片岡清一の発言 (本会議)

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○片岡清一君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま提案されました公職選挙法の一部を改正する法律案について、鈴木総理、世耕自治大臣及びこの改正案の提案者に対し、若干の点について質問をいたしたいと思います。
 このたびの改正法案は、世界に類例を見ない日本全国を一選挙区とする参議院の全国区の改正でありますが、この全国区制は、選挙運動に金がかかり過ぎる、候補者の選挙運動に費やす労力は人力の限界を超えている、これを選挙する有権者の側も、顔も経歴もろくろく知らない何十人という候補者の中から、だれに投票していいか選定に迷うということで、「銭酷区」とか「残酷区」とかと悪口を言われて、昭和二十二年、この制度による選挙が行われた当初から批判の多かった制度であります。
 このような制度では、真に良識の府と言われるにふさわしい高邁な識見を持ったりっぱな人はなかなか出てきにくいのが実情であります。かねてからこの制度に大きな疑問を持っておりました私としては、このたびの拘束名簿式比例代表制への改正には、双手を挙げて賛成するものであります。したがって、この画期的な大改革に精魂を打ち込んでこられ、みごとな成案を得られた金丸参議院議員を中心とする提案者の方々に深い敬意を表するものであります。
 しかしながら、このたびの改正は、何といってもわが国の議会制民主主義史上画期的な変革をもたらすものでありますので、慎重の上にも慎重を期し、その審議に万全を期すべきものと思うので、そうした立場から、この制度の基本的な問題二、三について鈴木総理に御質問を申し上げたいと存じます。
 まず第一に、総理のこの法案提出についての御所見をお伺いしたいのであります。
 総理は日ごろ、選挙制度は議会制民主主義の根幹に関する問題で、各党派が選挙戦を戦う共通の土俵を決めるものであるから、各党派間で十分な協議を尽くすべきであるとの考えを述べておられるのであります。ところが、今回の改正案は、残念ながら自由民主党一党から提案されたものであることについて、いかなる所感をお持ちでありますか、お伺いいたしたいのであります。
 もちろん、選挙制度は各党の命運をかけての戦いの土俵づくりでありますから、それぞれ、いわゆる党利党略で完全な一致を見ないことがあることは私は十分理解できるのであります。参議院における審議に際しても、社会党案初め、各党からそれぞれ独自の改正案が提出せられたようでありますが、結局、自由民主党案だけが衆議院に送付されてきたのであります。
 これらの点を踏まえて、総理は、このことについていかなる御所見をお持ちであるかをお伺いいたしたいのであります。
 次には、現行の全国区制にはいろいろの問題のあることは趣旨説明でも述べられましたし、私が先ほど指摘したとおりでありますが、しかし公職選挙法全体の改正問題を考えますときには、この全国区制問題もさることながら、いわゆる一票の重みの問題をめぐって衆参両院の選挙区における定数是正の問題がしばしば世論の中心に上っております。
 のみならず、昭和五十一年四月十四日の最高裁判決で、衆議院選挙区での議員一人当たり有権者数の格差が最大約五対一に達したものは違憲であると言い、また、最近、昭和五十五年十二月の東京高裁判決でも、格差二対一を超える場合は違憲であるとの判決が出ておるのであります。
 こうした事情を考えたとき、定数是正の問題も、いつまでも放置しておけない問題であると思うのであります。これを差しおいて全国区制の改正を急がれた理由は那辺にあるのか。しかも、総理はこのたびの改正案の成立に異常な執念をお持ちになり、今国会においてぜひ成立を図りたいということで会期の大幅延長を意図せられたと聞いておりますが、これらについての総理の御所信を承りたいのであります。
 もう一つ総理にお伺いいたしたいことは、選挙制度と政界の浄化、政治倫理の確立についての問題であります。
 選挙制度は、前述したとおり議会制民主主義の根幹であり、選挙が公正明朗に行われるか否かは、直ちに政治の浄化と政界の刷新を期し得るか否かに直結する前提条件であります。したがいまして、選挙にはできるだけ金のかからぬようにし、明朗濶達に選挙が行われるようにすることが何より肝要であると思うのであります。清廉潔白な政治姿勢を堅持し、政界の浄化刷新に政治生命をかけられた故松村謙三先生の衣鉢を継がしていただいた私としては、政界の浄化と政治倫理の確立には異常な執念を持っている一人であります。(拍手)
 私は、国会に出さしていただいて以来、金のかからぬ選挙の実現のために、終始変わらぬ使命感を持って努力を重ねてまいりました。こうした立場から、私は、テレビタレントや労働組合幹部のような一部の例外の人たちを除いては、どんなに節約しても数億、十数億という巨額の選挙資金を必要とする全国区制は、政界浄化の立場から最も大きな問題を残す制度であって、一日も早く改革せらるべきものであると信じ、わが党の選挙制度調査会の段階においても、私なりの努力を重ねてまいったところであります。
 この改正案は、いままでの候補者個人中心の選挙から政党を中心とする選挙に移行するものでありますから、その点では政界浄化に向かって一歩大きく前進するものでありましょう。その意味で、私はこの改正案を高く評価するものでありますが、この拘束名簿式比例代表制は、政党というものに非常に大きな国家的使命を負わせているという点を重視する必要があると思います。
 その最たるものは、選挙に臨む候補者の名簿をつくり、その順位を決めて選挙民に提示する任務であります。常に投票の行方を気にしながら、狭い地域の利害に追いまくられて、とかく国家的立場や長期的な視野に立っての国政論議がおろそかになりがちな衆議院の立場を抑制、補完するのが参議院本来のあり方であり、それにふさわしい良識の人を名簿に登載するというのが最大の責務であります。この点で、政党は従来以上に大きな国家的な責務を果たすことになったのであります。
