下田京子の発言 (本会議)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○下田京子君 私は、日本共産党を代表して、総理に質問いたします。
総理、あなたは家庭を大切にする政治を行うとおっしゃいました。しかし、どれほど本気でお考えでしょうか。
昨年、北炭夕張で保安無視のためとうとい命を奪われた九十三名の御遺族の皆さん、そしてことし首を切られた二千名を超える労働者とその家族の皆さんが、いまこの厳しい北海道での冬をどんな思いで過ごされているか、総理は御存じでしょうか。
「お父さんは、もう帰ってこない。わが家もシーンとしている。お父さんが「ただいま」って帰ってきたらなあ」――父親を失った夕張の子供の詩です。
総理、あなたのおっしゃる家庭の団らんをこの子供から奪ったのはだれですか。働きたくとも働く場所がない、働いても暮らしが成り立たない、このまま行ったらわれわれの暮らしはどうなるのか。これは、労働者はもちろん商店や農家の皆さんの共通の不安であり、訴えであります。総理、いま国民が求めているのは、あなたのおっしゃるそらぞらしい言葉ではありません。国民の不安にしっかりと目を向け、耳を傾ける政治をこそ願っております。
そこで、お尋ねします。
総理、あなたは、「政治を支えるもの、それは国民の信頼である」と言われました。ところがどうですか。あなたは、自民党のかなめである幹事長にロッキード資金を受け取った二階堂氏を再任し、内閣のかなめ、官房長官には、事もあろうに田中角榮のふところ刀と言われる後藤田氏を据えました。さらに法務大臣には、田中弁護団とうり二つの発言を国会で展開し、指揮権発動は当然だと言い放っている秦野氏を起用しました。これで一体、国民の信頼を得られるとお考えですか。まさに国民への挑戦ではありませんか。重ねて納得のいく説明を求めます。
次に、総理、あなた自身にかかわる疑惑も重大です。
札束が乱れ飛んだと言われる十年前の総裁選挙、この選挙に絡む殖産住宅の五億円献金問題について、あなたは、あの金は東郷民安氏が独断で取り計らったものと国会で証言されました。ところが、この事件について一審はもちろん八〇年七月の東京高裁の判決でも、はっきりと、あなたの依頼に基づいて東郷氏が株の操作で調達したと認定しているではありませんか。一体どちらが本当ですか。東京高裁の判決が間違っているとでもおっしゃりたいのでしょうか。
また、あなたは、七六年の政治資金のでたらめ報告事件の際、将来間違いを繰り返さないと約束しておきながら、またしても七九年、八〇年と、引き続き違法献金事件を引き起こしているではありませんか。
さらにあなたは、ロッキード事件についても児玉からの電話を受けたことはないと国会で証言されておりますが、その後、証拠として採用されたコーチャン調書でもあなたとのかかわりが明確に述べられており、依然として疑惑は晴れておりません。これでどうしてあなたの弁明を信用できるでしょうか。明確な答弁を求めます。
第二番目は暮らしの問題です。
総理は、日本は豊かになった、これからは心の問題だと、国民に自立自助の精神と忍耐を求め、福祉、教育切り捨て、国民いじめの臨調答申を最大限に尊重すると強調されました。とんでもない話です。
以下、五点にわたって具体的にお聞きいたします。
一つ。臨調答申に基づいて政府が公務員給与の凍結を打ち出した途端、財界の総理と言われる稲山経団連会長は、「民間労働者も賃金引き上げをゼロにすべきだ」と言い出しました。これを聞いた中小企業、商店の皆さんは、これじゃますます売り上げが落ち込んで景気はよくならぬと頭を抱え込んでおります。総理、あなたは、公務員労働者や民間労働者のふところを寒くすることが消費不況に一層拍車をかけるとはお考えにならないのでしょうか。私は、政府の責任において、人事院勧告と仲裁裁定の完全実施を直ちに行うべきであることを強く主張するものであります。
二つ。軍人恩給や年金でやっと生活されているお年寄りや障害者、母子家族の皆さんは、次に削られるのは私たちかと不安を訴えております。総理、この声を無視して来年度物価スライドまでやめるようなことはしないと、はっきり約束されますか。
三つ。臨調は、「日本の大学進学率は高過ぎる、今後十年、進学率を引き下げるべきだ」との立場から、私学助成の切り下げ、国立大学の定員抑制を主張しておりますが、あなたはこのような考え方にやはり同調されるのですか。
四つ。前内閣は私の質問に対して、農産物の輸入自由化、枠拡大は行わないと言いながら、実際には譲歩を重ねてまいりました。しかも、臨調答申が市場開放を求めているため農家の皆さんの不安は一層深刻です。あなたは一月に訪米されるそうですが、レーガン大統領に会って、まさか農産物の輸入自由化、枠拡大を約束されるようなことはないでしょうね。
