高沢寅男の発言 (本会議)
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○高沢寅男君 私は、日本社会党を代表して、ただいま提案説明のありました所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、租税特別措置法の一部を改正する法律案につき、三木総理及び大平大蔵大臣に対して質問を申し上げます。
三木総理、いま行われている第七十五国会に対して国民が寄せている期待の最大のものは、いわゆる社会的不公正の是正が力強く推進されることではないでしょうか。あなたもまた、社会的不公正の是正を最大の課題として強調されております。
ところで、三木総理、あなたは社会的不公正をつくり出し、拡大させているものは一体何だとお考えでしょうか。それはインフレではないでしょうか。振り返ってみれば、高度経済成長政策とともに進行してきた忍び足のインフレを、恐るべき駆け足のインフレに転化さしたのは、田中前内閣であります。そして、田中内閣の二年四カ月の間に、社会的不公正は物すごい勢いで拡大してきたのであります。
三木総理も御存じのように、インフレは決して自然に起きたものではありません。それは政府の財政金融政策によって引き起こされたものであります。インフレによって社会的不公正がどんなに拡大されたか、一つ二つの例を見れば明らかであります。
昭和四十八年の所得税の全国長者番付を見れば、上位百人のうちの九十七人は土地成金で占められているのであります。同じく、昭和四十八年度の東京証券取引所の全上場会社の資産の総計を見ると、土地だけで、何と六十八兆円の含み資産となっているのであります。償却資産及び所有株式も合わせると、約八十八兆円という恐るべき含み資産となっております。言うまでもなく、インフレによって、大会社のふところには刻一刻と含み資産が蓄積をされている反面、一般の庶民の預貯金は刻一刻と目減りをさせられているのであります。
三木総理に私はお尋ねをいたします。社会的不公正を是正するには、まず何よりもインフレを収束させなければならず、そのために財政金融政策の総力を集中しなければなりません。この点について、まず冒頭に総理の率直なる所信をお尋ねいたしたいと思います。
租税の機能については、いろいろの学説がありますが、第一義的に要求されるのは、所得の再分配の機能であります。しかも、いまのようなインフレによって社会的不公正が恐ろしく拡大されている時代には、なおさら租税による所得の再分配が絶対に必要であります。インフレによって不当に利益を得た者からは重い税を取り、インフレによって被害を受けた人たちに対しては福祉政策を拡充する、こうした政策を筋道を立てて実行することによって、初めて不公正の是正は進むのであります。この単純明快な政策の原理について、三木総理はどのような信念と使命感をもって取り組むお考えか、総理の所信をお尋ねいたします。
さて、以上のような政策の原理に立って、ただいま提案説明のありました租税三法の改正法案を見るとき、私は全くの驚きと怒りを禁じ得ないのであります。
まず、昭和五十年度の租税の自然増収と減税の関係を見れば、三兆七千八百三十億円という莫大な自然増収に対し、減税はわずかに二千五十億にしかすぎません。所得税の減税はどうかと見れば、基礎控除、配偶者控除、扶養控除の人的控除の引き上げによる一般減税は千九百五十億にしかすぎません。五十年度の政府の見通しによる消費者物価の上昇率は一一・八%であり、このパーセントに見合う物価調整減税は二千九百五十億でなければならないのに、所得税の一般減税は、これより一千億円も少ないのであります。政府は、昨年度に二兆円の大減税を行い、所得税の課税最低限を標準世帯で年収百五十万円に引き上げ、それが本年は平年度化して百七十万円まで上がるのであるから、本年の新たなる減税はミニ減税で十分だと説明しております。だが、昨年の二兆円減税は、あの二〇%を超す大幅な物価上昇で、とうの昔に帳消しにされてしまったのであります。それは給与所得者が、ひとしく昨年末の年末調整でごっそりと天引きされた、あの苦しい体験の中にもはっきりと証明されております。実際のところ、昨年の九月には、すでに勤労者世帯の税引き後の実質可処分所得は、対前年比でマイナスに転じているのであります。したがって、政府が昨年の減税を理由にしてことしの減税を圧縮していることは、国民に対する二重の欺瞞であります。
三木総理、あなたは、このような国民を欺く政治が許されてよいと思っておられるのかどうか。それは田中前内閣のやったことだという逃げ口上でなく、あなたの責任ある所信を表明していただきたいのであります。(拍手)
三木総理、私はむしろ結論から先に申し上げて、あなたのお答えをお願いしたいと思います。
