高鳥修の発言 (災害対策特別委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○高鳥委員 去る九日発生いたしました伊豆半島沖地震による被害状況調査のため、十四日静岡県に派遣されました派遣委員を代表して調査の概要を御報告申し上げます。
派遣委員は、越智伊平君、金瀬俊雄君、米田東吾君、柴田睦夫君、広沢直樹君及び私、高鳥修の六名で、それに地元から高橋委員をはじめ木部議員、斉藤議員、栗田議員の御参加を得て、現地の実情をつぶさに調査してまいりました。
なお、調査は、参議院災害対策特別委員会の派遣団と同一日程となりましたことを申し上げておきます。
まず、今回の地震の発生状況でございますが、発生した時刻は、午前八時三十三分ころで、震源の深さは二十キロメートル、マグニチュードは六・八で、石廊崎では震度五、横浜、静岡、大島、館山などが震度四であり、震源が伊豆半島の南部近い真下で、浅い性質の地震であったため、伊豆半島南部は局地的に多数の家屋の倒壊、がけくずれなど大きな被害をこうむりました。
今回の地震は、この地域としては、最大級のもので、気象庁によれば、同程度のものが、繰り返し起こった例はないので、今回もそのような経過をたどるものと思われ、地震の規模といたしましては関東大震災の五十分の一、昨年の根室半島沖地震の三十分の一程度の地震であるとのことであります。
次に、被害の実情について申し上げます。
南伊豆町役場において、静岡県当局及び南伊豆町当局から被害の概況並びにその対策について、説明を聴取いたしました。
今回の被害は、十三日午後四時現在、人的被害としては死者二十名、行くえ不明者九名、負傷者は重軽傷合わせて七十四名、住家等の被害は、全壊百二十二尺半壊二百四十二一尺 一部損壊は非現住家屋を含めて千二百四十六戸となっており、その他道路の亀裂、不通四十七カ所、山くずれ、がけくずれなど七十三カ所、築港、中小河川等にも相当な被害が生じております。
これら対策といたしましては、九日午前十時十五分、県災害対策本部を設置し、また、同日午後零時四十五分、災害救助法を発動し、行くえ不明者、重軽傷者の救出を中心に救助活動などを行なった旨の説明がありました。
次に、静岡県並びに南伊豆町当局からの国に対する要望について申し上げます。
県からは、危険急傾斜地の掘さく、整地、道路、護岸堤防の構築などの緊急崩壊対策事業を一体的に実施できるよう所要の措置を講ずるとともに、特別の高率国庫補助等の財源措置を適用すること、南伊豆町を中心とする被災市町村について局地激甚の地域指定を行なうとともに、公共土木施設、農林水産業関連施設等にかかる災害復旧事業の早期着工ができるよう措置すること、その他、被害家屋の復旧資金の貸し付けについての特別措置、基幹道路の早期復旧、民宿その他の環境衛生等関係被災者に対する災害貸し付け、上水道施設及び簡易水道施設の災害復旧に対する高率な国庫補助、防災無線整備の促進、被災市町村に対する地方交付税及び国庫補助金等の早期繰り上げ交付や特別交付税等による措置などについての要望がなされましたが、その詳細につきましては、会議録に参照掲載願うことといたします。
南伊豆町長からは、遺体がどろの中に埋まっていると思うと毎晩安心して眠れない、早急に復旧を果たせば犠牲者の霊も浮かばれるものと思う、自衛隊の援助については、中木地区の発掘作業の終了後も引き続き他の危険個所を援助されたい、危険個所については、調査の上、二次災害の発生のないよう配慮されたい、罹災者に対する各種融資について特別な配慮をされたい、町財政の逼迫は必至であるので最大限の財政援助を願いたい。
以上の趣旨の要望がなされました。
次に、視察いたしました各地区の状況を申し上げます。
南伊豆は日本有数の温暖な観光地であり、三方に山、残る一方に静かな海、その間の狭い場所に家々が軒を連ねている典型的な漁村であり、民宿の村であります。この風光明媚でのどかな集落を一瞬にしてあの地震が襲い、甚大な被害を与えたのでありますが、多くの観光客が訪れたゴールデンウィークや夏の海水浴シーズンでなかったことが不幸中の幸いであります。
この地方では借入金による民宿経営者もおり、これら経営者は再建資金の調達に不安があるとのことでありますが、かりに民宿の再建ができたとしても、多くの客が訪れる夏場までに上下水道の復旧が間に合うかどうかが懸念されております。
山くずれにより二十七名にのぼる死者、行くえ不明者を出した中木地区では、視察いたしました当日にも遺体が発見され、われわれもさっそく安置所に参り弔慰を表しましたが、この地区では行くえ不明者の発見に重点が置かれていたため、復旧作業が進んでおりません。現段階では流出した土砂五万立方メートルの五分の三が三坂漁港に排土されており、その排土の処理も今後の問題の一つであります。
