秋山順一の発言 (交通安全対策特別委員会)
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○参考人(秋山順一君) ただいま紹介ありました、私は総評全国一般労働組合の中央執行委員で自動車教習所部会を担当している秋山順一と申します。
教習所の経営などの問題につきましては塩地参考人の方からお話がございますと思いますので、私は自動車教習所の労働者、労働組合の立場から、幾つか実態なり問題点について御説明させていただきたいと思います。
まず、前提としまして、労働組合の組織の状況でございますが、指定自動車教習所は、約千三百五十校のうち、労働組合がありますのが約五百校、そのうち、私ども総評全国一般労働組合に組織をしておりますのが約百五十校弱でございます。その他は、全自交労連、あるいはこのたび発足します自交総連、あるいは同盟交通労連、あるいは中立の組合、あるいは地域の組合、そういう形で分布をしているわけでありまして、私どもの組合が一番多数いるので、きょうの会合でも御指名いただいたのだと思っております。
第二に、自動車教習所と、それに働く指導員なり検定員の問題でございますが、その賃金、労働条件の現状について若干御報告いたしたいと思います。
一つは、自動車教習所に働く労働者の賃金なり労働条件については、かなり都道府県別に大きく違っているという実態であります。また、教習所ごとにもかなり大きな違いがあります。で、その格差を論ずるときに、経営収入等の問題もありますので、若干、御参考ですが、教習料金の格差よりも、私どもは賃金の格差の方が大きいというふうに判断をしております。教習料金の場合は、雑駁ですけれども、大まかに言うと、技能教習というのがありますが、その一時限あたりの料金が大体二千五百円から四千円くらい、平均集中しているのは三千円から三千五百円程度というのが私どもの傘下の状況でありますけれども、その場合に、先生方御承知のとおり、標準といいますか、二十七時限の技能教習を最低限やらなければならないわけですが、それをやった場合に、最も短い時間で卒業した場合に、入学金その他のいろいろなテスト料などを含めて、すべて込みで全国的には私どもの調査では十万円から十七万円、一番多いのは十二万円から十四万円ぐらいということになります。もっとも、現実に卒業するには二十七時限では卒業できないわけでして、大体年齢ぐらい、五十歳の方は五十時間ぐらい、三十歳の方は三十時間ぐらいというふうに一般的には言われているわけであります。たとえば、そういうことで申しまして、もちろん大都市部の方が教習料金も高いわけですけれども、東京、大阪などと、あるいは石川県とか福岡、北海道などと比べても、そう大きな教習料金の格差はありません。それから賃金についても、東京、大阪などの賃金実態は、基準内の賃金は、大体東京、大阪などの場合はもう十七万円から二十万円くらい、かなり年齢も四十歳ぐらいになっていますので、平均年齢も高くなっていますから、そういうふうになっております。そうしてそのほかに、所定時間、八時間なら八時間、七時間なら七時間の所定の労働時間を働いた場合の平均賃金は、大体大阪の場合で二十一万円強になっております。したがいまして、教習所の場合に、そのほかに時間外労働——超過勤務といいますか、時間外労働が非常に多いわけでありますが、大都市部で労働組合の組織のあるところでは二十五時間から三十時間ぐらいの時間外労働をして二十五万円ぐらいの平均賃金、収入というふうになっております。それに対して労働組合のないところでは、やはり長時間働いて同じぐらいの収入。時間外を五十時間とか百時間ぐらいをやって、やっと月間三百時間近く働くわけでございますが、そういう場合はそうでありますし、労働組合のあるところは大体二百時間ぐらいで、そのぐらいの収入を得ておると。収入は同じなんですが、労働時間がはるかに違うということであります。
それから地方の低い県、これは余り名前言うといろいろ差しさわりがあると思いますが、低い県で申しますと、大体基準内賃金が十万円から十四万円くらい。そして大体その場合は残業時間が五十時間から七十時間ぐらいやっておる県が多いと思いますが、そういう場合の平均賃金で十二万円から十七万円ぐらいになっていると思います。で、もちろんその教習員も労働者ですから生活をしていかなくてはなりませんので、一定の収入がなければならないということで、賃金が低ければ当然労働時間は長くなると、賃金が高ければ労働時間はある程度一定のレベルに抑えられると、こういうふうに相互関係になっていると思います。
