竹村数男の発言 (科学技術振興対策特別委員会)

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○竹村参考人 ただいま御紹介いただきました東京商船大学の竹村でございます。
 大学では機関学科の原子力船工学講座に属しておりまして、原子炉の理論、原子力機関並びに原子力船の構造、配置、性能、特性、そういったものを教授、研究しております。また昨年、原子力委員会に設置されました原子力船研究開発専門部会に一員として参加いたしまして、討議に加わりました。
 本日は、日ごろ考えておりますところを若干述べさせていただきたいと思うわけでありますが、まず最初に、原子力船の特徴から原子力船の研究開発の必要性を述べたいと思っております。
 まず第一に、原子力船は一度燃料を装荷しますと、二ないし四年というものは補給なしに運航を続けることができるわけであります。このことは、原子力船をどの航路にも投入できるというメリットがございまして、船隊を構成する意味において定期航路確保の上に非常に有益であります。在来船は、この点、燃料油とかボイラー水等を積み込むスペースというか容量のために制限を受けて、そう有利さのあるものではございません。また、長期間燃料を補給しなくてもよいということは、外地で燃料油が補給できなくても立ち往生するようなことはないということであります。このことは、昭和四十八年のオイルショックのときに、日本船が外地で経験したことであります。
 第二に、高速大馬力の船、長い距離を航海する船にとって原子力船はきわめて有利であるということであります。
 最近建造されました最も大きな馬力の船は、アメリカのシーランド社の十二万馬力のコンテナ船でありますが、この程度の船になりますと、重油は一日に約五百トンたきます。したがいまして、日本からニューヨークまで直行いたしますと、一万トンの燃料を使うことになります。欧州直行ではもっと多くなるはずでございまして、それだけ荷物のほかに油のタンクを持たなければならないということで、積み荷減という影響が出てくるわけであります。
 船では、スピードを上げますと、馬力がスピードの三乗に比例して必要になります。したがって、燃料もまた三乗に比例して減る、燃えるというかっこうになります。高速になればなるほど、また距離が長ければ長いほど原子力船が有利ということになるわけであります。
 第三番目に、燃料の費用が在来船に比べて安いということであります。在来船では、先ほどのシーランド社の十二万馬力級では、一時間一馬力を出すのに、燃料油が上がってまいりましたので、いまの値段でいきますと、多分十円ぐらいかかるのではないかと思います。一方、原子力船の方は、同じく一時間一馬力を出すのに二円程度ではないかと予想されております。原子力船はずいぶん割り安でありまして、これで日本からニューヨーク直行になりますと、片道で約三億円以上の燃費の節約ということになります。
 もう一つ特徴を申し述べますと、原子力船では燃料が燃えても重量は変化しないということであります。このことは、結果的に船の喫水が変わらないということでありますので、在来船のように、航海中に喫水を直すために、あっちの燃料をこっちに移し、こっちの水をあっちに移しというようなことは不必要になります。つまり、人手も設備も要らなくなりますと同時に、非常に安定した運航ができる、こういうメリットがあると思います。
 以上のほかにも、原子力船化した場合の経済的なメリットはありますけれども、一方デメリットの方はどうかと言いますと、何と言っても船の値段が高いということであります。原子力船の価格は、先ほどのシーランド社の十二万馬力コンテナ船級になりますと、在来船の二倍程度になろうかと思います。このように価格が割り高になりますのは、当然、建造期間が長かったり、あるいは高級な材料を使ったり、あるいは精密な装置を用いたりということでありますけれども、もちろん、その根源は放射能の存在、こういうことであります。船を運航するための経費というものも、やはり在来船よりも割り高になります。
 以上の経済的なメリット、デメリットを総合しますと、シーランド社の十二万馬力級では、原子力船は在来船よりもかなり経済的に有利になるという結果が、計算でありますが、出されております。
 船に限りませんけれども、輸送機関では、やはり安く、早く、確実に荷物を運ぶということがモットーでありましょうから、どこかの国でそういう船を走らせますと、よその国は全部敗退するわけであります。特に国際場裏の海運においてはそうだと思います。したがいまして、よその国も、それに追従してそういうものを走らせなければならないということになるのだろうと思います。燃料油の高騰によりまして、そういう状況の素地というようなものがますます到来しつつあるのではないかというふうに思っておりますので、原子力船の研究開発というのを大いにやっていくべきだ、こういうふうに思っておる次第であります。
 燃料油の問題は、私が申し上げるまでもありませんで、これはエネルギーの問題として非常に大きく叫ばれておりますので、その方面からも、やはり油をたく船にかわるものということで原子力船の出現を望むわけであります。
