田中六助の発言 (石炭対策特別委員会)
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○田中(六)委員 北炭夕張新炭鉱の災害実情調査並びに石炭鉱山等の実情調査に関する報告書。
去る七月六日、北炭夕張新炭鉱で発生した災害の現地調査並びに北海道地区の石炭鉱山等の実情調査の概要を御報告申し上げます。
報告に先立ち、今回の災害で死亡された五名の犠牲者並びに御遺族の方々に対し、衷心より哀悼の意を表明する次第であります。
本調査のため、派遣されました委員は、委員長田代文久君、田中六助、多賀谷真稔君、松尾信人君の四名でありますが、このほか、篠田弘作君、岡田春夫君、渡辺惣蔵君、多田光雄君が現地参加されました。
本調査の日程は、七月十七日から二泊三日でありまして、この間、北炭夕張新炭鉱の災害実情調査、空知炭砿の露天掘り、地域振興整備公団の美唄市東明団地の現地調査及び関係当局並びに関係地方公共団体、労働組合、職員組合等の代表より、それぞれ説明を聴取、あわせて要望等を受けてまいった次第であります。
まず、北炭夕張新炭鉱の災害について申し上げます。
当鉱は、昭和四十五年十月開坑し、本年六月から営業出炭を開始した新坑でありまして、本邦では初めてのマイナス六百レベルからの深部を操業区域とする鉱山として、その成否が注目されておりました。当鉱の総開発費は三百六億円でありますが、このうち、石炭鉱業合理化事業団から、本年度に予定されているものを含めて百二十六億五千万円が融資されております。当鉱の実収炭量は八千百万トン、原料炭得率は八三・八%、硫黄分も少なく優秀な原料炭であります。本年七月五日現在の従業員数は、常用実働労務者九百六十三名、臨時夫四十名、請負夫百三十二名、職員百七十三名、計千三百八名であります。
災害の概況は、去る七月六日、午前零時五十五分ごろ、集中監視室において坑内のガス自動警報器の作動を感知し、直ちに調査したところ、北第二十尺上層ロング上添坑道掘進個所からの応答がなく、付近で作業中の係員に探検させた結果、同所で異常が発見されたのであります。当時は、三番方二百六十七名が入坑しておりましたが、全員に一斉退避を指令する一方、救護隊により、ガス排除を行った後、係員一名、鉱員四名、計五名の罹災者を午前四時二十五分までに、全員遺体で収容したのであります。
本災害の種類は、ガス突出であります。
政府は、災害後、担当係官を派遣するほか、伊木東大名誉教授を団長とする保安技術調査団を編成し、七月八日より十日まで現地で調査を行いましたが、突出物を取りあけた後、なお検討を進め、原因を究明することにしております。
死亡者の遺族に対する労災保険による遺族補償は、遺族年金は、対象人員、支給率で差がありますが、最低六十五万円、最高百八十三万七千円であります。葬祭料は平均三十万円余となっております。このほか、労使の協定による弔慰金が一人当たり千百万円でありますが、今後の遺族の生活には万全の措置を講ぜられるよう、会社並びに関係政府機関に強く要請するものであります。
現地における要望事項は、会社側から、今後、十分、保安確保に努める旨の反省と決意が述べられたほか、労働組合、職員組合から、各炭鉱の保安確保に強い行政指導措置をとられたい。各種保安基準の再検討を中心とした現行保安法規の抜本的改正を行われたい。深部開発による作業環境の悪化に対応した近代的な防災体制を確立し、保安確保の政策助成を充実されたい。保安技術の研究開発を推進するため、産炭地に国立の鉱山保安技術開発センターを設置されたい等の要望がありました。
次に、今回の災害調査に当たり、感じました点を二、三申し上げます。
第一は、伊木調査団も指摘しているように、深部採炭に対応した十分なガス抜きが行われていなかったように思われます。ガス突出の事前予知は、現状では、技術的にもまだ困難であり、特にガスの多い深部では、従来のデータにとらわれず、新たな観点から、徹底的にガス抜きを行う必要があると思われます。また、防災体制において、現場からの意見が十分反映されるよう、抜本的に考え方を改める必要があると思われます。
第二に、保安設備の改善についてであります。今回の災害では、退避所(ビニールハウス)が、すぐ付近にありながら活用されておりません。これがなぜ利用されなかったか、その原因を徹底的に究明し、設備、構造等を再検討する必要があると思われます。また、かる測定器についても、現在は係員のみが携帯しておりますが、保安意識向上の観点からも、携帯する者を増加させ、また測定機能を向上するなど、保安設備の技術的な開発を促進する必要があると思われます。
第三に、以上の観点から、深部開発にも十分対応し得るよう、各種安全基準の再検討、管理監督体制の強化を中心とした現行保安関係法規の適切な改正を行う必要があると思われます。
北炭夕張新炭鉱は、わが国でも未経験の深部から稼行を始める炭鉱であり、今後、各炭鉱とも深部稼行が増加する傾向の中で、試金石となるもので、これからの展開が期待されている時期に災害を起こしたことは、まことに遺憾であると言わざるを得ません。七月十五日には、赤平炭鉱においても落盤により一名が死亡するという災害が発生しております。今後、石炭関係者はもとより、政府においても、保安確保について、総合的に考え方を再検討し、万全を期して取り組むよう強く要請いたします。
次に、石炭鉱山等の実情について御報告申し上げます。
