久保田円次の発言 (本会議)

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○久保田円次君 私は、自由民主党を代表し、福田内閣の当面の経済、財政政策を中心に、若干の質問を行うものであります。
 総理が所信表明演説において冒頭に述べられたように、去る九月二十八日に突発した日本赤軍による日航機のハイジャック事件は、まことに遺憾至極な不祥事件であります。
 幸いに、政府及び日航当局の人命尊重を第一とする万全の努力及び関係各国政府の好意ある措置によって、乗客、乗員全員が無事に救出されたことは、不幸中の幸いであります。私は、日本側関係当局及び関係国政府に対し、国民とともに深く感謝の意を表するものであります。
 しかし、私は、今回の措置が人命尊重のための超法規的緊急避難措置としてやむを得ざることであったとはいえ、今後このような悪質なハイジャック事件と政府の変則的な措置を心から憂えるものであります。これを防止するには、国際的には、海外空港における日航当局の乗客に対する自主的事前の安全確認ができるような国際取り決めや、ハイジャック犯人の受け入れ、または引き渡し協定等の措置が必要であり、国内的には、ハイジャック犯人に対する刑罰の強化等の措置が必要ではないかと思うのであります。(拍手)政府はどのような再発防止対策を考えておられるか、明らかにされたいのであります。福田総理の御答弁をお願いいたします。
 さて、わが国経済の現状を見まするのに、政府のあらゆる努力にもかかわらず、景気はなお低迷の域を脱せず、失業は毎月百万人の大台を超え、企業倒産件数も千数百件という高水準で推移しているのであります。現下のわが国政治の緊急課題が、景気の速やかな回復と雇用不安の解消にあることは言うまでもなく、福田内閣の当面の最大の責務もこれにありと総理が所信表明演説で述べられたとおりであります。
 政府は、その具体対策といたしまして、去る八月三日の六項目にわたる当面の景気対策に引き続いて、九月三日には、公共投資の大幅追加と金利の再引き下げ等七項目に及ぶ総合経済対策を決定し、今回それを裏づけるために、総事業費約二兆円の公共投資追加を内容とする大型補正予算案と関連法案をこの国会に提出されたのであります。これらの措置は、まことに時宜に適したものであり、わが党は全面的に賛意を表するものであります。
 私は、これらの経済財政諸対策がよく所期の実効を上げるようにするため、まず第一に、四つの点につき要望を申し上げるとともに、政府の御見解を確かめておきたいと存ずるのであります。
 第一点は、一般的な景気対策とともに、多くの分野にわたる構造的不況業種に対する行き届いた再建安定対策が特に重要ということであります。
 全般的に実質経済成長率六・七%を達成できても、個別的には広範にわたる構造的不況業種が存在するという経済構造では、国民経済全体として設備投資意欲は盛り上がらず、雇用不安は解消せず、不況感は決して緩和されないのであります。
 そこで、この際、私が確かめておきたいことは、不況業種の中でも特に深刻な構造不況に悩む繊維産業、平電炉鉄鋼業等を初めとする十数業種に対しまして、具体的にはどのような再建安定対策を講じているのか、または講じようとするのか。それらの業種の中でも特に経営の苦しい中小企業に対し、わが党は、緊急金融対策、連鎖倒産防止対策等九項目の緊急対策を決定し、政府に要望しましたが、これらにつきどのような具体的対策を講じておるものか、でき得る限り詳細に明らかにされたいのであります。(拍手)
 第二点は、景気対策の重要な柱の一つである住宅建設と宅地対策についてであります。
 公共投資の中でも、住宅建設が最も波及効果が大きく、即効性のあることは議論の余地はありません。(拍手)今回の公共投資の追加においてもこれを最重点に位置づけ、住宅金融公庫の融資計画を十万戸分、事業費規模で約九千億円も追加したことは勇断であり、私はこれに敬意を表するものであります。(拍手)今後も住宅建設の促進が景気対策の一つの柱となるべきことは当然であります。
 その場合の最大の支障は宅地難であります。これを打開するためには、公的資金による大規模宅地造成と、宅地関連公共施設等の整備促進とともに、民間の宅地造成の助長と流通の円滑を図ることが、より効果的であると私は信じます。そのためには、金融上と税制上特別の配慮が必要と思うのであります。
 第三点は、五十二年度に引き続く五十三年度の公共投資の拡充であります。
 現下のわが国経済の停滞は、四十八年秋の石油ショックによる世界的不況現象に起因する構造的なものであり、その根本的克服には長期対策が最も大切であります。その中心的対策を、公共投資の拡充による総需要の持続的増大に置くべきことも議論の余地はありません。したがって、五十二年度に引き続く五十三年度も、公共投資を大幅に拡充する必要があります。それには、当然として公債政策の積極的活用を図らなければなりません。幸いに、わが国の国民は貯蓄性にきわめて高く、国民所得のおよそ四分の一以上が貯蓄に回されているのが現状であります。この国民貯蓄を、住宅建設その他の公共投資と民間設備投資に活用するならば、景気の回復と経済の安定成長を促進するとともに、立ちおくれている住宅建設や社会資本の整備を促進する、一石二鳥の効果を上げることができると私は信じます。(拍手)
