鹿島俊雄の発言 (本会議)

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○鹿島俊雄君 ただいま議題となりました昭和四十九年度予算三案につきまして、予算委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 昭和四十九年度予算は、物価の異常な事態を克服し、経済の正常化をすみやかに達成するため、総力をあげて総需要の抑制につとめ、予算及び財政投融資計画を通じ、その規模を厳に抑制するとともに、機動的、弾力的な運営を行なうことを基本方針といたしております。
 予算内容の詳細につきましては、すでに福田大蔵大臣の財政演説において説明せられておりますので、これを省略させていただきます。
 これら予算三案は、去る一月二十一日国会に提出せられ、委員会におきましては、同月二十八日大蔵大臣より提案理由の説明を聴取、三月十二日衆議院からの送付を待って、翌十三日から審査に入りました。その後本日に至るまで委員会を開くこと二十一回、その間、二十八人の参考人の出席を求めて物価問題に関する集中審議を二日間、公聴会を二日間行い、また、分科会を四日間開き、慎重審議を重ね、本日、討論採決をいたしたものであります。
 以下、委員会におけるおもな質疑応答について、その要旨を申し上げます。
 最も多く論議されましたのは、いわゆる石油危機をめぐる諸問題でありまして、国際政治外交、資源、経済金融及び物価政策など、あらゆる角度から熱心な質疑が行なわれました。
 まず、石油危機は量の問題から価格の問題に移った観があるが、政府はどう見ているか。原油の四十九年度輸入量をどのように見通しているか。今後のエネルギー政策の基本をどこに置こうとしているか。石油危機が続く中で、産業構造の転換にどのような展望を持っているのか、などの点について質疑がありました。これに対して、田中内閣総理大臣及び関係大臣より、石油問題は確かに価格の問題へ移行しつつあるが、量の問題もまだ流動的で必ずしも完全に解決したとは考えていない。四十九年度の輸入量については、不確定要素が多いが、大体二億七千万キロリットル程度を見込んでおり、総需要の抑制や節約などにより成長率が落ちるので、需給が見合うものと見ている。なお、国際収支を考えると、たとえ輸入量の増加が可能な状態になったとしても、価格の面からの制約が生ずる。いずれにせよ、供給を確保することが一番大切なので、量、価格の両面を考慮に置きながら内外情勢の推移を見きわめて行政を進めていきたい。エネルギー政策については、当面の事態処理の問題としては、DDオイルとメジャーズからの輸入確保の問題国際的調和を乱さない範囲内での産油国との長期契約の問題、民族系と外資系による価格落差の調整などがあり、長期的な政策としては石油に片寄ったエネルギー源を水力、石炭、原子力、太陽や地熱エネルギー等に分散させるとか、産業構造や公害との関連とか、石油会社の企業形態の望ましいあり方などいろいろあるが、これらの長期的展望については総合エネルギー調査会の答申を待って総合的に検討していきたい。産業構造の転換については、今回の石油危機によって日本経済の脆弱面が遺憾なく出てきたことを教訓として、今後は付加価値の高い省エネルギーの知識集約型産業構造への転換をはかる必要があるが、当分の間は重化学工業を基盤にしつつ順次切りかえていくべきであると考えている、との答弁がありました。
 次に、物価政策につきまして、政府はかねてから物価対策に短期決戦を唱えてきたが、そのねらいは何か。石油製品価格の引き上げや近く予想される電力、私鉄料金の値上げなどを考えれば、夏ごろまでに物価が鎮静するどころか、第二の大波が来る心配のほうが大きい。また、かりに短期決戦が成功したとしても、これを物価凍結解除後の長期安定へどう結びつけていくつもりか。物価が高値横ばいで鎮静せず、不況が深刻化した場合はいかなる方策をとるか、などの質疑がありました。これに対して、政府側より、今日の物価情勢は一刻の猶予も許されない異常な事態にあるので、多少の摩擦を恐れることなく、きびしい総需要抑制政策をとって混乱状態を一日も早く乗り切ろうというのが短期決戦のねらいである。