高沢寅男の発言 (本会議)
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○高沢寅男君 私は、日本社会党を代表いたしまして、福田総理の所信表明演説に対して質問し、総理の所信を国民の前に明らかにされることを求めるものであります。
質問に入るに先立ちまして、私は、この壇上をおかりして、最近の横浜市における米軍機の墜落によって犠牲となられた方々に対し、また、クアラルンプールにおける日航機の墜落によって亡くなられた方々に対して、謹んで心からの哀悼の意を表明する次第であります。(拍手)あわせて、日航機ハイジャック事件で人質となられた方々の筆舌に尽くしがたい御心痛に対してお見舞いを申し上げるとともに、全員無事に解放されたことを心よりお喜び申し上げる次第であります。
私は、政府がハイジャック事件に対し、人命尊重を旨として慎重に対処された立場を理解しつつ、しかし、今回の苦い経験を厳しく再検討されて、今後再びこのような犯罪を起こさせないために、国内的にも国際的にも格段の対策をとられることを御要望申し上げる次第であります。
さて、福田総理、昨年年末にあなたを首班とする福田内閣が発足してから九カ月になります。あなたは、日本丸の船長として、わが国の経済危機を乗り切ってみせるという強い意気込みで総理に就任されましたが、現在の日本経済はいかがでしょうか。依然として構造不況の暗いトンネルの中にあります。あなたは、この不況を、もっぱらオイルショックの結果とお考えのようでありますが、それは、本当はスタグフレーションという現代の資本主義の重い病気から来ているものであります。あなた方自民党は、口を開けば自由主義経済と言われますが、もし本当に自由主義であるならば、現在の過剰生産の不況の中で物価は大幅に下がるべきはずであります。ところが、不況であっても物価は下がらない。下がらないどころか、大幅に上昇していく。これがスタグフレーションであります。あなたがどんなに公共事業費をふやしても、また三回にわたって日銀公定歩合の引き下げをしても、こうしたいままでの型にはまったやり方では少しも景気が回復しないのは、このためであります。
最近のわが国経済を見ると、一方では鉄鋼、自動車、電機などの国際競争力の非常に強い産業が、国の経済の先頭に立って物すごい勢いで輸出を伸ばしています。これらの産業は、今後ますますその強さを増していくのではないでしょうか。その結果は、日本に対する円の切り上げを求める国際的な圧力が強まる一方であります。
しかし、わが国経済には、国際競争に太刀打ちできない、非常に立ちおくれた膨大な産業分野があります。この分野にこそ、ほとんどの中小企業が集中し、そしてまた、ほとんどの国民の生活がかけられているのであります。もし万一、一ドル二百五十円あるいは二百四十円の時代が訪れ、この為替レートで合理化のローラーがかけられたとするならば、日本経済はどうなるでしょうか。まさに死屍累々たる倒産、破産のあらしに見舞われることを私は憂えるものであります。
福田総理、スタグフレーションという観点から見ても、また、日本経済の二重構造の矛盾に対処するという観点から見ても、もはやいままでの経済政策の通用できる時代は終わったのであります。あなたは、経済政策の発想を大きく転換されるべきであります。
財政、金融政策を総動員して、まず大企業の経済活動を高め、それからその波及効果を国民経済の各部門へ及ぼしていくという、いままでの上から下へのやり方ではだめであります。これを逆転させて、まず社会保障の水準を高め、中小企業や農林漁業の立ちおくれを思い切って立て直し、一般庶民の経済力、特に消費購買力を下から上へ向けてつくり出していくことが必要であります。
私は、まず冒頭に、以上に申し上げたような経済政策の発想の大転換をおやりになるのかどうか、この根本問題について、総理の所信をお尋ねをいたします。
あわせて、本年度の六・七%経済成長は国際的にも総理の公約となっていますが、これが果たして達成できるのかどうか、総理の所信をお尋ねいたします。
さらにまた、一部の伝えるところによれば、あなたは年内にも訪米してカーター大統領と会談し、ロンドン首脳会議の結果を見直しされるお考えだということでありますが、本当に訪米されるのかどうか、総理の御予定をお尋ねをいたします。
次に私は、雇用問題についてお尋ねいたしますが、この問題についても、日本経済の循環の型が大きく変わったことをまず指摘しなければなりません。
