寺前巖の発言 (本会議)
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○寺前巖君 私は、日本共産党・革新共同を代表し、いわゆる日韓大陸棚協定に関し、主な点にしぼって質問をいたします。
政府は、この協定の審議に当たって、資源エネルギー問題の解決はわが国にとってきわめて重要であると強調してきました。わが国が自主的、民主的なエネルギー政策のもとでエネルギー資源の開発を積極的に進めるのは当然であります。しかし、石油の開発について言えば、今日その成功率はきわめて低く、巨額の投資が必要となっています。それだけに国民の合意を得ることは必要欠くべからざるものであります。
ところが、去る四月二十七日の衆議院外務委員会において、自民党の諸君は、民社党の同席を得て、わが党には今国会この議題について一度も質疑をさせなかったばかりか、総理質問や国民に対する中央、地方の公聴会をも行わさせずに審議を打ち切り、採決を強行したのであります。
この暴挙は、議会制民主主義のじゅうりんというにとどまらず、国民に説明のつかない反民族的、反国民的協定の疑惑の隠蔽以外の何物でもないのであります。(拍手)
大体、韓国政府は、今国会で本協定が承認されなければ単独開発に着手するなど、脅迫的言動を行ってきておるのであります。政府は、この件に関する韓国の内政干渉的態度をどのように考えているのか。また、協定の自然成立をねらった会期の延長は断じて容認しがたいものでありますが、これらの件について、総理、また自民党の総裁としての見解を伺いたいと思うのであります。
第二に、本協定の疑惑に満ちた利権絡みの背景についてであります。
本協定の共同開発区域は、もともとわが国の主権的権利とも言うべき範囲であります。ところが、一九六九年のエカフェ報告と前後する時期に、アメリカ系メジャーが、東シナ海周辺の鉱業権獲得に駆け回り、そして、わが国の設定鉱区に重複的に韓国の大陸だなと称してその権利を韓国政府に求め、この地域を問題にし、そしていま、あたかも主権的権利問題をたな上げにする顔をして、両国の利益を図っていくように見せかけているのであります。
日本政府自身も、一九七二年四月までは、国際司法裁判所へ提訴してでもこの地域の主権的権利を守ろうとして、韓国へも提起してきていたのであります。ところが、提訴決意後約四カ月の第六回日韓定期閣僚会議では突如として共同開発へと急転したのであります。との間の事情について韓国ロビイスト、日韓協力委員会常任理事の矢次一夫氏は、新聞や雑誌で、当時の金山、後宮新旧駐韓大使とともに、韓国の金総理に共同開発でやろうと提起し、金総理の合意を得たと説明しております。
総理、日韓協力委員会がアメリカ系メジャーの策動と呼応して、一九七〇年前後から取り組んできた共同開発構想の実現に向けてわが国政府がこの地域の主権的権利を主張していたそのときに、わが国駐韓大使が韓国政府にこのように働きかけていたという驚くべき事実をどう考えますか。
また、何ら共同開発をする必要もなければ、筋合いもないこの地域を、開発担当大臣である田中通産大臣、あなたは当時日韓協力委員会の事務総長でありましたが、なぜ日韓共同開発を促進をしなければならなかったのか、しかと説明を願いたいのであります。
第三は、先ほど来述べてきています主権的権利の放棄の問題であります。
現行大陸棚条約では、相対する国の大陸だなの境界画定は合意もしくは中間線等距離の原則によるとされており、現に世界の二十四に及ぶ大陸棚境界画定協定もすべてその原則を基本としております。それはいまや国際的合意ともなっているのであります。
ところが、今日わが国政府は、日韓の中間線からわが国九州の南西に広がる日本の領海十二海里と接したこの区域について、現行大陸棚条約によっても日本の主権的権利下にあることを一向に強調しようとしていません。
外務大臣、世界のどこに相対する国の大陸だなの境界を一国の主権的権利とも言うべき範囲に深く入り込んで、中間線等距離の原則以外で決めた国がありますか。御説明をいただきたい。
また、政府は、この件に関する法的立場をたな上げにしたと言っておりますが、それはわが国の主権的権利が及ぶ区域ではあるが韓国側が妥協しないのでやむを得ず譲歩したということではないのですか。何がたな上げですか。総理の納得のいく答弁を求めます。
