安藤巖の発言 (本会議)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○安藤巖君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました公職選挙法の一部を改正する法律案について質問をいたします。
 まず、私は、今回の九州の豪雨災害の被災者の方々に心からお見舞いを申し上げ、総理が万全の措置をとられることを強く要求をして、質問に入ります。(拍手)
 最初に総理に伺いたいのは、今国会の重大な緊急課題は何かということであります。
    〔議長退席、副議長着席〕
 私は、いま国民がこの国会に期待している最も重大な課題は、平和、核軍縮への努力とともに、ロッキード事件にかかわる政治家の政治的道義的責任の追及であると考えます。(拍手)その真相を解明し、責任を明らかにすることは、衆参両院の本会議決議、全政党の党首会談の所産である両院議長見解などを通じて、すべての党派の一致して確認したところでありました。国会は、いま灰色政治家の証人喚問、有罪議員に対する辞職勧告決議案こそ真っ先に取り上げなければなりません。これを事実上、棚上げしたまま、党利党略的な公選法の審議だけを強行に次ぐ強行で進めるというととは、議会制民主主義の根幹を揺るがし、国民の期待を全く裏切るものではありませんか。自民党総裁としての明確な答弁を求めます。
 灰色政治家の証人喚問について、自民党は、いまなお議院証言法の改定を前提にしています。しかも、各党ですでに二年前に合意した六項目以外の点に固執し、新しい問題点も追加しています。自民党のこの態度が改まらない限り、今国会での証言法改定も証人喚問も不可能であります。
 総理、この態度を改める考えはありませんか。わが党が最初から主張し、参議院では野党各党がそろって主張したように、現行法で証人喚問を行うべきではありませんか。三木、福田両元総理も、現行法でも証人喚問できると述べていることも考えあわせ、自民党総裁としてはっきりお答えください。
 発議者並びに総理は、本法案が金のかからない選挙を目指したものであるかのように宣伝をしています。しかし、金権腐敗選挙として世論の批判を浴びているのは、自民党自身ではありませんか。現に、ロッキード被告人であり、田中角榮議員の秘書であった榎本敏夫は、検事調書で、この献金は、自民党が来るべき参議院選挙を有利に戦うため、党の政治活動費として、党の総裁としての田中先生が献金を受けるものだという認識であったと供述しています。これは外国の団体から政治活動に関する寄附を受けてはならないとする政治資金規正法に違反すると思いますが、自治大臣の答弁を求めます。
 清潔で金のかからない選挙をと言うのであれば、このような金権体質をみずから一掃することこそ必要ではありませんか。総理の答弁を求めるものであります。
 次に、本法案の参議院における審議の経過についてであります。
 参議院公選法特別委員会における単独強行採決は、前例のない違法なものであります。委員長は、理事会の途中で突然委員会室に飛び込み、委員会の定足数も満たされないまま開会するという違法を犯し、その上、次の質疑予定者である車いすの前島議員が物理的に入場も着席もできない状態であるのを知りながら、同議員に質疑を促す指名をし、発言なきものとして質疑権を奪い、さらに、自民党案に対する討論を省略して採決を強行したのであります。これは明らかに議会制民主主義の乱暴な侵害であり、まさにわが国会史上に重大な汚点を残したものであります。総理は、このような違法、異例の採決を一体どのように考えるのか、承りたい。
 総理、あなたは、選挙制度については各党間で十分な審議を尽くし、結論を出すべきものと再三述べてきました。本法案の参議院審議において、わが党は独自の案を提出し、審議日程についても各党の話し合いがなされていたのであります。ところが、一事不再議の原則を逆用したこの強行採決で、わが党案の審議を封じ込めてしまったのであります。このような不当なことは断じて許されません。
 総理、あなたは自民党の総裁として、本院においては十分審議を尽くし、強行採決は絶対行わないと約束するかどうか、はっきりとお答えください。次に、本院にとって重大な問題は、議会制民主主義を乱暴に踏みにじった参議院委員会での強行採決問題を収拾するとしてなされた参議院議長の議長所信なるものについてであります。この所信は、いまだ成立もしていない本法案をすでに成立したかのように扱い、昭和六十一年の参議院通常選挙終了後に必要により本制度に検討を加えるものとするとしております。これは明らかに衆議院の審議権を無視したものであり、また、この法案が手直しの必要な欠陥法案であることを認めた上、法案の中身にまで立ち入るという二重の越権行為であります。(拍手)当然のことながら、本院においてこの所信に何ら拘束されず審議が自由かつ慎重に行われるべきものと考えますが、発議者並びに総理の明確な答弁を求めるものであります。
 次に、改正案の内容について伺います。
 選挙制度は、憲法の民主的精神に沿ったものであると同時に、主権在民の原則を踏まえ、基本的人権を尊重し、国民の意思を議席に正確に反映し得るものでなければならないことは言うまでもありません。