それから労働時間については、大体一日拘束八時間、実働七時間というのが私どもの半分ぐらいのところで到達しているところでありますが、その場合所定の労働時間のほかに時間外労働が、先ほど申しましたように、月二十時間ぐらい。あるいは労働組合のない地方は、拘束九時間、実働八時間。最悪の場合には強制的、ほぼ半強制的な残業時間が三時間ぐらい、十一時間の労働である。これは正規に申しますと、一時限の教習が五十分でインターバルというのが十分というのが当初の話でありますけれども、実際にはインターバルを五分とか短くしているところがありまして、十一人を教習するなり——十二人というのは例外的ですけれども、大体十人から十一人の生徒を一日に教習していると、こういうことがあります。しかも、そういうところの場合は、特に労働組合がなくて非常に大変なところは年じゅう無休とか日曜日の一斉休日がないとか、そういう学校が二、三東京の場合でもあるわけでありまして、もちろん祝祭日なども休日でないところが、そういう場合があるわけです。したがって、そういう場合には、最悪の場合には、年間が三百日の稼働をして、定時間で二千四百時間ぐらい、総実働時間で三千時間ぐらい。大企業の労働組合は大体二千時間ぐらいの定時になっているわけですから、年間四百時間ぐらいも長時間を働いていると、総実働時間ではもっとさらに大きく働いていると、こういう形になります。こういうことでは教習の効果を上げるということについては上がるはずがないだろうし、教習所の先生の場合は、われわれの交流会では、よく自動車学校の先生はどなる、特に男子に対してはどなりつけるということが言われていますが、まあ最後の、夕方になってくると、どなってもくれない、何も口もきかなくなってくる。一日十一時間もしゃべりっぱなしで、口でしゃべっていますとそういう状態になってくるということでありますので、教習の効果の上からは長時間の教習というのは効果が薄い。この件については警察庁の場合もそういう指導法を認めておりますし、岩手県なんかの例では九時間以内に抑えろというような指導を、通達を出している例もあります。
第三番目に、教習所の健康状態、こういう点について申し上げます。
こういう長時間労働をやっておりますので、アンケート調査の一例ですが、たとえば長野県の十一校、百七十六名の調査の場合に、「業務に起因をする傷病や症状がありますか」という質問に対して、これは一人平均大体三・二五の症状を訴えております。その症状の第一番目は、胃腸障害が百七十六に対して九十六、腰痛が八十七、肩こりが七十八、体がだるいというのが六十七。数は少ないですけれども、むち打ち症が二十四、目まいがするというのが八などもあるわけであります。
第四番目に、高速教習の問題について若干この際意見を述べさしていただきたいと思います。
法令法規の間に高速自動車国道と自動車専用道路を指して高速道路等ということで、高速道路等の教習については、教習所の指導員としては、私どもの場合は、従来から絶対反対という声が圧倒的であります。それは命にかえられないからということが第一でありますが、昭和五十二年の事故状況でも、一般道路に比べて事故一件当たりの死傷者の数は、高速道路の場合は一般道路に比べて一・五倍、死傷者の数は三・三倍、致死率は二・三倍となっております。事故が起これば死亡する確率が高いわけでありますから、そこで仮免許中の者にはとっさの場合の反応は非常に限界がありますので、非常に危険が高いと、こういうふうに思っております。
特にそのことは、先般愛知県知多半島道路における自動車専用道路、これは制限時速六十キロですけれども、八月二十八日のその事故の場合には、教習生と指導員か両方とも死亡しているわけであります。私たちは昨年十一月二日に、警察庁交通局長の通達が出てから、高速教習は取りやめるように要請をしてきました。
