藤田正明の発言 (本会議)
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○藤田正明君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表いたしまして、総理の帰国報告について若干の質問をいたします。
今回の大平総理の三国首脳との会談は、わが国国会の連休期間を利用されてのあわただしい日程でありましたが、世界の諸情勢が激しく動いておる時期に行われた首脳会談でもあり、国民も関係各国も強い関心をもって見守っていた首脳会談でありました。
総理は、この三カ国のみならず、不幸な出来事でありましたけれどもチトー・ユーゴスラビア大統領の国葬にも参列され、二十数カ国の首脳とも時間の多少はありましょうけれども交流を持たれたことは、今後の国際的な行事にあってもよい機会を持たれたものと思います。
さて、それらの国々において総理は大変な歓迎を受けられたようであります。アメリカにおける総理の上院、下院の訪問におきましては、アメリカの上院、下院においては立ち上がって拍手をもって迎えるということは近年ないそうであります。どこの国の首班が行きましてもそういうことはないそうでありますけれども、総理に対しましては、立ち上がり、大変な拍手をもって迎えたということでございます。総理の演説に対しましてもしばし拍手が鳴りやまなかったということで、歴代日本の総理の中で、アメリカの上院、下院でこれほどの歓迎を受けた日本の総理はなかったと言われております。
カナダ下院における「日加関係の展望」と題するフランス語を交えた演説では熱狂的な拍手を受けられたと伝え聞いております。非公式に訪問された西ドイツにおいてもしかりであります。
どうも、大平総理は、日本国内における人気よりも、外国に行かれたときの人気の方が数段よいような気がいたします。これは経済大国日本に寄せる期待であり、それが代表者大平総理に対する熱烈なる歓迎となってあらわれたものでありましょう。
しからば、その期待とは何か。私は、世界の各国、特に自由主義諸国においては、日本に期待しているのは、その国際的な役割り、応分の負担とその責任を求めていると思います。それは、単に経済的な援助だけではない、一言で言えば日本がいかに世界の平和と安定繁栄のために行動してくれるかということでありましょう。
わが国は、つとに経済大国としての責任と役割りを果たすべく、開発途上国に対する経済援助を拡大してまいりましたが、いまやわが国は、単に経済分野においてのみならず、政治、外交上の分野においてもわが国にふさわしい役割りを果たすことが必要であります。また、それを世界の各国が日本に対して期待しているところでもありましょう。
この観点から重要なのは、わが国みずからの防衛であります。国際情勢を正しく踏まえ、財政事情、国内世論を考慮に入れつつ、わが国がみずからの防衛に責任ある態度をとることは、わが国としてまず果たすべき国際的な義務と言っても過言ではないのであります。
イラン、アフガン問題を初めとして、現下の国際情勢にはまことに厳しいものがあります。このような時代にあって、わが国自身の自由と安全を確保し、また、世界全体の平和と安寧を維持していくためには、わが国としてみずからの国益を十分踏まえた上で、いま述べたような国際責任を果たすことが特に肝要と考えるのであります。
以上申し上げました点につきまして、まず総理の御見解をお伺いいたします。
次に、総理の今般の諸国歴訪に関し、二、三質問を申し上げたいと存じます。
第一は、わが国が他の友好諸国、特に先進民主主義諸国と協調しつつ国際責任を果たしていくべきであるという点に関連してでありますが、総理が今次外国訪問においてアメリカ、カナダ、西ドイツ等の先進民主主義諸国指導者と国際情勢について非常に密度のある話をされたという報告をただいま承りました。どのような話をこれらの指導者とせられたのか、そして、これらの指導者との意見交換を通じまして、総理は今後わが国がとるべき外交的進路についてどのような認識を得られたのか、御説明をいただきたいと存じます。
