阿部助哉の発言 (本会議)
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○阿部助哉君 私は、日本社会党を代表し、政府の五十年度一般会計予算、同特別会計予算及び政府関係機関予算に強く反対し、日本社会党、公明党の共同提案に係る予算三案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議に賛成の討論を行います。(拍手)
三木総理が、年頭に本会議場において行った施政演説、「全人類は、地球船という同じボートに乗った運命共有者」云々から始まり、社会的不公正是正を約束した施政演説は、その後の予算委員会の審議を経て、これが全く麗しき作文にすぎない、国民の耳を欺くコマーシャルソングであったことを暴露しました。三木内閣の政治姿勢、経済運営の方針が、田中前内閣以上に反動的、反国民的であることが明らかになりました。(拍手)
いま、世界の資本主義諸国は、どうにもとまらないインフレーションと、深刻な不況の中で混迷を深めております。その根本の原因は、アメリカの核とドルの支配体制が揺らぎ、その骨格が崩壊したことであります。
三木内閣は、ベトナムにおけるアメリカの軍事的敗北、カンボジア情勢等、歴史の教訓に学ぶことなく、逆に、ここに来て、一段とアメリカの軍事戦略の中に深入りしておるのであります。
また、無責任なドルたれ流しこそ、資本主義世界の経済を混迷に陥れた元凶であるが、このアメリカのドル支配に寄りかかって、世界一の高度経済成長政策を推進してきたわが国は、いまや、インフレーション、不況倒産、失業、農業の破壊、公害など、勤労大衆に耐えがたい苦難を負わせておるのであります。
すなわち、大企業の独占価格を黙認し、大企業優先の財政、金融政策を行い、農業までそのために犠牲にして、彼らの巨大な蓄積と、笑いのとまらない高利潤を保証してきた自民党政府の高度成長政策が、今日の勤労大衆の苦難をもたらしておるのであります。三木内閣には、これに対する一片の反省もなく、これを補い改める心も政策もないことが明らかになりました。
そこで、反対理由の第一は、三木内閣の経済政策の基本である安定成長路線についてであります。
一体、首相が言う安定成長政策とはどういうことなのか、予算委員会の審議を通じて、明確な答弁は全くなかったのであります。資源の制約条件とか、経済成長率を抑えるとか言われるが、その実質的な内容は、何一つ明らかにされていないのであります。
顧みますと、池田内閣の高度成長政策に対する国民の批判を回避するために、佐藤内閣は、三木内閣と同様に、安定成長を一枚看板として登場したのであります。その結果は、池田内閣を上回る超高度成長であり、国民には、インフレの災厄が年ごとに激しさを増して襲いかかったのであります。田中内閣については、いまさら言うまでもありません。
なぜ、これまで自民党内閣と自民党は、安定成長と言いつつ、高度成長政策に化けてしまったのか。なぜ、国民を欺き続けてきたのか。
首相が、本当に国民の福祉と生活の改善に直結する経済の安定成長路線をとろうというのであれば、何よりも、これまでの高度成長政策の深刻な反省と、その原因の摘出を行わなければならないのであります。しかし、首相の口から出た言葉は、高度成長政策の反省どころか、弁護であります。原因の究明と解決は全くなく、これからもやろうとする気配さえないのであります。
いま、安定成長という言葉が果たしているただ一つの役割りは、一方でインフレと、つくられた石油危機を利用し、たった三年足らずの間に、五割も資本をふやした大企業の蓄積をそのままにして、不況に名をかり、国際競争力をまたまた旗印にして、勤労国民に賃下げ、首切り、果ては、生活水準の切り下げまで強要しておるということだけであります。(拍手)
首相は、その先頭に立っておるのであります。あいまいな答弁のその衣の内側を、すでに国民は見抜いておるのであります。首相の言う安定成長とは、高度成長の仕組みをそのままにして、当面、勤労国民の一方的な犠牲によって、不況の脱出を図ろうとするだけであります。
その結果、国内市場は狭まり、国際競争力を旗印に三たび、しかも、国民にとってこれまでにない残酷な、大企業の高度成長を準備する政策であります。大企業にとっては、一休み、一服して合理化をやる。しかし、国民にとっては、一服盛られるに等しい打撃であります。
この五十年度予算原案は、この三木内閣の政策を推進し、大企業に豊かさを、国民に高物価、重税、生活水準の切り下げといった重大な犠牲を強いるもの以外の何物でもないのであります。(拍手)
第二は、首相の公約とは全く逆に、五十年度予算原案が不公正を拡大しておる問題であります。
これは、一例を示せば十分であります。政府は、五十年度予算案で、社会保障関係費を増額したと宣伝しております。無拠出制年金をわずか四千五百円引き上げまして、福祉充実の看板のように言っております。
ところで、五十年度の税収増加額は、昨年度当初予算に比べて三兆七千億円、国民一人当たり三万七千円もの大増税であります。特に、その大部分を労働者が負担する源泉所得税は一兆四千五百七十億円、何と四五・七%の増加であります。四千三百億円の間接税の増税を加えれば、増税の三分の二が勤労国民の肩に直接のしかかるのであります。
