小野明の発言 (本会議)
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○小野明君 私は、日本社会党を代表して、昭和四十九年度予算三案に対し、反対の討論を行ないます。
日本経済の現状は、田中内閣の相次ぐ経済政策の失敗によって、卸売り物価は対前年比上昇率で三七%、消費者物価は同じく二六%、国際収支は年間百億ドルをこえる赤字、GNPの成長率は名目で三七、八%という高さにあるのに対し、実質の成長率は五、六%という異常な状態にあります。このような経済状態のもとにあって、企業は相次いで便乗値上げを行なっているのに、政府は何ら有効な規制策をとらず、国民生活はインフレと物不足に悩まされ、年金生活者や働く能力を持たない低所得者は、物価の高騰によって日用品さえ満足に買えない状態にあります。経済的強者と経済的弱者の差が今日ほど開いたことはなく、社会的公正が今日ほどそこなわれていることはありません。
このような状況を前にして、政府は、物価対策や国民生活に対し何ら有効な手を打ち出せないばかりでなく、これをすべて石油危機を中心とする海外要因のせいにしようとさえいたしております。しかし、日本経済が今日のような状況になった根本の原因は、田中内閣の列島改造論をはじめとする経済政策の失敗と、国際収支の黒字による過剰流動性対策の失敗、並びに円切り上げ以後の財政金融政策の野方図な拡大による調整インフレ政策にあることはすでに周知の事実であり、石油危機はこれを加速させたにすぎないことは、あらためて指摘するまでもない明白な事実であります。(拍手)
田中総理は、昨年来、たびたび予算委員会の席上で、経済政策に失敗したときは出処進退を明らかにすると言明をしておりますが、いまだに政治責任を明らかにしていないことは、きわめて遺憾であります。申すまでもなく、日本経済の当面する最大の課題は物価問題の解決であり、そしてまた、国民生活の安定や福祉をいかにして確保するかということと、及びこれによって生じた社会的不公正をいかにして是正するかにあります。したがって、財政の役割りは、財政支出を通ずる総需要抑制の機能や、租税政策、公債政策等、財政の持つ政策手段を通じ、これらの政策課題にいかに対処していくかにかかっております。しかるに、昭和四十九年度予算の内容を見ると、その対処策はきわめて不適切であり、不十分であり、われわれのとうてい賛成できるものではありません。
以下その理由を申し述べます。
その第一は、財政支出と物価対策との関連であります。
総需要抑制は物価対策の基本であり、したがって、財政面から総需要抑制策をとらなければならないことは言うまでもありません。しかるに、四十九年度予算の総需要抑制策を見ると、当然交付しなければならない地方交付税を借り上げによって削減する等、全くのごまかしの措置がとられており、しかも、公共事業費や財政投融資についても、大型予算を組んだ前年度の繰り延べ分が加わることによって、実質的な伸び率は経済の名目成長率を上回るなど、総需要抑制策自体もしり抜けとなるおそれさえあります。すなわち、一般会計の予算規模は十七兆九百九十四億円でありますが、これは当然交付しなければならない地方交付税千六百七十九億円を国が強制的に借り上げるという方法によって削減したものであり、これ自体ごまかしの財政規模の圧縮であるのみならず、四十四年度予算編成の際の交付税の借り上げは今後行なわないという約束にも反する措置であります。しかもこのような見せかけの圧縮策をとった結果でも、予算規模の伸び率は一九・七%という高さであり、経済の名目成長率を七・二ポイントも上回っております。
さらに、政府活動の全体を見る場合、一般会計、特別会計、政府関係機関予算を加えたものの純総計がより正確な動きをつかみ得るものと思われます〇四十九年度の純総計は三十四兆九千億円、この対前年度伸び率は二〇・四%で、いままでの最高指数を示しております。これではたして圧縮予算と言えるかどうか。一般会計の規模のみを誇張する政府の態度に、国民はだまされているとしか思われないのであります。
さらに、政府は、総需要抑制の目玉として公共事業費の伸び率をゼロとした点を強調しておりますが、前年度の繰り越し分を加えれば公共事業費の実質上の伸び率は八・九%になり、財政投融資の実質上の伸び率も三四・八%にもなります。これでは、財政面から総需要抑制策をとったと言っても、とうていそのままに受け取るわけにはいかないのであります。真に総需要を抑制しようという意思があるならば、防衛関係費を中心として、不要不急の経費を削る道は他に幾らでもあるはずであり、財政面からの総需要抑制策はきわめて不適切、不十分であると言わざるを得ません。
