安田安次郎の発言 (予算委員会公聴会)

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○安田公述人 安田であります。
 昭和五十三年度予算の審議に当たりまして、公述人といたしまして平電炉業界を代表して意見を述べさせていただく機会を与えられたことに対して、厚くお礼を申し上げます。
 私どもの属しております平電炉協議会と申しますのは、電気炉によりまして工場または市場で発生いたしますくずを溶かして建設用の資材にするのでありまして、それが小形棒鋼あるいは中形、小形形鋼として生産されている団体でありまして、代表的メーカー約六十社加盟いたしております。
 さて、長期の不況によりまして企業体力の限界が来つつありまして、平電炉業界といたしましては、財政主導による公共事業を中心として景気回復を図ろうとする五十三年度の政府予算に対しては、業界挙げて非常に期待しておるわけであります。
 従来、不況時におきましては、輸出市場にこのはけ場を見つけておりまして、需要の減退を支える傾向があったのでありますが、昨年以来、特に欧米を中心とした貿易の調整や円高傾向によりまして、昨年の輸出は前年度の約五割減になって、深刻な落ち込みをいたしましたために、不況から脱出することは何としても内需の拡大に見出さなければならない状態になっておるわけであります。
 鉄鋼業にとって、公共事業を中心とした政府投資の比重は非常に多く、普通鋼鋼材の総需要の約二割を占めているのでありまして、特にこれを需要部門別に見てみますと、鉄鋼需要の約五割というものは建設関係によって占められておるのであります。特に、平電炉業界の主力製品であります小形の棒鋼とか中小形の形鋼とかいうものは、国内の需要のおよそ九〇%というものは建設に向けられておるのでありまして、したがいまして、平電炉業界の需要のほとんどのものは建設関係に依存しておると申し上げていいと思います。
 こうした意味で、公共事業を重点施策として、早期景気回復をねらった昭和五十三年度の予算に対しては、業界挙げて非常に期待しております。
 振り返ってみますと、昨年も鉄鋼業は不振の一言に尽きる業況でありました。鉄鋼生産の粗鋼の生産高は、四十八年の一億二千万トンをピークにいたしまして、昨年は約一億トンに落ち込んだのであります。
 五十二年度の予算においても、補正予算を含めまして、政府は公共事業と住宅建設を柱として景気振興を図ったわけでありますが、鉄鋼需要の誘発効果の高い民間設備投資が依然として低調を続けたことと、高水準を保っておりました輸出が、貿易をめぐる国際的摩擦と秋口以降の急激な円高の進展によりまして非常に大きな影響を受け、深刻な局面を迎えたのであります。
 平電炉業においても、引き続くこの需要の不振で、価格等非常に低迷いたしまして、企業業績はさらに悪化をいたし、多くの企業は赤字を累積し、債務超過に陥る企業も少なくないという困難な状態になっております。もちろん、各企業はそれぞれ生産品種の集約、転換、工場の集約化等徹底的な合理化により、減量経営に努めてまいったわけでありますが、現状は金融機関、商社関係、関連企業の支援を得て、ようやく持ちこたえているのが現状であります。
 主力製品の小形棒鋼を例にとって申し上げますと、昨年は約九百五十万トン生産されたのでありますが、ピーク時に比較いたしましてこれで二割の減産であります。この間、一昨年から引き続いて、独占禁止法に基づいた不況カルテルにより生産調整を行ってまいりましたが、昨年の十月からは、中小企業団体法に基づいて全国小形棒鋼工業組合を設立し、生産数量と価格の制限に関する調整事業を実施いたしてまいりました。中でも、十二月からは生産数量についてアウトサイダーの規制も実施されまして、万全の体制がしかれたわけでありますが、需要は低迷したままでありまして、在庫面で若干の改善は見られたものの、根本的な需給の改善は見られませんでした。
