三木武夫の発言 (本会議)
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○国務大臣(三木武夫君) 立木議員の質問にお答えをいたします。
第一問は、共産党のスパイ調査問題に対しての御質問でございます。戦前の治安維持法に対する犠牲者への謝罪とか、賠償とかいうお話でございます。治安維持法について、いろいろ問題を含んだ法律であるという批判があることは事実でございますが、しかし、その当時においては有効な法律であったわけでございますから、それに対して謝罪とか賠償とかいうようなことは考えてはおりません。
また、第二の問題は、ポツダム宣言について、一連の民主的処置は当然の処置と考えるかということでございますが、連合国最高司令官は、ポツダム宣言に基づいて占領政策を遂行するために、みずから適当の処置がとれる権限を有しておったわけでございます。その中に基本的人権と民主主義の擁護のための処置も含んでいたことは御承知のとおりでありますが、その精神は今日まで受け継がれておるものでございます。
次に、立木君はロッキード問題についていろいろ御質問がございました。この問題については、ロッキード事件の証人喚問に対して国会で決めるというようなことは非常に無責任な答弁だと言いますが、国会は国権の最高機関でありますから、国会の決定に対して行政府の私がとやかく申すことはできません。しかし、自民党が多数を占めることは事実でございますから、証人の喚問については、国民の疑惑を受けないように自民党の委員が厳正に、冷静に検討するようにという注意は与える所存でございます。
それからまた、ロッキード問題に対しての処置というものが非常に手ぬるいというお話でございましたが、私はやれることはやっているという考えでございまして、特にロッキード事件を私は隠そうというような考え方は全然ないわけでございます。だから、これからの手順についても、先般も国会で申し上げましたように、遅くも十月の十五日までには稻葉法務大臣が——まだこれ捜査は終了してないわけですから、児玉ルートが残っておるわけでございますが、しかし、いままでの捜査結果に基づいて、いろいろこのロッキード事件に関係して金品の授受のあったような、そういう問題も含めて、国会に対して総括的な、最終報告でございませんから、中間報告をいたすということでございます。
また、この政治的道義的責任は、私は議長裁定というものを非常に重く見るわけです。それは各党の党首が寄ってこの議長裁定というものに対して同意を与えたものでございまして、その中には政治的道義的責任の有無に対して国会が調査する、こういう前提に立って国会の国政調査権の行使について最善の協力を政府がするということに私は承諾を与えたものでございます。これは誠実に守らなければならぬと考えております。
そこで、国会の道義的政治的責任の追及に対して最善の協力というととは、いままでは法律的責任を捜査当局が、これは政府もやってきたわけですから、この資料というものはきわめて政治的道義的責任追及の重要な前提になることは明らかですから、まだ事件が終了してないわけですから、現に捜査が進行しておる、そういう制約の中にあっても、ぎりぎりまで国会の国政調査権に協力をしましょうと、国会においていわゆる灰色と言われておるものの一つの範囲はこのように考える、こういう範囲を国会の意思としてお決め願えば、個人名も含めて資料を提出いたしますと、こう言うんですから、これはぎりぎりの協力であると御承知を願いたい。非協力ではないんです。こういうことで、私のやっておることが、それは手ぬるいとか、いろいろありましょうが、冷静に考えたならば、いま捜査が進行しておる段階において、まあ、これ以上の協力というものは私は刑事訴訟法の精神から踏まえても困難ではないかと、ぎりぎりの協力である。そういうことで、国会の政治的責任あるいは道義的追及に対して政府は消極的ではないと、ぎりぎりいっぱいの協力であると御承知を願いたいわけでございます。
それから、労働大臣も出席の要求でございますから、雇用問題については労働大臣からお答えをいたします。
田中金脈問題について御質問がございました。この刑事的な法律的な側面は、新星企業の宅地建物取引業法違反で関係者の有罪を確定いたしました。信濃川河川敷の問題は、地元の住民などから出されておった詐欺罪告訴については、新潟地検で不起訴処分にいたしたわけでございます。これ以上のいろいろな問題については、これは田中氏自身がいろいろこの問題に対する国民の疑問にこたえるということを言われておるわけでございますが、まだそれはいろいろな事情でおくれておるわけでしょうが、こういうことで問題は国民の理解をいただくことが適当であろうと、われわれが追及するものは法律的な側面でありますから、これについてはいままでやることはやってきたと思うわけでございます。
それからまた、政治資金の問題についていろいろお話がございました。先ほども多田君の御質問にお答えしたように、企業が献金をするということは私は悪だとは思わないんですね。しかし、いろいろな国民の疑惑がここによって生まれることも事実ですね。だから、できるだけ個人の献金に、政党の運営というものは党費あるいは個人の献金に依存していくべきであるという方向に私も賛成なんです。しかし、まだ日本の社会的ないろいろな諸条件は、一遍に個人献金に依存するというところまでは、すぐに切りかえることは行きにくいので、やはり一つの準備期間といいますか、いきなり行かないで、それまでの準備期間というものは私は実際問題として要ると思う。だから、政治資金規正法の法律にも、五年後にはそういう点を見直すという規定を加えたのもそういう意図からと思うわけでございますから、五年と限らずもっと早く必要があるというなら見直してもいいわけですから、そういうことで、方向は大体大きな違いはないけれども、行くまでの間に多少の準備期間を置くか置かぬかという違いでありますから、われわれも今後自民党の運営にできるだけ、そういう方向で党の資金というものを集めるように努力をいたしてまいりたいと考えておる次第でございます。
また、ロッキード事件に対していろいろな改革というものをどう考えるかという御質問がございました。私は、これはやはり二つの面があると思うんです。精神面ということは私は無視することはできない。公人としての一人一人が、やはり目的のためには手段を選ばずという考え方を捨てなけりゃいかぬ。それは民主主義の敵である。そういうことで、これは単に金ばかりではありませんよ。目的のためには手段を選ばずということは民主主義の敵である。この精神に徹して、公人としての、あるいは公党としての倫理を確立することが大前提である。いろんな法律をつくってみましても、それはまた全部人間の行動を法律で縛れるものではない。それが前提でありますが、一方において、精神面ばかりではありません。あるいは行政指導、役所の行政指導のあり方とか、許可、認可、こういう事項については再検討を必要とする。また、いわゆる役人の人たちの民間企業に対しての天下りというものに対しては、現在も規制をされておりますが、これはもう一遍考え直してみる必要もある。ことに、多年にわたって政権を担当してきた自民党、これはやっぱりロッキード事件に当然に反省があってしかるべきですから、自民党の粛党という見地から、党の改革について私はいま党との間にいろいろと相談をいたしておるわけで、これは自民党の責任においてやるつもりでございます。
とにかく、ロッキード事件というものは、いろいろ真相を暴露することが目的ではないのです。それもやらなければならぬが、これを機会に——私は自民党ばかりでないと思いますね。自民党が一番責任は重いにしても、各党がこれを機会に、政党の健全化、日本の民主主義の基礎を強固にする、そのために、この事件を教訓として日本の民主政治再生の機会たらしめるところにロッキード事件の教訓がある、こう考えて、これを厳粛に受けとめるつもりでございます。
お答えといたします。(拍手)
〔国務大臣浦野幸男君登壇、拍手〕