 そもそも政党とは、今日のような複雑多岐にわたる国民のニーズを特定の政治的意思に統合するために、自由で継続的な協力をする公の任務を遂行するものでありますが、いまやさらに、議会の構成員を選出するための名簿づくりという、より明らかな国家的機能を果たす公的機関となったのであります。この改正案で、名簿登載者を選ぶ権限の行使に関係した者に対しては贈収賄罪の適用が規定せられているのも、そのことを象徴しているものと思います。
 このような見地から考えますと、いまや政党は、国民の任意の拠出による政治資金の寄附によってのみ党活動をすることは不適当であると思うのであります。これからは、党の政治資金の一部を国家財政から支出することとし、そのかわり党の収支に対する国家の監督を一部加えて、その透明度を進める措置を講ずることが政治浄化の立場からも必要不可欠であると思うのであります。
 私は、政党本位の選挙が行われることとなるこの際、政治資金規正法を見直して、政党に対してだけは、他の政治資金団体と区別して民間の寄附の枠を少し拡大するとともに、その収支もより明朗化することが時代の要請にかなった方法であると思っております。
 かつて政治資金を法人や団体から集めることは諸悪の根源であるという考え方から、個人の寄附に改めるよう政治資金規正法が改正せられましたことは御承知のとおりであります。この改正法は、昨年一月末を期してその見直し作業をするように法定化されておるのであります。この見直し規定に基づいて当時一応つくり上げましたところの規制を、その後の経済情勢に即するようさらに新しく見直し、個人本位の選挙にかえて政党本位の選挙が十分行えるようにするとともに、政治資金というものをより透明度の高いものにすることが、かえって政界浄化の目的に合致するものであると信ずるのであります。
 この見地から、私は、西ドイツ政党法のような政党法の制定をここに強く要望いたしたいのであります。この政党法によって政党の政治資金の一部を国庫で負担するような制度をこの際創設することをあえて提案したいと思うのであります。
 私のこの考え方に対し、総理及び自治大臣はいかなるお考えをお持ちでございますか、御所見をお伺いいたしたいのであります。
 次に、本法の提案者に対し御質問いたします。
 第一の点は、拘束名簿式比例代表制のもとにおいては、国民は政党の候補者名簿に登載されなければ立候補できない、また反面、選挙民はその名簿に登載されている人以外の人に投票ができないということになっておる点についてであります。
 このような制度は、一つには個人としての立候補を禁じていることになり、これは法のもとの平等を保障している憲法第十四条第一項に違反しているのではないか、また二つには、選挙する人も選挙される人も「人種、信條、性別、社會的身分、門地、教育、財産又は収入によって差別してはならない。」としている憲法第四十四条に違反しているのではないかという疑問が出てきておるのであります。
 私は、この違憲論には賛成できません。なぜなれば、選挙権や被選挙権は、表現の自由などと同様な、法律によっても侵し得ない、いわゆる人間固有の基本的人権であるとする見解には賛成できないからであります。この見解は、憲法第十五条第一項に、公務員を選定、罷免することは国民固有の権利であるとあるのを根拠としている主張でありますが、しかし現にすべての国民が選挙権を有する選挙人であるわけではなく、法律によってその資格要件は決められているのであり、また被選挙人の条件も、その地位の必要上、年齢等に条件が付せられていること等から見ましても、絶対不可侵の基本的人権と考えることは無理でありましょう。したがって、私は、この改正法で立候補者や選挙人に対して一定の条件を付したとしても違憲とはならないという考え方を持っておるのであります。
 しかしながら、昭和三十年二月九日の最高裁判決が、公職の選挙権は国民の最も重要な基本的権利の一つであると述べ、その後、別の昭和四十三年十二月四日の最高裁判決でも、これもまた憲法十五条一項の保障する重要な基本的人権の一つと解すべきであると言っておるのであります。
 そこで私は、提案者はこの問題をどういうふうにしてクリアされるおつもりであるか、その論拠を承りたいと思います。
 さらに、このたびの改正案は、候補者個人中心の選挙から政党中心の選挙に切りかわるのでありますから、参議院の政党化を一層進めることになり、衆議院の行き過ぎに対してチェック・アンド・バランスの機能を果たさせるべき参議院の本来の使命はますます薄れていき、衆議院のコピーのような数の政治に堕してしまうことを恐れるのであります。これはひいては参議院の不要論に拍車をかける結果にならないかを心配いたすのでありますが、これに対して提案者の御所見を伺わしていただきたいのであります。
 最後に、自治大臣にお伺いいたします。
 改正案は、わが国に初めて比例代表制を導入する画期的なものであります。政党名を書いた投票をしてもらうという制度を採用したこと等、わが国の選挙人にとってはなじみのない制度であります。来年の実施まで日時もわずかしかありませんが、実施に当たる自治大臣として、それまでの間にこの制度が国民に十分理解され、支障なく選挙が執行される御自信がおありかどうか、その辺の御決意をお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔参議院議員金丸三郎君登壇〕

発言情報

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発言者: 片岡清一

speaker_id: 8752

日付: 1982-07-27

院: 衆議院

会議名: 本会議