五つ。鈴木前総理は、「増税なき財政再建」に「政治生命をかける」と言っておりました。ところが、あなたはそれを単なる基本理念の一つに引き下げました。そして竹下大蔵大臣は、すでに大型間接税、つまり悪名高い一般消費税の導入を真剣に検討すべきと述べております。総理も同じお考えですか。それとも大蔵大臣に発言取り消しを指示されますか。
以上、具体的な総理の答弁を求めます。
総理、わが国の経済の現状は力強さを欠いているなどというなまやさしいものではありません。二十六年ぶりの高い失業率、中小企業の倒産もふえています。五年連続の所得税減税の見送りと公共料金の相次ぐ値上げで、どこの家庭も家計簿が悲鳴を上げております。この上、臨調だ、行革だといって大企業奉仕、軍備増強のために国民に犠牲を押しつけてきたら、国民の暮らしは一体どうなると思いますか。もしあなたに国民に対する思いやりの心が一片でも残されているなら、国民いじめのにせ行革をやめて、本当の意味での国民奉仕の行政改革を進めるべきではないでしょうか。
第三番目は、戦争か平和か、一体どちらの道を選ぶのかという問題です。
まず最初に、総理訪米に際し具体的対応についてお聞きします。
周知のように、アメリカ政府、議会関係者は、わが国に防衛政策の根本的な転換を繰り返し迫っています。平和憲法、非核三原則、専守防衛などの日本の特殊性は認めないというのです。総理訪米の際にも同様のことが求められると思います。
そこで、まず非核三原則についてお伺いいたします。アメリカ軍の三沢基地への核兵器を積めるF16戦闘爆撃機の配備や、アメリカ第七艦隊への核弾頭つきトマホークミサイル配備が迫っている中で、あなたは非核三原則をあくまで厳守し、疑わしきは入れずの立場をしっかりとられるのかどうか。
また、訪米みやげに軍事技術協力を約束すると伝えられていることは重大です。総理は憲法の精神、原則と国会決議、武器輸出三原則及び従来の政政方針を踏みにじってまで安保条約を優先させ、アメリカに対する軍事技術供与を行うのかどうか、この際はっきりとお答えください。
さらに、今日の事態の重大性は、こうした基本政策の転換がすでに始まっていることです。かつて政府は、「憲法上、日本の防衛義務は日本領土内に限られている、それを出てやることは憲法違反だ」と明確に述べておりました。ところが、鈴木前総理は昨年の日米首脳会談で、「日本の庭先である周辺海域を自分で守るのは当然」と述べ、いわゆる一千海里シーレーン防衛を約束しました。これは、日本の防衛対象区域を領土、領海、領空に限った従来の領域防衛から、周辺一千海里にも及ぶ領域外防衛へと拡大した大転換ではありませんか。総理、あなたは、鈴木前総理のこの約束を継承して領域外防衛に乗り出すつもりか、明確な答弁を求めます。
最後に、私は、中曽根総理の憲法観、太平洋戦争に対する認識についてお尋ねします。
あなたは、昨日わが党の不破委員長も示した、総理就任当日に外国人特派員に渡した経歴紹介の中で、「私は自分たちの手でつくった新しい憲法をいまでも実現したいと思っている。しかし私はこの問題で日本社会を引き裂きたくはない」と述べています。これは総理としてのあなたの見解です。あなたのおっしゃる日本社会を引き裂きかねない新しい憲法とは一体どんな内容なのか、お示しください。
また、あなたは四年前、「総理になったら憲法問題をテーマに解散、総選挙をするか」と問われて、「そのための準備をする」と明言しています。一体あなたは、だれに、どこで、いつ、何を準備させるおつもりですか、具体的にお聞かせ願います。
総理、あなたは昨日の答弁で、太平洋戦争を「まことに遺憾な戦争であり、あの戦争での日本の行為について、国際的に「侵略である」という厳しい批判があることは事実だ」と述べています。伺いますが、あなた自身、あの戦争を世界の批判どおりに侵略戦争とお認めになるのかどうか、あなた御自身のお考えをはっきりお答えください。
あなたは、拓殖大学総長就任の際、講演で「われわれが東南アジア諸国に行くと、民衆はわれわれに大東亜戦争のおかげで独立できたとお世辞を言ってくれる。しかし、政治家の方は、うっかりそんなことを言うと日本からの賠償金を減らされるから言わない」などと得意げに話されております。あなたは、今後ともこのような侮辱的な認識でもってアジア諸国民に対応するおつもりですか。過去の戦争を事実に基づき厳粛に侵略であったと認めることこそ、わが国とアジア諸国民の友好の第一歩であるとはお考えになりませんか。明確な答弁を求めます。
日本共産党は、党創立以来この六十年間、平和と民主主義、国民の暮らしを守って歩み続けてまいりました。私はいま、多くの国民の皆さんと御一緒に、戦争と政治反動を許さず、国民生活向上のためにより一層奮闘することを表明して、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