大平正芳の発言 (本会議)
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○国務大臣(大平正芳君) 白木さんの第一の御質問は、疑惑の解明と政治不信との関係についてでございました。疑惑の解明に熱心でなければ政治不信を解消することにならぬじゃないかという御指摘でございました。
私も全く同感に存じております。したがいまして、政府の立場において可能なことはあらゆることをやったつもりでございまするし、国会の国政調査権の発動につきましては政府の立場で協力を惜しんだことはないわけでございます。今後もこの態度は堅持して究明に当たりたいと考えております。
第二の、白木さんは政治資金規正法は色のついた政治献金を排除する機能は持っていないという御指摘でございまして、それを改正する意図はないかという意味の御質問でございました。
政治資金規正法というのは、私の理解するところでは、政治献金の公開制度をとり、一方、寄付金の制限を通じまして政治活動の公明を保障しようという立法趣旨に出たものと思うのでございまして、あなたが言われるような政治献金の一つ一つに色合いを規制するという精神は含まれていないと思います。わずかに政府と関係の深い企業からの献金を禁じておるとかあるいは赤字会社からの献金を禁じておるとかいうところに片りんが出ておりますが、趣旨は公開と寄付金の制限というところに力点が置かれた制度であると思っております。したがって、そういう色のついた政治献金の規制という問題は、政治資金規正法ではなくて、他の立法に期待すべきものではないかというように私は考えます。
それからあなたは、これに関連いたしまして、企業献金を廃止すべきでないかという従来の御主張をきょうも強調されたわけでございます。
私は、企業といえども社会的存在である以上、企業が政治献金をして悪いという性質のものではないと思います。ただ、これは漸次企業から個人献金に移行するように努力すべきであると考えまして、わが党におきましてもそういう方向に鋭意努力をいたしておることは、御理解をいただきたいと思います。
それから選挙制度の改正のために第八次選挙制度審議会の発足を考えているかということでございます。
この間も政府の協議会からもいろいろ御提言をちょうだいいたしておりまして検討を進めておるわけでございますが、あるいは検討の推移によりまして選挙制度審議会を設けまして御議論をいただく必要が出てきょうかと思いますけれども、どの段階でいたしますか、まだ具体的な考えは今日持っておりません。
それから財政再建の具体的な手順を示せということでございます。
財政再建は、この間も演説で申し上げましたとおり、いま巨大に抱えておりまする赤字国債というものをここ四、五年の間に解消していくということを通じまして財政の体質を改めて、これから先財政が担うべき役割りを十分果たせるだけの健康体に取り戻したいという趣旨のものでございます。その具体的な手順といたしましては、来年度を第一年度といたしまして公債発行の絶対額を圧縮して、五十九年度には赤字公債は少なくともない状態に置きたいということを第一の原則にしておるということを申し上げておるところでございます。そのためには、現行の税制につきまして綿密な見直しをやらなければならない。とりわけ租税特別措置の見直し等、租税負担の公正を図るように努めますということが第二でございまして、第三は行政費の節減を図らなければなりませんで、行政機構、行政定員の厳しい抑制、概定経費の見直し等によりまして極力歳出の消滅に努めますが、そういったことにさらに年々もし経済が好調に推移いたしまして自然増収が期待できますならばそれも加えてこの財政再建の目的に充当いたしたいと考えております。そういうことをあらゆる手順を尽くした後でなお足らないという財源につきましては、国民の理解を得て理解するやり方で調達をさしていただくよりほかに道はないじゃないかということを申し上げておるわけでございます。御理解をちょうだいいたしたいと思います。
それからそのためには白木さんは歳入の範囲内に歳出を消滅するという一つの歳出消滅の年次計画をつくるべきでないかという御指摘でございました。
われわれといたしましては、きのうも竹入委員長から衆議院におきまして中期財政計画というものの策定を通じてやるべきじゃないかという同じ思想に乗った御質問もあったようでございます。われわれは、いま申しましたように、五十九年度までに赤字公債を持たない財政体質にさしていただくということを目標といたしまして、各年度の経済情勢、財政需要、税収等を勘案しながら総合的に決めてまいるつもりでございまして、御指摘の年次計画をきちんと決めてやるべきでないかという御趣旨に可能な限り沿うように努力したいと考えております。
その次に、いわゆる三Kの赤字解消について具体策を示せということでございました。
