和田静夫の発言 (社会労働委員会)
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○委員長(和田静夫君) 労働問題に関する調査を議題といたします。
これより派遣委員の報告を行います。委員長より報告いたします。
去る二月二十三日から二十五日までの三日間、片山理事、小平理事、真鍋委員、森下委員、高杉委員、安恒委員、安武委員、柄谷委員、下村委員と私和田及び現地参加の渡部委員は、構造不況産業における雇用等の諸問題及び当面の労働行政の実施状況等について実情調査を行うため、大阪府と兵庫県を視察いたしました。
調査は、両府県における雇用、労働需給及び失業の実態と労働行政の現況説明を聴取するとともに、ことに構造不況産業に関連して、造船業、鉄鋼業、平電炉業及び繊維業の各経営者並びに関係労働組合の代表から意見、要望を聴取したほか、これらの工場及び関連施設を視察してまいりました。
以下、調査の概要について御報告申し上げます。
まず、大阪府における雇用、失業の現況について申し上げます。長期にわたる不況を反映して、各企業においては雇用の拡大にはなお消極的な姿勢が強く、府下の労働需給関係は、五十年以降三年連続して求職者数が求人数を上回るという状況にあり、就職難からくる求職者の滞留が続いております。
これを五十二年四月から本年一月までの指数で見ると、有効求人倍率は〇・四六倍と前年同期の〇・六三倍を〇・一七も下回っております。このため、本年一月の月間有効求職者数は、九万八千六百七人の多きに上り、また、雇用保険を受給している月間の実人員は、昨年十二月で五万四千九百三十八人と前年同月比で一七・九%増と過去最高となっております。さらに、製造業の常用雇用指数は、五十年を一〇〇として昨年十一月現在で九〇・八と全国の九四・六を下回るなど、府下の雇用、失業情勢は一段と厳しさを増しております。
また、兵庫県におきましては、公共投資か着実に増勢を続け建設業及び関連業界への波及効果も逐次本格化しているなど明るい面が出始めているものの、鉄綱等の輸出が円高、米国の輸入規制などを反映して減勢を示しているほか、内需も依然として盛り上がりを欠いていること等により、全体としての最終需要はきわめて低い伸びにとどまっております。
このような動向を反映して、本年一月の有効求人倍率は、統計史上の最低記録を示した昨年十二月の〇・三一倍をわずかに上回る〇・三二倍にとどまるという厳しい就職難か続いております。このため月間有効求職者数は六万二千人に増加しており、このうち四十五歳以上が二人に一人、五十歳以上が三人に一人という比率で、特に中高年齢者に就職難が偏っているとのことであります。
なお、雇用保険受給者数は三万六千人、また、製造業の常用雇用指数は、昨年十一月現在で八九・八と大阪府を下回っております。
これを構造不況産業について見ますと、阪神工業地帯における構造不況産業のウエートは高く、大阪府では昨年十二月現在で、製造業事業所総数約七万事業所、同従業員総数約九十八万人となっておりますが、前年比で六百九十一事業所、二万一千三十二人が減少しており、このうち、いわゆる構造不況産業と言われるものは、事業所数で二二・四%、従業員数で一九・七%に及んでおります。ことに、繊維業、鉄鋼業、造船業等におきましては、操業短縮等に伴う雇用調整により、これらの従業者数はなお減少傾向を続けているとのことであります。
このような状況において、大手住宅メーカーの永大産業が二月二十一日事実上倒産したことにより、関連小会社、下請中小企業の連鎖倒産、雇用不安など、各方面への影響が懸念されており、現在、鋭意その対策に当たっているとのことでありました。
大阪府におきましては、臨時雇用対策本部を設置し、雇用安定資金制度、雇用保険法及び特定不況業種離職者臨時措置法等を積極的に活用し、失業の防止、就職者の生活の安定と再就職の促進を強化しているところであります。
また、兵庫県におきましては、関係産業界、労働組合、学者及び県関係部長をもって構成する産業雇用政策会議において、新しい経済環境の中で、当面する産業、雇用問題の具体的な解決策の策定を進めているところであります。
離職者多発地域における雇用機会の増大を図るため、国と地方公共団体か協力して離職者の救済措置と取り組む必要があると感じた次第であります。
