鈴切康雄の発言 (本会議)
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○鈴切康雄君 私は、公明党を代表して、ただいま上程されました防衛庁長官山中君に対する不信任決議案に対して、わが党の考え方を述べながら、賛成の討論を行ないます。(拍手)
そこで、私が山中長官を信任し得ない第一の理由としては、司法権軽視の姿勢についてであります。
すなわち、先般の札幌地裁における自衛隊違憲の判決は、一審における判決であり、最終判断ではないにしても、最終結論が出るまでは、この判決の是非は別として、政府はこれを厳粛に受けとめて、少なくとも自衛隊を現状に凍結することが当然であります。(拍手)
しかるに、あなたの指揮監督下にある陸上自衛隊幕僚監部においては、判決以前に敗訴を想定して、一審判決は何の効果もない等の趣旨のパンフレットを部隊に配布をしております。山中長官、あなたがこの種のパンフレットの内容を事前に知っていてこれを出させたというなら、事は重大であります。もし、あなたにあらかじめの了解なく、知らない間に配布されていたとするならば、シビリアンコントロール無視の、制服独走もはなはだしいといわざるを得ないのであります。
そのパンフレットの問題点は、「第一審においてどのような判決があったとしても、一喜一憂するのは笑止と言わねばならず、自己に有利な判断をなされたとしても、鬼の首でもとったごとくに言うべき問題ではない」として、一審判決を無視するようなことを呼びかけております。
このようなことを一陸上幕僚監部がかってに隊員に周知せしめることがあえてなされた責任は重大であり、一にかかってあなたの監督不行き届きであるばかりでなく、これは明らかに自衛隊員の司法権無視につながるものといわざるを得ません。
さらに許しがたいことは、それを指揮監督すべき立場にあるあなた自身も、違憲判決の当日、全国の自衛隊員に対する演説の中で、「地裁の判決は重大な判断の誤りをおかしている。この判決があったからといって、自衛隊の運営や防衛力整備の方針に変更を加えるつもりは毛頭もない」と言い切っているが、これは司法権を軽視し、憲法に規定された三権分立の精神までを軽視するという重大な過失をおかすものであります。
不信任の第二の理由は、山中長官の憲法無視の姿勢についてであります。
歴代保守党内閣は、警察予備隊から保安隊、そして自衛隊へと既成事実をつくり上げ、それに合わせて憲法第九条を政府の最も都合のよいようになしくずし、さらに、それを拡大解釈をしていることは御承知のとおりであります。
すなわち、二十一年六月吉田元首相は、「たとえ自衛のためでも戦力を持つことは許されない」という趣旨を言明しているにもかかわらず、その後、二十七年八月保安隊設置を契機に、政府はそれらを正当化するため、二十七年十一月に戦力に関する政府統一見解なるものを出し、「近代戦争遂行に役立つ程度の装備編成を備えるものを戦力といい、保安隊はこの近代戦争を有効に遂行し得る程度のものでないから、憲法の戦力には該当していない」という拡大解釈を打ち出したのであります。
さらに、二十九年七月に自衛隊が設置されるや、防衛力整備計画を長期的にとらえ、第一次防、第二次防、第三次防、そして第四次防と軍備拡大政策をとり続けてまいりました。今日では、それを正当づけるために、自衛のための必要最小限度の自衛力は違憲ではない、最小限度を越えなければよいのだ、しかも、必要最小限度の自衛力というものは、内外の諸情勢、科学技術の進歩等によってきめられるとして、具体的な限界を何ら国民に示していないのであります。したがって、この最小限度の名のもとに、伸縮自在の見解を駆使し、一方的に増強されてきているのが今日の自衛隊であります。
この点については、さきの長沼判決においても、すでに自衛隊は、規模、装備、能力において陸海空三軍であり、憲法違反であると指摘している点でもあります。
一体、わが国の世界に冠たる平和憲法の精神は、政府の憲法解釈のいずこにありやといわざるを得ないのであります。
憲法は、申すまでもなく、国家の基本法であります。この地裁の厳粛な判決を契機として、シビリアンである防衛庁長官は、過去の政府が行なってきた拡大解釈を深く反省し、憲法の基本精神に立って職務を遂行すべきであるにもかかわらず、一向にその反省がないばかりか、さらに四次防、五次防と自衛隊を増強することのみに狂奔している山中長官の憲法無視の言動は、まことに許しがたいのであります。
特に防衛行政といえば、武力集団をいかにしてシビリアンコントロールするかということであります。
平和憲法のワクを逸脱して、実力部隊の統制と運営ができなかった責任は重大であり、防衛庁長官としての信任を問わざるを得ないのであります。
不信任の第三の理由は、現在、山中長官が進めている憲法違反の疑いのある防衛政策の遂行についてであります。
四次防の戦略構想の基本は、すでに専守防衛のワクをはみ出し、戦略守勢と称し、領域外の敵地攻撃を認める戦術的攻勢へと変化を来たしております。
すなわち、従来の日米防衛分担のいわゆる米軍のやり、自衛隊のたての関係が、在日米軍の実戦部隊の撤退に伴って、アメリカの極東戦略の一翼を自衛隊が肩がわりをし、戦術的なやりを持とうとしているのであります。
さらに、山中長官は、昭和四十九年度予算要求については、来年度から三年間に分割して発注する予定であった新型61式戦車百六十両を、安上がりという理由で一括して発注しようとしている姿勢は、防衛産業のみを育成し、国民生活への圧迫を何ら考慮しないといわざるを得ないのであります。
また懸念されるのは、戦術核兵器の保持は憲法上可能であるが、政策上は持たないということで、戦術核兵器についての将来の道を開いております。
これらの考え方に立って、山中長官は、専守防衛という名のもとに、きわめて攻撃性の強い近代兵器の増強計画を持ち、なおその守備範囲を無限に広げようとしております。かかる考え方を持っている山中長官の考え方はまことに危険なもので、国民にとっても好ましからざる人物であるといわざるを得ないのであります。
山中長官を信任できない最後の理由として、最近における国際情勢は、長い冷戦時代から脱却し、ベトナム戦争の終結を契機に、米ソ核不戦条約の締結等、新しい平和への幕あけの時代へ入ろうとしております。ことに、いまだに日本軍国主義が内外で危惧されている今日、平和国家日本の進路を明らかにすると同時に、さらに平和に徹するとの姿勢を内外に強く印象づけ、定着させる努力が目下最大の急務であるにもかかわらず、相変わらず日米安保のもとでの冷戦時代の考え方から一歩も出ず、四次防、五次防へと、自主防衛の名のもとに軍事力拡大政策のみに狂奔している姿は、いまや戦争放棄、戦力不保持をうたった平和憲法の精神から逸脱しているといわざるを得ません。
この国際情勢の分析をもとに、わが国がとるべき安全保障政策の方向は、外においては、今日の平和を定着させるための積極的な平和外交を推進することであり、内においては、社会福祉の充実による内政のひずみをすみやかに取り除き、民生安定による住みよい国づくりをすることが何よりも重大であることを忘れ、山中長官は四次防を強力に推し進めるため、いたずらにまぼろしの脅威のみを想定して軍事力の強化のみに狂奔しているのは、時代錯誤もはなはだしいといわざるを得ないのであります。(拍手)
それを反省もせず、改めもしない危険な山中防衛庁長官は、一日も早くそのいすを去ることが、日本の平和と独立を守るためには一番必要であると確信し、本決議案に賛成するものであります。
以上で私の討論を終わります。(拍手)