租税の第一の機能は、所得の再分配によって、不公平の是正を進めることであると申し上げましたが、今回提案の租税三法の改正案は、百八十度これに逆行するものであり、所得分配の不公平を一層拡大させる結果をもたらすものであります。このような逆行の改正案を内閣の名において提案されていることは、社会的公正の確保を口癖のように唱える三木総理、あなたがもしこの改正案の内容を承知して提案されているとするならば、それは国民に対する恐るべき背信行為であります。この点についていかがお考えか、私はあなたの責任あるお答えを求めるものであります。(拍手)
以下、私は具体的な内容に触れつつ、この改正案の欠陥を指摘したいと思います。これらの具体的な問題では、大平大蔵大臣の御答弁をお願いいたします。
夫婦子供二人の標準世帯の所得税課税最低限は、今度の改正で百八十三万円になることになっていますが、物価上昇と名目所得の上昇により、一般勤労者にとっては実質増税となることは、すでに指摘した所得税一般減税が、物価調整減税の所要額よりもはるかに下回っていることからも明らかであります。一般の勤労者には、そのほかに酒、たばこの増税も降りかかってくるのでありすす。それに対し、高額所得者に対しては、あの重役減税と批判を受けた給与所得控除の青天井が、ことしもまたそのまま適用されております。
また、国民の批判が最も厳しく向けられている利子、配当所得、土地譲渡所得の特別措置が、若干の選択税率の手直しにより、またもや五年間も期間延長されようとしております。政府は、利子、配当所得を完全に把握する体制の整備されないうちに、一挙に総合課税に移行することはできないと説明しておりますが、政府は、利子、配当所得を把握する体制の整備のために、いままでに一体どんな努力をされたのでしょうか。また、今後いつまでにその体制を整備するつもりでしょうか。このめどを示すことなしに、いつまでもずるずると特別措置を延長していくことは、もはや許されないのであります。この問題は、大平大蔵大臣からはっきりとお答えをいただきたいと思います。
もう一つ、不公平の代表として世論の批判を浴びている社会保険診療報酬の特別措置も、とうとうことしもまた延長になりましたが、これこそ不公平の最たるものではないでしょうか。その他、租税特別措置法及び法人税法による各種の引当金、準備金、特別控除、特別償却が大企業の実効税率を不当に引き下げ、大企業と中小企業の税負担を逆累進の状態にさせていることは、今回の改正でも何らの是正の措置はとられておりません。むしろ、資源対策の名のもとに、これらの特別措置が拡大さえされているのであります。
以上、総合すれば、社会的不公平は拡大されることはあっても、縮小是正されることは全く期待できません。このことに、私は国民の名において強く抗議するものであります。(拍手)
私は、この機会に、真の不公平是正のために、次のような税制改正を行うことを提案し、これを政府の責任において実行されることを要求して、大平大蔵大臣の所信をお尋ねしたいと思います。
第一に、勤労所得税は、現行税法による税負担額を計算し、そこから独身者は三万円、夫婦者は四万五千円、夫婦子供一人は六万円、夫婦子供二人は七万五千円の税額控除を行い、また、給与所得控除の改正を行うことによって、標準世帯年収二百八十万円までは無税とすべきであります。二
第二に、老人への年金給付金は、全額を無税にすべきであります。
第三に、退職金は、二十年勤続で一千万円まで非課税にすべきであります。
第四に、利子、配当所得、土地譲渡所得は特別措置を廃して、総合課税にすべきであります。また、社会保険診療報酬の特別措置の改正については、さしあたり、昨年末の政府税制調査会の答申案を直ちに実施すべきであります。
第五に、キャピタルゲイン課税として、株式譲渡所得への課税は復活すべきであります。
第六には、一億円以上の資産の保有者に対して、富裕税を新設すべきであります。
第七には、法人税率に累進制を導入して、資本金一億円以下、所得七百万円未満の中小法人は二八%、所得七百万円以上一億円未満の法人は三七%、所得一億円以上十億円未満は四二%、そして、所得十億円以上は四七%の税率とすべきであります。第八には、大法人所有の土地の含み資産に対しては、再評価益の課税を行うべきであります。
以上の八項目に対して、大平大蔵大臣の所信をお尋ねするものであります。
最後に、私は、もう一度三木総理にお尋ねをいたしたいと思います。
昭和三十年代以降のわが国の経済の異常な高度成長の時代は終わりました。インフレ政策と手を切り、安定した物価で安定した成長を実現していくことが、今後のわが国経済のあるべき目標でありますが、それには高額所得者、大資産所有者には税負担を重くし、その財源によって庶民のための福祉政策を拡充し、もって所得の再分配と福祉の向上によって、安定した経済成長の原動力をつくり出していかなければなりません。これこそ、福祉型の経済成長でありますが、そのために福祉型税制が、いまほど必要なときはないのであります。
三木総理、あなたは、今後の日本経済の成長路線をどのように展望し、また、どのように構想されているか、あなたの経済政策の基本的な経綸をお尋ねして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)