 一方、小形棒鋼の販売価格は、需要の不振という中で非常に激しい競争が企業間で行われ、また企業の資金繰り等の事情から、採算を大幅に下回る価格での出血販売を余儀なくされ、昨年一カ年間は、ベース物で約五万円程度という低い価格で低迷いたしたのであります。昨年の十月、先ほど申し上げましたように、小形棒鋼組合ができまして、調整事業によって五万二千円という下限価格を設定されましたけれども、これも下支え程度の効果しかあらわれなかったのであります。
 このように、昨年は惨たんたる状態でありましたけれども、ここへ来ましてやや市況が持ち直し、堅調な状態になってまいりました。この原因を見てみますと、一つは、先ほど申しました全国小棒工業組合の設立、それによる生産調整、アウトサイダーの規制、在庫の減少、加うるに昭和五十三年度の大型予算への期待が非常に大きいということと、なお、予算に計上されると存じております小形棒鋼の海外無償援助等が背景になっておるものと存じます。
 もっとも、最近では主原料である鉄くずが大分上がってまいりましたので、小形の価格については実質的に改善されたという状態ではございません。
 現在の平電炉業の不況というのは、従来言われておりますような循環的な不況というものではなく、内外経済情勢の基調変化を背景としたものでありまして、業界の立ち直りには、政府投資の増大など景気振興策はもちろん必要でありますが、さらにきめ細かく、しかも総合的な構造改善対策が絶対に必要な業界だと思います。
 そこで、五十三年度の予算に関しまして若干私たちのお願いの点を申し上げたいと思います。
 一つは、十五カ月間という予算が組まれておりますので、何とかこの特徴を生かして、切れ目なく景気振興を図るとともに、公共事業の執行に当たっては、もろもろの、いろいろの手続をできるだけ簡素化してもらいまして、需要効果が早くあらわれますよう対策を講じていただきたいというのが第一点であります。
 次は、現在実施しております。先ほど申しました団体法に基づく工業組合というものの生産数量、価格の制限に関する調整事業は、今年の三月をもって期限が切れますので、これを何とか四月以後も継続させていただいて、同時に、アウトサイダーに対する規制も実施していただくようお願いいたしたいのであります。
 もともと、この小形棒鋼工業組合が設立されましたのは、通産省の基礎産業局長のもとに諮問機関として平電炉基本問題研究会というものができて、それで提言されたのでありまして、研究会の報告によりますと、この電炉業界というものは需給ギャップが非常に大きい。設備能力が五十一年度の水準のままで五十五年度まで推移いたしたとしても、五十五年度においてなお少なくとも三百三十万トンのギャップがあると指摘されたのであります。
 そうして、この研究会は次の三点を指摘しております。
 その第一点は、電気炉の新設、増設を抑制するとともに、今後の電気炉の設置については新しいルールをつくらなければならぬというのであります。第二は、五十三年度までに、先ほど申しました三百三十万トンの能力に見合う過剰設備を早く処理してしまいなさいということであります。第三には、この需給ギャップの解消と設備の処理の効果が出るまでの間、先ほど申し上げましたように工業組合等をつくって生産調整を行わねばならぬ。この三点を指摘されておるのであります。
 したがいまして、現状でもなお、この生産調整の調整事業というものは相当の期間行わなければならないし、アウトサイダー規制というものも不可欠の状態にあるのであります。
 次にお願い申し上げたいことは、五十三年度予算に計上されております小形棒鋼の無償海外援助の早期実施であります。
 長期にわたり低迷しております市況がここへ来て多少上向きになったきっかけの一つは、少なくとも、海外援助というものが新聞に報道されたということが原因の一つになっております。
 われわれの業界では、昨年の十一月から、関係商社に対しまして、小形棒鋼で売れ残ったものを買い取ってもらって、凍結していただくようにお願いしてあります。それらの数字は約二十万トンになっておりますので、これを、発展途上国への無償海外経済協力施策の一環として、製品供与に組み入れ活用していただきたいと存ずるのであります。これを早期に実施していただければ、業界の立ち直りがそれだけ早まりますので、予算成立後速やかに実施していただくよう特にお願いいたしたいと存じます。
