和田静夫の発言 (本会議)
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○和田静夫君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題になりました昭和五十五年度の公債の発行の特例に関する法律案について、総理大臣並びに関係閣僚に質問いたします。
この法律案は、財政法で禁じられているいわゆる赤字公債の発行を特例として認めようとするものであります。しかしながら、この特例法は、昭和五十年度以来すでに五年続けて施行されてきているのであります。言うまでもなく、財政法が非募債主義をとり、例外として建設公債の発行のみを認めておりますのは、戦前、公債発行が軍事費調達手段となった結果、財政節度を失わしめ、ひいては日本の運命を誤らせるに至ったことへの反省からであります。そうとすれば、今日、日本国憲法にのっとってつくられた財政の基本法である財政法の精神がじゅうりんされている事態を看過することはできないのであります。ここで行政、財政に大なたをふるい、大改革を断行せずんば、再び日本の運命を誤らせるおそれなしとしないと言っても過言ではないのであります。
ところが、財政当局が作成し、国会に提出している試算では、特例公債に依存した赤字財政は今後なお四年も続く見通しだとされており、現に新年度もそれを予定して、ここに法案が提出されたのであります。昭和五十年度から数えておよそ十年近くも赤字財政を続けるということになるならば、財政法のもとでの財政運営が基本的に成り立っていないということでありましょうか。政府は、財政法を堅持するつもりなのか、それとも財政法に手を入れる必要を感じているのか、総理及び大蔵大臣に伺います。
今日の財政危機について、政府は、石油危機に端を発し、経済の停滞の過程で税収の伸びが落ちる一方、財政によって景気を下支えしようとしたことが重なって生じたものと述べております。
しかし、同じく石油危機に直面した欧米諸国においては、確かに一、二年は公債依存度を高めましたが、いずれも二割以下にとどめ、しかも直ちに依存度の低下に努め、早くから財政再建に着手して、財政危機が深刻化するのを防止したのであります。ひとり日本のみが、わが党の警告にもかかわらず、公債依存度をウナギ登りに上昇させて、財政危機を泥沼化させたのであります。
現在、公債発行残高はおよそ六十兆円、一年間の国民総生産の四分の一に達し、国民一人当たり六十万円の借金をしていることになります。企業であれ団体であれ、これほどの赤字を発生させたならば、経営者、管理者として失格であります。当然、責任を問われるし、また、潔く責任をとるでありましょう。ところが、自由民主党政府は、石油危機のときから数えて、田中、三木、福田、大平の四代の総理、愛知、福田、大平、坊、村山、金子、竹下、七人の大蔵大臣は、だれ一人責任をとらなかったのであります。財政危機がここまでに至った以上、国民の前に自由民主党政府の失政をわび、責任を明確にさせることが政治家として最低限の節度というものであります。総理の真摯な反省を伺います。
この反省の上に立ち、責任を明らかにすることなしに、今後の財政再建についての展望を語る資格はないと言わなければなりません。なぜなら、今日の財政危機は急速な経済成長の挫折によってもたらされたものであり、財政の体質そのものを変える必要があるからであります。
新年度、昭和五十五年度の予算編成に当たって、政府は、夏にサマーレビューを行い、十一月には予算の総枠をあらかじめ発表するという異例の編成を行いました。それについて私は評価するにやぶさかではありません。来年度編成に当たっても再度さらに徹底したサマーレビューを行うべきであると考えますが、これを行うか否かについてまず大蔵大臣に伺います。
しかし、昨年のサマーレビューは具体的には何の成果も上げ得ず、結局は従来どおり概算要求枠を抑えただけにすぎず、依然として前年度予算をもとにした増分主義を踏襲しているのであります。政府は、サマーレビューによって、国債を本年度当初予算と比べ一兆円削減できたと主張しておりますが、本年度補正後予算と比べれば、新年度予算案では逆に発行額は二千二百億円増加しているのであります。自然増収が四兆六千億円予定されていることからすると、義務的経費がふえたとはいえ、決して成果を国民の前に誇れるものではありません。
さすがに大蔵大臣は気がひけるとみえて、新年度予算案を「財政再建への第一歩」と言っておられるようでありますが、私は、今日に至るまで財政危機を放置して、何をいまさら「第一歩」と誇るのかと憤りにたえません。危機がここまで深化してなお新年度も再建の手がかりすらつかめず足踏みしている状態は、納税者に対してまことにざんきにたえないのであります。
大蔵大臣、あなたは危機の責任を明らかにしないで、何をもって国民の前に「財政再建の第一歩」と言うのか、十二分な見解を求めたいと思います。
しかも、これまでの引き続く国債の大量発行により、本年に入って国債の流通価格は暴落に暴落を続け、新規の発行すら危ぶまれている状況にあります。国債価格の暴落の現象そのものを、政府の経済・財政運営に対する国民の評価であると受けとめるべきではないでしょうか。
このような状況のもとで、新年度において資金運用部が引き受ける二兆五千億円は別として、残りの二兆八千億円もの国債を市中で消化できる自信をお持ちなのかどうかを大蔵大臣に伺います。
