寺田熊雄の発言 (本会議)
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○寺田熊雄君 私は、日本社会党を代表して、ただいま提案せられました昭和五十四年度補正予算三案に対し、反対の討論を行います。
第一に、この補正予算案は、当初予算と一体をなし、当初予算の持つ大企業に甘く中小企業や勤労者に渋い段級的性格から脱却することができないものであります。
本補正予算案の内容を見ますと、その歳出は、災害復旧事業の追加や給与改善費、義務教育費国庫負担など、もっぱら論議の余地なき当然増的経費や義務的経費の追加であり、論議すべき特段の価値を認めないのであります。
これに反し、それは歳入面において租税及び印紙収入の増収を一兆九千九十億円と見込み、その大部分を公債発行の減額に振り向けるなど注目すべき特色を持つのであります。これは、五十三年度予算が、五十四年五月分税収を取り込むという特異な財政技術を弄しながら、なおかつ補正予算において国債三千億円の追加発行を行ったことと著しい対照をなすものであります。
その後、政府は、昭和五十四年度予算の編成に当たり、われわれに対して、五十四年度の財政事情は税の自然増収に多くを期待することができず、現行税制下の租税及び印紙収入の予算額は五十三年度当初予算の水準を下回ると説明し、国民大衆の生活にとっていささかの福音たり得た物価調整減税三千億円の要求をもかたくなに拒否したのでありました。
政府は、右のごとき歳入見積もりの誤りを恥ずべきであります。
それはともあれ、右の税収の自然増には法人税の増収が大きく寄与しているのでありますが、これは大法人が政府の温かい庇護を受けつつ減量経営に徹し、営業利益を爆発的に増大させたことによるのであります。
試みに、大蔵省証券局発行の財政経済統計月報によれば、法人の売上高は昭和五十三年一−三月期以来七期連続上昇を続け、昨年九月期におけるそれは百四十兆三千億円に上り、前年同期に比べ一七・七%増となっているのでありますが、これに伴い、営業利益は四二・四%増、経常利益は三六・二%増と目覚ましく、とりわけ大企業は史上空前の利益を上げているのであります。言うまでもなく、その陰には、不況や合理化の名により職場から放逐され職を失った労働者、失業は免れたものの低賃金と労働強化を押しつけられた労働者の犠牲が横たわっているのであります。
一方、中小企業庁の調査によれば、中小企業の収益は、五十三年度においては辛うじて五十一年度の水準に回復したにとどまったばかりか、最近の著しい原材料価格の高騰を製品価格に転嫁し得ず、採算の悪化に苦しみつつあるのでありますが、その苦しみは大企業の中小企業分野への絶え間なき侵入によって一層大きなものとなりつつあるのであります。
今回の補正予算は、要するに、勤労者や中小企業など弱き者の犠牲において繁栄を謳歌する大企業主導型の経済動向を背景として編成されたものでありまして、とうてい賛同し得ないものであります。
次に、右の税収の自然増は、そのうち所得税が約六千億円を占めるのでありますが、これは、この二年間、所得税減税を実施せず、課税最低限を据え置いたことによる納税者の増加、負担額の増大という大衆課税の強化によるものであります。われわれは、その結果所得税の租税弾性値が二を超えていることに注目せざるを得ないのであります。
第二に、この補正予算における既定経費の節減は七百四十六億円に過ぎず、昨年度の二千二百億円に比し少なきに失すると言わなければなりません。しかも、その六〇%以上は国債発行額の圧縮に随伴するものであり、政府の積極的努力によるものではありません。
第三に、われわれは財政投融資計画における次年度繰越額と不用額増大の傾向に注目するものでありますが、この傾向は今年度にもやまず、昨年十一月現在で七〇%近い未消化を生じているのであります。この事実は、五十三年度における住宅金融公庫の一千七百六十億円、中小企業金融公庫の九百五億円、日本開発銀行の六百億円、日本輸出入銀行の四千九百八十四億円という巨大な不用額の発生からしても当然予想し得たものであり、政府はすべからく計画自体の見直しと国会議決を要せざる制度のあり方について慎重に検討すべきであったのであります。
第四は、防衛費の問題でありますが、最近、政府の対米従属の姿勢が目立ってまいりまして、自衛隊は次第にアメリカの軍事戦略の一環に組み込まれつつあります。
言うまでもなく、安保条約は、日本が外国の侵略を受け、自力で防衛し得ない場合に米軍の援助にまつことを理想像とするものでありますが、いまやそれが遠く海を隔てた異国の地における米ソ間の軍事的対決にわが国を巻き込むくびきとなりかねないなど、国民の脳裏に描く安保像とは著しくかけ離れたものに変貌しつつあるのを憂うるものであります。わが党の主張によれば、自衛隊はもともと違憲の存在であり、これに財政力を投ずること自体許されないのであります。いわんやそれは今後アメリカ側の要請により次第に膨張を余儀なくされる気配が濃いのでありますが、政府は「パンと大砲は両立し得ない」という財政運用の鉄則を片時も忘れるべきではありません。
いまや、原油、非鉄金属など輸入原材料価格の高騰が主因となり、卸売物価の大幅な上昇が見られ、やがてこれが消費者物価に波及することが予想せられるのであります。
政府は、この際、あとう限り公共料金の値上がりを防ぎ、行政改革を促進し、防衛費を縮小させ、インフレ・物価高の脅威を最小限度に抑えるとともに、臨時利得税の復活や法人税率の引き上げなど、あらゆる手法を駆使して大法人の課税を強化し、財政の再建を図り、もって国民生活の安定を実現すべきであります。
以上、本予算案の反国民的性格を明らかにするとともに、政府の猛省を促して、反対討論を終わります。(拍手)