澁谷直藏の発言 (本会議)
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○澁谷直藏君 私は、自由民主党を代表して、昭和四十九年度予算三案に関し、政府原案に賛成し、四党共同提案の組み替え動議に反対の討論を行なうものであります。(拍手)
一九七四年は、日本にとってきわめてきびしい試練の年であります。異常な物価の上昇は、世界的規模で荒れ狂い、中東戦争に端を発した石油の問題は、世界の経済秩序を大きな混乱におとしいれました。また、ローマクラブの警告にも明らかなように、人口の爆発的増加と世界的な食糧需給の逼迫は、穀物相場の暴騰という新しい脅威をもって人類を襲いつつあります。
これらの徴候は、いずれも深刻な要素をはらんだ世界史的な変化を示すものであり、まさに世界はいまや激動と混乱のときを迎えたといわなければなりません。
われわれは、このような世界的な展望の中で、冷静にみずからの進路を探究し開拓しなければならない重大な選択のときに立っているということであります。
政治の任務は、言うまでもなく、与えられた条件の中で一定の方向づけを行なうことにあります。激動と混乱の時代にとって最も重要なことは、この政治による正しい方向づけが行なわれるということであり、この正しい方向づけという政治の本来の機能が正しく適切に行なわれるかいなかによって、一国の運命は大きく左右されるのであります。この意味において、今日、政治に課された責任はまさに重大であります。
言うまでもなく、一国の予算は、当該年度における一切の諸問題に対する政府の総括的、集中的解答であります。政府が、いかなる問題意識を持ち、いかなる政治姿勢でこの問題と取り組んだかが問われなければなりません。
しからば、一九七〇年代を通じて日本が直面している最も重要な問題は何でありましょうか。
私は、第一に物価、第二に石油を中心とするエネルギー資源問題、第三に食糧、第四に公害問題であると考えます。これらの諸問題は、いまや世界的規模で人類の前に立ちふさがり、その解決を迫っているのであり、この解決なしに人類の安定と平和を確保することは不可能であります。
特に、わが国は重要な資源の大部分を外国に依存しており、また、高度に発達した工業国家として、以上申し上げた諸問題の解決は一そう緊要なものがあることは言うをまちません。いまこそわれわれは、われわれの前進をはばむこれらの諸問題に挑戦し、これを解決することによって、確固たる基盤の上に立つ新しい日本をつくり上げなければならないのであります。(拍手)
昭和四十九年は、その意味において、安定した基盤の上に立つ高度福祉国家の建設を目ざす新しい出発の年としなければならないというのが、われわれの認識と決意であります。(拍手)
以下、私は、予算を通じ、政府がこれらの重要課題を解決するためにどのような対策を用意したかを明らかにしながら、私の見解を表明したいと存じます。
まず第一は、物価の問題であります。
引き続く異常な物価高に加えて、石油問題はさらに火の手を注ぎ、わが国の物価上昇はまことに憂慮すべき状態にあることは言うまでもありません。物価の安定こそは、わが国が当面する緊急最大の課題であります。この緊急課題に対し、政府は総需要の抑制を基本として予算を編成し、財政、金融施策の運営にあたっても、その眼目をこの一点にしぼる態度を明確にしておりますことは、適切な対策として心から賛意を表するものであります。(拍手)
すなわち、一般会計の規模は、前年度に比べて一九・七%の増加に押えております。これは前年度の二四・六%、前々年度の二一・八%に比べ、その増加率は非常に低いのであります。
また、財政投融資計画の伸びは一四・四%でありまして、前年度の二八・三%、前々年度の三一・六%に比べ、その半分または半分以下の数字であります。
次に、国債の発行額も前年度より減らし、これにより公債依存度を前年度当初の一四・四%から一二・六%に低下させております。また、物価対策上の配慮から、すでにきまっていた消費者米価と国鉄運賃の引き上げを半年間延期することにいたしたことも、政治的大英断として高く評価するものであります。(拍手)
さらに、これらの施策と並行して、いわゆる売惜しみ防止法、国民生活緊急措置法、石油需給適正化法等の適切果敢な運用が進められております。これらの施策の総合により、私は物価騰貴は漸次鎮静するものと期待しており、現に、最近物価頭打ちの芽が見え出してきていることも事実であります。
