向井長年の発言 (本会議)

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○向井長年君 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま議題となっております政府提出の三予算案に対し、以下申し述べる理由によりまして、反対の態度を明らかにいたしたいと存じます。
 田中内閣は、組閣以来、日本列島改造構想を最大の柱として内政を推進してまいりましたが、その構想が大企業優先、生産第一主義の高度成長を目ざすものであるため、諸物価、地価の高騰はすでに慢性化するに至ったのであります。加えて、昨年末の石油危機を口実に一部の大企業は買い占め、売り惜しみに走り、価格のつり上げを思うがままに行なってまいったのであります。この結果、国民生活は、生活必需物資の不足と狂乱物価によって窮地に追い込まれてまいったのであります。このような大企業の反社会的、無責任な経営態度は断じて許しがたく、また、今日に至るまで大企業の横暴を放任してきた政府・自民党の責任はきわめて重大であります。
 かかる見地に立って、わが党が政府予算案に反対する第一の理由は、この予算案ではたしてほんとうにインフレを克服し物価を抑制でき得るのかという大きな疑問でございます。なるほど、予算案の表向きは、総需要抑制の一つと称して公共事業費が押えられております。しかし、つぶさに検討いたしますと、そこには四十八年度からの繰り延べ分が相当多くプラスされております。これでは不当表示のそしりを免れません。また、政府は、前からインフレ抑制の短期決着をつけると表明されておりますが、たとえば石油価格をこれ以上引き上げないという確信を持っておられるのか。また、政府が真剣に物価抑制をはからんとするならば、まず政府みずからが公共料金を少なくとも三年間凍結し、物価鎮静の先導者たる役割りを果たすべきであります。しかるに、消費者米価、国鉄運賃などの公共料金値上げの据え置き期間はわずか半年間にすぎません。このことは、政府に物価抑制の決意がないことを如実に示しているのであり、政府の物価政策の失敗を料金値上げという安易な形で国民の負担に転嫁せんとするものであります。こうした国民をあざむくような政府の姿勢は断じて許しがたいのでございます。
 第二の反対理由は、福祉関係予算がきわめて貧弱だということであります。
 社会保障関係費は対前年度比で三六・七%近くの伸び率であります。しかしながら、消費者物価が対前年度比で二〇数%も上昇している今日にあっては、実質においては対前年度比で数%ぐらいの伸びしかないのであります。政府は福祉重点というかけ声はかけているのでございますけれども、実際においては国民の期待を裏切るものであります。社会的な弱者に対しては国が責任をもって生活を保障すべきでございます。そのことは、政治の使命であり、福祉国家建設への第一歩でもあります。
 また、公団、公営住宅等の公共住宅の建設戸数は四十八年度よりも四万五千戸削減されておるのであります。現在三百万世帯が住宅難に苦しんでいるといわれておりますが、これらの大半の世帯は劣悪な狭い木賃アパートの生活を余儀なくされているのであります。これらの人々の願いは、一日も早く低家賃の公共住宅に入居したいということであります。しかるに、政府は、宅地開発公団の創設によって、庭つき二戸建て住宅を国民に与えるという庶民にとっては実現しそうもない夢のみを与えておるのであります。当面する公共住宅の建設が大幅に削減されていることは、国民の期待に逆行するものであると言わなければなりません。
 第三に指摘しなければならないことは、国民の不公平をさらに拡大するものであることであります。
 政府のいわゆる二兆円減税については、当初、夫婦子供二人の標準世帯では年間百七十万円までが非課税であったのが、これから大幅に後退して、今回の予算案では百五十万円にまで引き下げられておるのであります。すなわち、二兆円の減税の予算が一兆円の減税に大幅に縮小されたのであります。このような減税では、今日のようなインフレ状況におきましては全くの焼け石に水でありまして、実質的な減税にはならないのであります。そればかりか、給与所得控除の上限撤廃、高額所得層の税率軽減など、減税の重点が高額所得者層に置かれておるのであります。インフレで一番の被害を受けているのは低額所得層の庶民であり、政府の減税措置は本末転倒と言わざるを得ないのであります。また、こうした措置は、逆累進税への傾向をますます助長するものであり、所得の不平等な分配をさらに拡大するものであります。
 また、農林漁業の予算につきましては、食糧需給の逼迫が世界的規模で叫ばれておる今日にありながら、これらに対する配慮はなされておりません。
 第四には、地方財政を圧迫する予算であるということであります。
 国の予算規模が縮小されたために四十九年度の地方交付税のうち千六百八十億円の削減を行なうことは、地方財政を窮地におとしいれるものだと言わなければなりません。諸物価の高騰、地価の暴騰によって公営住宅、下水道等の建設や福祉施設の建設、運営も行き詰まっているのが地方自治体の現状であります。福祉国家の建設は、地方自治体の福祉財源を確保することが大前提となるのであります。そのためには、地方交付税の削減はとりやめるべきであります。
 次に、政府予算案に反対する第五の理由は、防衛費の増大であります。
 昭和四十九年度は四次防の三年目に当たり、その防衛費は初めて一兆円をこえたのであります。現在、国民は政府の防衛力増強計画に対して深い危惧の念を与えていることは、いまさら言うまでもありません。わが党は、自主防衛の必要性を認める立場に立ちながらも、国民的合意が成立していない現状においては、四次防のごとき防衛力増強計画だけが独走することは断じて許しがたいと考えるのであります。この際、わが国が率先して防衛費の削減をはかることこそアジアの緊張緩和を一そう促進し、ひいてはわが国の平和と安全を確立する道であります。
 私は、以上五点の理由によりまして、政府の猛反省を促しまして、反対討論を終わります。(拍手)
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発言情報

speech_id: 107215254X01719740410_011

発言者: 向井長年

speaker_id: 6610

日付: 1974-04-10

院: 参議院

会議名: 本会議