鳩山邦夫の発言 (商工委員会)
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○鳩山委員 中川先生から貿易摩擦の総論についてのお話がありましたが、私は各論、とりわけ皮製履物、皮靴、その他輸入自由化はすべきでないという私どもの考え方をお話し申し上げて、政府の大臣以下の皆様方に御理解いただきたいと思っております。
一月二十八日の東京新聞にでっかく出まして、残存輸入制限品目は大幅に自由化をするんだということで、皮製履物のところに星印がついておりまして、星印は政府・自由民主党の自由化検討項目で年内には実施する方針だ、こういうことが出たわけであります。私ども驚きましたし、業界や私どもの地元はハチの巣をつついたような大騒ぎになったわけであります。党と政府と両方がやるべきだ。党については、私どもの宣伝不足もあるが、反省をしておりますし、梶山商工部会長や日増しに名委員長としての誉れが高くなっておられる渡部恒三先生にお願いをして、何とかしたい、こう思っておるわけでありますが、政府の方がそのような方針でありますと大変困るわけでありますので、あえてお話を申し上げます。
昭和五十四年の工業統計によりますと、皮製履物製造業は二千二百七社三万八百四十三人、何だ二千社以上あって三万人しかいないのか、三十万人の間違いじゃないかと思われますが、三万人なんです。平均すれば十四人そこそこ。実は九人以下という一けたでこのような皮靴をつくっておられるところが何と七一%であって、十九人未満ということですと八三・三%にもなってしまう。日本人はウサギ小屋に住んでいるとよく批判をされますが、そのウサギ小屋の中に四畳半があって、その中で一つの産業が存在をしているわけで、皆さん大変苦労をして靴の生産に励んでおられるわけであります。アメリカの、あるいはヨーロッパの大農式と言われるような大規模な畑、あるいは大規模な牧場と日本の農業とを同じ土俵で取っ組み合いさせることができないと同じように、欧米には原材料の加工から製品の販売まで一手に行うような大靴製造メーカーが存在をしておるわけで、彼らが日本に乗り込んできた場合に、そういう四半畳メーカーと同じ土俵で相撲をとれというのは無理であって、もし相撲をとればこてんぱんにやっつけられてしまうわけでございます。
さらに、四畳半メーカーと申しましたが、これでもメーカーなんでありまして、その部品をつくっているところはさらに規模が小さくて、それこそ一畳メーカーであるかもしれないのであります。全部合わせますと八万三千人の方が働いておられる。家族を合わせれば三十三万人になる。革靴の自由化をして三十三万人の皆さん方を路頭に迷わせてしまうのか、それともそうした皆様方の暮らしを守ってあげるか、いま政治は重要な境目に来ているのだと私は思います。
とりわけわが台東区は全国の三三・一%を生産しておりますし、東京全体の六六%を生産しております。まさしく地場産業そのものでございまして、よく中小企業白書あたりを見ますと、地場産業育成というのが出てくるのでありますが、具体的な政策としては余り目立ったものがないのが残念であります。東都製靴工業協同組合というのがありますが、昭和五十五年末で三百七十八社靴をつくっておりましたが、昨年一年間で何と二十二社が倒産をされたわけで、恐らくこのままでいくと倒産件数が全体の一割に迫るような勢いでありますから、これはぜひ政府の皆様方にもその辺を慎重に考慮していただいて、今後のとるべき道をお決めいただきたいと思うわけであります。
欧州履物連盟というのがあるそうで、その事務局長のマイヤーさんという人がおっしゃるには、日本にはいい靴が入ってこない、安い靴が入ってこない、もっとわれわれヨーロッパ側が日本に靴を売れば、日本人はもっと靴を履くようになる、靴の消費がふえる、こういうようなことを言うわけでありますが、こんなとんでもない意見はありません。いま大学の構内を歩いてみれば、昔は革靴を履いていた学生もいまはほとんどサンダルでございます。女性の場合も革靴よりはサンダルを好む傾向が最近では強い、そういうふうに聞いております。欧米各国のように、家の中まで靴を履いて歩き回る国民と、そもそも畳の上で暮らしをしていた日本と、この生活様式の比較を忘れて、もっと靴が普及すれば日本の靴の消費量はふえるはずだ、そういうばかげた言い分に耳をかしてはならないと思います。
さらに、これは大臣にぜひお聞きいただきたいのでありますが、一九七〇年代にヨーロッパでは革靴の消費は非常に伸びたのでございます。しかし、生産は逆にひどく減少しております。どうしてだろうか。これはヨーロッパへ他国から大量の革靴が流入をしたからであります。ヨーロッパが靴を輸入したからであります。そのために消費は伸びても生産は減少し、現にヨーロッパで中小の製靴業者、靴のメーカーは倒産をしたり転廃業を余儀なくされてきたわけであります。しかも、その輸入の半分以上、毎年台湾、韓国、中国、香港、この四つの国から大量の靴が流れ込んでおるわけであります。イタリアの靴をもっと安く履きたいなとか、アメリカの靴を履きたいなという希望が日本国民の中にないとは言えないと思います。しかし、仮に革靴の輸入を自由化した場合に、まず、そうした靴が多少売れるかもしれませんが、結局はヨーロッパが悩まされたような、いや、悩まされているような、台湾、韓国、中国、香港からの大量の革靴の流入となってあらわれます。そのために三十三万人の四畳半メーカーの皆様方が路頭に迷い、そして貿易摩擦の改善にはちっともならないとするならば、こんなばかげたことはない。絶対に靴のメーカーの皆様方をスケープゴートにしてはならないというのが私のきょうの質問よりむしろお願いでございますが、大臣、一言だけで結構でございます。通商産業大臣、通商と産業と非常にむずかしい絡みだと思いますが、産業の保護というのも大臣の手のひらの上に乗っかっておるわけでありますので、ひとつ御答弁をいただいて、よろしくお願いする次第であります。