飛鳥田一雄の発言 (本会議)
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○飛鳥田一雄君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました大平内閣不信任決議案について、提案の趣旨を御説明いたします。(拍手)
まず、案文を朗読いたします。
本院は、大平内閣を信任せず。
右決議する。
〔拍手〕
以下、私は、不信任の主なる理由を順を追って明らかにしていきたいと存じます。
不信任の第一の理由は、大平内閣が、みずからの経済政策の失敗と行き詰まりが招いた財政危機、インフレ、物価高などの犠牲を国民に転嫁し、議会政治の民主的ルール、与野党間の信義をすら踏みにじって、国民生活、福祉の切り下げに躍起となっていることであります。
特に、本年度予算案は、基本的には大企業優先、国民生活への無責任な姿勢を貫いたものでありますが、わが党を初め大部分の野党は、その中で、せめて少しでも国民の切実な願望に近づけることを求め、政府・与党との間で予算修正を折衝し、努力を重ねてまいり、その結果、決して十分とは言えないにしても、たとえば老齢福祉年金の引き上げ、物価対策などについて政府・与党との合意を成立せしめ、大平内閣も千四百十四億円に上る実質修正を確約されたのであります。したがって、これらの改善は、政府が他の案件に優先して、確約どおり緊急に実施するのが当然であるにもかかわらず、いまだに実施に移さないのは一体いかなることか、私たちが断じて許し得ないところであります。(拍手)
さらに、会期末に至って、健康保険法、厚生年金、国民年金の改善などの自民党との合意事項についても、大平内閣は、自民党の党利党略あるいは日本医師会その他の圧力団体に振り回されて日の目を見ず、国民のせめて一歩でも前進をと期待いたしております観念を裏切り、人々はその冷酷な取り扱いに憤激をしているのであります。この大平内閣の責任は、政治的にも道義的にも重大と言わざるを得ません。それはまさに議会制民主主義の否定につながる態度と言っても過言ではないのであります。(拍手)
大平総理、あなたの耳には聞こえてきませんか。あなたの目には見えないのでしょうか。
つい先日も、老人病院の火事で、四人のお年寄りが人手不足のため誘導する人もなく、互いに名前を呼び合いながら焼け死んでいったという悲惨な事故が起きています。病弱な子供を抱えた母親が、前途に希望を失って、子供とともに自殺したという悲しい記事が毎日のように報道されています。
御承知だとは思いますが、わが国のホームヘルパーの数は、スウェーデンに比べると、人口当たりでは百分の一にすぎないという驚くべき実態のまま放置されていることであります。
そういう政治の貧しさの犠牲にされている人々のためにわずかでも報いたいという努力を、公党間の約束をすら破って足げにするあなたには、もはや総理としての資格が全くないと言わざるを得ないのであります。(拍手)
この国会では、勤労国民のために週休二日制が論議され、その速やかな実施が期待されておりました。しかし、大平内閣は、それにも難癖をつけ、ついに国会への提出さえ見送ってしまわれたのであります。
地域住民の熱望する環境アセスメント法案についても同様であります。住民参加、公開、公聴会、自治体への権限委譲といった原則をすっかり骨抜きにして、それでもなおかつ、大企業への気がねから国会への法案提出を怠っているのは一体だれですか。
さらにまた、物価をごらんなさい。消費者米価、電気・ガス、国鉄運賃、たばこ、授業料など、ことしに入ってからまさに公共料金の値上げラッシュであります。政府見通しの消費者物価上昇率六・四%などという数字を当てにしている者は、この世間でだれもいないのであります。便乗値上げ抑制のために買い占め売り惜しみ防止法など、いわゆる生活二法を発動することさえ渋っている政府に、何をどうして期待することができるのでしょう。国民は、二けた台の上昇率必至という実感の中から、先行き不安におびえ、大平内閣の失政を厳しく追及しているのであります。あなたはこの国民の生活実感を無視なさるのでしょうか。
大平総理大臣、あなたは、五年前に大蔵大臣として赤字国債の大増発に踏み出し、財政危機、インフレの種をまいた人であります。今年度末には七十一兆円もの発行残高に達する国債を抱えた財政破綻をつくろうために、あなたは、一方において一般消費税を唱え、今後も大衆増税の強化、福祉、民生予算の圧縮を進めつつありますし、他方では法人税増税を見送り、アメリカの要求をうのみにして、防衛費の大幅増強を図るとされています。一体、それによってわが国の財政は、経済は、国民生活の格差と不平等はどうなるのでありますか。あなたの顔はどちらを向いているのですか。(拍手)