まず、国鉄でございますけれども、国鉄再建問題につきましては、七月二日、国鉄より国鉄再建の基本構想案というものが出てまいりまして、関係者の間で目下それを軸として鋭意検討を進めております。このほど運輸省からもその考え方を踏まえて大蔵省に対し五十五年度概算要求が行われたと承知いたしております。今後五十五年度予算編成の過程におきまして国鉄財政再建の抜本策を見出していきたいと考えておりまするけれども、現下の財政事情等にかんがみまして、国鉄に対しましては徹底的な経営改善を求める必要があると考えております。
健保関係でございますが、医療保険につきましては、今後の安定成長経済下における人口の急速な老齢化、医療の高度化の伸展等に対応いたしまして給付と負担の両面にわたりまして制度の基本的な改革を進めなければならぬと考えております。その第一歩といたしまして、給付と負担の適正化、家計の高額な負担の軽減等を目的といたします健保法の改正を提案いたしておりまして、その早期実現を図りたいものと考えております。
食管につきましては、逆ざやの解消ということを目標にいたしましてこれまでも年次的に努力をしてまいりましたが、多少この年次計画はおくれておりまするけれども、鋭意この逆ざや解消の方向に進めてまいること、それから米の需給均衡化への努力というものを通じて食管への負担というものの軽減を極力図ってまいらなければなりませんし、そういった観点からことしの米価の決定に当たりましても品質を加味するというような新たな工夫もこらしておるわけでございまして、今後鋭意この食管負担の軽減という方向に努力をしてまいるつもりでございます。
それから不公平税制の抜本的改善をやらなければならないではないかということでございます。
この不公平税制という言葉でございますが、これにはいろいろなとり方がございまして、私は、これは特定の政策目的のために課税の原則を犠牲にする税制を言うのだと思うのでございまして、企業会計の原則上認められたいろいろな引当金、準備金等に非常に重課していくというようなことがいろいろ云々されておりますけれども、それは不公平税制の是正とは言えないと思っておりますが、いずれにいたしましても、不公平税制の是正というのは、これまでも政府は毎年毎年鋭意やってまいったわけでございまして、ことしも、御案内のように、社会保険診療報酬課税の特例の是正でございますとか、有価証券譲渡益課税の強化でございますとか、価格変動準備金の段階的整理等も含めましていろいろ進めてきたわけでございます。今後も私どもはこの方面には相当思い切って周到な切り込み方をしていかなければいかぬといろいろ考えておるわけでございます。たとえば、利子・配当の総合課税の問題につきましては、いま税制調査会で総合課税移行について御審議をいただいておるわけでございます。ただ、世上、大口資産家に対する課税あるいは富裕税、大企業に対する重課というような点について御指摘がございまして、われわれは皆さんの御指摘を受けるより前にこういう問題については十分な検討を加えまして、他の諸外国には類例を見ないだけの急速な累進課税をいたしておりますことも御理解いただきたいと思いますが、それでもなお切り込む余地がないものかということで鋭意検討を重ねておりますが、何さま数が少ないことでございますので、巨額の財源をこれに期待して財政再建はこういう税源からくみ上げる金で十分賄えるでないかという大まかな見通しにつきましては賛成いたしかねるわけでございます。
それから行政改革を本気でやる意思があるかということでございます。
私はかねがね行政改革というのは非常にむずかしいということを申し上げたのでございます。行政改革には非常に牢固たる官僚組織というものが背後にあるわけでございまして、これはなかなか手に負えない存在でございますので、これが簡単にやれるような安易な取り組み方をやっては行政改革などというものは結実するものではない。これまで日本の歴史を見ましてもそのことは皆さんよく御承知のことと思うのであります。非常にむずかしいことだということを頭に置いて真剣に取り組むことでなけりゃ政治にならぬと思うのでございます。行政改革をやるやると言うことはやさしいのでございますけれども、われわれは政治の責任として実効を上げてまいらなければならぬのでございますから、どのようにして実効を上げなければならぬかということにつきましていま鋭意苦吟を重ねておることは御理解をいただきたいと思います。
ことしは、第一には新しい人員削減計画を明年度を起点として始めようと考えておりまして、いままでの規模を上回る定員の削減をやりたい。いろいろな行政機構の改革にいたしましても、行政の簡素化にいたしましても、収斂するところはやっぱり定員の削減に帰一してまいるわけでございますので、それについては新しい計画で臨みたい。それからいままでいろいろ計画はしてみますけれども、実効が十分でなかった行政需要に応じた人員の配置転換、これを本当に具体化していきたい。これもやさしく具体化できるようなしろものではございませんけれども、少なくとも相当いままでよりも進んだ具体化をいたしまして皆様の期待にこたえなけりゃならぬと思っておりますけれども、これはわが党ばかりでなく野党の皆様にも御協力をいただかなけりゃならぬと考えております。それから認許可事項の整理を初めとする各種の行政簡素化を鋭意進めてまいるつもりでございます。