 一方、財政の節度を守ることの必要性は、議論の余地はございません。また、公債政策の積極的活用と財政の節度を守るということを調和させるためには、一般行政費を徹底的に節減効率化して、赤字公債の発行額を減らし、建設公債を積極的に活用するほかにないのであります。
 行政費の節減効率化には、政府が毎年度の予算編成方針で強調するところの補助金の整理合理化と、現在福田内閣が強い決意をもって取り組んでいるところの行政の簡素化、効率化を、勇気を持って実現することが最も必要であります。(拍手)
 また、今後高齢化社会が急速に進むにつれ、当然必要となるところの高福祉社会の実現のためには、まず景気を回復して、経済を安定成長路線に定着させ、財政の基盤を拡大するとともに、現行の複雑な医療保障、各種年金制度等の社会保障制度を合理的、効率的に体系化し、給付と費用負担を公平にする必要があります。
 当面の経済政策について申し上げたい第四点は、わが国の国際的責任についてであります。
 特に、わが国の内需の増大による世界の景気回復への寄与と、貿易収支の大幅黒字是正は、今春以来の一連の首脳会議において、福田総理が各国首脳に確約したものであり、その後の各種国際経済会議においても再確認した国際的約束であります。これを達成する前提として、本年度の実質経済成長率六・七%の目標を達成することは、福田内閣の国際的責任であります。
 ところが、最近のわが国貿易収支の実情は、依然として大幅黒字基調で推移しておるのであります。特に対米貿易は空前の大幅黒字を続けており、現状では、史上最大の黒字であった五十一年の実績をさらに大きく上回り、七十六億ドル程度という大幅黒字になるものと推定されておるのであります。鉄鋼や家電類の輸出の自主規制等の措置にもかかわらず、わが国の貿易の大幅黒字基調が一向に是正されないため、わが国に対する貿易赤字国の風当たりはいよいよ強くなりつつあると私には思われます。このような傾向は何としても避けなければなりません。それにはわが国が内需の増大による輸入の増進を図ることが前提であり、それとあわせて、近年低調に推移しておる対外経済協力を拡充促進することが、国際収支の黒字減らしの一翼であると私は思います。(拍手)
 福田内閣は、貿易収支の大幅黒字基調の是正と国際経済におけるわが国の責任の分担につき、具体的にはどのような手を打たれておるのか、お聞きしたいのであります。
 以上、当面の経済財政政策につき、福田総理の具体的な御見解を承りたいのであります。
 私の質問の第二は、当面最も深刻な社会問題となっている雇用不安の解消についてであります。
 最近の雇用状況は、最初にも申し上げたように、きわめて厳しいものがあります。職業安定所の職業安定業務統計にあらわれた完全失業者数だけでも毎月百万人の大台を超え、失業率は二%以上で推移しております。この失業率は、欧米先進国のそれよりはるかにはるかに低い率ではありますが、わが国には職業安定所に申し込まない潜在失業者及び不況企業の過剰労働者が多数あると推定され、これを総計すると、事実上の失業者と不安定労働者を合わせた実際の失業率は相当高いものになっております。
 それに加えて、来春卒業する大学卒の就職見込みはきわめて暗く、各種の民間機関の調査によれば、上場大企業の相当数は、五十三年度の大学卒採用計画を五十二年度の採用実績よりも減らしている現状であります。長年にわたって多額の学費をつぎ込み、苦労を重ねてせっかく大学を出たのに、働くに職場がなく、数多くの有為の青年が社会の暗い谷間で無為に過ごさねばならないという現実は、まさに社会の悲劇であり、やがて社会不安にまで発展するおそれもあります。これは一日も放置しておくわけにはいきません。重大な政治問題であります。社会問題であります。
 政府は、今回の総合経済対策においても雇用対策を重視し、雇用問題閣僚懇談会、臨時雇用対策本部を設置するとともに、雇用安定資金制度や特定離職者雇用促進給付金制度の活用、公共職業安定所によるところの求人開拓の推進等、緊急対策を決定したのであります。
 私はこのような緊急対策の必要なことは認めますが、現下の深刻な雇用不安は、この程度の対策で緩和されるとはとうてい思われないのであります。雇用対策の根本は、もちろん景気の早期回復による企業活動の拡大にあり、これに全力を傾けることが常道であります。