 わが党は、戦後一貫して、選挙制度の民主的改革の方向として比例代表制の採用を主張してまいりました。この制度こそ、主権者である国民の選択を議席に正確に反映し得る制度と考えるからであります。
 わが党は、この立場に立ち、参議院において独自の改正案を提出したのであります。わが党の案は、憲法が規定する国民主権と基本的人権尊重の原則に基づき、国民の意思の公正な反映を目指す比例代表制本来の目的を正しく実現することを最大の眼目として、拘束名簿式比例代表制を全国区制に採用するものでありますが、同時に、一切の政党規制を設けず、無所属の立候補をも保障しようとするものであります。
 ところが、本法案は、候補者名簿を提出できる政党等について厳しい資格要件を設けているのであります。これは、政党に属さない者から被選挙権を奪い取るものであり、これまで参議院で少なからぬ役割りを果たしてきた無党派議員を制度的に一掃しようとするファッショ的暴挙であり、法律で信条などによって国民の選挙権、被選挙権を差別することができないとする憲法第四十四条に明らかに違反するものであります。
 発議者は、この明白な憲法違反の内容を公共の福祉論によって言い逃れようとしています。しかし、憲法第十三条は、国民の権利について「公共の福祉に反しない限り、立法その他の國政の上で、最大の尊重を必要とする。」と定めているのであって、公共の福祉さえ持ち出せば基本的人権の制限が許されるなどというのは、幾らでも基本的人権を抑圧できるきわめて危険な憲法解釈であり、国民の基本的人権にかかわる事柄であります。発議者並びに総理の明確な答弁を求めるものであります。
 さらに発議者は、参議院における答弁で、「選挙権はいわゆる基本的人権ではありません。わが国の過去を見ましても、婦人には参政権が与えられておりませんでした。また、納税資格が選挙権の要件であったこともございます。」と述べています。およそ国民の基本的人権を認めなかった明治憲法下の考えをそのまま現在の選挙制度に適用しようとする恐るべき時代錯誤の議論と言わざるを得ないではありませんか。憲法第四十四条は、そのただし書きで、法律によっても信条や性別、財産または収入等によって選挙資格を差別できないとしています。憲法第十五条は、選挙権は国民の基本的人権であることを明らかにしています。発議者並びに総理の見解を求めます。
 次に、政党本位の選挙制度である以上、政党の選挙活動を最大限に保障すべきであります。戸別訪問の禁止を初め言論統制、確認団体制度など、選挙活動や選挙時の政治活動をがんじがらめに規制した現行公選法の抜本的な検討が必要であります。
 わが党の改正案は、この立場に立ちつつ、当然の措置として、現行全国区での候補者の選挙運動の態様と規模を政党の選挙活動として保障することを基本としております。
 ところが、本法案は、全国区での選挙運動を選挙公報や政見放送など、ごく限られた公営の枠内に閉じ込め、従来候補者に認められていた選挙用自動車、拡声機、ポスター、はがき、ビラ、個人演説会の開催などを全面的に禁止する大改悪を行っております。政党本位の選挙を口実に現行の運動を禁止したりすることは絶対に許されません。
 本法案の規制は、一九七五年、八一年と相次いで強行された選挙中の機関紙号外規制、機関紙宣伝車と政策宣伝のための拡声機の使用禁止など言論規制を中心とする公選法改悪に続き、現行のべからず選挙法に新たに重大な改悪を持ち込むものであり、国民の知る権利を奪い、一層暗やみ選挙に追い込むものであります。(拍手)
 これでは、政党本位の選挙だと言いながら、国民は政党の政策、主張をほとんど知らされないまま投票しなければならないことになるではありませんか。発議者の答弁を求めます。
 さらに私は、本法案の作成、提出に当たって、自民党が党利党略の立場に立っていることを指摘したいのであります。
 当初、自民党は、無所属候補を認めた案を決定していたのであります。ところが、わが党が入手した文書によれば、本法案づくりの過程で、個人本位の選挙運動を政党本位に切りかえて選挙に勝てるかどうかが制度改正のキーポイントであると強調し、無所属締め出しの政党要件や全国区での選挙運動をほとんど全面的に禁止し、自民党に有利な選挙にするという党利党略を貫くものにしたことが明らかであります。選挙制度の改定をこのような党利党略で行ってよいと考えているのか。発議者並びに総理の明確な答弁を求めるものであります。
 最後に、今回の全国区制改悪を入り口として、最終目標は衆議院への小選挙区制導入だという議論が自民党の中で行われております。現に、自民党の選挙制度調査会は、衆議院小選挙区制の検討など選挙制度の全般的改悪の作業を新たに開始しているではありませんか。
 総理、この際、小選挙区制導入は絶対にしないと約束できますか。総理の明快な答弁を求めるものであります。
 わが党は、改悪案成立阻止に全力を挙げ、選挙制度の民主化と議会制民主主義擁護を目指して闘うことを表明して、私の質問を終わるものであります。(拍手)
    〔参議院議員金丸三郎君登壇〕

発言情報

speech_id: 109605254X02919820727_022

発言者: 安藤巖

speaker_id: 20408

日付: 1982-07-27

院: 衆議院

会議名: 本会議