中村茂の発言 (建設委員会)

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○中村(茂)議員 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました住宅保障法案につき、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 インフレの進行、諸物価の高騰は、国民生活をますます苦しくしておりますが、とりわけ、住宅問題は深刻であり、わが国の全世帯の三分の一以上が住宅困窮を訴えている状況です。住宅事情改善を先導し、その中心となるべき役割りにある公共賃貸住宅は住宅総数のわずか六・九%、約二百万戸にすぎず、居住水準は賃貸住宅の平均で十七ないし四十平米という狭小なものであり、住居費負担は世帯総収入の二〇ないし三五%にも達しております。このような現状のもとで、国民は自力による住宅確保に狂奔していますが、日常の生活を切り詰め貯蓄に努め、ようやく持ち家を取得しようとするときは、さらに住宅ローン等一生を通じる借金をしなければなりません。ようやく建設にこぎつけても、地価、建材等の高騰により資金不足となり十分な規模、設備を確保できず、また日々、高金利の借金返済に追われ、生活が追い詰められて、せっかく入手した住宅を手放さざるを得ない場合も出てきております。
 わが国の住宅行政は、狭小、高家賃、劣悪施設の民間アパートに住むか、借金をし持ち家を取得し一生返済に追われるかの二者選択を国民に強制するものであり、健康の阻害はもとより、家庭不和さらには殺人、心中など悲惨な事故を引き起こす種をまき散らす結果となっています。
 このような切迫した住宅事情であるにもかかわらず、政府は公共賃貸住宅の家賃の引き上げや、民間依存への傾斜を強めようとしておりますが、私は、こうした方針は住宅難をさらに深化させ、国民生活を破壊へと追いやるものであり、国民の要求とは全く乖離したものであると指摘せざるを得ません。
 世界人権宣言、ILO労働者住宅に関する報告等、住宅が人間にとって生存権、生活権にかかわる重要な要素であることは、すでに皆様御承知のとおりでありますが、欧米の先進諸国におきましては、国民に対する住宅供給が国の責任であることが認識され、イギリスの公営住宅、フランスの標準家賃住宅、西ドイツの社会住宅等、具体的手法はおのおの異なりますが、どの国も住宅の国家責任を十分認識し、その上に立った住宅行政を展開しております。社会主義諸国におきましては、さらに進んだ住宅確保が徹底されております。国際行政研究所の一九七一年の報告書では「今日では、住宅の供給は学校教育、保健サービス、職業訓練、上水道、ごみ処理施設、都市交通といった都市の施設と同様、国家に責任があるという考えが広く受け入れられている」と強調しております。ところが、わが国におきましては、住宅は各人の責任として位置づけられ、国は、ほんの一部の階層に対しての住宅供給を行っているにすぎません。住宅政策の目的、目標も明らかにされておらず、国民のあるべき適正な居住水準が提示されても、その実現の道程は国民おのおのの努力を強調するものでしかありません。
 良質、低廉な公共賃貸住宅の国民への供給を怠り、持ち家、借家を選択する公正な条件を国民に提供せず、政府の住宅行政の立ちおくれに起因する国民の持ち家志向に依拠しているのが、わが国の住宅行政の実態であり、今日の住宅難の根本的原因でもあります。
 日本社会党は、このような状況にかんがみ、矛盾の隠蔽や個別的対応ではなくして、住宅難の抜本的解消を図るため、住宅保障法を制定することを提案する次第であります。
 次に、この法律の内容について御説明申し上げます。
 第一に、本法の目的でありますが、すべての国民に対し健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を保障するため、国の住宅政策の目標を明らかにするとともに、その目標達成のため国及び地方公共団体が講ずべき施策の基本を定め、住宅対策を強力に推進し、もって国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することといたしております。
 第二に、国の住宅政策の目標でありますが、すべての国民が、適正な居住水準が確保されかつ良好な環境を備えた住宅に、適正な住居費の負担において居住することができるようにすることといたしております。
 第三に、国、地方公共団体、国民、事業主のおのおのの責務と協力を規定いたしております。
 第四に、国民の住生活の基準につきまして、住宅の規模、構造、設備、環境、住居費負担の基準を明らかにいたしております。特に、居住規模については標準世帯で八十平米、住居費負担については標準世帯で賃貸住宅の場合、世帯主所得の一〇%と基準値を明記しております。
 第四に、住宅供給の促進についてでありますが、地方公共団体主導の長期計画の策定、計画においては公的資金住宅の事業を明らかにすること、公的資金住宅の事業量の二分の一以上は公共賃貸住宅といたすこと、また、民間住宅への指導と援助、関連公共公益施設の整備等につきましておのおの規定いたしております。
 第五に、住宅困窮者に対する公共住宅への優先入居、住居費補助を行うための住宅困窮者登録制度の実施を行うことといたしております。
 第六に、国及び地方公共団体は、住宅宅地取引の公正の確保について必要な施策を講ずることにいたしております。
 第七に、住宅行政を強力に推進するため行政組織の整備と行政運営の改善を図ることといたしております。
 第八に、総理府に付属機関として、住宅宅地政策審議会を置くこととし、本法施行に関する重要事項を調査審議することとしております。委員は両議院の同意を得て内閣総理大臣が任命することとし、住宅供給を受ける勤労者の代表、供給を行う者の代表、学識経験者によって構成することといたしております。
 以上、この法律案の提案理由及びその内容につきまして御説明申し上げました。(拍手)

発言情報

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発言者: 中村茂

speaker_id: 18125

日付: 1977-04-22

院: 衆議院

会議名: 建設委員会