安恒良一の発言 (社会労働委員会)
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○安恒良一君 ただいま厚生大臣から、国民が重大な関心を寄せております健康保険法等の一部改正の法律の提案がありましたし、さらに衆議院におきますところの修正をされたことについても衆議院側から趣旨説明がございました。
私は、いま厚生大臣の趣旨説明を承っておりますと、五十二年度末まで出ました政府管掌の累積赤字約千六百億でありますが、その赤字対策のみを厚生大臣はお考えになっているのではないかというふうに思います。もちろんその中には、傷病手当の支給期間を、現行六カ月を一年六カ月に、すなわち一年間延長する、このことを除きますと、政府管掌の赤字を、被保険者、中小零細企業でありますところの保険者の負担によってこの赤字を解消する、こういうことが中心だというふうに考えます。私は、それだけの問題であるならば本当に審議をする価値があるのだろうかどうだろうか、こういうふうに実は思うのであります。なぜかと申し上げますと、戦後私たちの健康を維持し保障してまいりましたところの国民皆保険という医療のシステム、これは私はわが国は世界に誇れるシステムだと思いますが、高度経済成長の終えん、そして低経済成長への移行、高齢社会の開幕によって今日さまざまな矛盾を生み出しております。
ちなみに申し上げますならば、第一点は、ここ数年来国民所得の伸びを大きく医療費が上回っておりまして、健保財政が破綻の寸前に追い込まれていると言われてます。第二番目には、医療の営利企業化、この批判が非常に国民から強まっています。こうした状況の中で、この打開をどうするかということが、いわゆる弱い者もしくは医療の安全面にしわ寄せが行われるのではないだろうか、こういうことが大きい問題だろうと思うのであります。私は、国民皆保険下の医療というものは、いつでも、どこでも、だれでも、よい医療が受けられることが大原則であらなければならないと思うのであります。しかし、今日の国民皆保険下における医療に対して、国民は非常に深刻な不安と不信を持っているのであります。
私は、具体的な事例を一、二挙げて、以下各項目について質問をしたいと思いますが、実はことしの五月十六日から二十日までの五日間、医療一一〇番というものをやりました。そこで受け付けました件数は五百八十五件、内容別で見ますと八百三十六件でありました。三十六都道府県において行ったのであります。出てまいりました国民からの医療一一〇番に対する訴えは、救急医療の問題、差額ベッドの問題、付き添いの問題、医療費の自己負担の問題、薬の問題、治療内容についての不満や不信、歯科の問題、医者のモラルの問題、領収証発行の問題、苦情処理の問題、そして医療の改革への新しい提言等がございました。この医療一一〇番の行動に参加いたしましたのは、日本婦人会、新日本婦人会、日本婦人有権者同盟、地婦連等々、日本の婦人団体を網羅いたしています。そのほかに、新宿区民として医療を考える会、さらに慶應大学医学部の学生の有志であるとか、東京医科歯科大学医学部学生の有志、こういうことで、婦人団体はもちろんのこと、いわゆる医学部の学生の有志も参加をしてくれました。こういう中で出ました問題について、私は具体的な実例を一、二挙げてみたいと思います。
五十一年の十一月、これは救急医療の問題でありますが、北九州で六十四歳の母親が交通事故に遭った。市内の救急告示病院に運ばれ、レントゲンを三回撮り、頭蓋骨骨折と言われた。脳内出血をしているのではないかと聞いたら、あすの朝まで待たないとわからないと言い、点滴と酸素吸入のまま一晩過ごした。その病院は脳内出血を調べる設備がなく、翌日大きな病院に移され、検査の結果、脳内出血と診断、手術をした。手術の途中、心臓がとまり死亡した。東京都世田谷区の駒沢の主婦の訴えであります。氏名全部わかっておりますが、こういう席上でありますから氏名を省略します。
次に、差額ベッドの問題。二人部屋で一日千円、個室で一日千五百円とのことだった。相部屋の人が退院した後、一旦二千円請求された。金額変更の通知はなく、十日後に請求されて、初めてわかった——神奈川県横浜の緑区の主婦の訴えであります。
付き添い問題。父が七年前脳血栓で倒れ、毎日付添料が五千九百六十円、差額ベッドが三千五百円かかり、一カ月で四十万から五十万の費用になって、すでに二千万円以上の経資がかかった。老後のために蓄えた貯金や退職金を全部使い果たし、あとは借金をするほかはない。基準看護病院だが、付添婦をつけるように暗に求められた。基準看護違反で病院を追及したいが、父を診てもらっているので、弱い立場にある——東京都の三十七歳の主婦の訴えであります。