 以上、私は、原子力船の研究開発の必要性を述べましたが、原子力船のように非常に技術の高い船は、また高い運航要員がなければ運転ができないわけでありますので、わが国のような優秀な船員がたくさんいる国に非常に向いているわけでありまして、御承知のように、発展途上国の急追をかわすためには、好個の素材であるのではないかというふうに思っております。海運国であるわが国としては、原子力船を研究開発する必要性の一つとして、いまの点をつけ加えたいと思うものであります。
 次に、原子力船の実用化時代に備えて、原子力船の研究開発をどう進めるのかという点について少々述べたいと思います。
 やはり目標をちゃんと決めまして、一貫した理念のもとに着実に進めるべきであるということは紛れもないことであります。
 その意味におきまして、まず第一に、原子力船の研究開発を進めるというには、原子力船の実用化時代というものを一体どういうふうにとらえるかということがポイントになるかと思われます。船の設計から解体までの一生にわたって何よりも安全性を十分に確保しつつ、在来船に競合できる船が多数出現する時代、こう想定すべきではないかと考えております。多数とは十二万馬力級のコンテナ船が少々出てくるというものではなくて、各国の海運界が現在、原料や素材を運搬している船、大体三ないし四万馬力が多いわけでありますけれども、そういうものまで含めるというふうに私は解釈したいと思います。この程度の馬力の原子力船も、現在のような燃料油の高騰が続けば、二十一世紀に入るころには、在来船より経済的に有利になる可能性がある、一応こういう計算が出ております。したがいまして、実用化時代は三ないし四万馬力程度が船隊を組んで動き得る二十一世紀の初めごろ、こういうふうに考えております。
 第二に、それでは実用化のために必要な研究開発は、一体どういうものであるかを明らかにすることが必要じゃないかと思っております。
 御承知のように、アメリカではサバンナ号、ソ連ではレーニン号、アルクチカ号、シビーリ号、西独ではオット・ハーン号、こういう実船による運航経験を踏まえまして、さらに研究開発をした結果、原子力船の実用化に必要な基礎的な技術基盤というものを確立しているのではないかと思っております。またフランス、イギリスも、艦艇の経験をもとにしまして、同様に商船用の原子炉プラントの研究開発を積み重ねまして、実用化に必要な基礎的技術基盤を確立していると言われております。
 わが国も、まず、この域に達する必要があると考えるわけでありますが、先進国の例に見るまでもなく、「むつ」により設計、建造、運航の経験を得ることは欠かせない過程であると思っております。とりわけ「むつ」は、国産技術による設計、建造でありますので、自主技術の確立を目指すわが国の研究開発に寄与するところが非常に大きいものと思っております。「むつ」は、経済性に力点を置いてつくられた船ではございませんので、実用化時代に向けての研究開発の非常な寄与にはなりましても、それだけで済むものではありません。経済性に富んだ、しかも安全性、信頼性を前提とした商船用の原子炉プラントの開発というのが、やはりこれからの研究開発計画の中心になると考えております。
 それで、わが国としてどのようなタイプの舶用炉プラントが実用化のために最適であるか、こういう検討から始める必要があるのではないかと思っております。この検討は、先進国との技術格差を考えますと、できるだけ早く着手する方がよいと思っております。幸いにして最適な舶用炉プラントについて選定されましたとしても、多分それはわが国で未経験の技術の分野がかなり含まれてくるのではないかと私は思っておりますので、そうしますと、個々の機器とか装置について、徹底してゆすってみたり、いろいろなことをしてみて、実験をやってみたとしても、それだけですぐに実用船につなげるというのは、やはり十分ではない、こういうふうに私は思います。どうしてもプラントをつくって運転してみることが必要だと考えております。このゆえに原型炉の建設のステップが必要であると思っております。
 なお現状では、低馬力の原子力船においては、在来船に対し経済的に優位に立てるかどうか、まだ不透明なところもありますので、長期の計画を固定できかねる点もあるように私は思っております。したがって、計画を立てても、経済情勢や国際的な技術の動向というものに照らして適宜見直すことが望ましい、こういうふうに考えております。
 以上申し述べましたことは、原子力船研究開発専門部会の報告書に記載されている内容の考え方と多分合致するものであろうと思いますが、報告書は、原子力船の実用化のための研究開発がますます必要な状況になりつつある、そういう認識のもとに、しからば何をどうすれば実用化時代に備えることになるのか、こういうことを検討したものと理解しております。そういう意味におきまして、報告書との関連ももちまして一言私の考えている意見を申し述べさせていただきました。
 どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 竹村数男

speaker_id: 14805

日付: 1980-05-14

院: 衆議院

会議名: 科学技術振興対策特別委員会