田口一男の発言 (社会労働委員会)
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○田口委員 では、自閉症の問題はそういう点で今後さらにということを要望しまして、次の問題に移らせていただきます。
次の問題は、私は八十四国会の四月十九日にこの社労委員会で、そして昨年の八十七国会の予算分科会で二度にわたって取り上げたことなんですが、題名的に言いますと、ボランティアの活動中に不幸にして子供が水死した、亡くなった、こういうことでそのボランティアの一人が刑事責任を問われたという問題なんです。私はこれを、今度で三度目でありますけれども、なぜ取り上げたか。もちろん、これは誤解があってはならぬと思うのですが、ボランティアであるからそういった安全責任があいまいであっていいとか、今度の事件のように、子供が亡くなってもそれによって免責になるんだということは私は考えておりません。やはり安全責任なり何なりというのは当然ある。しかし、後で順次申し上げていきますけれども、いわゆる子供会というのは一つの地域における社会教育の一環だと思うのですが、その子供会の役員でもない一人のボランティアがその子供会活動に参加をして、たまたま不幸なことに子供が亡くなった、その刑事責任を問われるということによって、本年の大平総理大臣の所信表明演説の中にもわざわざ「ボランティア活動」云々というくだりがございましたように、私はそこでボランティアで社会福祉の後退だ、何だと言いたくありませんけれども、いま政策的にどんどんと推進をしておるボランティア活動というものを、こういった刑事責任を問うことによってボランティア活動をする者が規制をされるということになっていくのじゃないか。そういう点で三度にわたって取り上げたようなわけでございます。
御存じであるかもしれませんが、この事件は津市の簡易裁判所で昨年の暮れ罰金五万円という判決がございました。私は、ここでこの裁判の当否についてあげつらうということはいたしません、これは筋違いですから。裁判官の判断をあげつらう気持ちはございませんが、どうしても言いたいことは、きょう文部省社会教育局関係で来てみえるのですが、いま言ったようにボランティア、ボランティアと言って、何事も問題の起こらぬときには、金もかからぬことですから盛んにもてはやす。そして、刑事事件が起こった、途端に口にチャックを締めて何にも言わない。そのことはおれのところの関係じゃないんだというふうな態度、これは文部省だけではなくて、ボランティアの活動は他の省庁にもまたがる部門もあると思うのですけれども、私はきょう文部省だけに限って的をしぼって言いますが、そういうことであっていいのか。ボランティアというのはとうとい仕事だと私は思う。また、政策的にもどんどんやっていかなければならぬというふうにも私は理解をいたしますが、一方で進めておきながら、こういう事件が起こったらわれ関せずえんという態度をとり続けるところに問題があると私は思う。そういうことで、何度も言うようですが、どうしても取り上げていかなければならぬ。
そこで、私は、今度はもっと的をしぼりまして、善意の奉仕というボランティア活動、このボランティア活動のあり方といいますか、限界といいますか、責任の所在といったものについて、この不幸な事件を契機にしてはっきりさせる必要があるのじゃないかという気がするわけであります。冒頭申し上げたように、安全責任は免れぬ、ボランティアといえども免責ではない、そういう前提に立って、立てば立つほど、これから盛んになってくるボランティア活動の限界、責任の所在、こういったことをこの事件を契機にはっきりしなければならぬ、こういう一つの演説をしておきまして、刑事課長来てみえますから、私は法務省にお聞きをしたいのです。
本件といいますか、この問題の事実経過は御存じだろうと思うのですが、もう一遍繰り返して言いますと、昭和五十一年八月一日、三重県津市安東地区の四ツ葉子供会が、安芸郡何とかというところにあるのですが、隣の村の安濃川の河原へハイキング、飯ごう炊さんを実施した。当日の参加は、子供会会員三十名、OBというのは子供会員を卒業したという意味のOBなんですが、OB六名、そこで育成会より十一名が引率をした。この育成会十一名が広義のボランティアということになるのですけれども、このハイキングの行事は年間行事であって、前もって役員会で行動計画その他を決めて行動を行ったのでありますが、その事故は昼食の後片づけの後に、水深十五センチから二十センチくらいの川で水遊びをしておった直後に一人の子供が監視の目をくぐっておぼれて死んだ、こういうことなんです。
こういう事件が起こって、法務省が起訴状の冒頭に、「被告人」という言い方をしておりますが、田村という女性なんです。「被告人は、保母の資格を有し、」とまず断定しておるのです。そして、四ツ葉会という子供会の指導者であると断定して起訴しているわけです。そして、裁判がずっと続けられたのですが、いま言った昨年暮れの罰金五万円の判決、これは検察側の起訴を一〇〇%受けた判決と当時の新聞も評しておりますけれども、ちょっと参考に読んでみますと、「判決は、これを受けまして子供会育成会から依頼され、子供会指導者となった。ハイキングでも計画の立場から実施要領の決定、当日の子供に対する指示に至るまですべて被告が中心となって行いハイキングの最高責任者だった。」こういうふうに断定するのです。この事実関係は、控訴するとかどうとか言っておりましたからそこで争うものと見て、ここでは私は言おうと思いません。
ただ、法務省にお聞きをしたいのは、まず一つ、四ツ葉子供会という子供の自主的な活動とそれを指導する育成会、当日で言えば引率者十一名ですね、この四ツ葉子供会と育成会との関係をどういうふうに見ておるのか。そして、聞くところによりますと、事故が起きた後、この引率した十一名が全員連帯して責任をとろうということを確認しております。
ちなみに、こういう事実なのです。三十名の子供を四班に分けまして、たまたま亡くなったお子さんの属する班は第二班です。その第二班に引率者、育成会十一名のうちの二名が当たる。そして、被告とされた田村さんの属する班は第三班六人、これに引率者三人、三人のうち一人が被告とされた田村さん、こういうふうな事実になっておるのですけれども、この事故が起きた後十一名全員が連帯責任を持とうじゃないかと確認しておるのに、検察の側は過失致死の容疑者を特定するためにだれの責任が重いかということをしぼった。そのために十一名はちょっと青くなったわけです。そして、私じゃない、私じゃないということもあったそうですけれども、そういったこともあって、検察の側では冒頭に保母の資格を持っているという予断のもとに罪人に仕立て上げようとしている。しかも、何回かの裁判の経過で弁護側とのやりとりの中で検事が答えておりますのは、十一人が連帯責任を持とうじゃないかという言い方について、被告である田村さんが、十一人の中で最も子供の指導に熱心だったからと力説をして、しゃにむに一人に仕立て上げる、こういうことがあったと裁判の傍聴に行った方々がその都度言っておるわけであります。私は、判決の当日の新聞記事を見て、津地検の二人の検事さんが大変はしゃいでおる写真を見たのですけれども、熱心に人のめんどうを見ると損をするという風潮をこのことが助長しておるのではないか。
したがいまして、四ツ葉子供会とその育成会関係は、当日十一人ですが、その十一人の中で被告とされたのは一番熱心だったから被告とされたのか、そういう点についてちょっと答えていただきたいと思うのです。