谷川和穗の発言 (本会議)

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○谷川和穗君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました鈴木内閣不信任決議案に対し、断固反対の討論を行わんとするものであります。
 そもそも内閣に対する不信任案は、実際に政権を担当する能力と気魄に満ちた政党が、内閣に著しい失政のある場合に提案し、これが可決せられれば、みずからもって政権を担当する用意と決意のもとに行われて初めて意義あると考えるのであります。(発言する者あり)
 しかるに、今回の不信任案は、平素全く政治路線において相反する公明、共産両党共同提案のものであって、ごらんください、他の野党の賛同すら得られない、不信任案賛成者は、これを合わせても五十九名という内閣不信任案であります。(発言する者あり)
 そもそも今国会の会期がこれほど長期に会期延長を見たのは、参議院の全国区制の改正にあったことは国民すべての知るところであり、衆議院に付託されてからもすでに四十三時間を超える委員会審議を経て採決され、本会議に上程されようとしているのであって、国会の国政審議権に基づく議員立法の内容に反対だとして内閣を不信任するという今回の公明、共産両党の不信任案提出は、まことに理解に苦しむものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
 政治倫理の確立と綱紀の粛正、特に公正で金のかからない選挙制度の実現は、常にわが自由民主党内閣の目指してきたところであります。
 全国区制の改正は、恐らく戦後選挙制度改革の最大のものと存じますが、これを機に選挙運動の規制、選挙の公営化の拡大等、実効ある選挙改革を築き上げ、その中で政治の浄化、選挙の公営化を目指していくことこそ、まことに重要な課題であると考えるのであります。
 わが党のまとめ上げた議院証言法の改正案について申せば、証人や補佐人の人権を守りながら国会の権威を高めようとするものであり、すでに本院において議会制度協議会に提出され、本国会の会期中、幾たびかの審議を経て議長の手元に報告されたのであります。
 司法に属する進行中の裁判は、裁判所の公正な判断に任せるとともに、国会における証言の制度は、国会審議の過程において必要とする真実を求める行為であるがゆえに、与野党が十分話し合って、よりよき制度の確立を図るべきものであって、今後の議会制度のあり方等から考えてみましても、いたずらに内閣に責任を転嫁するなど、まさに議会制度の本質を外れた議論と言わなければならないと思うのであります。(拍手)
 提案理由の第二は、鈴木内閣の財政経済運営についてであります。
 まさにわが国は、いま国債の発行残高九十三兆円を抱え、財政再建の正念場に立ち至っていることは間違いない事実であります。しかしながら、昭和四十八年以降のオイルショックの後の世界一安定した日本経済は、まさにこの財政の出動があったからこそ実現し得たものであり、国民の勤勉さ、世界一を誇る貯蓄性向、生産性の向上によって初めて可能な政策でありますが、わが国経済が二度の石油ショックにもめげず、しかも、物価を抑制しつつ、世界の総生産の十分の一を上げる国家へ成長したことを見れば、私は、わが党政府によるこの財政政策は、断じて間違っていなかったと確信するものであります。(拍手)
 引き続いて、今後わが国が迎える高齢化社会、二十一世紀の、あすの明るい日本を考えて、二度の石油ショックがようやく安定しかかったこの機をとらえて、一気に財政の再建を図れという国民的コンセンサスに基づき打ち出された政策が財政再建の政策であるのであります。
 第三の理由として、所得税減税を行わなかったことをもって、景気の停滞と不況の原因と断定しているのでありますが、現在の国民所得に対する租税負担プラス社会保障負担比率は、欧米先進国と比較してなお比較的低位にあり、国民の公的負担を維持しながら将来の活力ある福祉国家を創造していくことは、これからのわが国の政治課題でありますが、減税について言えば、こうした将来の日本の姿を描きながら、現在、衆議院大蔵委員会において熱心に議論がなされているところであります。
 景気対策について言えば、上期七七・三%の公共事業を執行、続いて下期について、財政金融政策を機動的に展開して民間活力の再生を図り、景気を浮揚させるという内閣の基本姿勢は、すでに公にされておるのであります。
 このたび提案された不信任決議案の内容は、いままでの経緯に触れず、しかも今後の経済運営にそごを来し、かつ、経済の活力をそぐ結果に陥るであろうものが含まれていると存じ、断じて賛成しがたいのであります。
 第四は、教科書問題であります。
 わが国が歴史的、地理的に深い関係を有する近隣諸国と今後とも平和を分かち合い、友好のきずなを確かめつつ繁栄し合っていくことは当然のことと考えるのであります。こうした観点に立って、これらの国々の誤解を解き、批判された点については率直に反省すべきことは当然であります。(発言する者あり)
 故大平総理が日中友好の橋のことをうたい、続いて鈴木総理が、アジア諸国の大公使を通じて、アジアの声をサミットへまで反映しようと努力されたアジア重視の姿勢、ベルサイユ・サミットの帰途、ハワイにおいて行われたアジアの連帯と協調の演説の中のテーゼ、これから推して、鈴木総理が、アジアの一員としての日本、アジアとともに繁栄する日本を念頭に置いて政治を担当しておられることを私は毫も疑いません。(拍手)
 今回の教科書問題は、現内閣のこの姿勢にみじんも揺るぎがない限り、必ず近隣諸国の理解を得て、解決の日が決して遠くはないと確信いたすものであります。
 防衛力の強化や靖国神社参拝をもって右傾化と断じておられますが、自由と民主主義の政治体制のもと、日本民族が毅然としてみずから歩む道を決めることがどうして右傾化なのか、私にはどうしても理解できないのであります。(発言する者あり)
 第五の仲裁裁定、人事院勧告の完全実施についてでありますが、本問題の解決は、今後とも十分話し合いが行われる問題でありまして、関係の委員会などを中心に現に本日も熱心な論議が続けられているではありませんか。
 この問題に関連して申せば、国の財政を再建しようという大命題を掲げ、先般、米価問題の解決で農民に大きな負担をお願いいたしました。すべて公務員は全体の奉仕者であることにかんがみれば、公務員諸君にも苦しみを分かち合おうということを率直に訴えるべきであるという議論があって少しも不思議ではなく、このことは国会において討論さるべき課題であり、内閣不信任の理由としては正鵠を得ない議論と存ずるのであります。
 以上のごとく、本内閣不信任案を検討してまいりますと、本案はまことに理にかなわない、党利党略、矛盾撞着の決議案と断定せざるを得ません。(拍手)圧倒的多数をもって直ちに否決されるのが至当と考え、本不信任案に断固反対の理由を申し述べて、私の討論を終わります。(拍手)

発言情報

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発言者: 谷川和穗

speaker_id: 18568

日付: 1982-08-18

院: 衆議院

会議名: 本会議