北海道の石炭鉱業は、昭和五十年六月末現在、大手十、中小十、このうち露天掘りが七で、合計二十炭鉱が稼行しており、全従業員は約二万三千人であります。昭和四十九年度の生産は、千二百三十六万一千トンであり、全国の六〇・九%を占めております。また、道内における産炭地域の面積並びに人口は、それぞれ約一八%を占め、北海道の経済社会における地位は依然として高いのであります。
今後の生産も、自然条件に著しい変化のない限り、政策努力と相まって比較的順調に推移するものと思われますが、特に、これからは、空知、天北、白糠などに賦存する露頭炭の開発が大きな課題となってきております。露天掘りについては、大規模な開発を行えば、相当量の生産が見込まれますが、地上権者との権利の調整、跡地の復元と利用方法、公鉱害対策など、解決すべき問題も多いのであります。しかしながら、反面、危険が少ない。大型機械の導入により能率もよく、生産コストが安いなどのメリットもあり、空知炭砿では、当初、地表から三十メートル程度の採掘にとどまっていたものが、最近では、技術的にも採算の面からも百三十メートル程度まで可能になってきており、今後、前向きに検討すべき問題と思われるのであります。
北海道地区の需給動向については、石油危機以来、引き合いが活発になっておりますが、昭和四十九年度では千三百万トンの需給実績で、前年に比べ百十五万トンの減少となっております。これは災害、自然条件の悪化、原料炭得率の低下等による生産減によるものであります。本年は、千三百九十五万トンの需要が見込まれ、原料炭、一般炭とも順調に出荷されております。
労務状況は、これまでの著しい流出がとまり、昭和五十年三月末では、全従業員数が二万二千八百三十二人と、昭和三十三年以来初めて、前年を四百十九人増加いたしました。年齢的にも平均四十二・三歳と、前年と同じであり、上昇傾向がとまっております。しかし、人員の増加については、請負夫の四百七十四人増加が原因であり、内容的には問題を残しているように思われます。
今後とも、作業環境、生活環境の改善を図り、強力な労働力確保対策を講じる必要があります。
産炭地域振興対策につきましては、美唄市東明団地を視察いたしましたが、全道で地域振興整備公団が造成した工業団地は、完成分十三団地、四百十九万六千平方メートル、その譲渡率は五三%、現在まで約五十二企業が進出しておりますが、全般的に立地条件に恵まれず、その上、最近の経済事情の関係もあって、必ずしも順調に行われておりません。今後とも、中核的企業の導入を中心に一層、強力に推進する必要があります。
最後に、関係諸団体からの要望事項について申し上げます。
まず、地方公共団体からは、現行出炭規模を大幅に上回る拡大生産を目指し、具体的な計画数字を示されたいこと。経営体制も私企業体制では不安定であり、国の責任による体制に変革されたいこと。炭鉱保安の確保は、採掘現場の深部移行に伴い、ますます自然条件の悪化が予想されるので、国による保安技術開発研究体制の確立を図られたいこと。労働力の確保を図るため、労働条件を改善することはもとより、生活環境、特に医師の不足に難渋しており、これが対策を積極的に推進されたいこと。新鉱開発について地方公共団体も参加する第三セクター方式が予定されているが、国が直接責任を持つようにされたいこと。産炭地域振興対策もより具体的な対策を示し、積極的に推進されたいこと。石炭財源も、原重油関税だけでなく、一般会計からも繰り入れることを配慮されたいこと。石炭価格の引き上げについて、改定のルールを設定されたいこと等の要望がありました。
日本石炭協会北海道支部からは、経営を安定するため、炭価と安定補給金を引き上げ、経営改善資金の増枠と運転資金を確保されたいこと。生産体制を確立するため、骨格構造、保安確保工事、近代化工事等の融資限度を引き上げ、技術開発への助成強化と技術者の確保に配慮されたいこと。労働力確保対策としての生活環境の改善に積極的な助成措置を講じられたいこと。一般炭の引き取り体制を確立するため、石炭専焼火力発電所の建設を促進されたいこと等が要望されました。
次いで、労働組合、職員組合等からは、第六次答申については、生産規模を拡大する方向で具体的な数字を示されたいこと。経営体制については、現在の私企業体制では安定せず、特に新鉱開発に当たっての第三セクター方式は反対であり、国の責任による方式を検討されたいこと。保安対策について、具体的な方針を示し、多額の国費を投入した新鉱等には、一定期間、保安監督官を常駐させるなど、国の積極的な監督指導を行うこと。産炭地域の生活環境の改善についても、国の責任を明示し、政府の産炭地域生活環境改善調査団を派遣し、一元的に産炭地の福祉事業を行う機関を設置されたいこと。また、医師不足で難渋しているので、医療体制についても検討されたいこと。石炭財源を大幅に増額されたいこと。閉山地域を三ヵ年計画で再建されたいこと。労働力を確保するため、労働条件の改善、災害のない炭鉱、環境改善、文化施設を充実して、若い婦人の定着を図られたいこと。炭鉱離職者が再就職した後、再失業した場合にも、炭鉱離職者臨時措置法の精神にかんがみ善処されたいこと。また、開発就労、緊急就労事業などについても配慮されたいこと。労働者の意見が反映する石炭鉱業審議会に改組されたいこと。また、企業の資金繰りが賃金にしわ寄せされ、労働金庫からの融資で賄われている事実があるので、善処されたいことなどが要望されました。
以上、今回の国政調査において提起された問題点は、多岐にわたっておりますが、本委員会はもとより一関係政府機関においても、すべての要望事項について十分な検討を加え、速やかに適切な措置を講ずるよう要請し、報告を終わります。