また、公共料金については、消費者米価と国鉄運賃を半年間据え置く措置をとっておりますが、わずか半年間の据え置きが今日の物価情勢のもとではたしてどれほどの効果があるかは疑問であり、参議院選挙を前にしての政策的意図のにおいさえするのであります。
さらにまた、物価対策関係予算は、一般会計、特別会計を通じてわずかに一六・九%の伸びであり、前年度の伸び率の半分にすぎない金額であります。これではたして物価に最重点を置いて編成した予算と言えるかどうか、いなであることはだれの目にも明らかであります。
その第二は歳出面における生活や福祉の面に対する対策であります。
総需要抑制のためには財政規模を押えなければならないことは言うまでもないことでありますが、国民生活の実態を考えれば、国民生活や福祉の面に対する対策を重視しなければならないこともまた当然であります。しかるに、歳出予算の内容を見ると、これらの面に対する財源配分はきわめて不十分であります。すなわち社会保障費は三六・七%も伸ばしたとしておりますが、その中身を見れば大部分は社会保険費を中心とした当然増経費であり、最近の物価情勢を考えた措置は少しもとられておりません。福祉年金の七千五百円への引き上げは、消費者物価の上昇率が年率四%という前提のもとにつくられた経済社会基本計画で予定されていた額であり、すでに一年も前から約束されていたものであります。また、年金には物価スライド制が取り入れられることになっておりますが、その実行期は、厚生年金が十一月、国民年金は五十年一月からであります。生活保護費の引き上げのごときは、消費者物価の上昇率にも及ばない内容であります。また、住宅や生活環境対策費は、金額こそ若干ふえているとしても、戸数や事業量は軒並み前年度を下回っております。さらにまた、国民福祉の上から最も重視さるべきはずの環境保全対策費は、前年度予算の伸び率の三分の一程度の金額であります。これではとうてい国民生活の実態や福祉に重点を置いた予算とは言えません。
その第三は租税政策についてであります。
財政の硬直化によって歳出面からの景気調整や資源配分の機能が働きにくくなっている現状から考えるならば、租税政策の活用こそが財政政策上重要であることは申すまでもありません。特に今日のような物価情勢のもとにあっては、税制を通じて社会的不公正をなくすことはきわめて重要であります。しかるに、この予算案では、法人税は二千百十億円の増税を行ない、所得税は一兆四千五百億円の減税を行なうこととしておりますが、法人税率の引き上げ幅は財界に遠慮して低く押えられ、配当軽課税率のごときは上げ幅を二分の一に押え、その時期を一年間も延期する措置さえとられております。また、所得税減税の内容も二兆円減税の公約を大幅に下回っているのみならず、給与所得控除の最高限度ははずされ、税率の緩和は三千万円の高所得者にも及ぶ金持ち減税になっております。また、配当や利子に対する分離課税や、医師の社会保険診療報酬の特例などの不公平税制は、依然として残されたままであります。これでは税制面から社会的不公正を是正しようとしている予算とははなはだ縁遠いものと言わなければなりません。それどころか、所得税の高額所得者に対する減税によって、社会的不公正はかえって拡大さえいたしております。
その第四は公債政策についてであります。
公債政策については、われわれはもとよりこれを全然否定するものではありませんが、財政法の精神からいっても、財政政策の上から見ましても、その運用はきわめて慎重でなければなりません。特に今日のような経済情勢にあっては、財政支出と減税との関係から考えて、公債の減額は景気政策上きわめて重要であります。しかるに、今回の予算においては、公債は前年度より千八百億円減額しただけであり、相変わらず二兆一千六百億円もの公債を計上いたしております。公債依存率は一二・六%であり、先進国中最高であります。また、公債対象経費との関係で見ましても、建設公債の発行余力はわずかに六千億円しか残されておらず、不況によって歳入欠陥が生ずるような事態にでもなれば赤字公債の危険さえあります。昨年度予算で好況下にかかわらず多額の公債を計上し、民間設備投資と相まって景気を過熱させたことへの反省は全くなく、総需要抑制策にも逆行するものであります。公債政策はいずれの点から見ても不健全であることは、火を見るより明らかであります。このほか、食糧自給度向上の上から抜本的な見直しを必要とされている農林予算、金融引き締めのしわ寄せを最も強く受ける中小企業予算、文教予算、エネルギー対策、地方財政対策等に対する予算措置はいずれもきわめて不十分であります。このような予算では、とうてい今日の物価情勢と国民生活の現状に対処することは不可能であり、当面の緊急課題である社会的不公正を是正することはできないことは明らかであります。われわれはこのような予算に対しては断じて賛成することはできません。