山の形も変わるほど激甚であった入間地区は家屋の損壊が全戸数の八割にも及び、南伊豆町一番の被害を受けております。これは地盤が砂地であることによるとも思われますが、死者が出なかったのは住民が早朝からの護岸工事に従事していたためといわれております。
次に、妻良、子浦地区を視察いたしましたが、妻良地区ではブロック壁の倒壊のほか、民宿の風呂場のタイルも破壊され、使用に耐えないありさまでした。
子浦地区は急傾斜地の直下に家屋が密集しているため、落石による被害が見られましたが、今後の星くずれが懸念されております。
次に、調査団の所感を申し述べたいと存じます。
今回の伊豆半島沖地震の特色として、局地的に南伊豆町の被害を大きくした原因は、地形がけわしく、かつ地質も第三紀層と火山岩でできており、もともと山くずれ地すべりを起こしやすい地域のところへ、直下型地震に見舞われた結果であるといわれております。
震源地が近く、かつ浅い、いわゆる直下型地震は、巨大地震に比べ、地震エネルギーは小さくとも局地的に大きな被害をもたらすこと、地殻変動などの前兆現象がつかみにくく、地震予知がむずかしいこと、逃げ出すのに精一ぱいなので避難行動に問題があること、耐震性のビルもその縦ゆれに弱いこと等が指摘されており、この地震が過密都市東京を襲ったらと一瞬りつ然とした次第であります。
言うまでもなく、大都市には自動車、ガソリンスタンド、工場群、地下街、ガス管、密集した木造家屋等々枚挙にいとまがないほどの危険物が充満し、二次災害としての火災の発生により、甚大な被害が予想されるところであります。
都市部における震災対策の急務が痛感されますとともに、今回の地震による山くずれの被害を目のあたりにして、山間部における震災対策の重要性を深く認識いたしました。
毎年山くずれによる災害は発生しており、先月二十六日、十七名の犠牲者を出した山形県大蔵村の山くずれは、いまだ記憶に新しいところであります。
これら山くずれ、がけくずれ対策の、抜本策としては、全国的に科学的土質調査を行なう等総点検を実施し、危険区域に警報器の設置や予防工事を講ずるとともに、危険区域の住民を一日も早く安全な場所に移すことが肝要であります。
新聞によると、南米ペルーの中部アンデス地帯で、大雨により地盤のゆるんでいた山が地震のためくずれ、ふもとの村落を押しつぶし、住民数百人が犠牲になったと報じておりますが、地形的、気象的に災害多発の宿命を持つわが国においては、つゆどきを控えて、このような複合災害の発生も憂慮されるのであります。
要するに、震災対策、災害対策の根本策は、海岸や山間部等の危険個所から安全な場所への住居の移転と、都市部における不燃化、防災都市の建設に尽きるわけであります。これは今後の災害対策の重要課題でありますので、今回の地震を教訓として、われわれ関係者は認識を新たに取り組んでいかなければならないと痛感している次第であります。
今後の見通しとして、大地震は続発しないだろうといわれておりますが、東海沖や房総半島沖等に巨大地震が発生しないとは保証できません。また、三原山、鳥海山などこのところ火山の噴火が頻発していますが、火山活動と地震との関連性の解明が急務であります。政府におかれては、観測体制の拡充強化をはかるなど地震予知に万全を期すべきであります。
今次災害対策としては、政府関係当局におかれては、被災地からの国に対する各種要望を最大限に尊重し、被災地の早期復旧と民生安定をはかられんことを切望いたします。行くえ不明者の早期発見、水、食糧、住居並びに生活必需品の確保、電話、道路、漁港の整備等が急がれることは申すまでもありませんが、特に災害救助法については、被災地の実情に即した運用をはかるとともに、基準単価を大幅に引き上げるべきであります。
また、損壊家屋の修復が急がれますが、最近の資材不足や高騰化のおりから、復旧資材の円滑な供給をはかるとともに、この地帯に多い民宿経営者は、既設借入金に加えて、金融引き締めに影響されているとのことでありますので、住宅復旧資金等の融通については、特段の指導がなされるべきであります。
今回の伊浜地区のように、電話が通ぜす、道路が遮断され、孤立被災部落が生じましたが、全国的に災害時に有効に作動する通信施設の完備と救援活動等に多大の活躍をしたヘリコプターの十分な機数の確保が望まれます。
また、落居地区や子浦地区等においては、今回の地震により大雨が降れば、山くずれの発生が憂慮される危険個所がありますので、政府並びに関係者においては、つゆどきを控えて、二次災害の発生しないよう、厳重なる警戒を要するとともに、早急に防御策を講じ、地域住民の不安を取り除くべきであります。
最後に、今回の地震における犠牲者の御冥福をお祈りするとともに、被災地が一日も早く復旧されんことを切望し、あわせて日夜救助作業に当たっておられる関係各位の御労苦に感謝申し上げて私の報告を終わります。(拍手)