それから補助金の整理でございます。
これは絶えず見直しを行っておりますが、そのやり方がまだ足らないという御指摘でございますが、私どもを五十五年度予算の編成に当たりましても、このサマーレビューを通じまして、補助金の役割り、効果等を総点検をいまいたしておるところでございます。従来の制度、慣行等にとらわれることなく、従来にも増して積極的な廃止、減額、整理、合理化というものを進めてお目にかける用意をいたしておるところでございます。
それから石油製品に対する価格政策でございます。
これは、私、両院を通じて申し上げておりますのは、根本はやっぱり原油並びに石油製品の需給の安定を図ることが価格政策の根本ではないか。そのために周到な用意をしておりまするし、上半期も事なく過ぎたわけでございますが、下半期も恐らく必要とする石油需要は充足されるものと配慮いたしておりますし、万一何らかの事情で多少の落ち込みがございましても、民間八十六日の備蓄を持っておりまするし、政府備蓄は一週間ございまするので、多少それを崩しても供給に不安がないようにいたしていきますから、そういたしますと何も買いあさる必要もないわけでございますので、皆様が心配するような、価格が高騰するというようなことは御懸念がないことと思うのでございます。したがって、原油の輸入高というものだけはしかしながらぎりぎり消費者が負担せざるを得ない状況にあるわけでございますけれども、それを超える部分につきましてはわれわれは厳重な監視態度を崩していないわけでございますので、御理解をいただきたいと思うのであります。
それから物価でございますが、物価は、いま言われましたような石油を初めといたしまして、木材でございますとか、皮革でございますとか、海外の商品が高値をつけてまいりました。その影響もありまして、卸売物価の上げ足はことしに入りまして相当速まっておりますることをわれわれは憂慮いたしておるわけでございますが、このところやや小康を得つつあります。しかしながら、われわれが当初経済見通しで申し上げたようなアップ率にとどめ得るということにつきましては、遺憾ながらこれは相当大幅の改定をせざるを得ないということを申し上げなければならぬことを非常に残念に思います。けれども、これは確かに消費者物価にこれから徐々に影響を及ぼしてくるでございましょうけれども、物価政策の総合的な推進によりまして五十四年度の消費者物価の年度平均上昇はほぼ当初見込みのとおり四・九%程度に抑えていけるのではないか、そのようにやっていかなければならぬといま考えておりまして、四十八年当時のような狂乱物価が再現するとは考えていないのであります。
また、最近、演説でも申しましたように、経済情勢は個人消費や設備投資を中心に拡大を続けておりますし、雇用も改善を見つつあるわけでございますし、輸出も順調でございますので、わが国の経済はおおむね当初予定いたしました成長率は達成できるのではなかろうか、いまこれを改定するつもりはありません。
公共料金につきまして公明党の言う三原則の適用によって国民福祉料金体系を確立すべきでないかということでございました。
一つの御意見であろうと思いますけれども、しかし、福祉の向上や社会的公正まで公共料金に含めるということに対しましては必ずしもにわかに賛成できないのでございまして、私どもといたしましては、経営の合理化を進める、最小限度必要な受益者負担を求めていくという従来の態度を堅持して公共料金の安定に努めたいと考えておりますので、御理解を得たいと思います。
日本型福祉社会とは何ぞやという御質問でございました。
一口に言いますと、これは自助努力と地域社会の連帯を基礎といたしまして、内需中心の成長パターン、効率的な社会保障政策、生活基盤に重点を置いた社会資本の整備等に支えられた社会であるというようにお答えを申し上げておきます。
それから年金制度につきましては厚生大臣からお答えをいただくことにいたしたいと思いまするし、宅地供給等につきましては建設大臣からお願いをすることにいたします。
いずれにいたしましても、財政再建について、政府の施策による責任を安易に国民に転嫁するようなことはいけないではないかという最後の御警告がありましたが、政府も好きこのんで積極財政を展開して赤字をふやしたわけではないのでありまして、石油危機を克服いたしまして国民の経済と生活を守るためにどうやるかというあらしを一たん財政で受けとめさせていただきまして、経済が回復する過程で財政の体質を漸次もとに戻していただこうということをお願いしているわけでございまして、すべてが国民のためであるということを御理解いただきたいと思います。(拍手)
〔国務大臣江崎真澄君登壇、拍手〕