 さらに根本的対策としては、大学教育のあり方を社会的要請に即応するよう改革する必要があります。これまでのように、社会的要請から遊離して、年々大学の入学定員を増員するようなやり方は、多くの教育費を投入していたずらに学士浪人、修士浪人、オーバードクターをふやすばかりであります。文部当局は、五十三年度も二千六百名の国立大学入学定員の増員を要求しておるのでありますが、それよりも、現在ある国立大学の質を充実向上させ、特に実社会の役に立つ専門教育を振興し、社会が進んで受け入れるような人材の育成に努力すべきものであると思います。総理の明快な御答弁をお願いいたします。
 第三にお伺いしたいことは、資源有限時代における今後のわが国経済の成長速度を制約する総合エネルギー政策についてであります。
 昭和五十年代に平均実質経済成長率六%を維持するには、エネルギー消費において一〇・八%以上の節減を行うとともに、供給面においては、石油換算で六十年度に七億四千万キロリットル相当分の供給を確保する必要があります。そのうち、出力三千三百万キロワットを原子力発電に期待しているのであります。
 まず、将来のわが国エネルギー供給源の一翼を担う原子力の平和利用開発の画期的発展を可能とする使用済み核燃料再処理問題が、政府の並み並みならぬ努力とアメリカ側の理解ある配慮により決着を見たことを心から喜ぶとともに、敬意を表するものであります。(拍手)
 しかし、使用済み核燃料再処理問題は、高速増殖炉の開発建設及びウラン濃縮工場の建設を一貫する核燃料サイクルの確立によって初めて解決するものであります。
 これらの対策を含めたエネルギー総合対策の推進には、今後十年間に、五十一年価格で六十八兆円という多額の投資が必要とされておるのであります。その資金をどうして調達するのかということが総合エネルギー対策の成否を決するかぎであります。政府は、これに対しどのような具体的な資金対策を用意しておられるのか。
 さらに、エネルギー政策についてこの際触れておきたいことは、人類究極の新エネルギー源の開発のため、核融合研究とサンシャイン計画の推進についてであります。
 五十二年度はこれらの研究が相当前進しておりますが、今後一層これを促進する必要があると思うのであります。また、資源のきわめて乏しいわが国においては、科学技術全体の振興発展こそ経済の安定成長と国民生活の充実向上の基本的条件であります。わが国のこれまでの科学技術政策は、この国家的要請に十分応ずるものとは思われず、今後政府は政策の飛躍的な発展を図るべきであります。
 以上、エネルギー対策と科学技術対策について福田総理の御見解を承りたいと思うのであります。
 第四の質問は、この臨時国会の重要議案である国鉄運賃法と健康保険法の改正案、第三次教員給与改善実施を含めた一般職の給与改正法案及びわが国エネルギー政策に大きな役割りを持つ大陸棚石油天然ガス共同開発特別措置法案並びに防衛二法案についてであります。
 これらの重要法案は、いずれも一部野党の強い反対によりまして成立を見ておらないのであります。国鉄運賃法、健康保険法及び一般職の給与法の改正案は、いずれも予算関係法案であります。これらの法案がこの国会で成立しないと、五十二年度予算の執行に支障を来すだけでなく、国鉄運賃法と健康保険法の改正案が不成立になると、両者の累積赤字はいよいよ増大し、五十三年度予算の編成が困難になるのであります。また、大陸棚石油天然ガス共同開発法案は、昭和四十九年一月条約調印以来五回にわたって国会審議を重ねた上、さきの八十国会で承認された日韓大陸棚共同開発協定と一体不可分の法案であります。これがこの国会で成立しないと、国際信義に反するだけでなく、わが国のエネルギー対策上にも大きな悪影響をもたらすことになるのであります。
 したがって、これらの重要法案の成立は、国会の問題ではありまするが、これらを提出した内閣とそれを推進したわが党が一体となり、ぜひとも成立を図らなければならないと思うのであります。福田総理の御所見を承りたいのであります。
 最後に、当面の重要外交懸案である日中平和友好条約の早期締結について一言お伺いいたします。
 四十七年九月の日中国交正常化共同宣言発表以来満五カ年を過ぎました。今日、日中平和友好条約を早期に成立せよとの国内及び中国側の強い要請がありますが、この点についてどのようにお考えですか、総理の御見解を承りたいと思うのであります。
 いまやわが国をめぐる内外の諸情勢はきわめて厳しいものがあります。国民は一日も速やかな景気の回復と雇用不安の解消を心から求めているのであります。この重大なときに当たり、福田内閣は強い強い信念と勇気を持って大胆な経済財政政策を展開せられ、国民の切実な要望にこたえなければならないと存じます。
 福田総理の御決意のほどを重ねてお伺いし、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕

発言情報

speech_id: 108205254X00319771006_007

発言者: 久保田円次

speaker_id: 1314

日付: 1977-10-06

院: 衆議院

会議名: 本会議