森井忠良の発言 (社会労働委員会)

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○森井議員 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました労働基準法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 近年、わが国の経済は高度成長を遂げ、工業生産力はヨーロッパの先進諸国を追い抜き、アメリカに次いで資本主義国の中で第二の地位を占めるに至りました。しかしながら、労働条件においては、なかんづく婦人労働者の労働条件においては、欧米の先進諸国に比べて著しく立ちおくれているのが実態であります。
 特に、解雇、昇進、昇給等々の労働条件において、わが国では婦人が大きな差別を受けております。この性による差別は、解消される傾向にあるどころか、雇用の不安定化とともにむしろ拡大される傾向にあります。
 たとえば結婚した婦人や、子供を産んだ婦人が、事実上差別的に解雇されたり、定年退職年齢を男子より低く決められているようなことが当然のごとくいまなお行われているのであります。
 憲法は、第十四条において、すべての国民は法のもとに平等であって、人種、信条、社会的身分とともに、性別により、政治的、経済的または社会的関係において差別されない、と定めております。
 ところが、現行労働基準法においては、第三条で、使用者は、労働者の国籍、信条または社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について差別的取り扱いをしてはならないと定めながら、性別による差別の禁止はここから省かれ、第四条において、賃金についてのみ男女の差別禁止が定められておるのであります。このままでは解雇、昇進等における性差別をなくすることは不可能でありましょう。
 また、合理化が進められ、労働の密度が高められ、神経も一層疲労させられる結果、早産、流産、死産等々の異常出産が多発し、日本では特に周産期死亡の後期死産率は世界第一位、妊産婦死亡率は第二位を占めております。
 母性をよりよく保護し、健康なる子供の出産と成長を保障することの重要性が一層増しているのであります。このようなすべての国民の健康にとって必要不可欠な母性保護が、性差別の範疇に入る性質のものでないことは言うまでもありません。
 世界的に見ても、国際労働機関、すなわちILOの第百十一号条約では、雇用及び職業についての性差別が禁止され、その第五号では、「国際労働機関の総会が採択した他の条約又は勧告で定める保護又は援助に関する特別の措置は、差別待遇とみなしてはならない」と規定しております。ILO第百三号条約では、母性保護が具体的に定められ、第九十五号勧告では、より進んだ母性保護の内容が勧告されているのであります。
 日本社会党は、このような状況にかんがみ、労働条件における性差別をなくするとともに、母性保護を推進するために、労働基準法の改正を提案する次第であります。
 次に、この改正案の内容について御説明申し上げます。
 第一は、この法律の目的であります。
 この法律は、すべての労働条件について性別による差別的取扱いを禁止するとともに、異常出産の多発等にかんがみ、母性保護の推進を図ることを目的としております。
 第二は、性差別の禁止についてであります。
 この法律は、現行の第三条に性別を加えることにより、賃金のみならず、すべての労働条件について性別を理由として差別的取り扱いをしてはならないものとすることといたしました。したがって、男女同一賃金の原則を定めた第四条は削除することといたしました。
 第三は母性保護についてであります。
 その一は、現行第十九条を改正し、使用者は妊娠中の女子及び産後一年を経過しない女子を解雇してはならないものといたしました。
 その二は、現行第六十一条及び第六十二条を改正し、妊娠中の女子または産後一年を経過しない女子について、労働協定による時間外労働及び深夜労働を禁止することといたしました。
 その三は、現行第六十五条を改正し、産前産後の休暇の期間をそれぞれ八週間(二人以上の胎児に係る妊娠の場合には十週間)とすることといたしました。なお、この間、健康保険法の改正により、健康保険からの六割分に国庫から四割分を加えて、賃金の十割に相当する給付を保障することといたします。
 また、産前産後六週間の期間については、女子の請求による場合でも、就労を認めないものとすることといたしました。
 また、使用者は、妊娠中の女子が請求した場合には、その者の労働時間を短縮しなければならないものといたしました。
 その四は、妊娠に起因するつわり等の生理的障害のための休暇を設け、その障害により就労が困難な女子が休暇を請求した場合には、使用者は、その間、その者を就業させてはならないものとすることといたしました。なお、その休業の間は、二週間を限り、産前産後の場合と同様にして、賃金の十割に相当する給付を保障することといたしました。
 その五は、妊娠中は、産後一年以内の女子が、母子保健法による保健指導または健康診査を受けるために必要な休暇を請求したときは、その者に休暇を与えなくてはならないことといたしました。なお、その休暇については、一日を限り、母子保健法の改正により賃金分の給付を保障することといたします。
 その六は、現行第六十六条を改正して、育児時間は一日二回、おのおの少なくとも一時間与えなければならないものとすることといたしました。なお、その時間は労働したものとみなすことといたしました。
 その七は、現行第六十七条を改正し、生理日の女子が生理休暇を請求したときは、その者を就業させてはならないものとすることといたしました。なお、その期間は、二日を限り有給とすることといたしました。
 その八は、看護休業を設け、労働者が、配偶者や子や父母等の負傷または疾病につき、その看護のための休業を請求した場合には、使用者は拒んではならないものとすることといたしました。なお、同時に健康保険法を改正し、その期間、家族看護手当金として、一日につき標準報酬日額の六割に相当する金額を、同一の疾病または負傷に関し、十四日を限度として労働者に支給することといたしております。
 以上、この法律案の提案理由及びその内容について御説明申し上げました。
 早速御審議の上、速やかに御可欠あらんことをお願い申し上げます。

発言情報

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発言者: 森井忠良

speaker_id: 6858

日付: 1983-04-28

院: 衆議院

会議名: 社会労働委員会