次に、本年一月から実施されました特定不況業種離職者臨時措置法の適用状況について申し上げます。
本法による再就職援助計画書提出件数は大阪府六十二件、兵庫県三十一件となっており、その援助計画対象者総数はそれぞれ千八百七十六人と千五十八人、職業紹介対象者数は千四百三十六人と七百七十八人となっておりますか、求職手帳発給者数は現在認定作業中の者が多く八十八件と十八件にすぎません。また、これらのほとんどの者が十二月一日にさかのぼることとした経過措置による適用者であり、その大多数は中小企業で占められているとのことであります。なお、関係組合から求職手帳の発給促進について要望がありました。
次に、雇用対策上、重要な問題となっている中高年齢者の再就職及び職業訓練について触れたいと思います。
今回の調査におきましても、両府県における中高年齢者の雇用状況は厳しく、大阪府においては十月時点での有効求人数は過去三年間一〇%から一二%程度となっております。また、高齢者についての雇用率の達成状況は、昨年六月現在で、全国の五六・三%に対し、兵庫県は六〇・五%と高く、大阪府は逆に四七%と低く、このうち、大企業は八五・二%の未達成となっております。
大阪府は、主要安定所及び主要ターミナルに高齢者職業相談室を設け、積極的運用を図ることとしておりますが、両府県ばかりでなく、全国的に中高年齢者の離職者が増大し、滞留していることから、国として総合的かつ積極的な中高年齢者の対策を考える必要があると感じた次第であります。
さらに、中高年齢者に対する職業訓練につきましては、大阪府では園芸科、ビル管理科などの増設のほか短期間の経営実務科の実施を、また、兵庫県では造船業関連離職者に対する特別の訓練などを行っておりますか、その就職は容易でないとのことであります。
今国会に職業訓練法の改正案か提出されておりますが、技能労働力を初め需要に応ずる労働力を確保するよう考えるべきであります。
なお、大阪府から職業訓練生の指導水準の維持向上のため、指導員定数を大幅に増加すること、また、職業訓練修了生に技能に見合った国家資格を付与することなどについて要望がありました。
また、両府県から景気回復のための諸施策を積極的に推進し、雇用機会を拡大されたいとの要望がなされたほか、大阪府からあいりん地区の日雇い労働者の職業訓練、福利厚生事業への国の助成について、また、兵庫県から構造不況業種離職者に対する臨時職業訓練実施のための国の助成等について、それぞれ要望がありました。
次に、私どもが視察いたしました構造不況産業における経営並びに雇用管理等の実情について申し上げます。
現在、造船業界は、世界的なタンカー等の過剰船腹、円高による影響等により、操業度は大幅かつ急激に低下しており、倒産あるいは企業閉鎖など惨たんたる状況にあります。
川崎重工業株式会社神戸工場におきましても、運輸省の操業調整措置によるガイドラインすら確保しがたい実情となっており、本年度の操業度は、最盛時であった四十九年度の六四%程度に減少することか予想されているとのことであります。
このため、船舶部門の五十年度末従業員一万四十五人を現在までに千三百六十二人削減し、他部門への配転、いすず自動車への出向、外国出張等を行っておりますが、今後予想される多数の過剰人員の吸収は困難となっているとのことであります。
同席の労働組合側からも、会社の合理化、配転等を雇用の確保と労働条件の維持を条件に受け入れてきたが、限度もあるので、仕事量の確保について特段の配慮をされたいとの要望がありました。なお、労使双方から、造船対策に関し、仕事量の確保のため、スクラップ・アンド・ビルドによる国内船建造方式の検討、官公庁船の発注量の飛躍的増大及び造船業に対する債務保証基金制度の創設、適用等について早急に実施されたいとの要望がなされました。
この後、キャンセルされた二万トンクラスのコンテナ船や十五万トンクラス用のドックで一万トンクラスの造船を行っている作業現場など、厳しい造船不況を目の当たりに見たのでありますか、大手以下の多数の中小造船企業、下請関連企業では、事態はさらに深刻となっていることから、早急に過当競争の排除と産業規制、造船及び関連産業の需要の創出と拡大、雇用保障等の対策を考える必要があると強く感じた次第であります。
次に、合同製鉄尼崎製造所は、平電炉業界における中堅企業でありますが、四十八年の石油ショック以後の不況により数次の操業短縮、雇用調整あるいは会社合併などにより、従業員数は、石油ショック前の千三百人から現在わずかに八十七人に減少しております。
