野田哲の発言 (本会議)
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○野田哲君 私は、日本社会党を代表して、大平総理並びに関係閣僚に対し、緊急の課題にしぼって数点にわたって質疑を行います。
大平総理、異例な形で召集された今回の第八十八回臨時国会での代表質問は私が最後です。私のこの質問が終わると衆議院に解散詔書が提出されるという風聞がちまたにあふれています。もしそうであるとすれば、国民の審判を受ける前の公的な場での論戦は、この野田・大平論争が最後の機会となります。それだけに、問題点の是非について国民各位に率直に理解が得られるよう端的なお答えを希望して、質疑に入ります。
私は、まず、去る七月二十四日に発表された防衛白書と大平内閣の外交政策との関連について、総理、外務大臣、防衛庁長官にそれぞれ見解を伺います。
総理は、今回の所信表明において、「ソ連は重要な隣国であり、同国との間に相互理解と信頼に基づく真の友好関係を発展させていくことは、日ソ両国の利益であるのみならず、アジアの平和と安定に寄与するものであります。」と、こう述べています。園田外務大臣も機会あるごとに全方位外交を強調されています。私たちもこの方針を支持するにやぶさかではありません。しかし、去る七月に発表された防衛白書は、ソ連との友好関係を発展させていこうとする総理の所信とは全く相入れない、ソ連敵視、ソ連の軍事的脅威の誇張に終始しています。そして、八月の山下防衛庁長官の韓国、アメリカ、NATO訪問においても、ソ連の軍事的脅威を誇大に強調し、これに対する西側の対ソ戦略強化を訴えたと報じられています。報道によると、山下長官の行き過ぎたソ連脅威論は、アメリカのブラウン長官からさえたしなめられ、また外務省からもクレームがついたと言われています。総理の所信表明や園田外務大臣が常に主張している全方位外交が政府の対ソ政策の本心であるとするならば、防衛白書に表明されている対ソ認識とは全く相入れないものであり、当然修正されるべきではありませんか。総理大臣、外務大臣、防衛庁長官、それぞれの明確な見解を伺うものであります。
次に、山下防衛庁長官の訪韓、訪米について、総理並びに防衛庁長官にその見解を伺うものであります。
今回の山下長官の訪韓、訪米の一連の行為は、北東アジアにおける日米韓の軍事的結びつきをますます強め、実質的な日米韓三国の西太平洋における集団安全保障体制を目指す危険な行為として大きな危惧を抱いています。去る八月二十日付のアメリカのニューズウイークは、日本は最近アジアでの防衛力を強化するために一層緊密な軍事的な提携を結ぶことをひそかに韓国側に提起をした、こう報じています。一体、山下長官は韓国との間にどのような軍事的提起をしてきたのか、明らかにされたい。
チームスピリット78、79に見られるように、日本を発進基地とした米軍の朝鮮半島における軍事行動の展開や、ますます頻繁になりつつある日韓制服幹部の往来、そして日韓両国の与党国会議員による日韓安保議員連盟の動向などの既成事実の積み重ねの上に、いよいよ公式に政府レベルによる共同防衛体制の協議へとエスカレートしたものという危惧を抱かざるを得ません。この点について総理並びに防衛庁長官の見解を伺うものであります。
次に、フォートレス・ゲールと呼ばれる先般沖繩で展開されたアメリカ第七艦隊、第三海兵水陸両用部隊の合同演習について伺いたい。
今回の演習が沖繩県民に与えた影響は、本土に住む者にははかり知れないほどの大きな不安と恐怖感を与えています。第二次世界大戦で日本の国土の中で唯一の直接の戦場となって、婦女子から老人に至るまでことごとく死と直面する悲惨な体験をし、その後二十数年間日本から切り裂かれて異民族の支配を受けた沖繩県民に、なぜいままた演習とはいえその町や村が戦場となる体験を強いなければならないのでしょうか。
まず、政府がこの演習計画を了承した際にどのような認識を持っていたのか、伺いたい。
また、この演習はアジアのどの地点でのどのような状況を想定をして行われたものか、あわせて伺いたいと思います。
次に、今回の演習は、道路の交通制限や騒音による県民への直接被害はもとより、沖繩県民の恐怖感、不安感など精神的被害を含め、その影響は施設提供区域をはるかに超えた広範なものとなっており、地位協定の範囲を逸脱したものと言わなければならないと思います。外務大臣の見解を伺うものであります。
