荒舩清十郎の発言 (本会議)
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○荒舩清十郎君 ただいま議題となりました昭和四十九年度一般会計予算外二案につきまして、予算委員会における審議の経過及び結果を御報告申し上げます。
この予算三案は、去る一月二十一日に予算委員会に付託され、同月二十六日、政府から提案理由の説明があり、二十八日より質疑に入り、その後、公聴会、分科会を合わせ二十七日間審議を行ない、本日、討論採決をいたしたものであります。
まず、予算の規模等について簡単に申し上げます。
一般会計の予算額は、歳入、歳出とも十七兆九百九十四億円で、四十八年度当初予算額に比べ一九・七%の増加となっており、歳入のうち公債金収入は二兆一千六百億円で、歳入総額の一二・六%を占めております。また、特別会計は、今回新たに設けられる電源開発促進対策特別会計を含め、その数は四十二と相なっており、政府関係機関の数は、四十八年度と同様、十五であります。
次に、質疑の概要について申し上げます。
第一は、物価問題であります。すなわち、本問題については質疑が最も集中いたし、国民生活を守るという観点に立って、あらゆる角度から詳細かつ具体的に質疑が行なわれました。
まず、物価上昇の原因について、「物価の大幅な上昇をもたらしたのは、これまでの政府の財政金融政策の失敗により、国民の間にインフレマインドを定着させたこと、原油の輸入について、業界の情報に基づき石油危機と物不足をあおったこと、また、生活必需物資の買い占め、売り惜しみ、便乗値上げに対し、さきに制定された買占め売惜しみ防止法第五条の立ち入り調査も行なわず、行政の対応がはなはだしくおくれたことによるものではないか」との趣旨の質疑が行なわれました。
また、当面の対策について、「石油危機に乗じて不当な値上げをした石油製品、石油化学製品、その他生活必需物資等の価格は、高値安定とならないようにこれを引き下げさせるとともに、今後理由なく値上げしないように原価を公表すべきである。また、便乗値上げ等で得た多額の超過利得を国民に還元する措置を講ずるほか、公正取引委員会が価格の引き下げ命令をなし得るように、独占禁止法を改正してはどうか」との趣旨の質疑が行なわれました。
これに対しまして、政府より、「ここ二、三年来の経過を顧みるとき、引き締めるべき時期のおくれたことについては謙虚にこれを認める。石油の輸入量について予測の狂ったことは遺憾であるが、故意に物不足をあおった事実は全くない。原油の供給については、今後、政府の義務として、月別の輸入量とその価格を情報として国民に提供したい。生活必需物資等の買い占め等については、あらゆる法律を駆使し、立ち入り調査等もびしびし行ない、国民のために誠意をもって対処したい。石油製品の値上げには便乗的な面もあるので、その分の利益を吐き出させるようにするため、本年一月からの原油価格の値上がり分を製品価格に転嫁させないで、当分現行価格を据え置かせ、赤字経営を続けさせておるのである。その他の物資については、値上げの適否を検討し、不当なものは値下げさせるよう指導している。製品原価については公表することはできない。企業の超過利得の吸収方法については、政府において検討中であるが、できれば超党派による議員立法が望ましい。公正取引委員会の価格引き下げ命令は、ある程度の範囲内で行ない得るよう、独占禁止法の改正について現在検討しておる」との趣旨の答弁がありました。
物価問題については、以上のほか、物価安定の時期と、その際の物価水準、公共料金の取り扱い、行政指導による価格の改定と独占禁止法の問題、公正取引委員会の陣容の強化策等についても質疑が行なわれました。
特に、石油危機に乗じた商社の悪質な便乗値上げや、一部大手商社の海外法人等の利用による輸入価格のつり上げや脱税行為が指摘せられ、商社活動の反社会性が問題となりまして、政府に対し、「これら商社の悪徳商法に対し急速に規制措置を講ずるべきであり、また、商社に対する多額の銀行融資や商社の株式保有を制限すべきではないか」との趣旨の質疑が行なわれました。
これに対し、政府より、「商社の不当な行為に対しては、責任を明らかにし、厳重に取り締まっていく。また、脱税のないよう税の捕捉については万全を尽くしているし、悪質なものがあれば、法に基づき仮借なく公正に処置する。なお、商社に対する金融は、現在、特別のワクを設けて抑制しているが、最近、商社は金融的性格が強大となり過ぎ、弊害も生じておる。株式も借り入れ金で保有しているものが多く、行き過ぎと思われるので、制限する方向で検討しておる」との趣旨の答弁が行なわれたのであります。
次に、審議の過程で、売り惜しみ、便乗値上げ等について委員より具体的に指摘された問題等について、その実態を明らかにするため、企業の代表を招き集中審議を行なうこととして、理事会で意見の一致を見たのでありますが、その際、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党の野党四党は、出席を求める者を証人として喚問すべきであるというのに対し、自由民主党は、まず参考人として陳述を聞くべきであるとして、与野党間の意見が相違し、理事会において連日協議をいたし、その間一週間に及んでもなお意見の一致が見られず、予算委員長としては、理事会における、「本問題について早急に決着をつけ審議に入るべし」との多数意見をも考慮いたしまして、二月十五日、公聴会終了後、委員会を開会いたしましたが、自由民主党より、「企業代表を参考人として招き、意見を聴取されたい」旨の動議が提出され、採決の結果、動議は多数をもって可決されたのであります。これに対し、野党から予算委員長の解任決議案が提案され、十九日の本会議で否決されたことは、皆さまの御承知のとおりであります。(拍手)
