中村茂の発言 (本会議)
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○中村茂君 私は、日本社会党を代表して、国民生活安定緊急措置法案について、国民と消費者の立場に立って、反対の討論を行なうものであります。(拍手)
インフレは、政策の貧困による社会の病気であり、強者を潤し弱者を苦しめる体制的な差別であります。病気は正しい診断が必要であります。診察を誤れば生命を失うことになるからであります。インフレの病原を明らかにし、それに対応した処方せんをつくらなければ、病気をなおすことはできません。そのためには、社会を正しく診断する名医が必要であります。
田中総理は、診断のあやまちをおかそうとしております。インフレで国民が苦しんでいることを物価の異常事態と言い、物価暴騰の元凶は、日本列島改造という資源浪費の政策であり、日本をインフレ列島にしてしまったということを、なぜ国民の前に診断の誤りを明らかにしないのか。(拍手)これでは物価の安定をはかり、石油危機を乗り切ることのできるりっぱな、国民の納得のいく処方せんをつくることはきわめて困難であります。
世界の資本主義諸国が、その体制的矛盾を露呈し、危機的状況を深化させている中で、日本の国家独占資本主義経済はますます経済的矛盾を拡大させ、爆発的な物価の高騰、公害の拡大、資源の浪費等になって国民生活に襲いかかってきているこの事実、独占資本と政府・自民党は一体となって高度経済成長政策を推し進め、インフレの金融財政政策、公共料金の引き上げ、独占価格、管理価格の設定による高価商品の売りつけ、あるいは買い占め、売り惜しみなどの反国民的諸行動により、物価騰貴を進行させ、独占資本の利潤の増大と対外競争力の強化に全力を注いできた事実を見のがすわけにはいかないわけであります。(拍手)
現在進行しているインフレは、これまでいわれてきたような物価高、消費者物価の値上がりとは性質の違った悪性インフレに進行してきている事実であります。卸売り物価はまるで機関車のように消費者物価を引っぱり、ウナギ登りに上昇を続け、その卸売り物価の上昇率は、十一月、三・二%と急騰し、終戦直後の混乱期を除けば、わが国の歴史始まって以来の暴騰となり、これが十二月には六%に達するといわれております。卸売り物価は必ず消費物価に影響し、石油危機の追い打ちと相まって、高物価、物不足、不況の中のインフレーションとなることは必至であります。インフレと投機とギャンブルの渦巻く混乱の世相の中で、国民はいまほど不安と焦燥にかられているときはないと思うのであります。(拍手)
このような状況の中で、国民生活安定緊急措置法案の審議が続けられてきました。
わが社会党は、国民生活を守る立場から幾つかの野党四党修正案を提起したのでありますが、そのほとんどが解決されておりません。この際、この法案の問題点について指摘して、国民と消費者の皆さんの御理解を得るものであります。(拍手)
その一は、標準価格を決定する物資の選別も、価格の決定も、政府、すなわち官僚の手によって、産業界の資料に基づいて国民と消費者が不在の中できめられ、その結果は実質的な価格カルテルとなり、大企業の意向を反映した高い水準の高値安定価格になるおそれがあるからであります。(拍手)そして、その標準価格を業界の協力を得て守らせるということは、そのこと自身、官僚、産業界の共同行動が成立し、官産一体の、国民生活と消費者を無視した官僚統制に発展する危険が含まれていることを指摘しなければなりません。(拍手)
第二は、標準価格と特定標準価格の価格決定の基準に、利潤を加えて得た額として、独占と大企業の利潤確保を優先させている点であります。また、配当制限を考えているともいわれております。利潤と配当の確保を認めることになり、その結果は、労働者の賃金が経営者によって抑制されることは明らかであります。まさに、この利潤導入の政策は、所得政策への地ならしとしての役目を果たす結果になりかねないことに注意しなければならないと思うわけであります。
