小倉武一の発言 (大蔵委員会)
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○参考人(小倉武一君) 本日、大変貴重なお時間を割いていただきまして、所得税法と租税特別措置法の一部を改正する法案について所見を述べたらと、こういうお招きでございましたので申し上げますが、私どもの職責から申しますと、どうしても五十五年度の税制改正に関する答申、税制調査会で昨年十二月でございましたが、出しましたその答申に沿ってお話を申し上げると、こういうことになろうかと思います。
そこで、まず答申に当たりましての背景と申しますか、その基本的な考え方をまず申し述べたいと思います。
御承知のとおり、財政再建が昨今の非常な緊急の課題でございますので、また現にそうであるわけですが、歳出歳入の両面にわたって幅広く検討を要すると、こういう考え方でスタートをしたわけであります。
そこで、税制調査会では、どうしても公共サービスの不可欠なことは国としても実行していかなければならぬというために、必要な歳入を安定的に確保すると、こういう趣旨で税制のあり方も考えたわけでありますが、それにはどうしても一般消費税を導入する必要があるということの認識に立ちまして、これを五十五年度から導入すべきである、こういう答申になったわけであります。ところが、その後の諸般の情勢を見ますというと、一般消費税の導入ということについては、なお国民各層の十分な了解あるいは了承を得ていないと、こういうようなふうに見受けられたのであります。
そこで、五十五年度の税制改正におきましては、一般消費税の導入というような手段によらないで、ともかくも財政再建についての第一歩を踏み出したいと、こういうような趣旨で、あるべき税制の姿を考えるということにいたしたわけであります。
そうなりますと、勢いこれは税制調査会の担当でもございませんけれども、歳出の抑制ということも考えていただく必要がある。それを前提にいたしまして、歳入面においての増収ということについてはこれは後の課題とする。本格的な歳入の増収措置というのは、むしろ五十六年度以降のことに属すると。その考え方でもって、五十五年度におきましては、まずもって税負担の公正を確保するという見地から、租税特別措置の大幅な縮減、合理化を図るということにいたしたわけであります。
なお、歳入の面につきましては、退職給与引当金の見直しということを中心にいたしまして、若干の歳入増の措置を講ずるということにいたしましたが、歳入の増を図るということはやむを得ざる最小限度にいたす、こういうような提言を行った次第であります。
そこで、次に税制改正につきましての主要な項目につきまして、もう少し具体的な内容を御説明いたします。
まず、企業関係の税制の特別措置でございますが、従来でございますれば、この整理、合理化は、期限の到来したものを主として対象にいたしたわけでありますけれども、今回は期限の到来の有無にかかわらず、廃止もしくは一律の大幅な縮減をするという趣旨の方針を提言したわけであります。
したがいまして、今回の縮減措置とあわせまして、従前から租税特別措置あるいは不公正税制の是正ということは、税制調査会の一貫した方針でもございましたのでありますけれども、この五年間に社会保険診療報酬の課税についての特例につきましての是正を図るということをいたしましたが、なお、今回は利子・配当所得の総合課税移行につきまして、大きな一歩前進を図るということにいたしました。その他の特別措置の関係におきましても、これまで五年間の成果を集計してみますというと、約八割にも及ぶ、あるいはそれ以上にも及ぶ税制措置が講ぜられたのであります。
そこで、この租税特別措置を中心とする税制の公正化を図るという必要に応ずる措置というのは、大方この辺で一段落をしたというふうに税制調査会では考えておるわけであります。もっとも、この税制の公正を図るという点につきましては、租税特別措置に限らず、また税制に限らず、徴税の面といったような方面にまでわたりますというと、非常な広範な問題になりますので、これはなお今後検討を重ねる必要があろうかと思います。
〔委員長退席、理事中村太郎君着席〕
特にその中で問題になりますのは、法人税の仕組みに関係する点がございます。法人税の仕組みにつきまして、これがやはり不公平ではないかという意見がありますけれども、税制調査会としては、これは不公平税制というよりは法人税をどう仕組むかということに関係する問題であるということで、その検討は別途進める必要があるというのが従来からの考え方でありましたけれども、この考え方に即しまして、法人税についても今後なお検討を重ねるということにいたしたいと思っております。
次は、利子・配当所得の総合課税でございますが、これは、利子・配当の総合課税に移行するということは、税制調査会の内外を問わず、いわば一致した意見でございますが、ただ、いかにして総合課税に移行するかということになりますというと、なかなかこれはむずかしい問題がございます。
ちょうど今年末に特例措置が期限が切れますので、いよいよ総合課税に移行するということについての方針を決めなければならないようなことに時期的にも来ていると言われておりますので、総合課税に移行というような決定をいたしたわけでございますけれども、
〔理事中村太郎君退席、理事細川護煕君着席〕その移行につきましては、若干の経過期間を必要とするということで、その経過期間のうちに、総合課税に移行するような体制を整えるということにいたしたわけでありますが、総合課税に移行するための一つの制度といたしまして、いわゆるグリーンカード・システムを導入するという提言をいたした次第であります。
申すまでもなく、利子・配当所得の総合課税につきましては、単に総合課税をするということだけでは、かえって実際上不公正を助長するというようなことにもなりかねませんので、貯蓄の税金のかかる部分、あるいは税金のかからない部分を通じまして、基本的に考えますれば、いわゆる納税者番号が最も適当であるというふうに、税制調査会でもほとんど異論なくそういうふうになったわけでありますけれども、何しろ新しい制度でございまするし、いわば国民全体に、本人の意思いかんにかかわらず、税務署に番号を登録するということになりますというと、なお国民のいわば了承を得るということにつきましては相当のことが必要であるということでございまするので、それを待って総合課税移行ということになりますというと、これまた相当先の話になるというわけでございまするので、納税者番号ということはあきらめて、もう少し簡便な、実行可能な、あるいは国民各層に受け入れられる制度は何かということを考究した結果、グリーンカード制度にいたしたわけであります。
それから次は、土地税制についてでございますが、昨今、土地税制については、税制調査会の中のみならず、外におきましても、譲渡所得につきましては所得税法の本則に返って、その上なおかつ宅地造成あるいは宅地供給に必要な点については特例措置を講じたらどうかという意見が一方においてあり、他方において、土地税制については、これまでのように現行の制度をそのまま持続すべきである、こういう両方の意見があったわけであります。
税制調査会としては、できるだけ現行制度のたてまえを堅持しながら、宅地の供給について必要最小限度の例外的な特別措置を講ずるというようなことが、妥協的でありますけれども、よろしいのではないか、こういうような考え方に一応統一をした結論になったわけであります。
以上のようなことが、次の年度の税制改正の大まかな、おおよその考え方でございまするけれども、幸いにして五十五年度におきましては、御承知のとおり、日本の経済が比較的順調な回復をいたしましたので、相当規模の自然増収が図られるというようなことの見込みもできましたので、聞くところによるというと、何とか予算の編成もできたと、こういうことになり、また、財政再建につきましても一歩を踏み出すということになったわけでありますけれども、今後におきましては、どうもやはり歳入歳出の両面におきまして相当の決意を持って検討を行うというようなことが必要ではないかというのが、どうも大方の意見ではないかと思います。
そこで、これからどうするかという問題もございまするけれども、これはなお今後の問題として、きょうは詳しくお述べするわけにもまいりません。まだその点については、税制調査会においても討議を重ねるという段階にはなっておりません。
〔理事細川護煕君退席、理事中村太郎君着
席〕
以上、簡単でございまするけれども、私の御説明は以上によって終わりたいと思います。