竹下登の発言 (大蔵委員会)
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○国務大臣(竹下登君) 今後における財政金融政策につきましては、先般の財政演説において申し述べたところでありますが、本委員会において重ねて所信の一端を申し述べ、委員各位の御理解と御協力をお願いする次第であります。
わが国の最近の経済情勢を見ますと、過去数年度にわたる公共投資の大幅な拡大、国民の堅実な消費態度、企業の経営努力等を背景として、国内民間需要による自律的な景気の拡大基調を確かなものにしてきており、雇用情勢も緩やかながら改善を続けております。このように、わが国経済は、国民のたゆみない努力により、長い不況を乗り越え、先進国の中で最も高い成長と安定した消費者物価を維持しており、現在のところ総じて順調に推移していると申してよい状況にあります。
しかしながら、世界経済をめぐる諸情勢は、八〇年代に入っても、ますます不透明さ、不確実さを増し、わが国経済も、景気の先行きには必ずしも予断を許さないものがあり、物価も警戒を要する状況にあります。
加えて、国際収支は大幅な赤字を記録し、財政収支の不均衡もなお巨額なものとなっております。
このような経済情勢のもとにおいて、私は、特に、次の三点を当面の緊要な課題として、政策運営に万全を期してまいりたいと存じます。
まず第一は、物価の安定と経済の自律的拡大の維持を図っていくことであります。
わが国経済を息の長い安定成長軌道に乗せていくためには、インフレ、不況、さらにはスタグフレーション、このいずれをも回避しなければなりません。このため、私としては、物価と景気の両面に細心の注意を払い、適時適切にきめの細かい経済運営を行ってまいる所存であります。
最近の物価動向を見ますと、消費者物価はいまのところ比較的安定しているものの、卸売物価は原油を初めとする海外原材料価格の高騰等により相当上昇しており、物価は警戒を要する状況にあります。したがって、当面は、やや物価に重点を置いた政策運営を進めることが適切であると考えております。
このような観点から、政府は、昨年十一月二十七日、物価対策を総合的に推進することを決定したところであります。
また、昭和五十四年度の公共事業等の執行につきましても、現下の物価動向に配慮することとし、その一部を留保することといたしました。この措置は、物価対策の見地からとられたものではありますが、公共事業等の機動的な執行により、景気の安定的な維持にも資することが期待されるところであります。
第二は、世界経済の発展に積極的に貢献しつつ、国際収支の健全性の保持に努めることであります。
国際情勢はきわめて流動的で、石油情勢もさきのOPEC総会の結果に象徴されるように一段と不安定さを増しております。
このような厳しい国際環境の中にあって、わが国の国際収支は、経常収支が大幅な赤字を記録し、長期資本収支も流出超過傾向にあります。国際収支の健全性の保持は、国際社会の一員としての責務であり、また、このような状況を放置すれば、ひいてはわが国経済の安定的な成長を阻害することになるおそれもありますので、政府としては、国際的に調和のとれた収支の改善を図るべく、着実な努力を積み重ねてまいる考えであります。
他方、このような情勢のときこそ、わが国は、世界経済に大きな影響を及ぼす立場にある国の一つとして、世界経済の調和ある発展に積極的に貢献しなければなりません。
世界経済の円滑な発展のためには、まず、通貨の安定が不可欠であります。このためには、各国政府が基礎的諸条件の改善に努めるとともに、相互に緊密な連絡と協調を保ち、為替相場の急激な変動を抑制していくことが重要であります。わが国としても、従来にも増して積極的に努力してまいりたいと考えております。
また、世界貿易拡大のためには、自由貿易体制を維持強化していくことが急務であり、このような観点から先般合意に達した東京ラウンド交渉につきましては、その成果を実施に移すため、所要の国内手続を急ぐ方針であります。
なお、わが国の対外取引を原則自由のたてまえに改める法律改正が、さきの臨時国会において成立したところであり、その早期施行に努める所存であります。
さらに、開発途上国の国民生活の向上と経済の発展を支援し、世界経済全体の均衡のとれた成長を確保するため、経済協力の大幅な拡充強化を図ってまいることとしております。
第三は、わが国財政の再建であります。
国民生活の安定と景気の回復を図るため、過去数カ年にわたり政府が行ってきた積極的財政の結果、わが国財政は、特例公債を含む大量の公債に依存せざるを得ない異常な状況が続いております。今後ともこのような財政赤字を積み重ねるならば、八〇年代の新たな社会経済情勢の展開の中で、財政に各種の機能の発揮が期待されることとなっても、これに十分な対応ができません。そればかりか、経済にインフレ要因を持ち込むことにより、経済そのものの安定を阻害するおそれさえあります。
