新田俊三の発言 (予算委員会公聴会)

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○新田公述人 四つほど御質問がございました。
 まず減税の問題でございます。減税の投資効果に関しましては、かつてわれわれが高成長下でいろいろなパターンで試算したりしたケースですと、ほぼ公共投資に匹敵する乗数効果が出るというのが常識的だったわけですね。いろいろ試算がございましたけれども、二倍前後の乗数効果をもたらすであろうというのが、一つはわれわれが不要不急の公共投資よりは減税を優先すべきであるという根拠であったわけであります。それから公共投資の効果が限られた範囲であるのに対して、減税の及ぼす影響というのは非常にまんべんなく行き渡るという意味がございますのと、それから何といっても、いまの中小企業問題なんかを考えますと、中小企業の倒産構造というのは需要不足から来ている側面が強いわけですから、私は政策効果を考えるときに、減税の乗数効果だけじゃなくて、乗数効果につけ加わる部分の効果、それが投資を拡大し、それがまた所得を増大させるという連鎖性をもっと重視すべきじゃなかろうかという気がいたします。
 ただこれは、産業連関効果なんかで計算いたしましても、単年度的な数値としていきなり計算するというわけにいかないので、波及に時間がかかるという問題がございます。したがって初年度で争いますと、どうも公共投資に軍配が上がりそうだという議論になるのも無理ないのですが、これは先ほど言いましたように、少し単年度予算編成的な考え方で切り過ぎていやしないか。二年目以降減税効果が公共投資を上回るというのはむしろ専門家の間ではかなり有力な意見になってきているわけですね、この点をお考え願いたいということ。そのために、需給ギャップの点から類推いたしますと、需給ギャップと有効需要の創出の必要額の間にいままでの日本経済では一つの法則性みたいなものがあったのです。それはどういうことかと言いますと、かつての不況期ですと、需給ギャップの大体三分の一ぐらいの有効需要をつけてやりますと、後、ギャップが大体自然に埋まったものなんです。しかしどうもこのパターンが最近崩れてきておりまして、そのために減税による需給ギャップ解消効果というのは、多少、いろいろな構造的問題が入っておりますので差し引かなくちゃならぬというのも事実じゃないか。
 したがって私は、結論だけ申しますと、減税で景気刺激の効果を考えるとなると、やはり最低限一兆円は必要じゃないかという気がいたします。ただそれで全部埋まるというのはちょっと問題がございます。またそれはやるべきじゃないでしょう。いろいろな政策を組み合わせる一環としてお考え願いたい。それも少し長目で考えていただきたいということ。
 それからもう一つ言わしていただくと、減税は消費につながらないとかいうような問題がございますけれども、これは消費につながるような生活環境の改善をやってやるのが政策の本道であって、貯蓄に回るというのは生活環境の不安定をあらわしているわけだから、そっちをほったらかしておいて消費につながらないという論理はちょっと理論的に納得いかない問題ですね。
    〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕
消費に結びつくような政策を補完していくのが減税の投資効果を有効ならしめるポイントじゃないでしょうか。ただ、先ほど申しましたように、これはいわば景気に対するアクセル役であって、中期的にはやはり社会資本ストックに関する成長に移していけ、これを重視していただきたいというのが私の個人的見解であります。
 それから中期計画に関する問題でありますが、そのとおりでございまして、早急に日本でも中期経済計画を作成する時期は、もうすでに来ていると思います。むしろ遅過ぎるのじゃないでしょうか。いままでいろいろな計画が一斉にスタートいたしまして、それを重ねたら前期計画になって、それが実情に合わなくなると数値を変えるという、これは計画じゃないんですね。現実に合わせて数値を変えているだけの話であって、そういう意味では計画ではない。だから絶えず修正せざるを得ない。皮肉なことには、修正した目標と実績が狂わないという結果にもまたつながるということで、本当の意味での計画はない。特に、エネルギー経済計算に関する五十年代前期計画の原子力に対する見通しやあるいはLNGの見通しに関しては、全く細かな経済計算を行っていないということしか言えないのじゃないでしょうか。ですから、もう少し、そういうありきたりの数字を希望的に並べるというのじゃなくて、実行可能な具体的な中期計画をつくって、その執行にいろいろな政策手段をフルに動員する。そのためには、単年度予算をローリングシステムで組みまして、そして弾力的に対応していくというような、こういう新しい政策ツールが開発されませんと、いまの日本経済の経済構造を全部システムとして変えるということは、もう私は不可能だと思います。
 第三点は、これもちょっと長くなってしまうのですが、知識集約型というのは、具体的に論述いたしますと非常に具体的な問題になりますので、一つの例を挙げますと、高度成長型で重化学工業的スタイルで大量生産をやってきたというスタイルの中で、だんだん技術集約度というのが高まってまいりまして、そして量から質への転換といいますか、こういった変化がどんどん生じてきているのです。たとえば石油化学製品が、石油価格が上がるともう成り立っていかなくなる。そういったときの化学メーカーは、汎用樹脂類に集中するよりは、むしろライフサイエンスの研究をやり、その研究を通して新しい製品を開発する、これは知識集約化の一つの例ですね。あるいは新日鉄の投資が、いままでの高炉をたくさん建てて量産するというスタイルから、いまはエンジニアリング事業本部の売り上げがもう二〇%近くなってきているというのも、これは一つの知識集約化への転化であります。物だけじゃなくて、ノーハウのウエートが高くなってくるとかというような形で変化がどんどん生じてきております。
 こういった点が実はきめ細かく産業構造の変化や市場構造の変化として分析された上で産業政策を立てませんと、非常に粗っぽい政策になるわけでありまして、その辺の分析の詰めが少し足りないのじゃないでしょうか。あるいは通産省の産構審答申なんか見ておりますと、よく分析されているのだけれども、逆に言うと、そういった分析が現実の政策にちっとも生かされていないというギャップが目立ちますね。それが第三点であります。
 それから集中豪雨的な輸出に対する規制は、余り輸出税的なもので一般的にやるのは好ましくない。特に対外摩擦の現場といいますか、直接問題になっているところに対する一種のこれは行政指導という形になりましょうか、やはり直接的な対策を過渡的、暫定的にはおやりになる方がいいのじゃないか。そして同時に、むしろ輸出地域の転換に関する政策的指導を行うべきだろうという感じがいたします。特に、対米自動車輸出、それからイギリスに対する自動車輸出、これはイギリス側の基準と日本の輸出基準が違っておりまして、この辺は企業レベルではなくて、もう少しナショナルなレベルでこの調整を行う必要があるのじゃないかと思いますね。それから、造船の対EC輸出も大変な問題でありまして、この辺は社会的な介入の例で申し上げましたように、向こうが秩序整然と撤退しているところにダンピング輸出というような誤解を与えかねないような輸出を行いますと大変トラブルのもとになりますので、この辺については、もう一般的規制ではなくて、問題に応じた直接的規制を行えというのが私の見解であります。

発言情報

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発言者: 新田俊三

speaker_id: 18490

日付: 1978-02-10

院: 衆議院

会議名: 予算委員会公聴会