次に、ここ数年間の国際軍事情勢の流れを見ると、ソ連軍事力の急速な増強の結果、米国軍事力の相対的な低下が目立っており、いまや米国は、軍事力においてかつてのごとく絶対優位の態勢を維持することはまことに困難となっております。
これに対して、米国は、みずからも軍事力の増強に踏み出しつつも、西欧、日本などの友好諸国の協力にも期待を強めており、いわゆるスイング戦略を打ち出しております。この結果、将来戦火が極東に波及した場合には、米軍の対応能力はかなり弱まっていることを日本としても覚悟せねばなりません。現下の国際情勢はこのように流動的であり、わが国にとって厳しさを増しつつあると考えるものでありますが、総理は、このたびのカーター大統領との会談においてこの点につきどのような御認識を持たれたのか、また、西ドイツ・シュミット首相との会談においてもこのような世界情勢についてどのような会話が行われたのか、あわせてお伺いしたいのであります。
次に、総理の今回の外国訪問の中で特に国民が注目しておったのは、日米首脳会談においてのカーター大統領とのやりとりであります。日米関係がわが国外交の基本にあることは論をまちません。総理は、カーター大統領の防衛力増強の要求に対し、「同盟国として何をしていくべきかを真剣に検討していきたい」と答えられ、さらに、総理は、「アメリカが同盟国の協力を一番求めているときに、それにこたえないといけない。同盟国とはそういうものだ」と言われたと聞いております。アメリカはわが国の最も重要な友邦であることは信じて疑いません。けれども、果たしてアメリカの同盟国と呼べるのかどうか。日米安保条約は同盟条約に変質しているとの声もありますが、この点はどうなのか、総理の認識を承りたいと存じます。
日米首脳会談終了後に、ホワイトハウスの南庭で、総理は、「われわれは必要とされる場合に、また危機に当たって、お互いが必要とする支援を必ず差し伸べるでしょう」と発言されておりますが、これはかかる同盟関係の内容を表現したものと解すべきなのか、御説明を得たいと思います。
最後にお伺いいたしますが、今回の一連の首脳会談は、緊迫した国際情勢の中でわが国が国際正義の立場に立って平和的かつ効果的にこれを打開するためにも、また、わが国最大の課題でありますところのエネルギー確保のためにも、きわめて有意義であったことは申すまでもありません。これに対して、野党の一部を初めとする左翼勢力が、今回の日米首脳会談の結果を、単に日米軍事同盟の強化とかわが国の軍事大国化を目指すものとしていわれのない中傷を加えて、国の存立の基盤とも言える外交・防衛政策を参院選挙における大平内閣攻撃のための党利党略的な材料としてもてあそぶがごとき一部野党の態度は、断じて容認することはできないのであります。
国の安全と平和を保障し、国民の生命、財産を守ることは、国家として最高の責任であります。そのために、みずからの国はみずから守る自衛力の充実とあわせて、政治体制の一致する国との相互防衛体制を整え、他国の侵略を未然に防止することは、世界の現実であります。
日米安全保障体制を解消して中立政策をとり、また、自衛隊を改組縮小、あるいは廃止すれば、わが国が他国から侵略される心配はないなどという主張が空理空論にすぎないことは、非同盟諸国の中の一員であったアフガニスタンが突如としてソ連軍の侵略を受け、たちまちにしてその支配下に置かれている事実が何よりもこれをはっきりと証明いたしております。
私は、かかる世界の歴史と現実を十分踏まえ、わが国が国力、国情に応じて自主的に防衛力を整備充実し、日米安全保障体制を堅持することは当然の責務と考えるものであります。大多数の国民もまたこれを強く支持し、理解しているものと確信いたしております。
私は、この際、大平総理が改めてわが国の安全保障政策はどうあるべきか、国の財政事情と防衛費予算とをどう調和させるか、中期業務見積もりをどう位置づけ、その作業をどう進めるかといった方針を国民の前に明らかにし、その合意を取りつけるべきであると思うのであります。総理の御所信を承りたいと存じます。
以上をもって私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