田中寿美子の発言 (社会労働委員会)
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○田中寿美子君 ただいま藤原先生のために超党派の感謝決議をして、ちょっとしんみりしたところでございますけれども、私は、いま議題になっております雇用保険法案に対しましては、もう全く反対の立場から納得いくまで御質疑申し上げたいと思いますので、大臣よろしくお願いします。
雇用保険法案ですね、衆議院のほうから修正されてまいりました。で、その修正で、ある程度の、まあ、いわゆる平ったいことばで言えば物取りが原案よりはできた。ですけれども、その修正そのものに私は非常な疑問を持っております。それ以上に一番疑問があるのはこの制度そのものの非常な変革、失業保険法の非常な変革に対して疑問を持っているわけなんです。
私の見ますところでは、今回の修正は、失業保険の制度、これは世界じゅうどこの労働者もみんな持っている基本的な権利だと思いますが、その失業保険の制度ですね、根本的に変更する方向に向かっているということ、つまり失業保険の場合は失業をした労働者の生活の安定を保障するというのが目的なんですね、ところが失業の救済じゃなくて雇用政策のほうへスイッチをずっと入れてしまっている、そのために名称も雇用保険法というようになったわけなんですね。私はこのことを非常に重大だと考えているわけなんです。これまで、たとえば労働省側が失業保険になじまないとおっしゃっていた出かせぎ者への給付、あるいは結婚とか退職とか出産とか、看護とか育児とかいうことを理由にしてやめていく女子労働者のまあ離職手当的な給付に次第に失業保険そのものを変えてきた、つまり失業対策よりはその性格を、幅を広げてきたということは、労働省の失業保険行政のやり方そのものに責任があったものなんですね、それは日本の資本が要求しておりますところの労働力を確保していくためには、季節的な循環的な労働力が必要だということで出かせぎ労働者を引っぱり出しているし、また短期でわりあいに早く回転するところの女子労働者というのを日本の産業の発展の上で利用してきたわけなんですから、それに対する一つの恩恵的な給付みたいに失業保険を使ってきている、そういう政策をとっておきながら、女子労働者は結婚してやめるのに失業保険をもらう、これは不正受給であるというようなことを宣伝したり、それから出かせぎ労働者は三%の掛け金で三〇%の給付を受け取っているというようなことをPRして、そしてこの保険法案が出された当時、ほとんどの新聞の論調がそれにそっくりそのまま乗ぜられてきている。しかし、これを、こういう労働の形態を要求してきたのは日本の資本そのものでございますから、そして、それをそのように失業保険のあり方を変えてきたのも労働省の政策であった、政府の政策であったんです。そこへさらに諸外国でやってないようなこと、つまり雇用改善だとか聴力開発だとか雇用福祉という、雇用対策をですね、もう過去にすでに失業保険制度の中ですっかり入れ込んできているわけです。つまり失業保険の掛け金が毎年黒字になる、徴収した料金よりも給付金のほうが少ないから、毎年々々黒字になって、その残った分は剰余金として財投の資金運用部資金に預託してきている、もうこれはすでに四千二百三十億、今年度の、四十九年度の終わりには五千億にもなろうとしているほど積み立ててきていく。そこで、それを担保にして雇用促進事業団に融資をして、そうして雇用対策を進めてきた、つまり失業保険の性格そのものを事実上曲げてきているわけなんですね。こういうふうに事実上失業保険金の積み立てた金を流用してきた、使ってきたというその実態を今回の法案改正で認知しようと、そういう私はやり方だと思うのですね。ですから、たくさんの矛盾をはらんでいるのに、だから、失業保険ということを言ったでは非常な矛盾が出てくるから、雇用保険法というわけのわからない名前の法律に変えてしまおうとしているわけです。
ですから、私はこれから以下順を追って詳しく質問してまいりますけれども、現行の失業保険法の第一条の目的ですね、これは、「失業保険は、被保険者が失業した場合に、失業保険金を支給して、その生活の安定を図ることを目的とする。」と、非常に明確に書いてある。ところが、今回の雇用保険法の目的というのは、「雇用保険は、労働者が失業した場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進し、あわせて、労働者の職業の安定に資するため、雇用構造の改善、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進を図ることを目的とする。」、たいへん幅を広げたわけですね。労働者が失業したときにその生活を守るということのほかに、この後段に書いてあるような行政が必要なのはあたりまえのことです。ですけど、これは失業保険とは異質のものであると私は思っておるわけです。それを合わせて、いま完全雇用の状況にあるから、だから失業保険金はますます黒字になっていく、そこで、それを使って雇用対策をしていこうという考え方、これはもう過去に実績としてそれがある。中身については、私はまたあとで触れますけれども、最初に、そういう点で非常にこの雇用保険法案というのは、これまで失業したときに労働者が保障されるべき労働者の基本的な権利をくずしていって、そして、国や企業が持つべき責任を、そっちのほうに金を流用していく、こういうことになる。この点を私は最初に指摘をしておきます。きっと労働省のほうは、いや今度は、千分の三は全部三事業に充てる、千分の三は事業だけが負担しますよと、そういうふうにおっしゃるだろうと思います。私は、との点についても非常にたくさんの疑問点、ごまかしがあると思っております。そういう意味で、本来雇用対策として労働省が、政府がやらなきゃならないこと、それから企業のほうがやらなければならない義務、そういうものは、大いに私はもっと発展さしてほしいと思うのです。ですけれども、それを失業保険と一緒くたにして、失業保険の制度をくずしていくということに対して非常に反対しているわけなんです。それで、私は、なぜこういうような法案が出てくるようになったのかということをいろいろと考えてみますと、どうも労働行政のあり方に問題点があるというふうに思うわけなんです。それで、大臣、一体いま労働行政の最重点をどこに置いていらっしゃるのかを最初にお伺いをしたいと思います。なぜ、こういうふうな、つまり本来労働省が設置されたのは、労働者の権利を守るためにできた。企業だとか産業のほうの利益は、ほかに通産省もあるし、いろいろな機関があるわけです。それなのにこういうふうになっていくのには、労働行政そのものに変化が起きているのじゃないか、そういうふうに思うわけなんですね。ですから、労働大臣は、いま労働行政は何を一番重点にしていらっしゃるのかということを御説明願いたいんです。