その三は、課徴金制度の取り入れであります。税金でも罰金でもないというこの制度は、公表するという社会的制裁と同じように、金で済むことなら何でもという悪徳商人には通用いたしません。有名無実になる危険性をはらんでおります。しかも、課徴金で得た収入は物価対策に使用するなどに至っては、全くナンセンスといわざるを得ないのであります。
その四は、生産、保管、輸入、売り渡しまたは輸送に関し勧告制を採用していることであります。操業短縮という美名のもとに行なわれる生産サボ、買い占め、売り惜しみなどの流通操作による物不足、情報操作による物価のつり上げなど、大企業、総合商社の悪徳商法に対しては、勧告、公表程度では対処できないことは、これまた明らかであります。(拍手)この点は、命令規定によって消費者保護の立場から安定供給を確保すべきであります。
その五は、割り当て、配給制の採用であります。この制度を採用する事態は、国民にとっても、その消費生活の面からも、経済、産業の分野からも非常事態であり、統制経済に道を開くことになります。その実態を緊急事態であるとか、運用は慎重にするということで政令にゆだねることはできない内容のものであります。国民の日常生活優先の原則に立って、国会の議決を経て実施することが不可欠の条件であります。(拍手)
その六は、この法案が実施になった場合、一番苦しむのは小売り販売業者であることであります。消費者の苦情を一身に受け、その上に販売費は一方的に切り詰められ、官僚の介入がきびしくなるということであります。抜本的な小売り業者の保護策が必要であることを銘記しなければなりません。(拍手)
その七は、このような国民生活に最も関係のある法案は、国民の深い理解と協力がなければ成果をあげることは困難であります。ところが、その配慮が全然ありません。官僚と産業界の共同行動で実施されるということであります。価格決定を含めて、国民の意見が十分反映できる民主的な審議会制度を取り入れるべきであります。価格決定の伴わない形だけの審議会では、官僚統制の歯どめにならないことは、これまた明らかであります。
その八は、公正取引委員会と経済企画庁で締結した国民生活安定緊急措置法の実施に関する覚書で、事業者または事業者団体と協力措置によってこの法律を実施することはカルテルを意味しないと一方的な覚書になっているが、みずからカルテル行為に介入することを意味しており、絶対に納得できないものであります。(拍手)
以上、八点にわたって問題点を指摘しましたが、いずれも法律の根幹に触れる問題であり、国民の立場に立った重要な課題であります。法は運用次第といわれるが、その運用が官僚と業者の協力関係で実施するに至っては、問題の本質である物価の安定をはかり、国民生活の真の安定と勤労に希望を持つ社会をつくることは困難であります。(拍手)
わが党は、これまで一貫して政府・自民党の独占資本擁護の政策に強く反対し、国民生活を優先し、実質的な生活向上をはかる政治を要求してきました。大資本と大地主の利益をふくらませる日本列島改造、浪費型路線をやめ、大型予算の縮小と公共事業費の削減、大企業への法人税増加、受け取り配当非課税など税制上の優遇措置の廃止、国鉄運賃、健保料金、消費者米価等、公共料金という名の大衆収奪の料金値上げの反対、独占価格や買い占め、売り惜しみのきびしい規制措置、流通機構の整備、独禁法の改正と公正取引委員会の強化、日本農業再建による農産物価格の安定等、国民生活の安定をはかるために必要不可欠な政策を具体的に提示して、その実行を主張してきたのであります。
政府は、本法案を制定する前提として、このようなわが党の正当な主張と政策を実施に移す必要があるのであります。そして、いま、石油危機、総需要抑制の名のもとに、いままでの政策の失敗を勤労国民に押しつけようとしております。
わが党は、国民の名において、高値安定、独占と大企業擁護、官僚統制に道を開く本法案について反対するものであります。(拍手)
最後に申し上げます。
いま政治にとって一番必要なことは、政府みずからが政治姿勢を正し、田中総理の決断と実行が独善と欺瞞の政治にならないよう警告して、私の討論を終わりといたします。(拍手)