集中審議は、以上の経緯をたどりまして、二月二十五日より二十七日まで三日間、大手商社、銀行、石油元売り、石油化学、家庭電器、合成洗剤、製紙業等の各社社長並びに業界代表ら二十三名を参考人として出席を求めて行なわれました。この結果、参考人より、「便乗値上げ、やみカルテル等の行為のあったことはある程度事実として認める。なお、これらの反社会的行為はまことに遺憾であり、これまでの超過利得は何らかの方法で消費者に還元したい。今後製品の値上げはしないよう極力努力するとともに、企業の社会的責任を自覚し、不法、不当な行為は再び繰り返さないよう社内及び業界に徹底させ、体質改善につとめていきたい」との趣旨の陳述がありました。
なお、この集中審議の結果にかんがみ、野党四党より、参考人のうち数名を証人として喚問したいとの強い意向が表明され、特に内閣総理大臣に対し、「過般の集中審議における参考人の陳述によって、物不足、便乗値上げ、行政と企業との癒着関係、企業代表者の社会的責任の欠除等が明らかとなったので、この際、参考人のうち、政府の答弁と食い違って陳述を行なった者、また、陳述に誠意の認めがたいと判断される者を証人として喚問し、事態の真相を究明したいが、所見いかん」との趣旨の質疑が行なわれ、これに対し、田中内閣総理大臣より、「公聴会以外の方法による異例の集中審議に対し、政府は深い関心を持って見守っていたが、大いなる成果があったと思う。特に、企業が社会的責任に目ざめた発言等は、政府としても、今後の行政運営上、幾多の指針を教えられた。参考人の陳述と政府の答弁との食い違いについて、政府には何ら違法行為はない。また、行政と業界の癒着は絶対にない。国政調査権の大きさについて企業も国民も評価したと思うが、参考人に出席を求める場合、あらかじめ質問事項を示し、事実を十分に述べられるよう配慮すべきではないかと感じられた。また、証人喚問等国会運営の問題は、国会自体できめるべきものと思う」との趣旨の表明がありました。
なお、過般の集中審議において出席した参考人のうち、十一名を証人として喚問するか、参考人として出席を求めるかについて、理事会で協議が整わなかったので、三月十一日の委員会で各党の意見を聴取した上、採決に付しましたところ、証人として喚問しないことに決定した後、石油連盟会長外二名を同日の予算委員会に参考人として出席を求め、石油の価格協定と通産省の行政指導、石油製品の値上げ等について事態の究明につとめたことを申し添えておきます。
第二は、社会保障についてであります。
「物価の著しい高騰によって深刻な影響を受けている生活保護世帯、年金生活者、心身障害者等の生活を守るため、政府はすみやかに対処すべきであるとし、生活扶助基準や福祉年金を大幅に引き上げるとともに、厚生年金、国民年金の物価スライドを、一年ごとではなく、物価の急激な上昇に見合うよう、少なくとも三カ月ごとにスライドさせる措置を講ずべきではないか」との趣旨の質疑が行なわれ、政府より、「生活扶助基準については明年度二〇%の引き上げを行なうこととしたが、総需要抑制という緊縮予算の中で精一ぱい努力したものであり、老齢福祉年金の五〇%引き上げも、これとの関連で措置した聾障害福祉年金、母子福祉年金の引き上げとあわせ考えるならば、相当の配慮をしたものといえる。また、年金のスライド制については、厚生年金、国民年金の受給者は、現在、合計約三百七十万人もあり、特に、厚生年金については、人により受給額がそれぞれ異なっておるため、改定の作業に約五カ月をも要するので、スライド制の期間短縮は事務的にきわめて困難であるが、なお検討してみたい」との趣旨の答弁がありました。
社会保障については、以上のほかに、一時金の支給、年金の通算、生活保護法の改正、医療基本法の制定等についても質疑が行なわれました。
第三は、放射能測定についてであります。
すなわち、アメリカの原子力潜水艦入港に伴う放射能の測定を、政府は財団法人日本分析化学研究所に委託しているのでありますが、その測定がでたらめで、分析結果が捏造されている事実があるとして、政府の責任が鋭く追及されたのであります。
これに対し、科学技術庁長官より、「昭和四十七年度における原子力軍艦寄港時の放射能調査につき、本年一月二十九日及び三十日の両日にわたり立ち入り検査を行なった結果、原子力軍艦寄港地で採取された試料の機器分析は、実際の試料を測定しないで既存の波形図をコピーしていたものが約三〇%、化学分析についても、最終報告値をつくり上げたものが少なくとも四〇%あることが明らかとなり、放射能監視体制の信頼性について国民に多大の疑惑を抱かしめたことはまことに遺憾であり、今後かかる事態が二度と再び生ずることのないよう万全の体制をとることとしている」旨の発言があったのであります。
総予算に関連しては、以上のほか、経済見通しと予算の修正、銀行法の改正、インフレと預貯金の目減り対策、企業会計のやり方と課税問題、国際収支、農産物の需給問題、エネルギー政策、中小企業対策、土地対策、国有林野の常用作業員の処遇、雇用保険、自衛隊の精神教育、海外経済協力、日韓大陸だな協定、地方財政等、その他国政の各般にわたってきわめて熱心に質疑が行なわれましたが、詳細は会議録により御承知を願いたいと存じます。
本日、質疑終了後、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党の四党共同提案による、予算三案を撤回のうえ編成替えを求めるの動議が提出され、趣旨説明が行なわれたあと、予算三案及び四党共同の動議を一括して討論に付しましたところ、自由民主党は政府原案に賛成、四党共同提案の動議に反対、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党は、四党共同提案の動議に賛成、政府原案に反対の討論を行ない、採決の結果、四党共同提案の動議は否決され、予算三案は多数をもって政府原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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