薬の問題。五十二年四月、生後八カ月の子供がかぜのために個人病院に行った。水薬と粉薬を飲ませたが、その後、二時間後に死亡した。そのとき医者に粉薬の方を返してほしいと言われた。何となく気になるので、分析を頼む機関を知りたい。
領収証問題。六本木の婦人専門病院で、いわゆる不妊娠症専門病院でありますが、保険がきくの、きかないのといって支払わせられた。そこで領収証を請求した。また、健保組合で調べたら、すぐその支払い額のほぼ全額に当たる百万円に近い金が戻ってきた——都内の二人の主婦からであります。
まだ事例はありますが、時間がありませんので。このような事例が、いま申し上げたように、多数国民側から訴えられ、かつ具体的な解決方法について医療一一〇番にお話があったのであります。私は、いま国民が何を考えているのかと、医療について何を心配をしているのかというと、一つの問題は、いまの具体的事例でもわかりますように、薬づけと言われるほど薬剤に頼る医療の問題だろうと思います。第二番目には、差額ベッド問題、付添看護料の負担の問題、歯科の差額問題等、患者負担が増大をし、そのことが病気への不安を大きくしているということだろうと思います。そして第三番目は、老後の医療をどのように保障してくれるのかと、こういうことだろうというふうに思います。
五十二年十一月四日、ことしの十一月四日、医療保険制度改善政策について答申しました社会保険審議会の健保懇は、これはいずれも今後の医療保険の基盤を左右する問題であり、早急な処置が講じられなければならないと指摘をいたしています。以上のような問題について健保懇は、十一月四日、そのようなことを厚生大臣に指摘をして答申をしていることは、大臣も御承知だと思います。ところがきょう、厚生大臣が出されましたところの法律の改正案は、こういうものに対して何らの解決策を示されておりません。何らの解決策を示されていない。そして、例によって例のごとく、まず赤字解消、こういうことであります。しかも、本会議における同僚の浜本委員を初め野党側からの厚生大臣に対する質問を聞いておりますと、まず赤字を解消するんだ、そして五十三年度に抜本改正をいたしたい、できるものからやりたい、できなければ五十四年度と——これはもう信用はできないのであります。なぜかというと、制度の抜本改正を行っていくということは、今度の健保懇で指摘をされたわけではない。私は議員になる前に、十年間社会保険審議会の委員を務めました。中央医療協の委員を十五年間私は務めたのであります。そして、その都度抜本改正の必要について、具体的項目を挙げて、いままで関係厚生大臣に答申を続けてきたのであります。ところが、政府、厚生省のやり方は健康保険法の赤字対策をやるときには、いやこの次は必ずやります、今度はやります、だから当面赤字を埋めてもらいたい、こういうことで繰り返し繰り返しやられてきたのであります。昔の物語にもありますように、オオカミが出る、オオカミが出ると、こう言ってうそを言っていると、いざオオカミが出たときに救ってくれなかったという物語があることを大臣は御承知だと思うのであります。こういう関係から言うと、幾ら大臣が本会議で私は来年度は抜本改正をやる、こういうことを強調されても信用ができないのであります。何も大臣の個人的な人格を申し上げているわけではありません。十数年の歴史を後で私は各項目にわたって答申についてなぜできなかったか聞きますが、ひもといてみますと信用ができないのであります。でありますから、私はまずやらなきゃならぬことは、いわゆるこの医療保険制度の国民が不安を持っている、疑念を持っている、こういうものにこたえる医療保険制度の抜本改正をまず行い、その中で赤字対策について解決をどうすべきかということについて議論をし合うべきだと思うのであります。この基本的な考え方について、まず私は大臣にお聞きをし、以下各項目にわたってこの質問をしたいと思いますが、私はまず、まずこういう問題を先にやる、その中で、たとえば赤字が出る、一部負担の問題にいたしましても、付き添いの問題をどうするのか、差額ベッドの問題をどうするのか、高額療養問題をどうするのか、こういうことを解決し、国民にこたえる、その中で一部負担を上げてもらいたい、こういう御提起、いわゆる初診時に一部負担を上げてもらいたい、軽い病気のときに一部負担を上げてもらいたい、こういう御提起であるならば、私は審議をするに値をいたしますし、国民も聞く耳を持つと思うんです。ところが、そのことは来年からやるんだ、今度は信用してくれ、こういうことではいまも申し上げましたように、大臣も一遍、各審議会が何回答申したのか、どういうことを言っているのかと、その中にはすぐやろうと思うこともあった、できることもあった、にもかかわらずに実行が非常にできてないという点について、まずこの法案を提出をされましたことの根本的な問題について、大臣の御意見をお聞かせを願いたいと思うのであります。