なお、当製造所は、五十五年に閉鎖し、新設する姫路工場へ吸収合併させる方針とのことでありました。
この工場では、十六万平方メートルの広い敷地内で稼働工場敷地は二〇%に縮小されており、休止した四十五トン電炉二基や赤さびた在庫の丸棒か置かれておりましたが、在庫最高期四万六千トンが最近の市場価格の動向等により二万トンに減少し、三月以降の動きに期待しているとのことでありました。
ここでは、特定不況産業安定臨時措置法案の早期成立、平電炉業の基盤の強化等について国として配慮されたい旨の要望かありました。
次に、国光製鋼株式会社は小型棒鋼を主に生産している平電炉の中堅企業でありますか、長引く需要不振と価格の低迷により、その生産高は四十八年の最盛期に比し六〇%程度に低下しており、また、四十九年末以降、本年一月まで連続三十八ヵ月間経常赤字が続いているとのことであります。
この会社も数次にわたり操業短縮及び雇用調整を実施し、従業員は四十五年の五百四十四人から三百三十八人に減少しておりますが、特に注目されたのは、五十二年九月の百五人の退職者の追跡調査であります。現在までに五十七人か再就職しておりますが、未就職者は四十八人で、その年齢別内訳は、三十歳未満三名、三十歳以上四十五歳未満二十三人、四十五歳以上五十五歳未満二十二人となっております。また、この未就職者の雇用保険の支給期限は本年五月までとなっております。これらの者は、特定不況業種離職者臨時措置法の適用の対象ともなっていない実情を考慮し、期間延長などの措置について特別に配慮されたいとの要望がありました。
また、雇用調整給付金等の支給に関し、指定業種である平電炉業については、中小企業として取り扱い得るよう弾力的に運用されたいとの要望がなされました。
最後に、泉州織物工業協同組合及び泉州織物構造改善工業組合について申し上げます。
両組合は約二千の綿スフ合繊織布企業か加盟する組織であり、泉州の地場産業として地域経済に大きな役割りを果たしてきたものであります。しかし、深刻な長期不況によって工場閉鎖、倒産、企業の縮小が相次ぎ、従業員数はピーク時の一万四千人から現在六千九百人に減少しております。このような状況の中で、各企業は集約化の努力とはうらはらに零細化の傾向をたどり、すでに八五%か織機台数が五十台以下の零細企業となっているとのことであります。
本年度においても、百数業者が廃業に追い込まれておりますが、その要因は、若年従業員の恒常的採用難による企業活動の減退、設備・運転資金の調達難、金利負担のしわ寄せ、低関税による発展途上国からの輸入急増と円高による輸出の減退であります。これに対し、この業界は最善の自主努力を行っているが、国としても早急に抜本的な施策の樹立、実現について特段の配慮をされたいとの強い要望かありました。
このほか、雇用問題に関するものとして、中小企業に対する若年従業員の雇用確保のための奨励制度の創設、中小零細業者の労災保険に特別加入できる範囲の拡大、雇用保険法の適用についての弾力的な運営と取り扱いの簡素化等について要望か行われております。
最後に、今回の調査を通じて感じた点について一言申し上げたいと思います。
長期不況下における雇用・失業情勢は厳しく、ことに構造不況産業における雇用等の諸問題は深刻となっております。このような状況から、雇用の問題は今日最大の政治課題となっているのであります。雇用の安定は、何といっても経済の回復によるほかありませんが、雇用対策の面におきましては、第一に、失業の防止。第二に、離職者に対する措置と再就職の促進。第三に雇用の創出、拡大の三つの対策が総合的かつ適切に行われる必要があります。現在の厳しい雇用・失業情勢に対応し、今後積極的に失業の予防と離職者の円滑な再就職の促進に努めてまいりたいと存ずる次第であります。
以上で報告を終わりますが、両府県及び関係企業並びに関係労働組合から提出されました要望事項等の会議録の末尾掲載方を御了承いただきたいと存じます。
これをもって派遣委員の報告は終了いたします。
なお、ただいまの報告中に要望いたしました資料の会議録掲載につきましては、これを本日の会議録の末尾に掲載することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