物価問題は、世界各国共通の難問題であり、特に、資源のないわが国は、石油をはじめ、食糧、繊維、木材等の重要物資を大量に外国に依存しており、しかも、これらの物資の輸入価格が、わずか一、二年の間に二倍あるいは二倍以上に暴騰しておるのでありまして、いわゆる輸入インフレは日本列島を直撃しておるわけであります。これがわが国の異常な物価騰貴の最大の元凶となっていることも明らかな事実であります。さらにまた、近く行なわれる石油製品の大幅引き上げ等を考えるとき、物価問題解決の道は依然としてきびしいものがあることを自覚しないわけにはまいりません。
このようなきびしい環境の中で、物価対策のためにあらゆる施策を総合的に推し進めている政府に、さらに一そうの御努力を願うと同時に、これら政府施策の根幹となっている総需要抑制という予算の考え方に全面的に賛意を表するものであります。
以上が、私の政府原案に賛成する第一の理由であります。
第二は、石油を中心とするエネルギーの問題であります。
産業及び国民生活にとって決定的重要性を持つ石油の九七%を外国に依存しなければならないところに、わが国の運命的ともいうべき弱点があるわけであります。しかも、外国の石油の産出量も有限であることを考えるとき、われわれは、在来資源の活用に加えて、いまこそ石油にかわる新しいエネルギーの開発に全力を傾けなければなりません。その対策としては、一、石炭の見直し、二、水力電気の開発、三、原子力発電の開発、四、地熱発電、五、太陽熱を利用するサンシャイン計画、最後に、人類永遠のエネルギーといわれる核融合の開発がこれであります。これらの研究開発が今後成功するかいなかにわが国の命運がかかっているといっても過言ではありません。私は、政府がこのような認識に立って、日本の卓越した頭脳を動員し、必要な研究費を惜しみなく投入することによって、この問題の解決をはかられることを強く要望するものでありますが、幸いに、政府はいち早く本問題の重要性を認識され、四十九年度予算において、新規を含む約七百億円の予算を計上して、この問題解決への確固たる方針を明示しておるわけであります。(拍手)
以上が、私の政府予算に賛成する第二の理由であります。
第三に、食糧問題であります。
世界の人口はいまや三十八億人に達し、これに対応する食糧の供給力から見ると、すでに地球の定員はオーバーしているとすらいわれております。人口と食糧の問題は、今後人類の生否にかかわる最重要な問題であります。
このような世界的環境の中にあって日本の食糧体制を考えるとき、われわれはいまさらのごとく事の重要性にりつ然とする思いを禁じ得ません。主食である米だけは自給できますが、小麦、大豆、飼料等については、その大半を外国に依存しているのが現状であります。このような不安定の体制から脱却して、国民の生存をささえる最低の食糧を自給する体制を整備することは、まさに緊急焦眉の課題であるといわなければなりません。政府はこの点に着目され、昭和四十九年度予算において、小麦、大豆、飼料作物に対する新しい補助金を含む約四千二十億円の予算を計上して、新しい食糧自給体制の確立を目ざして出発することにいたしております。
以上が、私の政府予算に賛成する第三の理由であります。
第四に、公害についても、政府は総額三千四百二十億円の予算を計上して、国民生存の脅威である公害の防止、絶滅に懸命の努力を傾けております。
これが、私の政府予算に賛成する第四の理由であります。
さらに、初年度一兆四千五百億円に及ぶ画期的な所得税の減税の断行、緊縮予算の限られたワク内で、恵まれない人々に対する社会保障関係費の大幅な増額は、いずれも時宜に適した施策として賛意を表するものであります。(拍手)
これが、私が政府原案に賛成する第五の理由であります。
以上、私は、予算を通じ、政府が一九七〇年代の最大の課題である物価、資源、食糧、公害問題の解決のため、断固たる決意をもって取り組んでおられることを確認いたしました。私は、この政府の決意と施策を高く評価し、さらに一そうの努力を傾注されることを要望して、政府予算案に全面的に賛意を表するものであります。
次に、私は、野党四党提案の編成替え要求の動議について申し上げます。
提案の内容を見ますると、世間受けをねらった安易な人気取りに終始し、政策的な深い省察を欠いているのみならず、第一、肝心の金額の明示がありません。予算は、言うまでもなく金額の積み上げであります。これでは、まじめな予算論議の対象とはなり得ないのであります。この種の重大な提案に際しては、従来からの野党各党の伝統的なずさんな態度を脱却して、いま少しく実現可能性のある具体的なものに改められることが望ましいと考えるのであります。(拍手)この点、野党四党の真剣な反省を切に要望します。
右の理由により、野党四党の提案については賛同することができません。
以上をもって、討論を終わります。(拍手)