次に、きのうの小野議員の質問、そして本日の質問に対しても、総理や防衛庁長官は、自衛隊員はこの演習には参加していない、招かれて見学をしただけだと答えておられます。果たしてそうでしょうか。この演習の具体的な作戦行動の中に尉官クラス十数名が戦闘服を着て直接行動に参加していた事実は、防衛庁でも現に私に対して認めているではありませんか。いかなる理由と法的根拠に基づくものなのか。また、この演習の無線交信を自衛隊が担当したと言われていますが、その事実と、それが行われたとするならばそれはどのような根拠によるものであるのか、防衛庁長官の答弁を求めます。
大平総理は、昨年の自民党総裁選挙に際し、有事立法には否定的な態度を表明されました。大方の予想に反しその予備選挙で圧倒的な勝利をおさめられた大平総理の支持者の中には、その有事立法に否定的なあなたの良識に賛意を表した自民党員も相当いたはずであります。しかし、総理が自民党総裁選挙で述べられた所信とはうらはらに、防衛庁内での有事立法制定作業は着々と進んでいると言われます。自民党の総裁選挙においてさえ有事立法に否定的な態度をとった大平さんが選ばれたのであるから、国民の大多数が有事立法に反対であることは明らかであります。それにもかかわらず、防衛庁が有事立法の作業を急いでいるのはいかなる理由によるものなのか、また、その作業は現在どのような段階まで進んでいるのか、防衛庁長官の答弁を求めます。
さらに、大平総理、あなたの有事立法に否定的な態度は、単なる福田さんの積極論に対抗するためのスローガンであったのか、それともあなたの政治理念として国民に訴えたものなのか、端的な所信を伺うものであります。
さらにもう一点防衛庁長官に伺います。いま国民は石油製品の入手困難に直面しています。農業用の灯油、重油、漁業用の燃料など経営に支障を来す状態が出ています。ところが、自衛隊内には莫大な備蓄が行われていると言われています。防衛庁だけは国民の困難をよそに省エネルギー政策とは無縁の存在であっていいのかどうか、防衛庁長官の見解を伺います。
総理はその所信の中で政治倫理の確立を強調し、航空機輸入に絡み、世上とかくの疑惑を生み、政治への不信を招いたことはまことに遺憾であるとして、その政治的道義的責任について国会あるいは幅広い世論の中でその究明が続けられることについては、政府としてできるだけの協力を行うと述べています。このようなそらぞらしい総理の態度こそ国民の政治不信をなお一層増幅させる大きな要因となっていることを私は指摘いたします。
ロッキード事件、グラマン・ダグラス事件と二回にわたって、政府・与党の要職にあった人が航空機の輸入に関連してそれぞれ五億円もの金を受け取っていたという事実について、自由民主党の総裁として国民にどのような責任を感じておられるのか、まずその点を明らかにしていただきたいと思います。
国会での真相究明に消極的な態度を取り続け、うやむやに葬り去ろうとしているのは、総理、あなたが総裁を務めている自由民主党そのものではありませんか。私たち社会党や野党各党は、すでに前国会においても今国会においても、航空機疑惑の真相究明のためには、松野頼三氏が国会で行った証言は明らかに偽証であり、法的措置を講ずる必要があること、また、今回の航空機疑惑の当事者である海部八郎が記した幾つものいわゆる海部メモに常連のように登場する岸信介氏に国会において証人として証言を求めることが不可欠として、関係委員会にその手続を求めてきたところであります。これを否定し続けてきたのは、総理、あなたが総裁の座にある自由民主党ではありませんか。前国会の最後の一週間を混乱、空白に陥れて生活関連法案を廃案にまで至らしめたのは、航空機疑惑の解明を拒否し、解散への舞台づくりを行うことによってこの解明を途絶させようとする疑惑隠しの党利党略そのものであると言わなければなりません。
大平総理、あなたがその所信表明で述べられた国会での疑惑解明に協力する、この言葉が真実であるならば、直ちに私たちがいま求めている国会での必要な措置に自由民主党が応じ、関係委員会での審議を行うよう総裁としての責任あるリーダーシップをとるべきではありませんか。自由民主党総裁である総理の見解を求めるものであります。
次に、内政上の当面の問題について二、三点関係閣僚に伺います。
その一つは、去る八月十日に内閣と衆参両院に対して行われた公務員給与の勧告の取り扱いについて総理府総務長官の見解を伺います。
新聞報道などによりますと、政府はこの取り扱いの閣議決定を、伝えられる総選挙後まで延期したとのことでありますが、勧告後すでに一カ月近くになろうとしているにもかかわらずこの決定が行われないというのはいかなる理由によるものですか。政府は、毎年の公務員給与法の審議に際して、その法改正が著しく遅延することに対して、勧告後可及的速やかに国会に法案を提出することを言明してきておりますが、このたび重なる政府見解は一体どうなっているのでありましょうか。