今日では物価安定の法律的裏づけも政府に与えられているので、指導価格の設定、価格の凍結及び値上げの事前承認制など的確な運営をはかると同時に、総需要抑制策を進めることによって、すでに先高、仮需要といった空気は鎮静し、石油危機による物価の水ぶくれ部分は抜かれつつあり、緊急対策は七、八割方達成されたと思うので、夏ごろまでには安定的な状態になると確信している。短期決戦で異常事態を乗り切ったあとの物価の見通しとしては、水抜き作戦で鎮静化する一方で、春闘による賃上げや電力料金とか、鉄道運賃の改定など、コストアップ要因もあるので、下半期にはこのプラス.マイナス分が調和され、価格上昇を踏まえた新しい価格体系が形成されることになる。その時期以降においては、海外要因は押えられないが、国内要因については総需要抑制策を堅持することによって物価の安定は定着していくものと考えている。不況状態になって物価が鎮静しないときは、ちゅうちょなく物価対策を重視する。中小企業問題とか連鎮倒産などには個別対策で処置し、物価安定の見通しがつくまでは総需要抑制の姿勢をくずすべきでないというのが基本的姿勢である、との答弁がありました。
 また、石油価格の引き上げに関連しまして、新価格の決定に至った経緯、新価格の一般物価に及ぼす影響、行政指導による凍結価格をいつまで守らせ、また標準価格へはいつ移行する考えか、などの質疑がありました。これに対して政府側より、新価格の決定にあたっては、物価安定策を推進するという前提のもとに、二分の一平均法というきびしい水準できめた。値上げ幅は国際水準と物価政策を考慮して最小限にとどめ、その際、石油企業の過去の便乗利益を全面的に吐き出させるとともに、内部留保の処理等、国民感情に合致した石油企業の自粛と協力をまず求めることを基本的な考え方とした。新価格は、いわば石油業界も、政府も、国民一般もともに苦労するという意味合いのもとで決定されたものである。なお、輸入価格や為替相場の変化によって値下げできるときはすみやかに引き下げ、上がる場合には行政指導により、できるだけ先に延ばす考えである。石油製品価格の引き上げにより、一応卸売り物価を一%ぐらい押し上げるものと予想されるが、卸売り物価はすでに落ちつきを見せつつあるので、企業努力や先取り利益の吐き出し、総需要抑制政策の推進等によって吸収できるよう努力する。石油製品の新価格は、一年ぐらい何とか持続したい。生活関連物資等の価格凍結も夏ごろまでと理解してもらってよい。しかし、凍結解除により物価暴騰のおそれがある場合には解除しない方針である。標準価格への移行時期についでは、当面とりあえず行政指導で対処し、国際情勢や原油価格の見通し、需給関係などの影響等も考えて、なるべく早く標準価格に移行する考えである。いずれにせよ、統制経済を行なうつもりはないので、国家権力の介入による物価の統制は、できる限り幅狭く、しかも期間は短いほうがよいと思っている、との答弁がありました。
 これらの物価問題は、国民が当面する最重要課題であることにかんがみ、四月二、三日の両日、総合商社、全銀連、経団連、石油及び生活関連物資のメーカーとその団体、及び学識経験者、消費者側の代表並びに政府側担当官の出席を求め、特に集中審議を行ないました。なお、民間出席者の資格を参考人とするか証人とするかについて、与野党間に合意が得られなかったため、委員会で討論、採決を行ない、参考人とすることに決定した次第であります。