わが国経済の安定的な発展を達成するためには、財政の再建は緊急の課題であります。
このような考え方に立ち、昭和五十五年度予算の編成に当たりましては、強い決意のもとに、まず、公債発行額を前年度当初予算よりも一兆円圧縮することとし、財政再建の第一歩を踏み出したところであります。
しかしながら、財政再建の道は、いまだ緒についたばかりであり、今後においても一層努力することが強く求められるところであります。昭和五十五年度においては、最近のわが国経済の順調な回復を反映して、かなりの規模の税収増加を見込むことができましたが、このようなことを引き続き期待することはとうてい困難であります。したがって、今後におきましては、歳出歳入両面を通じて、幅広い角度から財政再建の手だてを考えていく必要があります。
次に、当面の財政金融政策について申し述べます。
まず、昭和五十五年度予算につきましては、以上申し述べました考え方に立ち、できる限り財政の健全化に努めるとともに、国民生活の安定と経済の着実な発展のための基盤強化を図ることを基本として編成いたしました。
このため、一般会計予算におきましては、各省庁の経常事務費を初めとする一般行政経費を極力抑制するとともに、政策的経費についても根底から見直しを行った上、各種施策の優先順位を十分考慮し、財源の重点的、効率的配分に努めたところであります。また、補助金等については、従来にも増して積極的に廃止、減額等の整理合理化を行うことといたしました。
さらに、国家公務員の定員については、新たに策定された計画により、定員削減を着実に実施するとともに、新規行政需要に対応する増員についても厳に抑制することとし、総数の縮減を図ったところであります。
以上の結果、一般会計予算の規模は、前年度当初予算に対し一〇・三%増の四十二兆五千八百八十八億円となっております。また、このうち国債費及び地方交付税交付金以外の一般歳出の規模は、前年度当初予算に対し五・一%増の三十兆七千三百三十二億円となっております。これらの伸び率は、いずれも最近二十年間のうちで最も低いものであります。
また、公債につきましては、さきに申し述べましたように、財政の公債依存体質を改善するため、公債発行予定額を前年度当初予算より一兆円減額することとし、十四兆二千七百億円といたしました。この結果、公債依存度は三三・五%となり、前年度当初予算の三九・六%より六・一ポイント低下いたしております。
次に、税制の改正につきましては、まず、税負担の公平確保の見地から、利子配当所得等について総合課税に移行するための所要の措置を講ずるとともに、企業関係租税特別措置等について大幅な整理合理化を行うこととしております。租税特別措置については、昭和五十一年度以降五年間にわたり、その整理合理化に力を注いできたところでありますが、今回の措置により、おおむねその整理は一段落したと言ってよいものと考えます。
さらに、給与所得控除について、この際、高額な収入部分について控除率を引き下げることとし、また、退職給与引当金について、累積限度額の適正化を図ることとしております。
以上のほか、石油代替エネルギー対策の財源に充てるため、電源開発促進税の税率の引き上げ等を行う一方、土地税制について、その基本的枠組みを維持しつつ、住宅地の供給促進等の見地から所要の措置を講ずることとしております。
財政投融資計画につきましては、厳しい原資事情に顧み、事業規模、貸付規模を抑制しつつ、住宅、中小企業金融、エネルギー対策等緊要な施策について資金の重点的配分を行い、国民生活の安定、向上と福祉の充実に配意することとしております。この結果、財政投融資計画の規模は十八兆一千七百九十九億円となり、前年度当初計画に比べ八・〇%の増加となっております。
なお、金融政策の面におきましては、インフレ心理の醸成を防止することにより、物価上昇速度を極力抑制するため、昨年四月以降、三次にわたる公定歩合の引き上げ等の措置が講ぜられたところでありますが、引き続き通貨供給量についても十分注視し、適切な金融調節を図ってまいる所存であります。
以上、財政金融政策に関する私の所信の一端を申し述べました。
本国会に提出し御審議をお願いすることを予定しております大蔵省関係の法律案は、ただいまのところ昭和五十四年度補正予算に関連するもの一件、昭和五十五年度予算に関連するもの九件、合計十件でありますが、このうち九件につきましては、本委員会において御審議をお願いすることになると存じます。なお、このほか、日本専売公社法等の一部を改正する法律案及び税理士法の一部を改正する法律案が、前国会からの継続審査案件になっております。それぞれの内容につきましては、逐次、御説明することとなりますが、何とぞよろしく御審議のほどお願いする次第であります。