また、政府・自治省は、自治体に対しては財政再建計画を提出させて見返りに公債発行を許可するという地方自治を侵害するまでの手段をとっております。ところが、政府ばかりは何の計画もなしに借金を重ねているのであります。もし財政当局がフリーハンドを保つために計画づくりに消極的であるとするならば、国家無謬説的な権力のおごりと言うほかはありませんでしょう。そこで、財政計画の第一歩でもよろしい、早急に、少なくとも参議院選挙の前には公表して、選挙を通じて国民の判断を仰ぐべきであると考えますが、大蔵大臣の所見を伺います。
しかし、現在進められている作業は、後年度負担推計という方法によるものであります。これは単に現在の状態を延長するものであって、福祉や教育、農業や産業政策などの新しい理念とプランに基づいた行政の新しい姿を描き出すようなものでは決してありません。それどころか、昨年の総選挙におけるような増税キャンペーンに利用されるだけに終わってしまうおそれがあります。
総理、あなたは一般消費税の導入や所得税の増税を完全に断念されたのでしょうか。もし何らかの大型増税が必要であるとお考えならば、国民の目をごまかすあいまいな態度をとらず、新しい政策、新しい社会を選択できるような財政計画をつくり、もって国民の判断を仰ぐべきであると考えますが、御見解を伺います。
次に、行政経費の節減について伺います。とかく批判の強い補助金については、政府はその合理化に努めてきたと主張しております。しかし、それによって数は少し減ったものの、補助金総額が一向に減らないのはなぜでしょうか。
法律に根拠のあるものはさておくとしても、いわゆる予算補助については、まだまだ重複や使命を終えて整理すべきものが多いにもかかわらず、「補助金一つに係長一人」と呼ばれるほど各省庁、受け入れ団体で既得権化しております。ところが、それぞれの補助金には期限が決められ、関係者に通知されているようであります。今日、そうした期限などの約束を財政当局と関係者の間で隠しておくことは許されません。関係書類をすべて公表し、いわゆるサンセット方式を導入することは財政再建を口にする政府の義務であると考えますが、大蔵大臣及び行政管理庁長官の意見を求めます。
次に、財政投融資から政府関係機関、特殊法人に融資が行われているのでありますが、現在、政府金融機関を初め多くの財投対象機関で巨額の不用額が生じており、昨年度平均して一〇%に及ぶ状態であります。特に、日本開発銀行、日本輸出入銀行など民間金融機関との競合が問題となっている機関や、日本住宅公団など国民の住宅需要に適切にこたえられなくなっている機関で巨額の不用額が出ていることは、財投のあり方にかかわる問題であり、検討すべきところであろうと考えますが、総理及び大蔵大臣の見解を伺います。
最近、鉄建公団やKDDなど政府関係機関や特殊法人の不正経理、大蔵省を初め各省庁の不当な接待、供応などの支出が表面化し、世論の厳しい指弾を受けました。しかし、それにもかかわらず、小手先の改善が行われたにとどまり、不正の根が根本的に断たれたわけではありません。結局は、綱紀の粛正、一人一人の自覚にまつよりほかはないにしても、実質上、各省庁にゆだねられた数字づらだけ合えばよいと言われる経理方法の改善にまでメスを入れる必要があると考えます。
予算決算制度は、日本が近代国家として成立して以来百年この方、ほとんど基本的には同じやり方が踏襲されてきたのであります。しかしながら、今日の財政危機に至るに及んで、単にサマーレビューで予算総枠を厳しく抑えるという旧態依然たる方法でもってしては旧態依然たる予算決算しかできないことは当然の帰結であります。この際、制度そのものを根本から見直すべきであると考えますが、総理の見解を伺います。
総理は、しばしば、財政再建は、大蔵省にとどまらず、各省庁、国会、国民の協力が必要だと述べておられます。私もそのとおりだと思います。セクショナリズムがきわめて強いと言われる官僚機構と行政にメスを入れるためには、国民の参加と地方自治体の参加が不可欠であります。現在の行政改革は、地方出先機関、特殊法人、補助金整理など、確かに数字の上では改革が行われるように見えますが、行政改革の根本は、将来どういう行政を行うのか、その姿を描かずして、生首を切るようなことだけを事としているとすれば、政府のスタンドプレーでしかありません。この点についての行政管理庁長官の見解を求めます。
さらに、行政改革について、広い視野から国民及び自治体の参加を得て検討する総理の直属の機関を今日再びつくるべきであると考えます。また、オンブズマン制度の導入についても検討すべきであると考えますが、総理並びに行政管理庁長官の見解を求めます。
また、自治大臣は、自治体の国政参加の推進についてどういう見解をお持ちであるのか、明確にしていただきたいと思います。
最後に、防衛費について伺います。新年度予算案をめぐって、GNP比一%を確保するか否かの攻防が関係省庁で行われました。しかし、予算措置でもってなし崩し的に防衛費を拡大し、防衛力を強化することを深く懸念いたします。最近、駐日アメリカ大使をして、日本の防衛に対する態度が劇的に変わったと言わしめたその態度について、政府は国民に広く明らかにし、国民の合意を得た上で初めて態度決定をすべきであり、独走は決して許されません。参議院選挙において争われるべき問題と考えますが、総理の明快な見解を伺います。
以上、深刻な財政危機に陥っている事態において、さらに赤字財政を続けることの危険性を指摘し、その責任を明らかにした上で、民主的な財政運営に立った改革を行い、もって八〇年代に新しい国民本位の社会を築くための若干の提言と質問を行いました。
総理並びに関係大臣の明確な答弁を求めるところであります。
ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