 物価集中審議の内容は、広範多岐にわたり、現代インフレの性格と対策、流通の近代化、企業のもうけ過ぎと社会的責任、原価公開の是非、行政と業者の癒着、天下り人事など基本的な問題をはじめ、個々の具体的問題に触れる論議が行なわれました。石油危機につきましては、石油会社のカルテル行為、及び公正取引委員会の勧告応諾後に取り消した事情、石油企業の経営内容、新価格平均八千九百四十六円決定のいきさつとこれに対する評価、石油輸入量の見通し、メジャーズ対策、民族系会社のあり方などに質疑が集中し、また、物価対策につきましては、ゴムタイヤ、ビニール、繊維原糸、洗剤、砂糖、飼料などについて行政指導の内容が具体的に取り上げられ、指導価格と標準価格、末端価格に対する行政指導のあり方、値上げに際しての仕切り価格と小売り価格の関係、問屋を利用したメーカーの流通支配などについて質疑が行なわれました。このほか、商社や金融機関の業務拡大に対する規制措置、便乗値上げや為替差益の社会還元、為替投機行為の不当性、住宅ローンのあり方、預貯金の目減り防止策、輸入牛肉をめぐる諸問題配合飼料の安全性、畜産振興事業団の調整金、手数料などについても質疑が行なわれました。
 予算審議の過程におきましては、以上のほか、今後の経済運営をどう行なうのか。インフレ犠牲者への対策、特に年金受給者、預貯金の目減りに対する補償など弱者救済について真剣に検討すべきでないか。石油危機を利用して不当利得を得た企業に対して融資の規制を行なうべきではないか。春闘は重大局面を迎えているが、政府はいかに収拾する考えであるか、との質疑に対し、政府側より、新価格体系が形成されたあとの経済運営は、先進九カ国の水準プラスアルファーの成長率を目安とし、五十一年から十年間の新計画をつくる必要がある。弱者救済には熱意を持っており、年金受給者に対する支給時期のタイムラグをできるだけ短縮するよう検討している。預貯金利子の引き上げは影響する面が多いので苦慮しているが、六月のボーナス期の段階で何らかの方法を考えてみたい。反社会的行為をなしたものに対し、政府関係金融機関等からの融資を制限することも一つの方法であるが、その場合基準なくして制裁すれば権力乱用になるので、目下ルールづくりに専心している。春闘の解決について政府は鋭意努力してきたが、本十日臨時閣議を開き、ゼネストの中止を要請するとともに、三公社五現業等の労働基本権問題に対処するため向こう二年間に結論が出ることを目途に関係閣僚協議会を設置することにした、との答弁がありました。
 このほか、昭和四十九年度予算は、はたして転換期に対応できる内容を持っているかどうか。総需要の抑制といいながら財政投融資計画の放漫な運用によってしり抜けになるおそれはないか。教育はいまや質的な面での抜本的改善が急務とされているが、これからの教育指導原理をどこに置くか。また、教育者のあり方、教員の養成、国立大学の管理体制、大学入試制度、大学の格差是正、私学への助成、大学臨時措置法廃止後の措置、週休二日制などについてどのような基本的姿勢を持っているか。畜産は飼料の高騰で自殺者が出るほどの危機に直面しているが、どのような対策を用意しているか。また、農政はネコの目のように変わるが、食糧の自給率向上についての基本的な考え方を聞きたいなど、当面する重要問題について質疑が行なわれ、それぞれ関係大臣より答弁がありました。
 質疑は、さらに、政府の経済見通し数値の整合性、国際収支の前途、公債及び租税政策の今後のあり方、地方財政をめぐる諸問題、公共事業の繰り延べと中小企業対策、経済社会基本計画の改定、沖繩振興開発計画、公害対策と企業のモラル、独占禁止法の強化、地価対策、原子力発電の安全対策、資源外交の内容とその方向、日ソ平和条約及び日中航空協定締結の見通し、政治献金など、国政全般にわたりましたが、その詳細は会議録により御承知願いたいと存じます。
 かくて、本日をもちまして質疑を終局、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して小野委員が反対、自由民主党を代表して嶋崎委員が賛成、公明党を代表して矢追委員が反対、民社党を代表して木島委員が反対、日本共産党を代表して須藤委員が反対の意見をそれぞれ述べられ、採決の結果、昭和四十九年度予算三案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上御報告申し上げ。(拍手)

発言情報

speech_id: 107215254X01719740410_003

発言者: 鹿島俊雄

speaker_id: 34033

日付: 1974-04-10

院: 参議院

会議名: 本会議