宮澤喜一の発言 (決算委員会)
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○国務大臣(宮澤喜一君) 昭和四十八年の中東戦争の結果生じましたいわゆる石油危機、これにどのように対処すべきであったかということにつきましては、わが国を初め各国ともいろいろ違う対応の仕方をいたして今日に及んでおるわけでありますが、このような事態はかつてなかった事態でありますだけに、これは長く恐らく経済政策の歴史に残って、将来に向かって非常にいろんな意味で示唆に富むケーススタディーになるのではないかと考えております。
その中でわが国がとりました政策は、いわゆる狂乱物価とそれから予想された国際収支の非常な危機というものを、ある程度時間をかけてなし崩しで対処をしようという方法をとったというふうに私考えておりまして、いわゆるその三年間云々ということを当時、現在の福田総理が言われましたその考え方は、経済法則に従って物価は幾ら上がってもいいではないか、仮に国際収支が赤字になってもやむを得ないというような考え方もこれも一つの考え方であるわけでございますけれども、そういう方法をとらずに、何とか需要を締めることによってなし崩しに物価を正常なところへ持ってこようと、そうして国際収支の赤字に何とか対処していこうと、こういう政策であったと私は過ぎ去った年月を考えて見ておるわけでございますが、結果として、私はこの政策は成功をしたというふうに自分としては評価をいたしております。私のいたしたことではございませんけれども、結果としてまずまず成功したのではないかと考えております。
と申しますのは、現在の段階におきましてわが国の物価は、当時の狂乱物価とは比べものにならないいわゆる正常化に近い状態になってまいりましたし、また当時、政府が人為的に抑えましたいろいろな価格要因も、電力料金等々を初め、ほぼ経済の各分野で正常化されたと。その後石油の値上がりは少しずつございますけれども、基本的な四倍ぐらいの値上がりというものはまずわが国の経済がほぼ吸収をしたと、現段階ではそう申し上げることができるのではないか。一部に石油価格などにまだまだ人為的な部分が残っておりますけれども、概して吸収をし得たということが申せるのではないか。
と同時にまた国際収支の方も、当時は、日本の経済力をもってしては必要な石油が輸入できないと、それだけの国際収支に耐えられないという議論が多数でございましたけれども、今日はむしろその反対の問題が国際的にいろいろ提起をされておるような黒字の現状でございます。やり過ぎたと言えばやり過ぎたということになりますけれども、しかし、この外貨の国際収支の危機にわが国はりっぱに対処し得たということは疑いもない事実でございます。といたしますと、国内の物価の面で及び国際収支の面で、わが国はこのなし崩しの方法で時間をかけて石油危機にまず対処することができたという点では、先進各国に比べて日本がうまくやったと評価をされておるだけの理由は私はあるというふうに考えておるわけであります。
しかし、野口委員の御質問は、さらに進んで、それならば今日のわが国の経済が全く正常な拡大均衡に入っておるかということになればそうではないではないかとおっしゃいますことは、もうまさにそのとおりでありまして、雇用を見ましても生産を見ましても、国民の消費態度を見ましても、もう申し上げるまでもないような今日の経済状態でございますから、これで完全な健康体に、もう一度拡大均衡を追えるような経済になったとはこれは申し上げられない。けれども、申し上げられることは、少なくともいまのわが国の経済は、これだけ石油価格が上がりましたにもかかわらず、いま持っておる問題を、外圧と申しますか、よその要因に振り回されずに、自分の力で何とかして解決できるという程度の健康と申しますか、正常な事態を取り戻すことができたという意味では、そういう状態を全治ともし呼ぶのならそれは呼べないことはない。つまり、よそからの要因で振り回されずに、われわれとしてはわれわれの力でこの経済を拡大均衡に持っていくという、それだけの石油危機からの回復をいたしたという意味で、そういう意味でそれを全治と言うのなら全治と呼んでもよろしいでございましょう。決していまや完全な拡大均衡に自然に乗るような経済になっているとは私申し上げられませんけれども、ともかく、あれだけの事態を国際収支の面及び物価の面でここまで持ってきたということは、これは一つのケーススタディーとして、わが国のやり方はやはりわが国の実情に即したものであったのではないかというふうに見ております。