最後に、政府の経済政策運営の姿勢について一言いたします。
予算は一年間の財政計画でありますが、これにも増して重要なことは、政府の政策運営の姿勢であります。三十日間の予算審議を通じ明らかになったことは、第一に、政府に経済政策の失敗についての反省が全く見られなかったこと、第二に、行政と企業の癒着によって物価対策や公害対策について企業に対し強い姿勢がとれないこと、第三は、低所得者対策や福祉の面に対する対策にはきわめて消極的な姿勢であったという三点であります。
すなわち、第一の点については、日本経済が今日のような状態になったのは、それがすべてではないにいたしましても、列島改造論をはじめとする田中内閣の経済政策の失敗が大きな原因になっていることはすでに明白な事実であるのに、田中総理は依然として列島改造論を撤回する態度を示さなかったのみならず、抜本的な見直しを必要とする経済社会基本計画についても、福田大蔵大臣との間に見解の相違すら見られたのであります。政策の失敗に対する反省が見られないことはあまりにも明らかであります。
第二の点については、今日の狂乱物価は企業の便乗値上げややみカルテルにあることはすでにだれが見ても明らかなのに、買い占め売り惜しみ防止法などの取り締まり立法は一度も発動されたこともなく、その超過利得についても、税制を活用さえすれば幾らでも吸い上げる道はあるのに、これにすら消極的な姿勢を示していたことであります。あるいは反社会的行為を行なった企業に対する融資規制措置が要請されているにもかかわらず、ゆるやかな基準づくりにじんぜん時間をかせいでいるとしか考えられません。また、物価革命とまでいわれた石油製品の値上げにあたっては、当然法律によって定められた標準価格によるべきであるのに、独禁法の骨抜きにもひとしい設置法に基づく行政指導でこれを決定しております。しかのみならず、物価集中審議にあたっては、事実関係を明らかにするために要求した野党の証人喚問の要求さえも否決いたしております。これは行政と企業の癒着関係の強さを示すものであり、これでは今日の物価問題の解決は不可能であります。
第三は、低所得者を中心とするインフレ弱者に対する姿勢であります。狂乱物価の中にあって最も急を要するのは、低所得者に対する対策であり、インフレ弱者への対策であります。しかるに政府は、経済見通しをたてにとって、少しも前向きな姿勢を示さなかったのみならず、低所得者に対する最高二千五百円の一時金ですら労働側の要求によって初めて取り上げるというありさまであり、年金生活者にとっては火急の問題であるインフレ目減り対策のごときは、ついに対策らしい対策は聞けなかったのであります。経済政策は今日ほど抜本的な転換を必要としているときはなく、生活優先の政策、福祉優先の政策の展開は今日ほど急を要するときはないのに、このような政府の姿勢はきわめて遺憾であります。
日本経済は、いまや政府みずからが行なった八千九百四十六円という石油の大幅値上げによって、物価安定に最重点を置いて編成した予算とはうらはらに、空前の高物価時代を迎えようとしておりますが、政府は、物価安定への明確な方途を示さないのみならず、あまつさえその責任を国民生活の防衛を掲げて戦っている春闘に転嫁し、コストインフレの名のもとにこれを抑圧しようとさえいたしております。政府のいう物価の安定とは、国民の望む狂乱物価の引き下げではなく、新価格体系の名のもとに政府みずからが主導した物価の高値安定であることは、委員会における閣僚の答弁と、最近における電力、私鉄、バス、トラック等一連の公共料金を相次いで値上げを認めようとしている動きから見てももはや明瞭であります。
政府は、すみやかに経済見通しを修正するとともに、予算の内容を全面的に補正し、国会に提出すべきであります。
また、田中総理は、今回の予算審議にあたって、物価の安定を夏ごろまでに達成することを約束しておりますが、これが実現しなかった場合は、今度こそ、うそ偽りもなく退陣することを要求して、私の反対討論といたします。(拍手)
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