吉田法晴の発言 (内閣委員会)

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○吉田委員 いま、言われました事件が起こってから云々というのは、今月号の雑誌に書いてある。本の中にはそれはございません。もう一ぺん読む必要はないと思いますが、「終戦後わたくしの生活環境は激変した。が、わたくしは楽しかった。三十になってたった一人で町をあるく楽しみをはじめて知ったわたくしは、運命のふしぎさをかみしめながら、だれにも気づかれずにコツコツと町をあるいてみたものである。」云々、これは歴史研究、特にメソポタミア文化についての勉強、オリエントの歴史を勉強するに至った経緯が書いてある。雑誌には、そういうことは書いてございません。
 そういう経過あるいは事件警戒ということもございますが、問題は、本質的に旧憲法時代の天皇を人間天皇として、象徴天皇としてどういうぐあいに実現をするか、この問題は大仕事だと思います。ところが、それを、いままでの考え、あるいはいままでの伝統でやられると、ともすれば、やはり旧憲法時代の天皇というものを想像をして、それに戻すような作用になるのではないか、こういうことを申し上げておるわけです。その一つとして、私は、旧憲法時代の天皇制復活への傾向があるのではないか、危険があるのではないかと考えるのですが、端的にあらわれております例を一、二引いて、御所見を承りたいと思うのです。
 ことばとしてあらわれておりますのは、大森空幕長が防衛大学で式辞を述べられた。これは昭和四十五年三月二十一日、防衛大学の卒業式において、学校長式辞として大森さんが言われた。短い文章ですから読みますが、「わが祖国の防衛は父祖の手によって立派に受け継がれてきました。そういう意味からすれば、自衛隊は旧陸海軍からその良い伝統と遺産とを引き継ぐべき立場にあります。旧軍人と自衛官との関係についても同じことです。嘗て本校には、旧軍人は先輩とは考えないという雰囲気がありました。陸士、海兵と、本校とは設立の経緯や教育方針等を異にしています。厳格な意味における先輩といえないかもしれません。しかし、最近においては、同じ使命につながる先輩、後輩としての親愛感が芽生えてきたことは当然のことながら喜ぶべき傾向であると私は考えます。諸君の目標である新しい時代の軍人像を考えるには、旧軍人像はどうであったかを知ることが大切です。明治以来終戦に至る間の軍人像を一概に論ずることは極めて難かしい問題ですが、それが明治十五年の軍人勅諭を離れて考えられないことは何人も異論のないところと思います。軍人勅諭には忠節、礼儀、武勇、信義、質素の五つの徳目が掲げられています。私は、これらの徳目は今なお軍人の基礎的資質であると考えます。」、こう述べられておる。これは、軍人勅諭があげられておりますし、軍人勅諭の中での精神といいますか、徳目でいまの自衛隊員を教育しようという気持ちがあらわれておるという意味で私は重要だと思うわけです。
 それからもう一つ、これは防衛大学での学長の式辞ではなくて、昭和四十七年、おととし十二月発行の防衛大学同窓会会報であります。「卒業生諸君に期待して」と海将石田捨雄氏が書いておられます。「去る五月十八日、私は唯一人の現役自衛官として、赤坂御苑における春の園遊会に、お招きを受け出席した。あらかじめ定められた御苑内道筋に沿い、招待された人達がお待ち申し上げる中を、天皇、皇后両陛下は島式部官長の御先導で、ゆっくりと、そしてところどころで被招待者にお声をお掛けになりながら、お廻りになった。陛下は、制服に身を固め緊張して挙手注目の敬礼をしている私の前にお立ち止りになった。島式部官長が、「海上幕僚長でございます。」と御紹介申し上げると、」、これから読み上げようというおことばをいただいた。そして感激して、これは私が一人いただいたことばでなくて、海上自衛隊だけでなくて、自衛隊全体に賜わったものだと考えるから、ここに書くと書いてある文章であります。おことばで、「隊員はしっかりやっているだろうね。」石田海将が「はい、隊員はみんな一生懸命やっております。」「防衛のことはいろいろ苦労があるだろうね。」「有難いお言葉をいただき感激に堪えません。お言葉を隊員に伝えたいと思います。」「士気を落さないようね。」「ありがとうございます。」ということばが、この文章の巻頭に載っておるわけであります。「そこで私は」、これは石田海将の自分のことばです。「そこで私はこの際次の二点を特に望みたい。それは、「術科の鬼になれ。」ということと、「真の愛情をもって隊員を導こう。」ということである。」と、その文章の精神をあらわしております。
 これらを紹介いたしますと、おことばをいただかなかったということになっておりますけれども、世俗に伝えられております増原防衛庁長官がおことばを賜わったという内容と通ずるものがあることを感じます。事実であるかどうかということは、私は、ここでせんさくしておるのではない。幹部自衛官が、幕僚長を含んで、総理大臣あるいは大臣が侍立をしているのかどうか知りませんけれども、直接天皇陛下にお目にかかっているという事実も聞きます。そうすると、昔の軍人勅諭で自衛隊の教育をしようという傾向が復活しつつあり、そして自衛隊のいわば最高責任者は、いまでいいますと防衛庁長官、それから総理大臣でございますけれども、やはり天皇の軍隊というものを復活しようという動きがあるのではないか、こういうことを心配せざるを得ません、三つのことばを通じて。
 そこを、私は問題にしておるわけでありますが、こういうことについて、これは軍人勅諭の復活あるいは教育勅語の復活だけでなくて、天皇のもとにおける自衛隊、軍隊が復活しておるのではないかということを心配するのは、これは杞憂でございましょうか。古い考えを持っておられます宮内庁の、先ほど申し上げました古い伝統、古い考えでもし宮内庁のえらい人たちが処しておられるとするならば、杞憂でないものになるのではなかろうかと考えるのですが、いかがでございましょうか。

発言情報

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発言者: 吉田法晴

speaker_id: 22988

日付: 1974-02-19

院: 衆議院

会議名: 内閣委員会