 なお、最後に申し上げたいのは、今国会に提出されると聞いております特定不況産業安定臨時措置法案についてでありますが、平電炉業界の意見について若干述べてみたいと思います。
 現在、通産省の原案といわれる内容が一般に知られておりますけれども、これにつきまして、平電炉普通鋼協議会の理事会を二度開いたのであります。それによりまして、賛成する方もあるし反対の方もおられましたけれども、それぞれ通産大臣、公正取引委員長あてに要望書なり意見書を提出するようにいたしたのでありますが、賛成は五十社、反対の方は六社という、圧倒的に賛成が多かったのであります。
 反対の方々の御意見を申し上げてみますと、その第一点は、当法案は統制経済的色彩が濃厚であって、自由主義の根幹を揺るがすものであるというのがその第一の点であります。第二は、指示カルテルは財産権の制限で違憲性が強いから削除しろ。第三は、設備の新設等の制限に係るアウトサイダー規制は、健全な企業の体質を弱体化させ、産業界の正常な発展を阻害するものである。第四は、したがって法制化は信用基金を中心にするものにしてくれというのが、反対された方々の主張でありました。
 一方、五十社の賛成された方々の意見は、自由経済を堅持することは当然であるけれども、経済事情の非常な変化のもとにおいては、共同行為ということもまたやむを得ないのである。法案の内容をよく検討してみると、さきに紹介いたしましたように、平電炉基本問題研究会の提言にあります構造改善事業の立法化にほかなりませんので、これを一層確実にするものと理解しておるのであります。
 先ほども基本問題研究会の提言のときに紹介いたしましたが、平電炉業界はこの提言を総意をもって受けとめたのであります。そして、少なくとも三百三十万トンに及ぶ製鋼設備を昭和五十三年度中に処理することにして、われわれはそれぞれ実施して、廃止または休止しておるのであります。
 今次の構造不況に陥った一つの原因に、余りにも激しい企業間の争いがあると言われておるほどの平電炉業界において、過剰設備の処理というものは強力に推進することが必要でありますので、通産大臣による新設設備の制限に係る共同行為の指示は不可欠であるというふうにわれわれ五十社は考えております。
 さらに、設備の新設の制限に係る共同行為を実施している場合においては、共同行為に加わっておられないアウトサイダーに対しても、共同行為の内容に相当する制限を実施していただきたいということであります。アウトサイダーに対する法的規制なくしては、過剰設備の処理は実効を上げることはできません。一方において過剰設備を処理しておるにもかかわらず、他方においてアウトサイダーが新設設備をどんどんつくるということになれば、われわれ業界が一丸となってやる構造改善というものは、全くできなくなることは自明のことであります。
 次に、もう一つの柱となっております信用基金の創設について申し上げます。
 平電炉業では、すでに昨年国庫補助金を得て平電炉業構造改善促進協会を設立いたしまして、近くその保証業務を開始する運びになっておりますが、この点について若干申し上げたいと思うのであります。
 設備処理に伴う必要資金は、各企業が民間の金融機関から借り入れるわけでありますが、残念ながら各企業の業績は非常に悪く、後ろ向きの資金であるところから、借り入れが困難であることであります。また、通常の金利では企業の負担はますます重くなるばかりでありますから、どうか、信用基金の本制度が運用されるに当たりましては、資金の借り入れ、金利等について十分の御配慮を賜りますようお願いいたしたいと存ずるのであります。
 以上、五十三年度の予算案に関しまして、平電炉業界を代表いたしまして、いろいろと数々のお願いを申し上げましたが、どうか鉄鋼業の安定と健全なる発展のために特別のお力添えをいただきますようお願いいたしまして、私の公述を終わりたいと思います。(拍手)

発言情報

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発言者: 安田安次郎

speaker_id: 23125

日付: 1978-02-10

院: 衆議院

会議名: 予算委員会公聴会