柳澤錬造の発言 (本会議)
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○柳澤錬造君 私は、民社党・国民連合を代表して、さきの中曽根内閣総理大臣の所信表明に対して質問を行います。
総理、いま国民は不況のどん底にあってどんなに苦しんでいるか、御存じでしょうか。それをこの不況下に、自民党は後継総裁をめぐって現職閣僚が四人も立候補して、総裁争いで一カ月半もの政治空白をつくりました。これほど国民のことを忘れた自民党政権の本質を見せてくれたものはありません。
〔議長退席、副議長着席〕
しかも、それについて総理からは一言の反省の言葉も聞かれませんでした。総理、国民は、このような中曽根総理の姿勢に不満を持ち不安を感じているのです。
私は、当面の重要な課題は次の三点にあると思っております。一つは、政治倫理を確立して議会制民主主義の機能を向上させ、自由と民主主義体制を堅持すること。二つとして、行政改革と財政再建を両立させ、景気回復を図るとともに開放経済体制を維持すること。三つとして、世界の国民総生産の一〇%を占める日本として、平和戦略をもって国際連帯の役割りを果たすこと。以上の三本柱を中心にしてこれより質問をしてまいります。
まず第一に、政治倫理と社会倫理についてであります。
総理、今日の政治不信というのは、実は政治家不信なのです。社会的地位の高い政治家は、金や利権で動くのではなく、道義的倫理規範に従って行動することによって国民は尊敬もすれば信頼もしてくれるのであります。しかるに総理は、この重要な政治倫理について、所信表明ではたった一行触れただけでした。これほど中曽根総理の性格を浮き彫りにしたものはありません。これでは次の通常国会で、この一行も削ってしまうのではないでしょうか。
総理、わが国は過去五年間に汚職が三千七百四十二件もありました。これは氷山の一角であり、実際はこの何倍あるかわかりません。しかも汚職をした者がいばっており、全くの汚職天国と言えましょう、このような国が近代国家の中でどこにありますか。
そこで総理に申し上げたい。汚職、選挙違反、賭博などで裁判となり、たとえ第一審でも有罪となったら、そのような人は政府の政務次官、国会の常任委員長はもちろんのこと、党の役員にもつけないと、国民の前に明確にしてみずから範を示していただきたい。あわせて、国会に政治倫理委員会を設置して、国民の疑惑に対して解明することを総理の勇気ある決断によって実現されたい。
次に、総理の家庭観についてでありますが、総理のお説は余りにも現実離れをしており、無知にも等しいと言わざるを得ません。総理は「親子三代」と言われましたが、三代が住めるような住宅事情ではなく、むしろ住宅ローンの返済で共働きを余儀なくされ、子供はかぎっ子となっていくのです。いまや家庭にまで暴力、覚せい剤が入り込んできて、親子関係もおかしくなってしまい、子供が親を殺す、親が子供を殺すなど、それにサラ金地獄と、戦前では考えられないような家庭の破壊が広がっているのを総理はどう見ておられますか。
さらに暴力は大学から高校へ、中学へと拡大して、生徒が先生を殴る、授業で教科書を使わない、その上生徒のシンナー遊びは蔓延をして悪の温床となっています。教育がこれほど荒廃したことがありましょうか。この教育の実態こそあすの日本の国の姿を示しています。
総理、この荒廃した教育、家庭をどうしたらよろしいとお考えですか。私はその責任がすべて政府にあるとは言いません。ただ、全国の家庭でお母さん方がどんなに困っているか考えてみてあげてください。このような家庭に希望を与えるのが政治ではないですか。いまこそ道義を基盤とした政治倫理とともに社会倫理も確立することが急務であると思うのですが、総理の御所見を承ります。
第二には、行政改革と財政再建についてであります。
いまや行政改革は国民の総意となっています。総理も臨調答申を最大限に尊重すると言っていました。しかるに、昨日の衆議院本会議でわが党佐々木委員長が「行革をどう進めるか具体的プランを示せ」と質問したのに対し、総理は「行革は将来に向かって希望を持ってやるものだ」との一言で、具体的な答弁をしていません。行政改革推進のわが党に対しまことに失礼な態度と言わざるを得ません。再度、行革推進の具体的プログラムをお示しをいただきたいと思います。
また、昨年十一月に成立した行革特例法案による予算削減が五百億円であるのに、本年度の補助金は昨年よりも二千億もふえています。これはどういうことなのですか、御説明をいただきたい。
この際、今後五年間公務員の新規採用を半減して総人件費の抑制を図ると公約すべきであると思うのですが、いかがですか。お約束できますか。
