渡辺武の発言 (議院運営委員会)
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○渡辺武君 私は日本共産党を代表して、防衛、筑波の両法案の本会議上程に反対します。
反対の理由の第一は、今回の措置が、アメリカと日本の大企業に奉仕する悪法を、議会制民主主義の根本原則を踏みにじってまで、しゃにむに成立させることを至上命令とした政府・自民党の反動的意図のあらわれであるからであります。
本来、会期内に審議を尽くした法案が採決によって処理されること、また、会期内に審議の尽くされない法案が審議未了のものとして処理されなければならないことは、議会制民主主義の当然の原則であります。
特に防衛二法は、自衛隊七千名の増員、南西航空混成団の沖繩配備など、日米軍事同盟体制下の軍国主義復活と、日米軍事混合体制の一そうの強化をおもな内容としており、また筑波大学法案は、東京教育大学の廃止と筑波大学の新設を通じて、大学制度の反動的再編成と国家統制への道を開くことをおもな内容としたものであります。国の平和と民主主義、教育の自由を求める国民の強い疑惑にこたえて十分な審議が必要であることは論をまたないところであります。
特に内閣委員会は、自衛隊を憲法違反であると明確に判断した長沼判決によって防衛二法そのものの存立の根拠が問われ、文教委員会は、文部大臣の不当な発言によって大臣自身の適格性が問われるなど、重大な問題が相次いで提起された委員会であります。会期内に審議が十分尽くされないならば、これを廃案とし、その結果について主権者である国民の信を問うことこそ議会制民主主義の大道であり、政府・与党の当然踏むべき道であることは明白であります。
しかるに、政府・自民党などは、これらの悪法をしゃにむに成立させることだけを至上命令として、不法な強行採決に訴え、加えて憲法、国会法に定められた会期制の原則を踏みにじる会期大幅延長を強行し、さらには今回、審議がまだ尽くされていないにもかかわらず、二十五日までに議了を不動の前提条件として今回の措置をあえて推し進めようとしております。
これらの措置が、アメリカと日本の大企業に奉仕するためには、議会制民主主義の根幹を踏みにじって省みない田中内閣と自民党の反動性を露骨にあらわしたものであることは明瞭であります。
政府・自民党などは、前尾見解が、参議院における法案処理を中心に考慮し、と述べているのは、会期内議了を義務づけているのだとか、参議院での八月二十一日の三党確認事項は、会期内議了を前提としているのだとか主張しております。しかし、わが党は、前尾見解を全面的には受諾しておらず、三党確認事項も受け入れておりません。このようなものに拘束されるいわれは何一つないのであります。
前尾見解については、わが党は、衆議院議長が参議院との協議もせずに、一方的に会期延長をきめたこと、参議院の法案処理に介入するなどの越権行為を行なったことなどに対し厳重に抗議し、反対しました。しかし、かりに前尾見解を全面的に受け入れた党の立場から見ても、その第三項は、法案処理については、参議院の自主性に基づいて処理さるべきものと述べており、また、処理ということばが、そのまま会期内議了を意味するものでないことも明らかであります。前尾見解を口実とすることは、参議院の自主性をみずから放棄する卑屈きわまりない態度と言わなければなりません。
また、三党確認事項について言えば、わが党はこれを受諾しなかったばかりか、当時、与野党の一致できる議案については直ちに審議に入り、問題の四法案についてはなお協議を続けるべきことを提案しました。今回、政府・自民党その他が、三党確認事項が強行採決有効、会期内議了を前提としたものであると主張し、その立場に立って本会議上程の不当な措置を強行しようとしているこの事実こそ、この確認事項なるものの欺瞞的な危険な性格を白日のもとに示すものであり、わが党の主張が正しいものであったことを証明するものであります。
反対の理由の第二は、この問題の多い両法案の委員会審議がまだ継続している最中であり、質疑予定者が文教委員会で四人、内閣委員会で五人も残されている上、二十七日の会期末までにまだ審議の日が残されているにもかかわらず、質疑を打ち切ろうとしているからであります。
