松本忠助の発言 (本会議)
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○松本忠助君 私は、ただいま提案されました田中内閣不信任決議案に対し、公明党を代表して、賛成の討論を行なうものであります。(拍手)
さきの第十回参議院議員選挙は、単に三年ごとに行なわれる定期的な国政レベルの選挙でなく、七〇年代後半の政治路線を決定する重要な意義を持つものであったことは、あらためて多言を要しないものであります。
すなわち、激動する世界経済を背景に、わが国の経済は前途の多難が論ぜられ、昨秋以来の物価狂乱、悪性化するインフレの中で、国民生活は深刻な不安に襲われ、破滅の一途をたどりつつあるのであります。その中にあって、国民は、みずからの主権によって明快なる回答を与えたのであります。その一つは、参議院選挙史上最高の七三・二%の投票率となり、その二は、開票の結果、自民党が三割政党に転落したことであります。
この自民党敗北の冷厳な事実と、選挙期間中にマスコミによって行なわれた世論調査の結果は、いずれも田中内閣の支持率が二〇%前後であったことを思い合わせ、国民の意思は田中内閣を信任していないということを、政府・自民党は十分に認識すべきであります。(拍手)
以下、田中内閣のすみやかな退陣を要求し、田中内閣不信任決議案に賛成する理由を明らかにするものであります。
第一に、田中内閣は、インフレ、物価問題、あるいは弱者救済という、現在、国民が最も要求する政治課題に背を向けるだけでなく、選挙前から、靖国神社法案、小選挙区制、刑法改正等、一連の反動化体制に加え、教育問題をもってみずからの失政に対する国民の追及をかわし、同時に、教育への権力介入をはかろうとした反国民的姿勢であります。
これを端的に象徴するものは、物価はいつでも下げられる、急ぐと混乱するので、時間をかけて云々、こううそぶき、あるいは、物価や公害は雨漏りのようなものと、まさに国民の苦衷を愚弄するかのごとき田中総理の発言であります。また、教員は聖職か、労働者かと、二者択一論を押しつけ、あえて国民世論の分断、対立をはかり、五つの大切、十の反省を唱えて父兄の歓心を買わんとし、ついには、みずからの暴言に酔い、教師宣誓の実現云々までエスカレートして、教育の国家統制への策謀を着々と進めるに至ったことであります。
心をたずねて一万里と言った田中総理の四万キロ遊説は、歴代自民党総裁の選挙遊説では、その距離において不倒の記録といえるでありましょう。しかし、その遊説の内容は、国民の求めるものにこたえないのみか、国民の求める焦点をすりかえ、そうしてきたことは、選挙によって国民が明瞭に不信と不満をその回答に示したのであります。(拍手)
一国の総理にかける国民の期待は重く、それだけに、総理はみずからの発言に重い責任を持たなければならないと思うものであります。(拍手)総理が真に国民主権を尊重し、自己の責任を自覚するならば、物価に対する怒りを込めて田中内閣に鉄槌を下した国民の審判を謙虚に受けとめ、国民の前にその所信を明らかにすべきであります。(拍手)それすらやろうとしない田中総理の態度は、国民の主権と意思を踏みにじるもはなはだしいといわねばなりません。
第二に、選挙史上最大の汚点を残した金権、企業ぐるみ選挙を指揮した田中総理こそ、民主主義の破壊者であるというべきであります。
五当三落から十当八落にエスカレートした金権選挙、企業ぐるみ選挙が、勝つためには手段を選ばないよごれ切った選挙として自民党に痛撃を与えたことは、国民がみずから主権の尊厳を守ったものとして、われわれは高くこれを評価するものであります。
今回の参議院選挙に、自民党が財界から金を吸い上げてばらまき、さらに、企業組織や系列会社、下請企業に強圧を加える企業ぐるみの選挙運動と、民主的手続を経て行なわれる労働組合の選挙運動を同一視して、みずからの非をおおい隠そうとする田中総理の発言は、ものの本質の立て分けをわきまえないものというべきであり、しかも、堀米中央選管委員長の発言にまっこうから挑戦した行動は、みずから民主主義の破壊者であることを証明しているのであります。(拍手)
三木副総理、福田大蔵大臣が、その辞任にあたって、田中総理の政治姿勢、選挙姿勢を批判し、三木氏が、大企業と自民党の癒着解消のためにも、企業献金は禁止し、個人の献金を中心に改めるべきであると基本見解を述べていることは、金で癒着した自民党と大企業のこれまでの関係を明らかに証言するものであります。
第三に、田中内閣及び自民党は、選挙期間中に、わが公明党が提出した誠実な公開質問に対し回答を拒否したことは、政府・与党としてその無責任きわまる態度は、断じて許すことはできないのであります。(拍手)