政府の宣伝する社会保障費の増加額はこの半分の額であり、無拠出制年金の国庫負担増加額は、わずか六百九十七億円にすぎないのであります。
さらに、五十年度税制改正では、一兆数千億円を超える交際費の乱費には全く手をつけず、億を超える大資産家にまで相続税を軽減し、利子、配当その他、金持ち、大企業優遇の税制のほとんどを温存し、拡大さえしておるのであります。
社会正義のシンボルと言われる税の公平の原則は、五十年度予算案で回復するどころか、社会的公正を口にする三木首相自身によって、かえってじゅうりんされているのであります。(拍手)
第三は、政府予算原案のどこを見ても、日本農業再建への展望が見出せないだけでなく、これまで農業を破壊し、農民を苦しめ、ついに民族存立の基礎まで危うくした農業政策を継続する意図が読み取れるのであります。
穀物自給率が四二%にまで低下し、米を除く他の食物の大部分を輸入に求めなければならない現状が、どれほど国民生活を不安定にし、さらに国の安全を危うくしているかは、一昨年来の出来事を見れば、いまさら説明の必要のないところであります。
政府は、最近に至って、ようやく日本農業の再建を口にいたしております。幾つかの計画も示しております。しかし、そのすべてが口先だけであり、ペーパープランにすぎず、予算の裏づけのないものであります。
日本農業は、もはや取り返しができないほどの危機にあります。耕作面積が減少しているだけではありません。農業適地は大企業のコンビナートに変わり、農地は地力が低下し、公害で生態系の変化さえ生じているのであります。減反した土地を再び農地に変えるには、膨大な費用がかかります。農民にその金はありません。農民は、農業を見捨てました。跡取りでさえ、十人のうち、九人が農業を放棄しておる現状であります。土地と人とが農業から失われたのであります。
農業を再建するたった一つの方法は、高度成長政策を推進するために、大企業に行ったほどの大規模な農業投資を行い、いま働いておる農民が、農業をやっていてよかったと思う状況をつくる以外ないのであります。五十年度予算原案から、このような農業再建策の片りんさえうかがい知ることができないのであります。(拍手)
第四は、公害の問題についてであります。
これまた、首相の人間尊重というリップサービスは、産業優先の本音にみごとに席を譲り、国民を裏切ったのであります。
さきに政府が決定した自動車排気ガスの五十一年度規制が、トヨタ、日産など、大自動車メーカーの圧力に屈服した事実こそ、雄弁に、弁解の余地がないほど三木内閣の本音を明らかにしておるのであります。すなわち、何よりも人間の健康と生命を大切にするという政治の原点を、三木内閣は持っていないし、今後も持つことができないということであります。
また、予算委員会の審議において、日本企業の海外での公害のたれ流しの輸出について、政府は何らの規制もしていない事実が明らかになりました。このために、一銭の予算措置もないことも明らかになりました。わが国産業の公害が他民族にまで被害を与え、すでに反日運動の原因になっているにもかかわらず、なお省みようとしない。施政演説の冒頭でお述べになった「地球船という同じボートに乗った運命共有者」という言葉が、そらぞらしく響くではございませんか。(拍手)
第五に、わが国に確実に核兵器が持ち込まれている事実が、数々の資料で明らかになったにかかわらず、首相は、アメリカの言いわけにもならない弁解をさらに代弁し、日本の核基地化にほおかぶりし、アメリカのアジア人民抑圧の前進基地としての立場を擁護し、強化しようとしている事実であります。これが独立国の政府の態度と言えるでしょうか。
また、隣国である韓国との関係についても、金大中氏事件にほおかぶりしたまま、その弾圧政治、専制の政治が国際批判を浴びておる朴政権に対し、またまた新たなてこ入れさえ行おうとしておるのであります。首相は、就任前の自分の言葉を捨て去って、これまでの自民党内閣以上に、日米韓運命共同体を強化する道をひたすら進んでおるのであります。(拍手)
最後に、当面している独占禁止法の改正に対する三木首相の態度に言及しないわけにはまいりません。
インフレを初め、日本経済を混乱させ、国民生活を苦しめている諸悪の根源が、高度成長政策で肥え太った独占大企業にあることは、いまさら説明を要しません。独占大企業に規制を加えるのは当然であります。ところが、三木首相の手で、すでに、その核心である原価公開と企業分割は削除され、その上、三木派の大番頭である河本通産相の手で、さらに骨抜きにされようといたしております。
首相は、就任に当たって、独禁法の抜本的改正を公約されました。しかし、実際は換骨奪胎にも等しい内容であります。独占大企業の基本的利益をむしろ擁護しようとするものであります。首相の態度に、勤労国民にかわって強く抗議するものであります。(拍手)
五十年度予算政府原案と、予算審議で明らかになった三木内閣の政策は、国民生活、国の安全、民族の将来など、どの角度から見ても、反国民的と言わざるを得ません。五十年度予算政府原案を断じて支持するものではありません。
以上、政府案に反対し、日本社会党、公明党の組み替え案に賛成して、討論を終わります。(拍手)