本来、国会の国民に負っている最大の任務の一つは、法案を慎重に審議し、それを通じて国民にその内容を明らかにするというところにあります。したがって、議員の審議権を尊重すること、議案の徹底審議を保障する議会の民主的運営を堅持することこそ議会制民主主義の最も重要な根幹であります。また、このためには何よりも委員会での十分な審議が保障されなければならないことも議論の余地のないところであります。特に今回の両法案のように、その内容が国の進路と国民の運命に重大な打撃を与える案件の審議には、とりわけ十分な時間と、それを可能とする議院の民主的運営が必要であることは当然であります。
政府・自民党などが、今回、平穏に継続中の委員会での審議を突如として打ち切り、両法案を本会議に上程して、しゃにむに採決しようとしていることは、どのような理由をつけようとも、議会制民主主義の根幹である議員の審議権と議会の民主的運営を踏みにじる暴挙と言わなければなりません。特にわが党は、両委員会での法案審議にはまだただの一分間も発言しておりません。私は、わが党の審議権を奪う今回の暴挙をきびしく糾弾し、強く反対するものであります。
政府・自民党その他は、両法案の議了のめどがつかないことを理由としております。しかし、議了のめどがつかないとは、別のことばで言えば、審議がまだ尽くされていないということではありませんか。いま、この議院運営委員会で、審議が尽くされていないことを理由として審議を打ち切るという奇怪きわまりないことが議決されようとしております。院の運営に携わる者として、狂気のさたと言わなければなりません。
政府・自民党その他は、本会議で補充質疑をするから審議を軽視しているわけではないと言おうとしております。しかし、会期が二十七日まであるのに、二十五日議了を前提条件として本会議で行なわれる審議が、十分な時間と論議の条件の保障を欠いたものとならざるを得ないことは明白であります。
それほどに審議を重視するというなら、なぜ委員会の審議を打ち切ろうとするのか。わが党は、このような暴挙に反対するとともに、定例日以外の審議も含めて会期一ぱい委員会審議を続けることを重ねて要求するものであります。
反対の理由の第二は、今回の措置が七月十七日の両法案の強行採決は有効であるとの不当な立場を基礎としているからであります。
政府・自民党などが、今回、国会法に照らして当然行なうべき委員会採決も行なわずに両法案を本会議に上程したのは、七月十七日の強行採決は有効であり、委員会採決はすでに行なわれたとの立場からきていることは言うまでもありません。しかし、七月十七日の採決なるものは、わが党がすでに繰り返し指摘してきたとおり、政治的に不当なものであるだけでなく、法的にも全く不法、無効なものであります。政府・自民党その他が、これを法的に有効であると主張する唯一の根拠は、委員長の審査報告書が出されているという点であります。しかし、この審査報告書なるものは、速記録によっても、質疑打ち切り動議、表決の動議が正式にはかられず、表決の確認もなされていないものであり、審査報告書を委員長に一任する議決もなされていないものであります。参議院規則に定められた採決に不可欠な要件を満たしていないものではありませんか。このことは七月十七日の採決なるものが、その適法性を主張する何らの客観的根拠を持たない不法、無効のものであることを明白に証明するものであります。委員長の審査報告書があるから有効だとする立場は、強行採決を行なった委員長が、みずからの犯した犯罪行為を隠して、有効であるとする鉄面皮なうその主張にくみするものと言わなければなりません。
今回の措置は、このような誤りに加えて、委員会質疑の再度の打ち切りと、委員会採決なしの本会議採決という事実上の強行採決を重ねようとする二重の暴挙と言わなければなりません。
言うまでもなく、法律は議会の採決によって成立し、国民はその法律によって拘束されるものであります。議会における採決が適法に行なわれるかどうかは、国民にとって絶対にゆるがせにすることのできない重大問題であります。わが党は、国民の名において、政府・自民党などの重ね重ねの暴挙をきびしく糾弾し、絶対反対の立場を明確に表明するものであります。
最後に、政府・自民党の強行採決に端を発した今回の事態は、わが党も参議院運営の民主的改革を目ざして参加してきた数年にわたる参議院改革の努力を台なしにし、見るもむざんな汚点を加えたものであります。わが党は、河野議長が今回の措置の主唱者となり、みずから標榜してきた参議院改革を土足で踏みにじったことに厳重に抗議して、私の討論を終わります。