雨宮正子の発言 (文教委員会)

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○参考人(雨宮正子君) 雨宮です。
 いまお二方の発言の中にもありましたけれども、学校給食の現状が非常に問題が多くて、私は母親ですけれども、全国のお母さんたちと一緒にとにかく子供のためによい給食をしていこう、豊かな学校給食を求めていこうという立場から、いまから五年前に豊かな学校給食を求める全国研究交流集会というのを結成して、以来五年間全国集会を開いてきました。
 こういう中で、いま前者二人の方がおっしゃったように、センターが多くて、そして自校方式を求めていくにもなかなかそれが追いついていけない。そしてさらに、単独校であっても一括購入で自分たちが選べないとかさまざまな問題がありますので、そういう中で、きょうのこの文教委員会で私たちの願っていることを聞いていただけるということは本当にうれしいと思っています。私は、そういう立場で母親の代表なわけです。
 私が学校給食に関心を持ち始めましたのは、もうずいぶん古いことで二十年以上前なんです。子供が小学校一年に入ったときに、まず、子供がとても弱かったので、どうしたら子供が丈夫になるかということを考えて給食の問題を一生懸命やってみようと思いました。そして給食委員を受けたわけです。この給食委員を受けたときに、その学校は自校方式でしたから、調理員さん、栄養士さん、それから先生、私たち父母と一緒になって給食の献立をつくり、子供の栄養を考え、そして地元の業者と一緒に話し合って残業のない給食をつくってきました。私は、その中で、母親でしたけれども、たくさんのことを学ぶことができたわけです。
 こういう立場で見ますと、いま二人の方がおっしゃった学校給食の教育というのは、子供の食だけではなくて地域の親にも教育力を与えてくれるんではないか、そういう意味から、学校給食が本当にすぐれたものだということをしみじみ感じていたわけです。
 ところで、最近見ますと、日本の子供たちの食事というのは大変悪くて、一番先におっしゃった田中先生のお言葉にもありましたけれども、全国の子供たちに総合的に栄養を考えていくというようなお話があったわけです。いま日本の子供たちの現状を見ますと、成人病の低年齢化とか、それから肥満児が多いとか、さまざまな問題があります。
 先日、十月の十三日、NHKでアンケートをとった報告がありました。これは朝の奥さんたちの見るテレビですけれども、子供たちの食事というのは、量が足りないし、食べたいときに空腹感を持っていないし、食卓にいつも大人がいないということで、本当にそれは子供たちが豊かな食事をしていないということをあらわしていると思います。これは母親の責任ばかりではなくて、母親たちが働きにいかなければならない実態をもあらわしていると思いますけれども、そういう貧しい子供たちの実情の中で、学校給食というのは、子供にとって一日に一食であろうと大切な生活であり、そしてそこは教育の場だと思うんです。そういう給食の場を本当に大切にしてほしいという願いで、お母さんたちと一緒に五年間研究してきました。
 この中で最近、きょうを機会に私はちょっと読ませていただいたので「学校給食研究」という本があって、そこで文部省の保健体育審議会の前田充明先生が書いていらっしゃるんですね。日本の食べ物というのは本当にすばらしいんだ、日本人の食というのは本当に世界でもすぐれているんだというふうに書いてありました。また、それから少し先にいきますと農文協——農村文化協議会が発行している「日本民族の自立と食生活」という本がありました。それを見ますと、日本民族というのは本当に世界でもすぐれた体力を持っていたということをドイツの医学者が明治の初期に述べていたんですね。これを見てみますと、本当にすぐれていた日本人の体力が、いまの子供たちの体力とあわせると、どうしてこんなに劣ってしまったんだろうかということを考えるわけです。で、日本人の食というのは本当にすばらしいんだけれども、最近の欧米化した食の中で、高血圧がふえたりいろんな問題が起こっているんじゃないか。そういうことを考えると、学校給食の中でもっともっとしっかりした日本人の食文化を教えてもらえないだろうか、そういうような日本人の食を学校給食の中に入れてもらえないだろうか、そういうふうに考えるわけです。
 それを考えていきますと、二番目に私が言いたいのは、学校給食会というものがどういう役割りを果たしてきたかということをきょうの機会に述べたいと思います。
 まず、学校給食会の歴史的な動きを見てみますと、やっぱりいま前者の二人の方がおっしゃったように、センターがどんどんつくられてくる中で給食会もどんどんふえてきたと思います。で、どうしてそういうことを言うかといいますと、私は千葉なんですけれども、千葉市の小規模校の小学校の例を見ました。そこでは毎日手づくり給食で、加工食品を使っていません。ところが、大規模の小学校の自校方式を見ますと、一回だけなんですね。同じ十二日間の統計をとってみましたら、一回だけが手づくりで、あと全部加工食品が入っていました。同じく中学校のセンター給食を見ますと、毎日加工食品が入っていました。ということで、センター給食は調理時間が短いということもあって、どうしても加工食品を使わざるを得ないわけです。ということと、大規模の小学校ですとどうしてもやっぱり手がかかる食事がつくりにくいということもあって、加工食品を多く使っているということがあるわけです。で、このセンター化とそれからだんだん学校が大きくなってくることとあわせて考えてみますと、どうしても簡単な加工食品が使いやすくなってくる。で、これは学校給食会の方から回されてくるわけです。
