伊瀬芳吉の発言 (公害対策並びに環境保全特別委員会)

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○伊瀬参考人 ただいま御指名をいただきましたダイハツ工業株式会社社長の伊瀬でございます。
 本日は、懸案の自動車排出ガス規制につきまして、このような席で私たちの実情を御説明申し上げる機会を得ましたことを深く感謝申し上げる次第でございます。
 当社におきましては、自動車の排出ガス、交通騒音など、いわゆる自動車による公害問題を一日も早く解決しなければならないという社会的責任を常々痛感いたしておりまして、現生産車に対する技術的な対策はもちろんのことでありますが、一般的に無公害車といわれる電気自動車の研究開発にも、先日お届け申し上げました説明書の資料−1にございますように、早くから技術陣をあげて取り組んでまいりました。
 本日は、当社の自動車排出ガス対策の現状につきまして御報告申し上げ、同時に企業としての皆さん方へのお願いを率直に申し述べさせていただきたいと存ずる次第でございます。
 当社では、乗用車といたしまして大衆乗用車並びに軽乗用車を、トラックといたしましては小型トラック並びに軽トラックを製作いたしておりますが、エンジンの型式から大別いたしまして、軽自動車以外の小型車には一部のディーゼルエンジンを含みまして、主としてフォアサイクル・ガソリンエンジンを搭載いたしております。また、軽自動車にはツーサイクル・ガソリンエンジンを使用いたしております。したがいまして、これらのエンジンにつきまして、排出ガス対策の技術開発を行なってまいりましたので、それぞれについて申し述べさせていただきます。
 まず、フォアサイクル・ガソリンエンジンの排出ガス対策から申し上げますと、特に窒素酸化物対策につきましては、各メーカーともその技術開発を重点に行なっておられますが、当社の場合も同様でございまして、排気を再吸入させて燃焼温度を低下させ、NOxの発生を少なくするEGR方式、すなわち排気還流方式や還元触媒によりましてNOxを無害の窒素と酸素に分解させる方式あるいは炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物を同時に無害化させる三元触媒方式、さらには排気リアクター方式など、現生産エンジンの排気処理法につきまして、〇・二五グラム・パー・キロメートルというNOx低減目標の可能性、燃料消費量への影響、運転性能への影響等、あらゆる角度から比較研究してまいりました。
 また、そのほかに希薄空燃比、すなわち薄い燃料混合比における燃焼によってNOxを低下させるために、希薄燃焼方式や副室成層燃焼方式など、エンジンのモディフィケーション方式によりまして数機種試作いたしまして、研究開発には、技術陣をあげて努力してまいりました。資料12に、過去三カ年にわたり排出ガス対策として投入いたしました投資額並びに人員を御参考までにまとめさしていただいておりますが、投資額では最近三カ年の累計約三十億円、人員では毎年四百名近い技術員を投入しておることになっております。
 その結果、昭和五十年規制に対しましては、触媒方式が燃料消費や出力、運転性能の面で最もすぐれていると判断いたしまして、一応実用化のめどを立てておりますが、このような浄化装置の採用は、各国の自動車の業界では未知の分野でもありますので、一般使用による耐久性、信頼性等につきましては、まだ研究の余地が残されていることを申し上げさしていただきます。
 同時に、昭和五十一年NOx対策にも全力をあげて各種の研究開発を行なっておりますが、その実施につきましては、遺憾ながら、まだめどが立っておりません。昭和五十一年NOx〇・二五グラム・パー・キロメートルという低減目標に対しましては、触媒方式が最良であるという判断で開発を進め、初期の走行におきましては、所定の浄化性能が得られますものの、耐久性に乏しく、短い走行距離で劣化し、まだ目標を達成することができない状況にあります。
 昭和五十年規制に用いる酸化触媒につきましても、初めのうちは耐久性の問題で実用化が危ぶまれておりましたが、数年間の開発によりまして実用化のめどがついてまいりましたような状態で、NOx用触媒の開発につきましても、触媒メーカーと協力して進めておりますが、この種の開発は総合的な見地から大きなバックアップが必要であり、現在のところ、まだ実用化のめどが立っていないと申し上げられます。
 当社では、一部の機種、すなわち千ccクラスのエンジンにつきましては、今回の環境庁ヒヤリングにおきまして、すでにデータを提出いたしておりますとおり、現状では十台の平均値として〇・九五グラム・パー・キロメートルが得られております。しかしながら、千cc以外のエンジン機種を塔載した乗用車の生産もいたしておりますので、他の機種につきましても、さらに研究開発中でございます。
 このようなわけで、昭和五十一年NOx低減目標につきましては、今回の環境庁ヒヤリングにおきまして、実施時期の延期をお願い申し上げた次第でございます。
 次に、軽自動車に塔載のツーサイクル・ガソリンエンジンについてでありますが、ツーサイクル・エンジンは、先ほども一お話がありましたように、その構造上、フォアサイクル・エンジンに比べて、炭化水素は五倍ないし六倍と多いが、逆にNOxは七分の一ないし八分の一と低いという特徴がございます。したがって、大気汚染防止上最も重要な昭和五十一年NOx低減目標を達成するためには、小さい車には現状の軽乗用車用エンジンのツーサイクルが最適であると判断いたしまして、その浄化対策を進めてまいりました。その結果、昭和五十一年NOx低減目標の達成の見通しは十分あると考えております。
 しかしながら、一方におきまして炭化水素の排出が多いために、その無害化にはフォアサイクル・エンジンの数倍の熱量が発生いたしますので、酸化触媒やその容器、あるいはアフターバーナーなどが著しく高温となり、実用上の耐久性に現状では欠けております。
 さらに本年一月に設定されましたコールド試験に対しましては、フォアサイクル・エンジンと違いまして、ツーサイクル・エンジンでは特別の始動装置を不可欠といたします。これはコールド・スタートのときに炭化水素を浄化装置とは別の装置によって燃焼させ、浄化装置の温度を急上昇させまして、早く反応温度に到達させる必要があるからでございます。この特殊な始動装置の開発にも総力を傾けてまいりましたが、何ぶんリードタイムが短いのと、前に申し上げましたように発熱、高温の問題がございまして、触媒や耐熱材料の改良、改善は行なわれつつありますが、現時点では、まだ商品化の見通しが立たず、期限内に実用化できる自信がただいまのところございません。
 現状では、昭和五十年規制によるツーサイクルの炭化水素規制は、昭和五十一年規制によるフォアサイクルのNOx低減目標と同じようにきわめて困難であると考えております。本年一月、昭和五十年規制が制定され、社会的背景の中で、社運をかけて開発に努力を重ねてまいりましたが、ツーサイクル・エンジンの炭化水素低減につきましては、前に申し上げましたように、新しい困難性が加わってくるような現状で、残念ながら所期の技術的成果をおさめることはできませんでした。
 この間、十分の成果が得られなかったことに対しまして、深く反省いたしておりますが、前述のように触媒、耐熱、材料の改善もおいおい進んでまいると思いますので、ツーサイクル・エンジン塔載の軽乗用車につきましては、諸般の事情を勘案されまして、昭和五十年規制の実施時期について、特に御配慮をいただきたいと存じます。
 以上、当社の自動車排出ガスの対策の実情を申し上げ、あわせて実施時間について格別の御配慮を賜わりたいとお願いを申し上げさせていただいた次第であります。
 御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 伊瀬芳吉

speaker_id: 31231

日付: 1974-09-11

院: 衆議院

会議名: 公害対策並びに環境保全特別委員会