わが党が、六月十五日に提出したインフレ被害者を守るための緊急提言は、現在、国民からひとしく求められている緊急かつ最大の政治課題であるインフレ、物価問題の解決であり、インフレによる被害者の救済と社会的不公正の是正であり、なかんずく、すでに社会的、経済的に弱い立場にいる人の中で、インフレ被害の甚大な人たちを救うことが何よりも急務であることから、二十二項目にわたる提言をいたし、これを公開質問としてその回答を求めたものであります。
また、六月二十五日には、目に余る金権、企業ぐるみ選挙、政治資金規制等の公約要求、さらに、独占禁止法の改正強化及び公共料金問題等の制度の改善などに関する公開質問をいたし、回答を求めたのであります。
これらの提言や質問は、当面する国民生活の窮状に立ってその生活安定を求め、社会的不公正を是正して、国民の政治に対する信頼を取り戻すためにきわめて緊急な、かつ限られた問題であり、政府・与党としては、選挙中といえども誠意をもって回答すべきであります。しかるに、何らの回答を示さず今日に至っていることは、国民の切実な要求を代弁したわが党の誠実な提言や質問を完全に無視した行為であり、断じて許すことはできないのであります。(拍手)
第四に、選挙後今日まで田中内閣がとってきた問答無用の態度は、国民の審判に対する居直りであります。
国民が、いま田中総理に要求していることは、従来の田中政治からの転換であります。去る九日、自民党本部において党総裁として選挙後初めて記者会見をされました。そのときの姿勢は、選掌中の高姿勢から一転して、話し合いの政治を強調する低姿勢でありました。国民は、その姿勢から、国会における田中総理の今後の政治運営についての所信表明を当然としていたのであります。
しかるに、この国民の要求は完全に裏切られ、田中総理の横暴により、ついに今国会は所信表明演説もなく、また、物価問題を中心とした緊急質問も行なわせず、さらには、公務員給与法改正案の今国会における成立を求めても、法案提出をなさず、ついに本日閉会をせんとしているのであります。
それのみか、政府は、選挙終了を待ちかまえて、私鉄運賃、路線トラック料金の値上げを認可し、さらに、砂糖、洗剤、セメント、アルミなどの価格凍結品に対し次々と値上げを了承し、秋に向かって国鉄運賃、消費者米価、都市ガスなど一連の公共料金値上げが、これまた問答無用のままで行なわれようとしているのであります。
すでに、勤労者の家計はばく大な赤字を背負わされ、国民生活は日増しに不安を増大し、破綻の一途をたどっております。この現実を無視している田中総理の態度と、大平蔵相の、消費者米価の引き上げは総需要抑制に反しないという暴言など、これらはまさに国民に対する挑戦であります。
田中総理は、二十九日の自民党両院議員総会でも、この臨時国会では所信表明はしないと述べております。この総理の発言こそ、議会制民主主義を破壊し、一党独裁をもくろむ以外の何ものでもないのであります。(拍手)
憲法の前文に、「そもそも國政は、國民の厳粛な信託によるものであって、その權威は國民に由來し、」云々とあります。この日本国憲法の国政に関する基本精神を、総理、あなた自身はいかように解釈されるのか。あなたがもしこの憲法の精神をわきまえておられるならば、この重大な時局にあたっての参議院選挙後の臨時国会では、われわれが要求するまでもなく、また、その会期の長短にかかわらず、一国の総理として、国民と憂いをともにし、みずから所信を述べることは、きわめて当然のことではございませんか。(拍手)国民の厳粛なる信託によって新しい参議院の構成ができ、しかも国民の審判は、田中内閣の政治路線に反省を求めていることは明らかであります。このときにあたり、国民の意思を尊重して、今後の施政方針を国民の前に明らかにすることは、国政担当者として当然の責務であります。
ただいま、るる申し上げましたところの今回の田中総理の言動は、国会を私物化するもはなはだしく、断じて許すことはできないのであります。(拍手)
以上申し上げました四点から、もはや田中内閣は政権担当の能力を喪失したものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
二年前の七月七日、田中総理は、コンピューターつきブルドーザーといわれ、国民のかっさいを浴びて登場したのであります。しかし、いま静かに胸に手を当てて考えてみるとき、そのコンピューターは狂い、ブルドーザーは、建設のためのものではなく、国民生活破壊のものと判明したのであります。田中総理は、時の流れを察知し、自己のみの論理のゴリ押しをやめて、すみやかに退陣の決意を固められるよう強く求めて、賛成の討論を終わるものであります。(拍手)