その理由は、まあ特に命の問題。現在のブレーキは高速ではなかなか役に立ちにくい。あるいは交通労働者の場合も余り望んでいない、反対をしている。経営者の営利主議への迎合ではないか。あるいは実質的な強制につながっていく。特に入学時にそういう料金を取ってしまうという場合があり得る。あるいは当面は任意だけれども、将来高速教習というのを全面的に法規制の中に入れてくるのではないだろうか、あるいは漫性的な残業をほうっておいて高速教習を導入するのはさらに労働強化になって、ますます効果は逆効果になるだろうということで、私どもは免許を取って一年間、逆に初心者マークをつけた場合の高速の乗り入れを制限すべきではないかということを実は一九七二年の段階から警察庁には提案を申し上げてあるわけであります。
こういう問題について問題があるならば、私どもは、バス、トラック、ハイヤー、タクシーなど交通関係の労働者や使用者側あるいは自動車教習所の労使の代表、学識経験者などを含めた場を持って十分検討した上で実施をすべきではないか、こういう提起を申し上げてあるわけです。これらについては、しかし一向にいままで御相談を承っていないわけでありまして、私どもが申し出する以外には受けていただけないわけであります。
第五に、教習所のあり方でありますけれども、自動車教習所は、一方では私企業、営利企業でありますし、同時に指定自動車教習所ということで、一定の教育というか、警察庁の一種の下請企業という公的な側面があるわけであります。これはもともと教習指定制度が導入された昭和三十六年ですか——三十五年、六年の間に導入されていますけれども、その試験にかわって検定業務を行うということから、いろいろ教習についても細かく規定があるわけでありますが、その場合に、たとえば路上教習の問題について、教習の効果のためには、教習の生徒は一日二時間以内、二時間を超えてはやらないこと。三時間やっては無効であると。実際に三時間やった場合には、不正規講習という形で卒業証明書の発行停止などの処分を受けている学校もあるわけでございます。ところが、それに対して教える指導員側には何時間でもいいと、十一時間でも青天井でやっているということがございますので、私どもとしてはせめて労働基準法の最低規定である八時間、こういうところに指導していただきたいと思います。
さらに、あるいはその労働争議への介入など、警察庁の場合に、若干、国家公安委員会の管轄下でありますので、教習時間中に隠れてタイムウオッチではかるなど、監視やあるいは処分とかテストだけを厳しくするなど、指導員の資質の問題だけに、そういうことをやったところで実質的に指導員の資質が向上するとか、教養が向上するとか、教育効果が上がるというものではないだろうというふうに思っております。したがいまして、特に教習所の場合は元警察官の方が法制的にも法規上も大体なりやすいようになっていまして、管理者の場合九五%が元警察の方の天下りでございます。したがって、いろいろ問題がありまして、三月や八月など教習生の多い時期には卒業までの時間が短くなる。要するに、生徒が多くなると簡単に早く卒業してしまう。したがって、そういう見きわめが教習も人数が多いと困難になる。それから地方的な格差も非常に十時間以上の差がある。早く卒業する県とゆっくり卒業する県。したがって、そういう粗製乱造の教習はむしろやめて、もっと充実した教習をやれるように、優秀なドライバーを育成するという目的が、とかく利益追求という目的の前にかすんでしまうという実態があるわけでありますから、営利企業に公的な業務を行わせるという場合のあり方としてはよほど厳正でなくてはならないだろうと思います。そういう意味で、私どもは営利性についてはもう少し枠をはめて、指導員に十分な教育ができるように、あるいは検定員が厳正な検定を行えるようにさらにすべきではないだろうか。
そういう意味で、免許制度や自動車教習所のあり方については、先ほど私が述べましたような現場の労働者の代表も含めた審議会などで検討を深めるべきではないだろうか。先ほど、六月十二日ですか、交通警察懇談会なるものが開かれたという新聞記事を見ましたけれども、そういう席には現場の声は反映されてないというふうに判断をしております。学識経験者なり一般のドライバーというふうに新聞では載っておりますが、最もよく実態を知っている交通関係の労使の代表など、あるいは教習所の労使の代表など参加をさした場をぜひ設けて十分な検討をし、国会においても十分な御検討をお願いいたしまして、簡単ですけれども御報告にかえさせていただきます。