また、政府は、人事院勧告を凍結し、仲裁裁定にも従わないというのはなぜですか。これは政府みずからがルールを破ったのであります。政府は公務員の労使関係をどのようにしようと考えているのですか。これでは従来から法を守り行政改革にも協力しようとしている良識ある公務員労働組合の誠意を踏みにじるものであります。政府は決められたルールを守るのか、それともスト権など労働基本権を組合に返還するのか、総理はどちらをとるのか、この際玉虫色ではなく明確なる決断をお示しいただきたい。
次に経済問題ですが、政府は、経済成長率を実質五・二%で予算を組みながら、その後三・四%と修正しました。民間機関では二%台と予測をしています。これでは不況は深刻化するばかりであり、景気は回復をいたしません。特に、今日の日本経済を築き上げてきた鉄鋼を初め多くの基幹産業までも軒並み不況で苦しんでいるのを政府はどう責任をとるつもりですか。総理は仕事のできる内閣をつくったと言われました。だったら景気回復のために、先ほども三・四%可能であると答弁されましたが、それに甘んじるのではなくて、計画の五・二%を達成させると決意し、その努力を責任をもってすべきであって、総理の御決意のほどをお聞きしたいです。
また、国税庁の調査によると、昨年度の平均年収の伸び率は過去二十三年間の最低で四・九%であり、所得税負担率は五・八%となっています。したがって、サラリーマンの九一・五%が税金を納めているのです。しかるに政府は、みずからの失政による税収不足には手当てをしても、減税には応じようとしません。これほど国民の意思を無視した態度はありません。政府の責任ある答弁を求めます。
わが民社党は、発想の転換をして、行政改革と財政再建の両立を目指す新財政再建五カ年計画を提唱しています。これは四ないし五%程度の中成長は実現すべきであり、それを可能としているものであります。
その骨子は、大幅減税を断行して個人消費を伸ばすこと、公共投資を拡大し、住宅対策、都市再開発、防災対策を計画的に進めること、中小企業投資減税、中小企業承継税制を確立すること、公務員の定数削減、補助金の徹底整理をすること、不公平税制を是正することなどで日本経済を活性化し、景気回復を図ることこそ当面の緊急課題であると思うのですが、総理の御見解をお聞きしたい。
第三に、国際連帯についてであります。
いまや国内外の情勢は激動の一語に尽きます。特にソ連の新政権誕生によって、米ソ関係、中ソ関係、米中関係はどのような変化を生じていくのか。朝鮮半島、ベトナム、アフガニスタンなどアジアの国々はどう動くのかです。これらはこれからの日本の進路に重大な影響を持つものでありますが、去る三日の総理の所信表明では何ら解明されておりません。総理はいかなる分析をし、どのような展望を持っているのか、明確にしていただきたい。それなくして従来の参勤交代的なアメリカ訪問をするのであれば、それはお金の浪費です。
総理、いまやわが国は全世界の国民総生産の一〇%を生み出す経済大国となりました。しかし、そのためにエネルギーの八五%、食糧の六七%、鉄鉱石など鉱物資源のほぼ一〇〇%を世界の国々から輸入し、技術加工して輸出をする貿易立国です。したがって、世界の国々との協調なくしてこれだけの経済力を維持していくことはできません。しかるに、政府開発援助は先進国十七カ国の中で十四番目という低さです。
また、南北問題も、日本を含めた北側先進国が世界の人口の四分の一で、世界の総所得の八〇%を占めており、残りの二〇%を南側の三十億の人々が分け合って生活しているのです。その結果、第二次大戦後、戦争によって死んだ人々が一千万人であるのに対し、飢餓で死んだ人々は六千万人と言われています。この南北問題の現実に対して総理は胸が痛みませんか。いかなるお考えをお持ちでしょうか、どうやってわが国の責任を果たすおつもりでしょうか、明確な態度を示されたい。
さらに難民問題についてですが、昨年ようやく難民条約を批准しました。これは条約発効後二十七年目であり、八十二番目の批准国であります。その後も難民の認定は全く冷たく、せっかく出頭した人々を難民と認めず国外退去をさせているのはなぜですか。わが国の司法行政は弱きをくじき強さを助けるのを本領としているのでしょうか。この人々は、家を捨て、職を捨て、国家をも捨てて、自由を求めて命がけで脱出してきた人々であって、なぜ思いやりの心をもって人間らしい扱いをしてあげないのですか。総理の言う「思いやりの心」とは演説の飾り文句だったのでしょうか。
本年九月末の難民定住受け入れの人数は、アメリカの四十八万を初め、フランス八万五千、カナダ八万四千、豪州六万九千、西ドイツ二万であるのに対し、最も近いわが日本はわずかに千九百九十八名であります。総理、世界の国民総生産の一〇%を占める日本として恥ずかしくないですか。