また、韓国は、地質学者の間においても異論の多い沖繩海溝の存在を理由とした自然延長論を盾に、九州の間近までを韓国の大陸だなであると主張しております。しかし、この主張は、国際司法裁判所でも強調された公平の原則には全く合致しないものであります。この点についても外務大臣の見解を伺いたいのであります。
さらに、いまや世界の大勢となっている二百海里排他的経済水域から見れば、この協定は日本の国益にとって決定的な損失を与えるものであります。この決定を待たずして本協定の締結を急ぐことは、この地域の権益を五十年という長き将来に向かって事前に権利を放棄することにほかならず、世界の笑い物になるとさえ言わざるを得ないのであります。総理の明確なる見解を求めます。
第四は、十分な環境保全対策がなされないままに海底油田開発を促進していいのかという問題であります。
改良に改良を重ねてきた北海油田の最近の大事故を見るとき、技術過信はきわめて危険であります。万一この共同開発区域でこのような事故が起これば、黒潮の分岐点でもあり、東シナ海はもちろん、日本海や太平洋沿岸にも被害が広がり、わが国の漁業にきわめて広範囲にわたって壊滅的な打撃を与えるのであります。それだけに、開発は慎重に慎重を重ねるのが当然であります。
ところが、外務省発行の。パンフレットには、「共同開発区域ではこのような事故が起る可能性はありません。」と断定しているのであります。
総理並びに外務大臣、この非科学的な認識で、海洋汚染することなく開発できると考えているのですか。
さらに、韓国においてはわが国の海洋汚染防止法に相当する法律がなく、協定調印後も整備が進んでいません。また、韓国の法令は、韓国政府と開発権者の契約をもって法令とするなど、公害規制の面でもきわめて立ちおくれが目立つのであります。
協定第十九条は、いずれかの国の開発権者が操業管理者となって開発するとき、その操業管理者の国の法律を適用するとしていることから見ても、この問題はきわめて重大であります。また、わが国においても直接海底油田開発に対応する法制度はまだ整備されていません。
総理並びに環境庁長官、このような状態で事故の防止や対策が十分とられ、漁場や産卵場などが保全し得るとお考えになるのか、納得のいく説明を求めるのであります。
第五は、この開発計画が国益にかなうものではないという点であります。
政府は、わが国独自の石油確保の目的で石油開発公団をつくり、石油開発事業に対して出資や融資を行ってきました。ところが、石油が出ず、会社がだめになれば、出資はもちろん、融資分も返済しなくてもよいという、いわゆる成功払い方式をとっております。このため、いままでに融資した総額千四百三十五億円についても、すでにその約一割、百三十六億円がむだになっているのであります。この額は今後ますますふえていくでしょう。
ととろで、本協定によって予定されている共同開発事業は、まさにメジャー支配のもとに進められるものであります。韓国側開発はすべてメジャーの手であり、わが国側もまた各社ともメジャーと半々の共同事業となっているのであります。わが国が莫大な投資を行い、成功したとしても、石油は実際には全体の四分の三がメジャーの手に渡ってしまうのであります。
通産大臣、この地域の開発計画の内容と投資予定額、石油開発公団による融資の見込み額、さらには石油の採取予想量など、正確に事業の全容を国民の前に明確にお示しになるべきであります。
さらに、本協定に基づく特別措置法案では、鉱区税を大幅に引き下げ、探査権設定登録は現行の八分の一に、採掘権設定登録は現行の二分の一にするなど、至れり尽くせりのものとなっております。なぜこのようにこの開発に限って特別の優遇措置をとるのか、これらの点について通産大臣の所見を伺います。
以上、質問しましたように、この協定は多くの問題と疑惑が解明されないままになっています。そうして、ろくろく国会審議もせず、わが国の主権と国益を著しく害する協定の批准をいま進めようとしているのであります。
私は、このような反民族的、反国民的協定には、断固反対することを表明して、補充質問を終わるのであります。(拍手)
〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