いままでの日本経済は、まず輸出の伸びが引き金となり、そして在庫の調整が進み、続いて設備投資が活発になり、こうして好景気が訪れたのであります。雇用の動きを見ても、不況のときは雇用が縮小し、好景気になると雇用が拡大いたしました。景気の動向と雇用の動向は同じ曲線を描いていたのであります。
ところが、減速経済時代を迎えた今日、過剰な設備と過剰な在庫の圧迫のために、あれほど国際的非難を浴びて輸出を伸ばしながら、いまだに民間設備投資は動かず、構造不況のトンネルは出口も見えません。雇用の動向もまた、不況によって縮小した雇用は、景気が回復してもなおかつ雇用の縮小傾向が続くという時代になりました。政府の統計で現在百万人を超えている完全失業者は、今後もなおふえ続けていくものと憂慮せざるを得ません。
これに拍車をかけるように、最近は銀行が企業に融資をする場合、人員の削減を融資の条件とする傾向が目立っております。企業の側でも、景気の回復に伴う生産増加を、雇用の増加ではなく残業の増加で対応しようとする傾向が目立っています。
こうした状況から見るならば、いままでの政府の雇用政策の土台にあった、経済が成長すれば完全雇用ができるという考えは、その基礎が崩れたと言わざるを得ないのであります。
今後の失業対策は、単に手当をふやすという政策だけでは対応できません。仕事そのものをつくり出す政策が必要であり、それは第一義的に政府の責任であります。
私は、この雇用政策の大前提をまず総理が確認されて、雇用の機会をつくり出すプランを政府の責任で作成されることを求めるものであります。
わが党は、今国会に当面の雇用対策に関する雇用対策臨時措置法案を提出いたしますが、構造不況産業の離職者を中心に、雇用保険の給付率の引き上げ、給付期間の延長、また雇用基本法制定による解雇の制限、定年の延長、労働時間短縮などの措置をとられるよう総理に要望する次第であります。
福田総理、いま国民が大きな不安を感じているのは、恐るべき大増税の時代がやってくるのではないかという心配であります。税制調査会は、中期税制の中心の柱に一般消費税の新設を答申いたしました。一般会計予算の三〇%を占める公債依存から脱却するには、国の税収をふやさなければならないことは自明の理であります。問題は、だれに対して、どこに対して増税するかということであります。これ以上一般国民、勤労庶民に対して税負担を重くすることは許されません。したがいまして、一般国民の税負担を重くし、しかも低所得者ほど高負担になるという逆累進性を持ち、また、物価の騰貴を招くところの一般消費税の新設には、私は絶対に反対であります。
政府、日銀は、今次の不況対策の一環として、三回にわたって公定歩合を引き下げ、これに連動して、貸出金利と預貯金の金利の引き下げも進めました。この措置によって、企業が借入金の金利負担の軽減で得をする分が約一兆二千億円、それに対し、一般庶民が預貯金の金利の減少で損をする分が二兆円以上と言われております。福田総理、あなたはこの不公平を何とごらんになりますか。同じ政府の政策によって、一方には得をするものがあり、他方には損をするものがあるとすれば、得をするものにこそ税をかけるべきではないでしょうか。しかも、これらの企業は租税特別措置によって、いままでにも莫大な減税、免税の恩恵をこうむってきたのであります。さらに、海外に設立したぺ−パーカンパニーを利用して何百億円の脱税をしているのもこれらの企業であります。
福田総理、アダム・スミスの昔から、租税の基本原理は負担公平の原則であります。あなたは、大企業優遇の租税特別措置の整理と法人税への累進制導入を断行すべきであります。大企業が投機的に抱えている莫大な土地資産への増価税を断行すべきであります。利子配当所得を総合課税にするとともに、年収一千万円以上の高額所得者に対する所得税の付加税を断行すべきであり、さらには、社会保険診療報酬の体系の抜本改正と見合って、医師優遇税制を廃止すべきであります。そして中小企業と庶民を泣かせる一般消費税は断じてやるべきではありません。こうした税制改正の基本方向について、総理の所信をお尋ねいたします。
経済高度成長の時代には、成長に伴う矛盾のしわ寄せを受け、不況になればなったで、いまや構造不況のしわ寄せをまともに受けて、絶体絶命の立場に置かれているのが中小企業であります。日本経済における中小企業の重要性を認めるならば、今後のわが国産業構造の中に中小企業の存立と発展の分野をはっきりと確立しなければなりません。その上に立って中小企業の近代化と共同化を進め、また親企業に対する下請業者の立場を強める団結強化の法律制度も確立すべきであります。国民の税金によって行われている官公庁の仕事については、官公需の五〇%までは中小企業に確保すべきであります。当面、緊急に求められているものとしては、中小企業倒産防止基金制度を思い切って推進し、あわせて、すでに目の前に迫った年末の金融対策についても機敏な措置をとるべきであり、これらについて総理の所信をお尋ねする次第であります。