もはや、多くの国民は、その答えを持っています。毎月記録的な倒産件数にあえいでいる中小企業者、減反という名の農業つぶし政策に悲痛な声を上げている農民、そして、物価高の中で家計簿の赤字をにらみながらひそかにため息を漏らしている主婦たち、これらの人々は、一日も早くあなたが政権の座からおりる日を待ち焦がれているのであります。(拍手)総理は、率直かつ謙虚にその声に従うべきでありましょう。
第二の不信任の理由は、大平内閣が、議会政治史上最大の汚点と言うべき金権腐敗政治について、責任を単に回避しているだけではなく、その一掃のために何らの努力も誠意をも示さず、活として国民の政治不信、民主政治の危機を放置して省みないという点にあります。(拍手)
ロッキード事件、ダグラス、グラマン事件等の航空機汚職に続く鉄建公団汚職、KDD事件、K・ハマダの事件など、相次ぐ政治汚職、金権腐敗の根源は、まさに多年にわたる自民党一党支配のもとで、政、財、官の三者が人事、資金、情報を独占し、密室政治を行ってきたことにございます。このような政、財、官癒着の構造汚職を一掃するために、何よりも国民の前に真相を明らかにして、疑惑の徹底解明を行うことが必要であります。わが党初め野党がこぞって、国会での徹底審議、浜田幸一前代議士、服部元郵政大臣らの国会への証人喚問を強く求めているのは、まさにこのためなのであります。(拍手)
しかるに、自民党政府は、これを拒否し、国民が求める汚職の解明にふたをすることに必死になっておられるのであります。自民党総裁としても、総理としても、大平さんの責任が厳しく追及されなければならないのであります。(拍手)
特に、大平総理、あなたがロッキード事件の被告である田中元総理の盟友であることは、天下周知の事実であります。だからこそ、国政の最高責任者として、とりわけ厳正な政治姿勢が求められるのであります。
ところが、それにもかかわらず、今回のK・ハマダ事件についても、大平総理は「どんな事件かは浜田君に聞いたらよい、党のかかわる問題ではない」などと記者会見で語ったと伝えられております。総理として、総裁として、まことに無責任きわまる態度と言わざるを得ないのであります。(拍手)
これでは、自民党の皆さんがどんなに美辞麗句を連ねた倫理憲章を作文しても、結局それは絵にかいたもちではありませんか。否、国民を欺き、愚弄するものとさえ言わなければならないのであります。(拍手)
福田前総理は、自民党の総裁予備選挙に関して、幽霊党員が半分はいると言われている、それが買収や立てかえで行われ、そのままそれが首相の座につながるものになると、一億総腐敗、腐敗列島日本になってしまうと心配されています。(拍手)大平総理自身が公認した宇野亨代議士の大がかりな買収選挙も、そういう心配が単なる杞憂でなかったことを示しているのでありましょう。
この恐るべき自民党政府の腐敗体質、金権政治に対して、大平総理が勇断を持って改革の誠意を示されたことは、ただの一度といえどもなかったのであります。いまや、大平内閣には、目に余る金権腐敗政治を正し、民主政治の基盤を守ろうとする意思もなければ、もはや能力もないと言わざるを得ないのであります。(拍手)そして、こうした構造的汚職、腐敗政治こそ、国民の政治不信の根源であり、なかんずく、青年の政治離れの根源ではないでしょうか。大平総理は、この点だけでも、国民の前に深く恥じ、即刻退陣をなさるべきであります。(拍手)
不信任の第三の理由は、大平総理が、今回の日米首脳会談でも示されているように、全く自主性なき外交姿勢でアメリカに追随し、喜んでアメリカの防衛力増強要請を受け入れられ、新たな緊張激化政策に加担し、軍事大国化への道に踏み出そうとしている点にあります。
今日、イラン、アフガニスタン問題に絡むアメリカの経済制裁や軍事措置など相次ぐ強硬策については、アメリカ国内でさえ、冷静な人々の間から深い憂慮の声が生じているのであります。たとえばアメリカ外交界の長老ジョージ・F・ケナン氏は、第二次世界大戦以来、ワシントンでいまほど過激な軍国主義思想や言論が横行したことはなかったと述べておられます。
西欧の諸国も、アメリカの協力要請にはきちんと一歩距離を置いて、それぞれの主体的な外交を進めつつあります。このことは、西ドイツのシュミット首相が近く訪ソすることを約束したという事実にもよくあらわれているところであります。
