沖繩自衛隊配置を認めていないのであります。さらに本年度防衛二法案はいまなお審議中であるにもかかわらず、なぜ臨時の名のもとに南西航空混成団をはじめ、六千五百人にものぼる自衛隊を沖繩に先取り配置をするのかという質問に対して、あなたは、「沖繩県も復帰に伴い日本の領土である限り配置は当然」ときわめて紋切り型の答弁をいたしましたが、沖繩県民の切実な反自衛隊感情を百も承知の上で、しかも自衛隊のやみ配置を公然と認めてはばからぬ態度に対して、田中内閣の一閣僚であるという制約は承知しながらも、沖繩百万県民の心情に立って、あえてあなたの不信を責めなければならぬと存じます。(拍手)
 いまや四次防は着々と進められ、アメリカのいう総合戦力構想に組み込まれて、次々と肩がわりを続け、自衛隊の自己増殖という自転現象をも含めまして、いつか来た道をひた走る感がございます。
 陸上定員十七万九千人、十三個師団は、その機動力、兵器、装備において旧陸軍の五十二個師団に匹敵をし、北海道千歳の七師団の例をあげれば、九十ミリから百五ミリの砲を備えた戦車七十両、百五十五ミリ等の重砲二百三十門、装甲車二百両、無限軌道によって九千人の師団全員が時速三十キロ、一日の行程二百キロ、つまり五十里であります。この力を持ち、四次防においては主力たり得る六一式改型なる戦車が出てまいりますが、完全密閉式といって、細菌、毒ガス、放射能の中をも走り、赤外線照準装置によりまして暗夜の照準も可能であり、かつシュノーケルによって水中走行さえ行ない得るものでありまして、まさに第一級の陸軍といわなければならぬのであります。
 海上定数三万八千三百二十三人、護衛艦四十隻、潜水艦十隻、これは四次防によって二十五万トンに近づくものでありまして、四次防型潜水艦は、燃料電池の開発などを含めまして、原潜に大きく近づくものといわなければなりません。世界最強、最大のアメリカの第七艦隊が通常百二十五隻、五十万トンと見て、この半分に近い、まさにこれまたりっぱな海軍であります。
 さらに、航空定数四万一千六百五十七人は、常時戦闘可能の第一線機五百機を持ち、西欧の一流空軍と肩を並べており、さらに四次防によって福岡県の築城、石川県の小松、島根県の美保、将来秋田県の八郎潟の干拓地までF1〇4を並べた基地となるはずであります。小松飛行場から金日成氏のいる北朝鮮平壌へ、わずかに八百キロしかないのであります。F4Eファントムによれば、わずか二十分以内の航程であります。しかも長野県松本の第十二師団は、北朝鮮の山形にならって山岳訓練に余念がないわけであります。まさに日本海作戦の完成をねらっていると見なければなりません。
 この意味において、アジアの緊張緩和にまさに逆行する危険な田中内閣の防衛政策に警鐘を鳴らし、山中長官不信任決議案を提案して、大方の注意を喚起する次第であります。
 以上をもって提案理由にかえます。(拍手)
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発言情報

speech_id: 107105254X06119730921_006

発言者: 大出俊

speaker_id: 17168

日付: 1973-09-21

院: 衆議院

会議名: 本会議