わが国の産業構造の中で、最も根本的な再建策を求められているのは農業であります。カロリー換算で現在わずかに四〇%に落ち込んだ食糧自給率を、五年ないし十年の間に少なくも七〇%まで回復させること、このためには、日本農業の最も得意の分野である稲作農業をみずから切り捨てるような愚かな政策はやめるべきであります。そして既耕地の裏作利用二百万ヘクタールを含む農業基盤整備を進め、畜産振興の土台である飼料の自給体制を確立すべきであります。総理の所信はいかがでしょうか。
また、生鮮食料品の対策でありますが、生産者である農漁民の人たちにとっても、消費者にとっても、需給の変動によって、絶えず、しかも極端に価格が変動し、そこに不当な投機業者のつけ入るすきを与えています。特に許しがたいのは、せっかくの冷凍冷蔵施設が大商社や投機業者の買い占め、投機の手段に利用されていることであります。私は、生鮮食品の安定供給と流通機構の整備に総理の格別なる御努力を要望するものであります。
一生涯をまじめに働き通し、子供たちを社会へ送り出した後のお年寄りにとって、年金こそ命の綱であります。食える年金、暮らせる年金という言葉を文字どおり実現するために、政府は蛮勇をふるって被用者年金の一元化を図り、また、全産業の平均賃金を基準として、老齢福祉年金は三〇%に、拠出制国民年金は四〇%に、共済、厚生年金の最低保障額は四五%となるようにすべきであります。
なお、本年度の一兆円減税の際、福祉年金の受給者だけは他に比べて政策の恩恵を受けることが薄かったのでありますが、この落ち込み対策として、明年一月から三月まで福祉年金に三千円の上積みを行うべきであります。
お年寄りに対する大きな善政として喜ばれている老人医療無料化制度を改悪して、一部有料化することを政府は検討されているとのことでありますが、私は福祉見直しの名による福祉後退を断じて許してはならないと考えます。総理の所信はいかがでしょうか。
お年寄りの人たちを暮らしにくくしている大きな要因は、住宅問題であります。政府は、不況打開のための公共投資を住宅と生活関連施設の建設に重点的に振り向け、この際、公営、公団、公社、公庫の公的資金住宅の建設戸数を大幅にふやすと同時に、部屋数をふやすなど、三つの世代が同居できるよう住宅の質の向上を図るべきであります。
また、民間金融機関の資金を大きく住宅ローンに回し、その金利を住宅金融公庫並みに引き下げて必要な利子補給を行うことも、この際断行すべきであります。
さらに、住宅政策の前提は土地政策であります。住宅の欲しい人が土地を得られるようにするためにも、また公共事業に必要な土地の確保を進めるためにも、いまこそ地方自治体の土地先買い権を確立し、用途に応じた適正な地価が形成されるよう、地方自治体を通じて誘導すべきであります。総理の所信はいかがでしょうか。
次は、外交の問題であります。
日中共同声明によって日中の国交が回復されて五年になります。日中共同声明第七項をそのまま日中平和友好条約の本文に入れて条約を結ぶべきであるということは、すでに日本国民の成熟した世論となっております。中国の指導者もまた繰り返して同じ見解を表明し、あとは福田総理の決断を待つのみだと言っております。
そもそも日中共同声明第七項は、日本も中国もともに覇権を求めないことを誓い合い、あわせて、アジアにおいていかなる第三国が覇権を求めることにも反対することを明記しております。いかなる国の覇権主義にも反対するということは、主権平等の上に立つ国際法の大原則であります。しかも、かつて第二次世界大戦において中国を初めとするアジアの諸民族を征服しようとした日本に対し、いま再びアジア諸民族の鋭い警戒の目が向けられていることを思えば、日中平和友好条約の締結は、日本がアジアにおいていかなる覇権をも求めないことを誓約することであり、アジアの一員としての日本の位置づけを確定するためにも絶対に必要であります。(拍手)総理の決断を国民に示していただきたいと思うのであります。
その総理の決断の表明として、今国会において日中平和友好条約締結促進決議が全会一致で成立できますように、自民党総裁としての指導性を発揮されることを要望して、総理の所信をお伺いをいたします。(拍手)
日中と並んでもう一つの重要な外交案件は日ソ平和条約の締結であります。日ソ漁業交渉で明らかになったように、いまや、千島の領土問題が未解決であることが日ソ間のすべての問題に重大な障害となっています。
