玉置一徳の発言 (本会議)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○玉置一徳君 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま提出されました田中内閣不信任案に賛成の討論を行なわんとするものであります。(拍手)
われわれは、臨時国会が開会されてから今日まで、院の構成以外は何もやらないという田中内閣・自民党に対しまして、五党国対委員長会談を提唱し、打開の糸口を見出すことにつとめるとともに、また、物価問題など当面の国民的課題について緊急質問を要求し、さらに、七月二十六日には、政府並びに国会に対し人事院勧告が行なわれたのを機会に、国会を短期間でも延長して、物価高にあえぐ公務員の給与改定を行なうことを主張し続けてまいりました。
このように、国会運営を正常な軌道に乗せようとするわが党はじめ各野党の努力に対しても、政府・自民党は全く耳を傾けることなく、所信表明はもとより、一切の審議を拒否し続けてきたのであります。
そもそも、われわれが参議院の半数改選という国民の洗礼を受けたあと、従来の慣例にのっとり、田中内閣に今後の施策を聞くための総理の所信表明を求めることは、当然ではありますまいか。また、物価狂乱、インフレのさなかにあって、衆参両院の予算委員会を開き、国民最大の関心事である物価問題の集中論議を行ない、物価安定への道を模索することも、選良として国民の負託にこたえる議員の当然の責務であります。
さらに、総需要抑制という名のもとに、金融の引き締めに泣き、倒産にあえいでおる中小企業の救済と、一貫せぬ政府の農業政策の犠牲になって希望を失っている農民のため、明日への施策を問いたださんとするわれわれの要求も、これまた当然といわなければなりません。
このような国民の最低の要求にも目をつぶり、何の審議もさせないとする田中総理のかたくなな態度は、全く国民を冒涜し、議会制民主主義をみずから破壊する、権力思想のあらわれ以外の何ものでもありません。わが党が田中内閣不信任案の共同提案者となり、その退陣を迫るに至ったゆえんであります。
次に、田中内閣不信任の理由について申し上げます。
わが党が田中内閣を不信任する第一の理由は、田中総理のあまりにも権力的な政治姿勢についてであります。
田中総理は、二年前、平民宰相として、国民大衆の大きな期待をになってさっそうと誕生したのでありますが、日のたつにつれ、随所に権力的性格を露骨にあらわしてきたのであります。日本列島改造論への異様なまでの執着といい、当時、自民党内では、殿さま御乱心といわれた小選挙区制の突如たる提案といい、提案したものは、会期も全く無視して、いわゆる通年国会を強引に強行せられた昨年の通常国会といい、また、今回の所信表明の強引な拒絶など、その事例は枚挙にいとまがございません。長期展望のない、思いつきの権力的な政治は、人の意見を聞く耳を持たない独善政治におちいりやすく、田中総理は、最後にはどんなことをしでかすかわからないという不安を識者に持たせ、果ては、おもむくところ、競争者や相手方を抹殺しようとする独裁政治、金権政治につながるおそれが多いことは、ウォーターゲート事件の推移を見るまでもありません。
先般の参議院選挙において、田中総理の派閥金権選挙の強引さが党の内外からきびしく批判されたことは、きわめて当然のことであり、三木前副総理、福田前大蔵大臣等、田中内閣の支柱ともいうべき最重要閣僚の辞職も、これが原因と思われるのであります。参議院の市川先生や青島さん等の高位当選も、金権選挙に対する国民大衆の反発のあらわれであり、金のかからない選挙は、いまや国民の合いことばとなり、選挙法の改正は、わが政界に与えられた緊急に解決すべき政治課題となっていることに私たちは深く思いをいたさねばなりません。
かくして多数の国民を政治不信に追いやっている最大の元凶が、田中総理の権力的金権政治にあることを、総理自身、心から反省しなければなりません。
いまや、半数改選の参議院選挙が終わり、国会が新しく構成された時点において、選挙での国民の審判にこたえ、田中総理が所信表明演説を行ない、国会の審議を通じて国民に語りかけ、訴え、協力を求めることは、民主主義の政治としては当然のことであり、むしろ進んで行なうべきでありましよう。
三十三年国会法が改正されましたが、以来五回の参議院選挙後の臨時国会では、例外なく所信表明が行なわれたではありませんか。特に、前々回の四十三年八月、前回の四十六年七月には、今回同様何も案件はなかったのでありますが、佐藤前首相は所信表明を行ない、代表質問を受けている事実を、この十年間常に党あるいは政府の要職にあられた田中総理が知らないとは言えますまい。しかも、選挙後、田中総理は、野党の意見を謙虚に聞くと言っておられたのであります。しかるに、今回のような、独善的な権力思想で、一切のものを避けて通ろうというようなかたくなな心がまえでは、少なくとも向こう三年間、与野党接近する参議院をかかえて、国会を乗り切ることは容易なことではありませんし、あまりにも独善的なやり方は、いつかは、みずからの党内から造反者を誘発することになるでしょう。