ところで、大平総理、あなたは、カーター大統領がいかに大統領選挙を控えての焦りからとはいえ、一つ間違えば戦争の引き金にもなりかねない人質救出作戦という軍事的冒険を行った直後にアメリカを訪問した最初の友好国首脳であります。ところが、総理は、一言も日本の自主外交の立場を主張することもなく、武力による力の行動を批判するのでもなく、共存共苦という言葉や、わが国は犠牲を恐れないという言葉まで使って同調、加担したことは、一体どういう意味ですか。(拍手)それはまさに日本国民の誇りを傷つけ、平和を破壊するものと言わざるを得ません。
イラン、アフガニスタン問題の重要な測面は、第三世界諸国の自立の要求の前に、アメリカやソ連といった大国の力の政治が反省を求められているということにございます。わが国は、アメリカに対して、南北問題への理解に基づき、平和解決のための第三の道を提言すべきであったのであります。
とりわけ、資源を多く外国からの輸入に依存するわが国は、資源の豊富なアメリカとはおのずから異なる立場に立っています。わが国は、いかなる国とも平和五原則に基づいて平和友好の道を追求すべきであり、強硬策をとるアメリカとの同盟をいたずらに強調し、安易に犠牲を恐れずなどと口にすることは、平和を願う日本国民大多数の意思に背くものと断ぜざるを得ません。(拍手)一体、犠牲を恐れずとおっしゃいますが、だれがその犠牲を背負うのですか。
また、これまで日本に対してよい感情を抱いてきたイラン国民の間に、日米会談に対する失望の声が広がっていると伝えられていることも重大であります。総理の責任は、まさに追及されなければなりません。
また、大平総理は、カーター大統領が明らかに防衛庁の中期業務見積もりを指して、政府部内にある計画を早目に達成するよう要請したのに対し、来年度予算の編成段階で具体的な回答を出すとの見解を表明せられております。これは、明らかに計画の短縮達成を意味していますが、問題はきわめて重大であります。
そもそも、防衛庁の中期業務見積もりは、国会の審議はおろか、閣議了解すらない、防衛庁の内部計画にすぎず、それを平然と既成事実化して強行ずることは、シビリアンコントロールの否定であり、国会機能を無視するものであります。(拍手)総理は、こんなことまで日米首脳会談に持ち出されて、どこに自主外交の姿勢があると言えるのですか。
しかも、中期業務見積もりを短縮するには、一兆円以上の防衛費増額が必要と言われております。財政危機の現状から見て、これが大衆増税、福祉切り下げ、インフレ高進をもたらし、国民生活への犠牲を強いるものであることは明らかでありましょう。
大平総理は、従来、防衛予算については、第一に、最近の国際情勢とアメリカ、西欧諸国の努力、第二に、日本の財政経済状況、第三に、国民のコンセンサスの三点を頭に置き、できる限りの努力を着実に積み上げていくと述べておられました。それが、訪米とともに途端に態度を変え、第二の日本の財政経済状況、第三の国民のコンセンサスという二つが総理の頭の中から消えてしまいました。
すでに軍事力で世界第八位と言われるわが国が、総理の言われる着実ではなく、顕著な防衛力増強に踏み込むとすれば、経済大国から軍事大国への危険な坂道を転げ落ち、世界の緊張激化の要素をふやし、日本とアジアの平和を危うくするおそれが強いのであります。
いま国民が求めているのは、この危険な冒険の道ではありません。国民が求めているのは、第一に、金権腐敗政治を一掃し、政治を浄化し、民主政治を確立することであります。(拍手)第二に、格差と不公平を是正し、インフレ、物価を抑え、福祉と生活優先の経済政策に切りかえて、国民生活の安定向上を図ることであります。(拍手)第三に、危険な軍事大国化への道をやめて、平和五原則に基づいて、あらゆる国との平和友好関係を樹立し、日本と世界の平和をつくり出すことであります。
大平内閣の政治が、この国民の求めているところにすべて逆行し、国民と全く離反した道を歩んでいることは、いまや明白となってまいりました。
すでに各紙の世論調査を見ましても、大平内閣の支持率は三割を切ってしまい、支持しないと表明する人の率は、過半数を超えているのであります。
大平総理、繰り返すまでもなく、あなたの政権に対する国民的基盤は崩れ去っております。この現実を率直に認め、私たちの不信任案の決議をまつまでもなく、みずから即刻退陣すべきことを最後に申し上げて、大平内閣不信任案の提案理由の説明を終わりたいと思いますが、どうぞ同僚議員各位の御賛同をここにお願いをいたす次第でございます。ありがとうございました。(拍手)
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