振り返ってみれば、サンフランシスコ平和条約によって、歴史的に日本の固有の領土である全千島を放棄し、同時に、中ソを敵視する日米安保条約を締結した自民党政府は、その後、日ソ間の友好と相互信頼の環境をつくるために一体いかなる努力を払ったでしょうか。昨年のミグ25の事件がその答えを出しております。「北風と太陽」の物語が教えているように、ソ連との友好と信頼の関係を強めることこそ北方領土問題解決の大前提であります。その上に立って政府は、一九五六年に鳩山内閣の結んだ日ソ共同宣言に基づき、まず歯舞、色丹の返還を実現する際、日米安保条約を解消して、日本の平和と中立の国際的地位を確立する中で、択捉、国後を含む全千島の返還を実現することを確認して、日ソ平和条約を締結すべきであります。総理の所信はいかがでしょうか。
なお、この機会に特に申し上げたいことがあります。
総理も御承知のとおり、わが国は発達した工業国であるとともに、しかもまた資源の少ない国であります。したがいまして、将来に向かって日本国民の生存と繁栄を確保していくには、わが国を取り巻くすべての国、中でもアメリカ、ソ連、中国を含め、すべての国との友好、協力、不可侵の関係を確保しなければなりません。これらの国のどれかを味方にし、どれかを敵とするような、かつての日独伊防共協定の誤りを断じて繰り返してはなりません。
いま私は、ある特定の国と結んで、他の特定の国を敵視するような政策をとってはならないと指摘いたしましたが、日米安保条約がそれであることは国民周知のところであります。最近、アメリカと中国の関係は著しい改善を見ていますが、それにもかかわらず、日米安保体制の危険性に変わりないことは、横浜市に墜落した米軍機の事故と、その恐るべき被害を見れば明らかであります。
そればかりではありません。ニクソン、フォード、カーターの三代の大統領を通じて、アジアにおける反共戦略体制のアメリカの指導権を確保しつつ、その危険負担と責任を日本に肩がわりさせる政策が着々と進められております。一方、これに呼応するかのように、自衛隊は、対潜哨戒機P3Cの導入を初め、いわゆる基盤防衛力の質的強化、後方支援体制の強化を進めています。
こうしたこちら側における軍事体制の強化は、また相手側の軍事体制の強化を招かざるを得ません。こうしたアジアにおける軍事的対抗関係をエスカレートさせるのでなく、逆にこれを緩和させる重要な糸口として、非核三原則を持つわが国こそが先頭に立って、アジア太平洋地域の非核武装地帯設置を提唱すべきではないでしょうか。
また、今回、アメリカのカーター大統領は、防衛の目的以外には最初に核兵器を使用しないとの立場を明らかにいたしましたが、すでにソ連も中国も、自分から先に核兵器を使わないとの態度を繰り返して表明していることを思えば、いまこそ日本が、すべての核保有国に向かって、核兵器不使用協定の締結を呼びかける絶好の機会であります。総理の所信をお尋ねいたすものであります。
さて、日米安保体制の強化という背景の中で日朝、日韓の関係を見るとき、私はなおさら声を大にして、朝鮮の南北対立を激化させ、南北の分断を固定化させる政策はやめなさいと叫ぶものであります。
朝鮮にいる外国軍隊はアメリカ軍だけであります。これを韓国から撤退させ、南北の朝鮮民族同士の自主的話し合いで平和的統一を実現する、それを促進するために、南とも北とも、ともに日本政府は外交関係を結ぶべきであります。
それに加えて、韓国と日本及びアメリカの間の政財界の黒い癒着がいまやだれの目にも明らかになりつつあります。日韓の癒着について、福田総理はかつて記者団に対し、においもしないと言明されたことがありますが、あなたはそのにおいがわからないのではないでしょうか。(発言する者あり)アメリカの国会で進められている調査と協力しつつ、わが国会でも日韓問題調査特別委員会を設置して、徹底的に日韓癒着の調査を進め、その結果に基づいて、処理すべきことはきちんと処理しなければなりません。
その処理すべきことの中で一番大きい、一番緊急な問題は、金大中氏を韓国の獄中から日本へ原状回復させることであります。いまでは、東京のホテルからソウルまで金大中氏を連れていった者はだれか、その経路はどうだったか、国民にはほとんどわかっているのであります。国際的にも知れ渡っております。福田総理、あなたさえ決断すればこの問題は一挙に解決できるのであります。私は総理の決断を切に要望してやみません。