かような意味から、国民の理解と協力を求めて、多難をきわめる時局を解決することなどは、全く期待すること不可能であり、今後多難な国政担当の資格など、全くないと断ぜざるを得ないのであります。
われわれが、田中内閣を不信任する第二の理由は、田中内閣の経済政策の破綻であり、現下最大の政治課題であるインフレ克服の資格条件の欠如であります。
二年前、田中内閣が発足するや、総理の一枚看板ともいうべき日本列島改造論をぶちまくり、公共事業を中心とする大型予算を編成されたのでありますが、超緩慢な金融政策と相まちまして、必要以上な余剰流動性を生み出し、土地をはじめ食料品、原料、資材等の買い占め、売り惜しみの横行をもたらし、異常な物価騰貴を誘発して社会を混乱に導いたのであります。
続いて起こりました昨年秋の石油ショックには、これに対応する政府の積極果敢な施策の遅延と欠如のため、今日の物価狂乱時代を現出し、わが国の経済と国民生活を不安のどん底に追いやったのであります。
ことしの六月の物価にも見られるように、卸売り物価が対前年同月比三五・三%高、消費者物価は同じく二三・四%高であるなどは、わが国の歴史にいまだかつて想像すらできなかった物価高でありまして、国民大衆の生活を極度に圧迫するに至ったのは、想像に絶するものがあると思います。
その間、悪徳商人の物の買い占めや売り惜しみが相も変わらず横行し、産業間、企業間、階層間の格差はますます拡大し、社会の不平不満を醸成しつつあるのであります。
また、この間、農業、漁業や中小企業の深刻な経営難については前述したとおりでありますが、さらにその上、電力料金の値上げに始まり、消費者米価、国鉄、私鉄運賃など、いわゆる公共料金主導型の物価の値上がりが予想されるのであります。よほどの準備がなされない限り、これらの値上がりが相互に関連して、全面的な物価の高騰が、再びわが国の国民経済と国民生活を収拾のつかない破局に導くことは、けだし避けがたい状況であります。
冒頭にも申し上げましたとおり、現下政治の最大の課題は、国民生活を圧迫しているインフレの克服であります。政府は、これに対し、総需要抑制の一本やりで立ち向かっておられますが、打ち続く公共料金の値上げ等が他の物価の値上げに波及させない方策は、何らとられておらないではありませんか。
石油ショック以来、わが国のエネルギーやその他資源の安定確保の方策が着々と打たれているとは、どうしても考えられません。予想される産出国の将来の値上げに対し、国内物価への波及の歯どめについても、法制上、財政上の準備がなされているとは、遺憾ながら思えないのであります。これでは、国民に、田中内閣を信頼せよとは、おせじにも言えないではありませんか。インフレの克服は、いかに巨大なる権力と政治力をもってしても、一党一派でなし得るものではありません。財界はもとより、労働組合、特に、消費者である国民大衆の理解と協力を得ることにより、初めて可能であります。ましていわんや、国会、特に野党の協力なしでは、実効をあげることは不可能といわねばなりません。野党の条理を尽くした要請をかたくなに拒否し、せっかくの国民の理解と協力を得るチャンスを放棄するような政治姿勢では、とうてい、現下インフレの克服をなし遂げる資格と条件はないと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
われわれが田中内閣の不信任案に賛成する第二の理由であります。
最後に、われわれが田中内閣成立以来憂慮を深くしていることは、田中総理の挑戦的言動と態度であり、必要以上に左右の全体主義勢力台頭の機運を助長する傾向にあることであります。
左右の全体主義勢力を排除し、真に平和な生活を確保するためには、政治の面においては、議会制民主主義を堅持することであり、経済の面では、産業民主主義に徹底することであり、社会の面におきましては、高度福祉国家の建設を推進することが必要欠くべからざる前提でございます。これこそ、人間の尊重と自由の擁護に徹した政治運営のかなめでもあります。今次臨時国会の自民党田中内閣の政治姿勢は、このような正しい政治運営とはほど遠いものといわざるを得ません。
いまや、わが国は内外ともに文字どおり重大な政治危機に直面しております。そして、田中内閣がその政権に固執する限り、政治危機は一そう増幅拡大され、事態の収拾がますます困難になることが予想されるのであります。
いま国民が心から望んでいることは、一日もすみやかにこのような政治の混迷から脱却し、建設的な革新中道政権が出現して、インフレの克服、物価の安定など、国民的諸懸案の解決へ、国民の理解と協力を求めて全力を尽くすことであります。
われわれは、以上の理由により、国民の名において、田中内閣に対する不信任案に賛成の決意を表明するものであります。(拍手)