 なぜ回されてくるかというのを見ますと、私は千葉県の学校給食会に行ってみました。で、五十四年度の供給内訳表をもらったんですけれども、それは百品目にわたる加工食品をこの中でストックしていますということで見せていただきました。で、母親たちが一番いやがる調味料ですね、化学調味料などもしっかり入っていたということがあります。ということで、それらはすべて各県の学校給食会を通って回ってきます。で、日本学校給食会が主要四品目といって、輸入肉とかその他の肉などを扱って、あとのものは余り扱わないということを言っていますけれども、実際はタケノコのかん詰めとかその他、輸入かん詰めなどが回されてくるわけです。
 高知県のお母さんが言っていましたけれども、自分の地域はタケノコの産地なのに、どうして自分の子供たちに新鮮なタケノコを食べさせてやれないんだろうかということを言っていました。そこの地元はセンターでしたから、もちろんタケノコはかん詰めのタケノコを、輸入かんを食べているわけです。こういうことですから、私が願っているのは、本当に日本人の食というのは、日本人であるからこそ郷土の食を大切にしてほしいと思うわけです。
 ところが、日本学校給食会とそれから各県の学校給食会を通してくるのは、大手のメーカーのものばかりなんです。どうして大手のメーカーのものばかりかと言いますと、小さな業者は大量な品ぞろえにはついていけませんから供給することができないわけです。で、宇治の調理員さんが言っていましたけれども、宇治ではいままで自校方式の場合でしたら自分の地元で買えたけれども、これが統一献立一括化ということになりますと、大阪の方の大きな業者がてんぷらを運んでくると言っていました。ということを考えてみても、本当に小さな業者はこれにはついていけないわけです。学校給食会が地域の学校給食の供給を一手に引き受けるということは、地元の業者をも圧迫することになるんだということがよくわかると思います。で、政府はそういうところに対して年々予算をつけてきました。昨年の二月に予算委員会でこういうことが出ていました。三百人の人を雇って、そして二億五千万のお金を使うならば、それはもっと地元の業者に任せたらいいんじゃないかという質問があったときに、主要四品目を流通するためにも、ほかの品目は減らすから何とか存続させてほしいということを国務大臣が答えていました。ということを見ても、日本学校給食会の果たしてきた役割りというのは大きな業者を温存するためにあったのではないか。いま前の方がおっしゃったように、調理員や栄養士が自主的に選べないような品目が回されてきている、そういうことの不自由さが非常にあるんではないかと思います。
 あと五分しかありませんので飛ばしますと、そういう中で、三番目の問題点として今度出されてきた法案の問題があります。
 私は、この法案の、健康会と給食会の合併要綱というものを見せていただきました。一昨日いただいたので詳しく全部読み切ってはいませんけれども、法案の要綱の中で、十九項目ある中で給食に関することは三項目ですね。価格とそれから物資の供給と補助金のことしかないんです。私たちが一番願っているのは、学校給食は教育なんだということなんです。給食の本当の精神というのは、地元で生産したものを、子供たちが、どういうふうにして生産されてきたか、自分たちがそれを食べることはどんなことなのか、自分たちが全人格の発達をしていくためにも食はこんなふうに大切なんだということをしっかりと給食の中で同じ物を食べながら一緒に研究し合っていく。そういう中で人間関係が育ち、そして明るい人間関係の中で非行もなくなっていくんではないか。私は、そういう立場で見ますと、十九項目の中でわずか三項しかなく、あとは、何というんですか、安全会の方のことが重点的に書かれています。これでいったならば、文教委員の先生方にぜひお願いしたいのは、学校給食は教育なんだという立場に立って、もっとしっかりとしたものをつくっていただきたい。実際、千葉県の長生郡睦沢市では、そこは過疎の農村なんですけれども、校長先生がこの過疎の子供たちに自信を持たせるために、何とか食を通してみんなしっかりしたものを植えつけていきたいということから、村の予算の八〇%をも使ってランチルームをつくってもらった。教育にはお金がかかるけれども、子供たちに自信を持たせるんだということでランチルームをつくり、そこでは八人一組で先生も一緒にお昼を食べています。子供たちが献立からそこの地域でとれる野菜物からすべていろいろ研究をして、栄養士さんと一緒に献立をつくっています。そういう中で非行が全くないんです。子供たちが生き生きとしてクラブ活動をしていて、みんな元気で勉強をしていました。そういうのを見ますと、本当に教育にはお金がかかる。ただ行革の数字合わせだけの合併ではなくて、本当に子供たちのために考えられるような給食のあり方を考えてほしい。そういう意味からも、私はこの法案を見ると心配になってきたわけです。
 最後ですけれども、二十周年を記念して一括化の献立、全国一斉統一献立てカレーライスをつくって、そしてデザートは何々をつけて、副食は何々という指示がおりているのを見せてもらいました。私はこれを見て本当に驚いたんですけれども、こういうような一斉に何かを食べさせなければならないということじゃなくて、本当にそれぞれの地域でそれぞれの地域の持つ本当の味を子供たちに教えてあげたら、子供たちも、それからまたそこの地域のお母さんたちも、それから地域の生産者も農業者も、すべてが一緒になって地域ぐるみの教育をしていけるんじゃないか、地域ぐるみの教育と同時に給食がつくっていけるんじゃないか、そういうことを考えるわけです。そういうときに全国一斉統一献立ということで出てきたということは、本当にこれは人間を、日本の子供を画一的にしようとしているんじゃないか、そういう意味で危険なものを感じています。という立場から、ぜひ子供たちのために、ぜひ皆さんですばらしい給食をつくっていただくために、私たちの願いをくみ入れていただけたらと思います。

発言情報

speech_id: 109515077X00719811124_010

発言者: 雨宮正子

speaker_id: 30541

日付: 1981-11-24

院: 参議院

会議名: 文教委員会