この問題については、一九六九年十一月十一日の佐藤内閣の閣議決定以降今日まで十年間、勧告の完全実施は制度として定着しています。また、政府はILOの場においても公務員のスト権の代償機能としての人事院勧告は完全実施することを国際的にも公約しているではありませんか。人事院勧告の完全実施はすでに国内的にも国際的にも日本政府の公約済みのことでありますが、一体本年度の勧告をどう取り扱うつもりなのか、総務長官の明確な答弁を求めるものであります。
次に、政府の過疎地域対策について伺います。
総理はその所信で八〇年代は地方の時代と述べていますが、単なる抽象論では今日過疎地域の抱えている問題の解決にはなりません。過疎地域対策緊急措置法は本年度をもってその期限が終了することになっており、過疎地域の町村にとっては深刻な問題となっています。いまこの緊急措置法に基づく措置が打ち切られることは、過疎地域を抱える自治体の行政水準を大きく後退させ、過疎地域住民に深刻な打撃を与えることは火を見るよりも明らかであります。大平内閣の田園都市構想のバラ色の夢よりも、過疎地の住民は当面の具体的な救済策を切望しています。この緊急措置法の延長は当然のことと思いますが、国土庁長官の見解を承りたいと思います。
次に、今後の税制について、多くの質問者に続いて私も重ねて総理の所信を端的に伺いたいと思います。
総理は、その所信で、財政再建のために国民の理解を得て新たな負担を求める、こう述べています。国民の理解を求めるためには、その新たな負担というのはどのような税制であるのか、国民のどの階層にどのような税負担を求めるのか、その内容を具体的に示すことが国民の理解を求める道ではないでしょうか。
巷間伝えられるところによると、総理は衆議院の解散を決意していると言われております。もしそうであるならばなおさらのことその具体的内容を明らかにし、まず国会でその是非、疑問点について審議を行ってその問題点を明らかにすることが先決ではないでしょうか。
さらに総理に端的に伺います。いま国民に新たな負担を求めようと考えておられるのは、一般消費税の導入でしょうか、それとも所得税の引き上げでしょうか、あるいはそれ以外の手段を考えておられるのか、端的にお答えをいただきたいと思います。
次に、昨年、同和対策事業特別措置法の三年間延長決定の際、関係団体の強い要望によって三項目の附帯決議が採択されました。政府にはこの三項目の決議を完全に実施していく姿勢なりあるいは熱意が全然示されておりませんが、部落問題を根本的に解決していく具体的な計画を明確にしていただきたい。
また、数兆円という膨大な残事業について、残る二カ年の間に完全消化するための具体的な計画を明らかに示していただきたいのであります。
さて、大平総理、私がこれから伺うことが衆参両院における代表質問の最後であります。
あなたはすでに解散を決意していると言われています。大平さん、あなたが本当に解散を決意しているとすれば、その理由は一体何ですか。
いま日本の政治にとって必要なことは、あなた自身もその所信で述べられた当面する緊急課題への対応、すなわちエネルギー問題、財政再建対策、航空機疑惑の徹底解明、そして迫り来るインフレへの対策、これらの課題に適切に対応することが政府並びに与野党に課せられた共通の任務ではないでしょうか。総理自身が当面する緊急課題への対応としてその所信を述べながら、その具体的な審議の道を封じて衆議院解散の挙に出ることは、憲法第七条に基づく解散権の乱用であり、政治の私物化と言わなければなりません。
ロッキード事件、グラマン・ダグラス事件が公判においてその深層部が一層国民の前に露呈される中での国会での解明を逃れるための疑獄隠し、これから国民生活を直撃するインフレ、物価高による国民の批判を事前にかわそうとする失政隠し、国民に大きな税負担をもたらそうとしている増税の内容をあいまいにしたままの増税隠し、そして来年の自民党総裁選挙を目指しての大平派の基盤づくり、このような名分なき解散、党利党略、派利派略の解散という指摘、批判に対して、大平総理、あなたがそうではないと言われるならば、その大義名分を明快に答えられることを最後に求めて、私の質疑を終わります。(拍手)
〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