小平忠の発言 (本会議)

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○小平忠君 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま提案をされました田中内閣不信任決議案に対し、賛成の討論を行なうものであります。(拍手)
 田中内閣は、昨年七月、行き詰まった佐藤内閣のあとを受けて政権を担当されました。当時は、今太閤と言われ、庶民宰相として国民の人気を博しましたが、その後、時がたつに従い、その人気は下降し、各種世論調査の示すとおり、いまや国民は、田中内閣に対し深く絶望するに至っておるのであります。(拍手)
 その理由は、一言にして申し上げますならば、田中内閣の内外にわたる施政の失敗にあるのであります。
 すなわち、昨年暮れの総選挙には、準備不足の思いつきだけの「日本列島改造論」を提唱し、土地をはじめ諸物価の高騰をもたらし、日本経済を救いがたき混乱に追い込み、公約した老人年金など福祉面の前進はほとんど見られませんでした。
 また、今特別国会が始まってからは、議会制民主主義の根幹である選挙制度について、小選挙区制を提唱し、強引に自民党永久政権を画策し、野党を封殺せんとしたのであります。
 また、通年国会を唱え、全法案を成立させるため、わが国憲政史上前例のない二百八十日という国会の大幅再延長を強行し、あたかも国の最高機関である国会を行政府に従属させようという態度をとり続けてきたのであります。
 私は、以下、内政、外交にわたって田中内閣の失政を列挙し、この不信任案賛成の理由を明らかにしたいと思うのであります。
 私は、まず第一に、田中内閣が成立当時から内政の基本方針としてきた日本列島改造政策の重大な誤りを指摘せざるを得ないのであります。
 列島改造論は、枯渇しつつある世界的な資源の二十数%をも消費することに対するきびしい国際批判を招き、国内では、それにも増して公害、環境破壊を通じて国民生活を危険におとしいれんとする超高度成長政策であります。
 いまやわが国の経済は、国内外の客観的な事情からして、量から質への大転換が要請されているにもかかわらず、田中内閣は何らの反省をも行なわず、依然として超高度成長政策を強い姿勢で推し進めようとしておるのであります。まさに時代の要請に逆行するばかりか、国民に背を向けた政権となりつつあるのであります。
 第二の田中内閣不信任案に賛成する具体的な理由として、全く異常としか言いようのない物価上昇問題を取り上げたいと思います。
 すでに指摘するまでもなく、わが国の物価は、昭和三十五年以来、−毎年平均で約六%も上昇し、その抑制が政治の緊急の課題とされてきたのであります。また、物価抑制は田中総理就任の公約でもあったことは、いまさら申し上げるまでもありません。
 にもかかわらず、物価は安定するどころか、昨年からことしにかけてますます上昇し、消費者物価はこの七月で対前年比一二・二%も上がり、九月上旬の卸売り物価に至っては、対前年比で一八・四%も高騰いたしておるのであります。まさに、戦後最悪のインフレであります。これでもなお政府は、インフレでないと言い張るつもりでございましょうか。
 このような悪性インフレを招来した責任は、あげて田中内閣の経済政策の失敗にあると断言してもはばからないと思うのであります。(拍手)
 次に第三の理由は、田中内閣の外交姿勢、特にいわゆる金大中事件に見られる外交姿勢についてであります。
 われわれは、日韓両国の友好関係の維持増進を心から念ずるものであります。しかしながら、国家間の真の友好関係とは、お互いの国が対等な関係に立って、主張すべきは主張し合い、そうした中で両国の国民大衆が相互理解を深めていくものであると確信するものであります。
 しかるに、わが国の場合、ともすれば、友好関係とは、ある国に対する一方的な追随であったり、無原則、無批判な関係であったことは、これまでの日米あるいは日韓関係を見れば明らかなところであります。
 特に今回の金大中事件については、それが一国の主権の侵害にかかわる重大問題にもかかわらず、事件発生以来すでに一カ月有半を経過いたしている今日、いまだ事件の真相が究明されていないことはきわめて遺憾なことであります。一体、田中内閣の決断と実行はどこへ行ったのでありましょうか。
 しかもその背景に、この事件をいわば政治的に解決しようという動きがあると一般に見られていることは重大な問題であります。西ドイツが六年前、この種の事件が発生した際、韓国政府に対しきびしい態度をとって、事件を原状に回復させたことは周知のとおりであります。しかるに、わが国政府のこれまでの態度は、何らき然たる姿勢が見られず、いまだ事件解決のめどが全く立っていないことは、対外的にはわが国の主権が軽視されていることにほかならず、政府の責任はきわめて重大と断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
 田中内閣不信任の最後の理由といたしまして、田中内閣の防衛問題に対する基本姿勢についてであります。
 先般、自衛隊は憲法違反とする札幌地裁の判決が出され、大きな反響を呼び起こしておりますが、われわれはこれについて、わが国が独立国である以上、国の自衛権とそれを具体的に行使する手段としての自衛力を保持することは当然であり、自衛権のみを認めて自衛力を否定することは、自衛権そのものを有名無実化し、結果的に自衛権そのものを否定するという矛盾をおかすものといわざるを得ないと考えるものであります。
 したがって、われわれは、今回の判決の内容について、それに決してくみするものではありません。しかし、判決がわが国の防衛の基本問題について、一つの問題を提起したことは明らかであります。すなわち、歴代自民党内閣が、わが国の防衛について、その基本論議を避けて通り、既成事実を積み重ねてきたというこれまでの姿勢に対する警告であります。
 特に四次防は、国際情勢の変化を無視し、自衛力の限界について歯どめのないまま、これを惰性的に増強するものであり、それが一方では、諸外国におけるわが国への警戒と不信を招き、また他方で、それが防衛問題に対する国論の分裂に拍車をかける結果を招いていることは周知のとおりであります。
 言うまでもなく、国の安全の根本は、自衛官の数や装備ではなく、みずからの国を守ろうという国民的合意と団結にこそあるのであります。
 その意味で、政府がこれまで防衛論議を避けて通り、防衛に対する国民的合意形成への努力をないがしろにし、その結果、国の防衛の基本について諸外国にも例を見ないような国論の分裂と対立を招いた責任は、きわめて重大といわなければなりません。(拍手)
 時間の関係上、きわめて簡単ではありますが、以上の数点を申し述べまして、私は、田中内閣不信任決議案の賛成討論を終わるものであります。(拍手)

発言情報

speech_id: 107105254X06219730922_022

発言者: 小平忠

speaker_id: 11712

日付: 1973-09-22

院: 衆議院

会議名: 本会議