福田総理、あなたはこの八月のASEAN諸国訪問が非常な成功であったとお考えのようであります。あなたがマニラで発表されたいわゆる福田ドクトリンには、その言葉の限りでは私も賛成であります。だが、あなたとASEAN諸国の指導者の間に、さらにはあなたとASEAN諸国の国民の間に、果たして心と心の触れ合いができたでしょうか。あなたは四千億円にも上る経済援助の約束を振りまいてこられましたが、帰国の後に自民党幹部に報告されたところでは、確定した援助は千三百十五億円という話であります。宣伝と実体の間に三対一の開きがあります。これではかえってASEAN諸国から日本に対する不信感をかきたてることにならないでしょうか。また、ASHANという地域同盟が、非同盟中立の政治路線をとるのか、アメリカのアジア戦略の中でSEATOにかわって新しい軍事同盟の政治路線をとるのか、いまのところ流動的であります。インドシナ三国とASEANの関係にも微妙な対抗姿勢が見られます。こうした中でASEAN外交の基本方針をどのように進めていかれるか、総理の所信をお尋ねいたします。
最後に、私は福田総理の政治姿勢に関連して四つの点をお尋ねをいたします。
第一は、国際人権規約の批准の問題であります。
御承知のとおり、世界人権宣言が採択されたのは一九四八年の第三回国連総会でありますが、この宣言はあくまで道義的な宣言であったのであります。これを受けて、一九六六年の第二十一回国連総会において国際人権規約が採択されました。この国際人権規約は、その後数十カ国の参加を受けて昨年の国連総会で正式に効力が発生いたしました。国際人権規約が世界人権宣言と決定的に違うところは、参加国に対して法的拘束力を持つ点であります。わが国はまだ国際人権規約に参加していませんが、速やかにこれに参加して批准の手続をとるべきであります。そして、わが国憲法の柱である基本的人権尊重の大原則を一層強固なものとすべきであります。総理のお考えはいかがでしょうか。
第二は、行政における思いやりの問題であります。
最近のニュースによれば、政府はメートル法に基づく計量法の運用を改善して、鯨尺、かね尺の製造販売を認めることになりました。この問題は、日本の伝統的な職業や芸能に携わる人たちから長い間要望されてきたのでありますが、メートル法を盾にとる行政のかたく冷たい壁によってはね返されてきたものであります。ところが、この行政の冷淡さに憤慨した永六輔氏がこの問題を天下に訴え、またこれと歩調を合わせた建設労働組合の運動も盛り上がり、ついに今回の政府の決定となったものであります。
つまり、いままでは、政府の役人は計量法があるからだめだと言っていたのでありますが、今度は、同じ役人が計量法があるにもかかわらず鯨尺、かね尺を認めたのであります。このことは、役人がその気になれば法律や制度の弾力的運用がかなりに幅広くできることを物語っております。これを悪用することはもちろん許されませんが、国民が切実に要望している問題に対しては、こうした行政の弾力性を大いに前向きに活用していただきたいのであります。それでこそ法律、制度は生きているということになるのであります。
これは行政における思いやりの問題でありますが、総理は、こうした問題をどのようにお考えでしょうか。
第三は、今次参議院選挙における伊江議員派の大規模な選挙違反の事件であります。
この事件でいままでに逮捕された者二十六名、起訴されて公判に付される者三名、略式処分の者十八名、これらはいずれも国鉄の現職の幹部であります。そのほかに多数の国鉄退職者も連座し、さらに痛ましいことには、自殺した人すら出ているのであります。
これは、まさに国鉄の全組織を挙げた大がかりな地位利用、公職選挙法違反事件であり、その頂点に立っている最高責任者は天坂副総裁と断定せざるを得ません。
いま国鉄では、財政再建のためという名目で、貨物の大合理化を中心に約五万名の整理が行われようとしております。国鉄労働組合、動力車労働組合は、この合理化に反対しつつ、しかし国民の足である国鉄を守ろうとの積極的な意欲を込めて、労働者みずからの手で職場の規律を確立しようとしております。そうであるからこそ、なおさら天坂副総裁を初めとする国鉄管理者層の規律と責任が厳しく問われるのであります。
福田総理は、この重大なる責任問題をどのように処置されるお考えか、総理のお考えをお尋ねいたします。
第四は、今国会の重要法案の扱いであります。
健康保険法、国鉄運賃法の一部改正法案は、国民の負担をさらに増加させる法案であり、今国会では強行すべきではありません。むしろ健康保険制度や国鉄のあり方についてまず根本的な議論と対話をすべきであります。日韓大陸棚協定に伴う特別措置法案も、日韓癒着の疑惑が解明されていない現在、国会審議の条件は熟しておりません。
私は、これらの法案に反対の立場を表明しつつ、総理の所信をお尋ねいたします。
以上をもって私の質問を終わります。(拍手)